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【本音語り】実際、長期インターンってどうなの? サイボウズ式編集部で燃えたぎる大学生3人の場合

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「長期インターンシップ」──あなたはその言葉から、どんな学生の姿をイメージしますか? 

社員でもなく、アルバイトでもなく、短期インターンシップでもない。そんな長期インターンシップに参加する学生は、実際のところ、日々何を考え、何をしているのか。 コーポレートブランディングチームの長期インターンに参加し、サイボウズ式編集部で働く3人が、いいところもそうでないところも含めたインターン生の「リアル」を語ります。

ゆるふわ系インターン生から時は流れ、ガッツキ系インターン生集合

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インターン参加への最初の一歩はフィーリング(カップル?)

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左から、吉田将来(3年)、安藤陽介(4年)、小沼悟(3年)

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安藤さんはインターンでサイボウズに出会ったのをきっかけに、新卒採用に参加し、2015年卒の内定者に。

働いてみると、自分に足りないものがどんどん見えてくる

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藤村:学生生活あんまり関係ないやん(笑)。

実践的な仕事をどんどんできるのが長期インターンの魅力

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インターンは引き続き絶賛募集中です

月5万円でも働きたいと思えるインターンの日々

「お手伝い」ではなく「自分にしかできない仕事」をやる

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編集後記:「学ぶ姿勢」ではなく、「学ぶことを面白いと思える姿勢」が大事

「長期インターンのリアルな声を聞いてもらおう」というテーマでスタートした今回の企画。赤裸々な声を聞こうと思いきや、3人とも一見優等生発言にもとらえられてしまいそうな発言もありました。しかし、今回のインターン座談会で分かったこと、それは、長期インターンで求められるものは「学ぶ姿勢」ではなく、「学ぶことを面白いと思える姿勢」であり、「学ぶことの面白味」こそがインターン生のモチベーションにつながっているということです。いくら「学ぼう!」という意欲があったとしても、やはりまだまだ「学生」。どこかにワクワク感がなければ、モチベーションが続きません。インターンを始めたきっかけはみんなフィーリング。そこからのインターンでの活動を通じて、仕事の面白さ、インターンの面白さを見出していました。今回のインターン3人衆の発言は、全てインターンの魅力に取りつかれてしまった「リアルな声」なのでしょう。(サイボウズ式編集部 吉田将来)

さいごに


先を見通せるあの人が持っている視点の正体

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【サイボウズ式編集部より】この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズ外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回はファーレンハイトさんが考える「先を見通して先手が打てる人の考え方」についてです。

仕事ができる人は先回りができる人が多い。

個々のタスク、かかわっているプロジェクト、会社の動向などスケールの違いはあれど、先手を打ちにかかる。断片的な情報をもとに巧妙に「こうなるのでは?」と予想して、活路を見いだしているように見える。そして死路に向かわないように手を打っていく。

逆に仕事ができない人は後手後手になって、対処療法に走りがち。とっちらかった状況になって、賢明に目の前のことを全力で頑張っているのに、その苦労が報われなかったりして、精神的に摩耗してしまったりする。

この違いはどこにあるのだろうか? 生まれつきの頭の良さだろうか? いや、俺が見てきたなかでは「視点・意識の向け方の差」のように思える。そのズレが結果を変えてしまう。

Take after plan OR Keep status quo?

視点・意識の向け方の差を考える上でヒントになるのは「現在」と「現状維持」の違いを考えることだ。

アカデミック・ディベートという競技がある。これは単なる言い争いを指すのではなく、ルールに基づいた囲碁や将棋のような"知的ゲーム"だ。そう、ビジネスマンが大好きなロジカル・シンキングを駆使する性質の。

ある論題──外交・経済・医療・教育──に関するさまざまな政策に関して、肯定派と否定派に分かれて討論する。その際に、肯定派はプラン(政策)を採択した際のメリット・デメリットを、否定派は<現状を維持した>際のメリット・デメリットを提示する。客観的にそれらを比較しあい、最終的には第三者であるジャッジが勝敗を決定する。

ここで重要なのは、否定派に課せられたスタンスだ。彼らは「現在(present)」の世界ではなく「現状維持(Status Quo)」の世界を議論のテーマに挙げなければならない。この観点は非常に重要になる。After Plan(政策採択後)の世界と比較する対象は、「いま現在(present)」の世界ではなく「現状維持(Status Quo)」の世界。

なぜ「現在」ではなく「現状維持の世界」を考えるのか? 答えは明確で、政策の肯定・否定派は「現在」ではなく「未来」を比較検討しなければならないからだ。

これはビジネスの世界でも生きる概念だ。

わかりやすい例を挙げると、現状維持という視点を取り入れることで、いまの時点ではヤバくなくても、5年後・10年後には顕在化してしまう大問題(時限爆弾)を発見できるかもしれない。また、あるアクションを取った副作用は、現状維持によっても時間の経過とともに起こりえていた可能性がある。(つまりはどっちみち起きる可能性があるならやった方が良い、になり得る)

見抜ける人は「現状維持」の視点で先を見通す

ここで話を戻す。先手を打てる人は「現状維持」に関する視点に敏感であるように見える。現状が進行したらどうなってしまうのか? という視点を持っている。(俺も含めて)大体の人は「現在」でベストを尽くそうして、先がどう転ぶかは他人任せであるのとは対照的だ。

先手を打つ人は「現状維持でもたらされる未来」を察知しながらベストな動き方をしている。より良く転ぶ方向を最大化し、悪く転びうる方向をつぶしにかかる。言い換えると、積極的に自分にとって「より良い現状」をたぐり寄せている。

プロジェクトで火消しをする人は、まぎれもなく素晴らしい人材だと思う。だけど、優れたマネージャーやリーダーは未然に火を消そうとする。それは種火ができた時点で「これが広がったらどうなるか?」という視点を持てているからだ。

まだ大丈夫なのか? 時間が経過したら? この要因とくっついたらどうなるか? そういった視点で見ている。(火を吹いてからプロジェクトに突っ込まれてる知人の話を聞くと、本当にかわいそうになる……)

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「まだ大丈夫」という考え方を捨てる

まとめると、俺が「この人すげぇな」と思う人は<まだ大丈夫>という考え方を決してしないことでしょうか。現時点で大丈夫でも、現状維持した結果でもたらされる未来に対して視点を向けているように思える。常に状況を現在の点ではなく、先に向いた矢印としてとらえている。

目の前のタスクに夢中になっていると、それだけで充実した気分になりがちだけど、「何のためにこのタスクをやっているのか?」という視点を持つのが一歩深めた働き方だとすれば、「近い将来に訪れる現状を積極的により良いものにしようとできるか?」を考えられる人が、優秀な働き手なんだと思う。

あとは単純に、想定外の事態なんてそうそうなくて、予期できたであろうことが結構多いんですよね。最悪のシナリオでの現状維持を想定すれば回避できていたかもしれないのではないでしょうか。ちょっとした「やらなくてもいいけど、やっとくか」が大きく身を助けることは多い気がします。

さて、コラム書きとして締切に苦しんでしまうのも、余裕がある時点で「まだ大丈夫」と思ってしまい、「現状維持」をした際に何が起きるかをシビアに見れていなかった結果と言えるでしょう。仕事の最優先は時間を守ることからですね! 俺も頑張ります。

ファーレンハイトさんより普段はブログ「My Favorite, Addict and Rhetoric Lovers Only」、Web媒体「AM [アム] 」で恋愛・人間関係について書いています。サイボウズ式のブロガーズ・コラムでは、仕事・チームワークにおける他人との関係性について何らかの価値を提供できたらと思っています。

イラスト:マツナガエイコ

あいまいな人材の定義が新卒採用をダメにする――採用学で読み解く企業人事の根本問題

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現代の日本社会の改善すべき点としてしばしばあげられる新卒採用。そんな新卒一括採用は学生を採用する側の企業、就職活動に臨む学生にとって、望ましい制度なのでしょうか。 企業は学生の何を見るべきなのか、どうすればよりよい採用ができるのか──。日本企業が抱える採用の問題から大学生のキャリア意識に関する問題を「採用学」として研究する横浜国立大学の服部泰宏准教授に、サイボウズ執行役員・事業支援本部長の中根弓佳が迫ります。

採用学とは何か

服部泰宏さん 横浜国立大学大学院 国際社会科学研究院(経営学部) 准教授
1980年生まれ。2009年神戸大学大学院経営学研究科博士課程を修了し、博士号(経営学)を取得。滋賀大学経済学部専任講師、同准教授を経て、2013年4月から現職。著書に『日本企業の心理的契約:組織と従業員の見えざる約束』(白桃書房,2013年)など。

企業が「欲しい人材」を定義できていないのが問題

採用は「数」よりも「質」

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中根弓佳 サイボウズ株式会社 執行役員・事業支援本部長

企業の面接はルーティン化している?

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「採用」と「育成」は一体化すべき

saiyogaku_5.jpg 後編に続く。
文:安藤 陽介 撮影:橋本 直己

「人事制度」を考える
人事評価は適当でいい?──ココナラ南CEO×サイボウズ山田副社長 人事制度対談
覚えられない企業ビジョンは意味がない──ココナラ南CEO×サイボウズ山田副社長 人事制度対談

先陣をきって育休を取ったイクメンのリアル

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こどもビレッジ集合写真

左よりこどもみらい探求社の共同代表 小笠原舞さん、小竹めぐみさん、ゾーホージャパン株式会社松本暁義さん、株式会社ラクス陶山大介さん、サイボウズ株式会社谷口修平さん

フリーランス保育士の小竹めぐみさんが運営するNPO法人「オトナノセナカ」。同法人では平日の夜、パパたちがふらっと集まって子育てについてお酒を呑みながら語る、パパによるパパのための学びの時間「パパノセナカ」を開催しています。今回はこの「パパノセナカ」とサイボウズ式がコラボレーション。育休取得経験がある、あるいはこれから取ろうとしているイクメンパパ3人に「イクメンのリアル」について語り合ってもらいました。

男性の育休取得に男女共に9割以上が賛成(経済広報センター「女性の活躍推進に関する意識調査」)なのに、実際に取った経験のある男性はたったの2%(厚生労働省「雇用均等基本調査」)程度だそう。そんな中、仕事と育児を両立しようと奮闘するイクメンパパは日々、どのように子どもや奥さんと向き合い、どんなことを感じているのか。小竹さんとともに合同会社こどもみらい探求社の共同代表を務める小笠原舞さんもコメンテーターとして加わり、イクメンパパたちのホンネを聞き出します。

「2人目ができたら育休を取得する」と周囲に宣言していた

陶山さん

陶山大介さん(株式会社ラクス勤務。2歳の娘に加え、昨年12月に第2子となる息子が誕生。それに合わせ育休を半年取る予定)

難しかったのは「今は育休中だ」と割り切れなかったこと

谷口修平さん

谷口修平さん(4歳と2歳の女の子2人の父。次女誕生時に育休を2週間取得。妻も育休を2年半取得したサイボウズ社員

育休取得で芽生えた「当事者意識」

谷口修平さん

松本暁義さん(ゾーホージャパン株式会社勤務。1歳7ヶ月の男の子の父。昨年、妻が仕事に復帰するのに合わせて育休を1ヶ月取得)

※本記事において「育休」は「育児休業」「育児休暇」両方の略で使用しました。「育児休業給付金」が支給されるのは「育児休業」です。サイボウズの谷口氏は育児のために有給の休暇を取得した「育児休暇」です。


後編に続く

文:荒濱一 撮影:内田明人 編集:渡辺清美

撮影協力: RYOZAN PARK大塚 こそだてビレッジ 


サイボウズ式編集部からのお知らせ:
「パパこそ、情報交換が必要だ!」といという声から生まれた「パパノセナカ」。サイボウズ式とのコラボ版を2月6日(金)19:30 - 21:30に、本記事の撮影場所RYOZAN PARK大塚 こそだてビレッジにて開催します。サイボウズ ワークスタイルムービー「大丈夫」「パパにしかできないこと」を酒の肴にパパだらけの安全基地で飲み学びをしませんか? 詳細・お申し込みについてはこちらをご覧ください。

パパに限らずいろいろな立場の方々とワークスタイルムービー「大丈夫」を語り合うイベントも1月25日(日)13:00 - 15:00に日本財団ビルで開催します。子育ての葛藤を描く漫画家「にこたま」さんはじめ多彩なゲストを迎えします。詳細・お申し込みについてはこちらをご覧ください。


「冷蔵庫干し」で庫内すっきり──コデラ総研 家庭部(32)

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テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第32回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「『冷蔵庫干し』で庫内すっきり」。

文:小寺 信良
写真:風穴 江(「tech@サイボウズ式」編集部)

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大晦日からお正月にかけて、家族で実家に帰省するという人は案外多いのではないだろうか。5日から1週間程度家を空けることになるわけだから、その間は食材が不要になる。うちでは帰省する1週間ぐらい前から計画的に食品を消化し、なるべく冷蔵庫を空っぽにしてから家を出るようにしている。

出かける前は何かとバタバタするので、帰ってきて買い出しに行く前に、冷蔵庫の中を全部さらって綺麗にすると、気分良く新年が迎えられる。これを称して我が家では、「冷蔵庫干し」と呼んでいる。

冷蔵庫の中というのは、冷えてるから大して汚れないだろうと思われるかもしれないが、実は奥のほうでカビが生えているのに気がつかなかったりするものだ。とくに引き出し部の奥やレール部は普段なかなか見えないので、そういうところがビックリするレベルでカビてたりする。

調味料や保存食など、一部残っている食材もあろうかと思うが、賞味期限が怪しいものはこのさい思い切って捨ててしまおう。まだ使えるものは、掃除中キャンプ用のクーラーボックスなどに待避させておく。冷蔵庫というのは、ほとんど外枠だけになるレベルで中のものが取り外せるようになっている。外し方が難しいものは、取扱説明書に外し方が書いてあるはずだ。食品を全部取り出したら、バケットや棚などは全部外してしまおう。

取り外したバケットや棚は、中性洗剤を使って水洗いできる。スポンジは固いものだと表面が傷ついてしまう。表面に傷が入ると、その傷にカビが入り込んだりするので、後々やっかいだ。スポンジの柔らかい面を使って洗っていただきたい。

中身を乾かしているうちに、庫内の清掃である。これは除菌タイプのウエットティッシュを使って拭き掃除するのが一番簡単だ。棚のレールや奥まった部分、製氷機の奥など、普段滅多に見ない部分も忘れずに掃除しておこう。結構ビビるぐらい汚れているのではないかと思う。

野菜室は、結構カビの温床になりやすい。他の部分と違ってそれほど温度が低くないことに加え、生の野菜はどうしても切れっ端がちぎれて庫内に落ちたりするので、そういうものが奥のほうでカビてたりする。ここだけは、4半期に1回ぐらいは綺麗にしたいものだ。

外側も大事

中身がすっかり綺麗になったところで、今度は外側である。シンクの近くに置かれている冷蔵庫は、案外洗い物や調理中の飛沫が飛んで、汚れているものだ。こういった汚れはすでに乾燥してこびりついているので、中性洗剤を溶かしたお湯にぞうきんを浸し、固く絞ってから拭いてやると簡単に綺麗になる。

注意していただきたいのは、扉側に付いているパッキン部分だ。横開きの扉はそうでもないが、引き出し型の扉の上のほうのパッキンは、結構汚れが溜まりやすい。パッキンに汚れが挟まると、それだけ密閉度が落ちるので、冷却効率も悪くなり、保存期間が短くなる。

この部分は、除菌タイプのウエットティッシュでパッキンの溝を綺麗に拭いてやるといい。細くて指が入らない場合は、割り箸の先にウエットティッシュを巻き付けて、それで掃除するといいだろう。この部分は、洗剤は使わないほうがいい。何しろ溝の中なので、洗剤が入り込むとなかなか綺麗に拭き取れないし、洗剤の成分がパッキンを劣化させてしまう可能性もあるからだ。

そして忘れてならないのは、冷蔵庫の下である。この部分は大抵目隠しの板で塞がれていると思うが、引っぱれば外れるようになっている。そこに拡がっているのは、魔窟だ。思わず「おうふ!」と声が出てしまうだろう。

子供がいれば、恐らく丸いビーズ的なものとかお菓子の包み紙とかがもれなくその隙間に詰まっている。ネコがいればカリカリのエサとか銀紙を丸めたのとか、オモチャにしたものが「シュート」されている。

頑張れる人はいったん冷蔵庫を引っ張り出して掃除するといいのだが、なかなかそこまではやれないだろう。こういうホコリだらけのところがゴキブリの隠れ家になっていたりするので、掃除機で吸い出したのち、さらに割り箸などで奥に詰まったホコリをかきだしておこう。

冬休みはもう終わってしまったが、春休みや夏休みなど何か長期でお出かけの際には、「冷蔵庫干し」をぜひ実践してやいただきたい。(了)


本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


この記事を、以下のライセンスで提供します:CC BY-SA
これ以外のライセンスをご希望の場合は、お問い合わせください。

強いチームは理論と実践をバランスよく学ぶ

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【サイボウズ式編集部より】この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズの外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回は、日野瑛太郎さんによる「チームの環境変化に柔軟に適応するための学習」について。

チームを巡る環境は時々刻々と変化します。プロジェクト開始時に重要だと思われていたことが、3ヶ月後にはまったく重要でなくなっていることも少なくありません。これは、プロジェクト開始時に設定した課題解決のためのスキルセットが、時間の経過によって役に立たなくなってしまう可能性があることを意味します。

メンバーが高度なスキルを持っていることは、強いチームをつくる上でたしかに大切ですが、それ以上に大切なのは、チームが環境変化に適応できるだけの柔軟さを身につけていることです。メンバーがどんなに高度なスキルを保有していても、環境の変化に適応することを拒み続けていては、そのチームは結果を出すことはできません。

チームを取り巻く環境変化に柔軟に適応するためのキーとなるのは「学習」です。その時点で保有しているスキルや考え方に拘泥せずに、環境変化に応じて新しいスキルや考え方をメンバーが学習していけるかどうかでチームの強さが決まります。今回は、そんな強いチームをつくるために必要な学習戦略について考えてみたいと思います。

「学習」には二段階ある

「学習」と一言で言っても、その内容・粒度は多岐にわたります。ここでは便宜的に、学習の段階を(1)プロジェクトに固有でない学習をする段階(2)プロジェクトに固有な学習をする段階、の2つに分けて考えます。

(1)は、たとえば本などを読むことで手に入る一般的な知識の学習をする段階です。プログラミング言語やツールの使い方を覚えたり、マーケティング戦略のフレームワークを学んだりすることがこちらにあてはまります。(1)の学習によって得た知識は、ひとつのプロジェクト・チームに限らず広範にあてはめることが可能です。しかし一方で、これらの知識は一般化されているため、具体的な現実のケースにそのままあてはめようとするとうまくはまらないことも少なくありません。実際に仕事で使うためには「現実のケースにフィットさせる」必要があります。

その「現実のケースにフィットさせる」ための学習の段階が(2)です。たとえば、アジャイルの本などを何冊か読んで、一般的なアジャイルの方法論を理解したとします。では、学んだことを実際に自分のチームでやってみようとした場合、すんなり導入できることは稀です。たいていは、本を読んだだけでは想定できなかった困難に直面します。本に書いてあるとおりにミーティングを設置したらミーティングだらけで仕事がサッパリまわらなくなってしまったり、朝会を毎日やろうと言ったのにエンジニアが昼にならないと出社してこなかったり、自分たちのプロジェクトに固有な問題点が少しずつわかってきます。これらの問題を乗り越えて、知識としてのスキルや方法論を現実にチームに適応させるプロセスが(2)の学習です。

いくら本を読んで(1)の学習しても、それを実際のプロジェクトに適応させるための(2)の学習を行わなければチームをよい状態に導くことはできません。一方で、(2)の学習を意味のあるものにするためには、(1)の学習によってある程度は一般論を知っておく必要があります。(1)の学習と(2)の学習は両輪であり、どちらが欠けてもいけません

「理論」と「実践」のバランス

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(1)プロジェクトに固有でない学習と(2)プロジェクトに固有な学習の間にある関係は、「理論」と「実践」の関係に近いと言えるかもしれません。理論だけでは頭でっかちで具体的な成果はほとんどでませんし、実践だけでは近視眼的になり局所解に陥る危険があります。

理論か実践か、たいていの人は大体どちらかに寄っています。これは性格の問題でもあるのである程度は仕方がないのかもしれませんが、明らかにどちらかに寄りすぎているのであれば、意識的にバランスを取ることを心がけたほうがよいでしょう。僕の経験でも、この理論と実践のバランスが取れている人は、チームをどんどんよい方向に導いていくことができていました。

理論と実践のバランスがよい風土をチームの中につくることができれば、環境変化に応じて臨機応変に学習できる強いチームができあがります。

知識をシェアする文化をつくる

理論と実践をバランスよく学ぶチームをつくるひとつの方法は、「知識をシェアする文化」をチーム内に根付かせることです。週末に本を読んで仕入れた知識や、勉強会に参加して得た知識は、自分だけのものにしてしまわずにチームに積極的に展開するようにします。

その際には、「シェアだけして終わり」にしてはいけません。それではただ理論を紹介しただけになってしまいます。大切なのは、そうやってメンバーからシェアされた新しい知識について、「自分たちのチームで使うのであればどうすればよいか」を具体的に議論することです。そして実際に使えそうなら、積極的にチームで使ってみることも重要です。このように「理論を仕入れて実践してみる」というサイクルをチームの中で定常的にまわすことができれば、チームはつねに成長しつづけることができます。

これは、チームだけでなくシェアする個人にとってもメリットの大きい話です。本で読んだり勉強会で聞いたりしただけでは知識は十分に深まったとは言えません。具体的なシチュエーションを考え、実際に試してみることで知識は深化します。これをチーム全体の力を借りてできるようになれば、自分だけでいろいろと試す場合よりも飛躍的に学習効率が高まると言えるでしょう。

メンバーの多様性を強みにする

チーム内で知識をシェアする場合には、メンバーが各々違った観点から知識をシェアできると、多様な知見がチームに集まりやすくなります。理想を言えば、メンバー一人ひとりが違った得意分野を持ち、相互補完ができるようになるとよいでしょう。そのためにも、チーム編成をする際にはある分野のスペシャリストを限定して集めるよりは、多様なバックグラウンドを持ったメンバーを集めたほうが変化に柔軟に対応するという点では有利です。

どんなに高度なスキルを保有しているメンバーを集めても、チーム内で有機的な学習プロセスが回らなければ、チームは環境変化に対応できずにいずれ結果を出せなくなります。今後は「多様性を武器に学習しつづけることができる」ことが、強いチームの条件になっていくことでしょう。

日野瑛太郎さんより
普段は「脱社畜ブログ」で、日本人の働き方の記事を書いています。このブロガーズ・コラムでは、チームワークという観点から働き方について新たな視点を提供できればと思っています。

イラスト:マツナガエイコ

面接時の「何やりたいですか」に意味はあるのか? 採用学視点で考える学生のキャリア

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企業と学生の間で揺れる新卒採用の問題。そもそも現行の制度は双方のためになっているのか? 企業の採用のあり方について語った前編に続き、後編では就職活動における学生のキャリアについて迫ります。

企業の採用に関する研究「採用学」を確立した横浜国立大学の服部泰宏准教授とサイボウズ執行役員・事業支援本部長の中根弓佳の採用論・キャリア論対談。後編では、学生はやりたいことがないといけないのか? どのように企業を探し、よりよい出会いを作っていくべきなのか? 大企業に入って安定するってどういうことか? を話します。

混迷の2016採用、激化する2つの競争

服部泰宏さん 横浜国立大学大学院 国際社会科学研究院(経営学部) 准教授
1980年生まれ。2009年神戸大学大学院経営学研究科博士課程を修了し、博士号(経営学)を取得。滋賀大学経済学部専任講師、同准教授を経て、2013年4月から現職。著書に『日本企業の心理的契約:組織と従業員の見えざる約束』(白桃書房,2013年)など。

やりたいことがないといけない?

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中根弓佳 サイボウズ株式会社 執行役員・事業支援本部長

学生はどのようにキャリアを考えれば良いのか

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学生はそもそも”多様”

前編はこちら。
文:安藤 陽介 撮影:橋本 直己

「人事制度」を考える
人事評価は適当でいい?──ココナラ南CEO×サイボウズ山田副社長 人事制度対談
覚えられない企業ビジョンは意味がない──ココナラ南CEO×サイボウズ山田副社長 人事制度対談

イノベーターとイノベーション人材のたった1つの違い

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“イノベーション”という言葉を聞けば「いままでにない斬新さで思わず欲しくなってしまう製品」「使いたくなるサービス」といったイメージが浮かびます。ではこうしたイノベーションはどうやって起きるのでしょうか?

それを学べるのが、東京大学の教育プログラム「東京大学i.school」。 イノベーションの“なぜ”に迫り、生み出し方を学ぶ場として、知識を世の中に役立てる姿勢や視点が見いだせます。

イノベーションのカラクリは一体何なのか。i.schoolでディレクターを務める横田幸信さんに、イノベーションを生み出そうと日々頭をひねっているサイボウズ式編集部が話を聞きます。

コムデギャルソン創始者に学んだ科学とビジネスの結節点

i.schoolがイノベーションの学校と呼ばれる理由

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イノベーターとイノベーション人材の違い、分かりますか?

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横田幸信さん/東京大学i.school ディレクター。大学院生向けにイノベーションに関する実践的な教育・研究活動を行う。前職は野村総合研究所にて経営戦略全般をテーマとした戦略コンサルティング業務に携わり、東大先端研技術補佐員、東大院工学系研究科博士課程中退を経て現職。

イノベーションに不可欠な「多様な意見」を引き出すには

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撮影:谷川真紀子


妻に対して「手伝う」はNGワード? 父親の役割って何?

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サイボウズのワークスタイルムービーをみて率直な感想を共有する父親たち。左からゾーホージャパン株式会社松本暁義さん、株式会社ラクス陶山大介さん、サイボウズ株式会社谷口修平さん。3人の共通点は職場で育休取得の戦陣を切ったこと。

NPO法人「オトナノセナカ」代表の小竹めぐみさんが主催する、パパによるパパのための学びの時間「パパノセナカ」とサイボウズ式のコラボレーション企画「イクメンのリアル」後編をお届けします。

前編では、育児休暇を取得した経験がある、あるいはこれから取得しようとしているイクメン3人が、なぜ育休を取得したのか、取得してどう感じたか、といったことについて話してくれました。続く後編では、サイボウズのワークスタイルムービーを観たり、パパたちだけで子育てについて語り合ったりすることを通じて、「父親の役割って何?」というテーマについて考えを深めていきます。「イクメンになりたい」と思っているけれども何をどうしていいかわからない」と悩んでいるパパたち、ぜひ一緒に考えてみてください。

「手伝う」に替わるいい言葉はないか?

陶山さん

陶山大介さんは、昨年12月に第2子となる息子が誕生。半年間の育休を取得する予定。

パパたちだけで「こどものための井戸端会議」

<「こどものための井戸端会議」開始>

男対話

「よりよい家族を築くための父親の役割とは?」をテーマに語り合う。

<「こどものための井戸端会議」終了>

今日出した回答はカーナビの目的地設定みたいなもの

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常に「自分に問い続ける」ことが大事

こどもみらい探求社

左よりこどもみらい探求社共同代表の小竹めぐみさん、小笠原舞さん。2010年に二人でオトナノセナカを結成。

文:荒濱一 撮影:内田明人 編集:渡辺清美

撮影協力: RYOZAN PARK大塚 こそだてビレッジ 


サイボウズ式編集部からのお知らせ:
「パパこそ、情報交換が必要だ!」といという声から生まれた「パパノセナカ」。サイボウズ式とのコラボ版を2月6日(金)19:30 - 21:30に、本記事の撮影場所RYOZAN PARK大塚 こそだてビレッジにて開催します。サイボウズ ワークスタイルムービー「大丈夫」「パパにしかできないこと」を酒の肴にパパだらけの安全基地で飲み学びをしませんか? 詳細・お申し込みについてはこちらをご覧ください。


ハッカーの遺言状──竹内郁雄の徒然苔第15回:異国と學問

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元祖ハッカー、竹内郁雄先生による書き下ろし連載の第15回。今回のお題は「異国と學問」。

ハッカーは、今際の際(いまわのきわ)に何を思うのか──。ハッカーが、ハッカー人生を振り返って思うことは、これからハッカーに少しでも近づこうとする人にとって、貴重な「道しるべ」になるはずです(これまでの連載一覧)。

文:竹内 郁雄
カバー写真: Goto Aki

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私は若いときから「60歳になるまで外国に行かない」とうそぶいていた。実際、初めて日本を出たのは36歳になってからである。「飛行機がいやなのか?」などといろいろ聞かれたが、国内では飛行機に平気に乗っていたからそれは当たらない。単に面倒だから行きたくなかっただけである。しかし、外国に行かないと公言してしまった以上、引込みがつかなくなったというのが正直なところだろう。意地を張るもんじゃありませんねぇ。

しかし36歳のとき、米国テキサス州ダラスで開かれる国際会議で、どーしても喋れということになった。しょうがないので、なるべく短時間にするために、成田出発−サンノゼ経由−成田到着72時間(飛行機内累計28時間)というトンボ帰り旅行計画で初渡航することになった。サンノゼを経由したのは、当時スタンフォード大学に行っていた、前回も登場の同僚の奥乃博さんから、美味しい明太子を運搬してほしいと頼まれていたからである。なので、ショルダーバッグの一番上には明太子のパッケージを入れていた。さらに、当時の私は髪の毛が自分の乳頭に届くほど長く、かつヒゲもしっかり生やしていた。

ダラス・フォートワース空港に着いて、税関を出た直後、全員身長190cm以上の4人の警官に呼び止められ、そのまま、6畳ほどの部屋に連れていかれた。その部屋はいまでも類例を見たことのない部屋だった(図1)。日本建築様式の段違い棚というか、奥行き30cmあまりの段違い壁。その上に手錠がぶら下がっている。そのほかには一切の物がない。もちろん窓もない。なんたる様式美!

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図1:空港にあった手錠だけがかかった部屋。様式美の極致とも言えるシンプルさ。段違い壁になっているのはポケットのものを出したりしたときの置場か。

何しろ、風貌、短時間渡米、バッグ1個の荷物など、状況証拠的に私が麻薬の密売人に疑われたのは確実だ。なぜか左の靴だけを脱がされ、手錠がぶら下がった壁に両手をつけさせられた。どうやら靴の底にヤクを入れるものらしい。いまはもっとだが、当時仕事をしすぎて(?)ちょっと小太りだったので、脚を上から下までタッチされて調べられた。なるほど、脚にヤクを巻き付けるという手口もあるようだ。そのときに気がついたのだが、着替えの入ったバッグの一番上に明太子の箱がポンと乗っている! 見つかったら、ナマモノの密輸だ! そのときまでたかをくくっていたのだが、急に不安になってきた。おお、学会での発表はどうなるのだ……。

ところが、なんと警官たちはバッグを開けないまま、「Thank you for your cooperation」というお礼の言葉とともに解放してくれたのであった。翌日の学会発表のあと、聞いていた現地のファジー論理大好きのオジサン技術者から「面白かったよ、空港までクルマで送ってあげる」と言われ、とても恐い運転(ずっと私のほうを見て話しながらの運転)を味わった。でも、あとでファジー論理の本まで贈ってもらった。

というわけで、まぁ、やっぱり外国にホイホイと行くもんじゃないと思ったのだが、大学に移ってからは、学生を連れていかざるを得ないようなことが増えてしまった。しかし、「60歳まで」ではなく「55歳くらいまで」は意地を通せたことになろう。

と、ここまでは話の本筋とは関係ない前座。いまどきの若い人はどんどん海外に飛び出すべきだ。

さて、解禁されたらもう何でもあり。前にも紹介したが、私は2011年から3年間、1年に4カ月ほどエジプトに滞在した。JICAが支援しているエジプト日本科学技術大学(E-JUST)の設立に早稲田大学の教員として協力するためである。

エジプトでの春学期は、多分気候の関係だと思うが、2月から6月までである。私はその間、講義や学生指導のために、アレクサンドリア市内のアパートから、60km以上離れたボルグ・エル・アラブ市のさらに郊外にあるE-JUSTまで、大きなハイルーフバンに片道1時間以上揺られて通勤していた。といっても、同乗するのはみんなE-JUST関係者である。特に市村禎二郎東工大名誉教授(専門は物理化学)と一緒になると、ずっとおしゃべりしっぱなしであった。専門が違うので、勉強になることも多かった。

外国での長期滞在はエジプトが初めてだったので、何もかも興味深かったのであるが、足掛け2年も滞在していると、やはり新しい知的刺激が欲しくなってくる。

そうだ。學問を作らねばならない。第3回「超芸術と超プログラム」でも一部紹介したが、路上観察學エジプト版が楽で楽しそうだ。エジプトは大半が砂漠なのに、水道のインフラ整備は素晴らしい。電気インフラも完璧とは言わないが整っている。街灯も明るくて、夜道は比較的安心である。

ところが、通勤経路の(米国流に言えば)フリーウェイの中央分離帯に等間隔に立っている照明灯が奇妙なのである。等間隔ではないのだ。といっても、最初からランダム間隔に立っているわけではなくて、途中で折れたり、根元から倒れたりして、かなりの割合で歯抜けになっているのである。傾いている照明灯もある。

早稲田大学の上田和紀先生は、あるときどれくらいの照明灯が倒れているかを数えたそうだ。だが、これは「羊が1匹、2匹、……」の類であり、途中で眠くなる。完璧な計測は容易ではない。

1日に2回も通る道路だから、しばらく観察していてあることに気がついた。この道路アクシス・レコンストラクションはアレクサンドリアとボルグ・エル・アラブを30度ほどの西下がりで結んでいる。倒れたり、折れたりした照明灯はすべて中央分離帯の上に乗ったままなのだが、アレクサンドリア向きに倒れているものが有意に多い。なぜだろう? また、途中で折れているものはどうしてこのように折れるのだろうか? やはり、學問は、まず些細な疑問から始まる。

これらの謎を解くべく私が2013年4月23日に創立したのが「電柱學」である。なぜ、日付が分かるかというと「電柱學事始め」という写真フォルダがあるからである。しかし、これはそもそも電柱ではないので、命名からして間違っている。そういえば、エジプトでは電柱を見かけない。地下に埋設されているのだ。このあたりは日本のほうが遅れている。というわけで、最初から前途多難な學問なのであった。しかし、この電柱學で挑戦すべき課題や、それまでに得られた「結果」などを行き帰りのバスの中で声高に発表して、同僚の先生方の賛同と失笑を買った。

倒れる方向がアレクサンドリア向きになりやすい原因には諸説あったが、そもそも倒れるとき、というか自然に倒れたのであれば中央分離帯の上に倒れるということ自体があり得ない。自然に倒れたものを人が中央分離帯に揃えたというほうが自然な説明だ。いや、人為的に倒した? 誰がなんの目的で?

この道路の両側の大半は地中海の塩分が混じった塩田(写真1)と汽水湖なので、塩分が柱を錆びさせて倒している、つまり塩害というが最ももっともらしい説明だ。根元からボルトが抜けて倒れているようなのもあるが、中央分離帯のコンクリートが塩害でボロボロになったのかもしれない。

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写真1:冬は一面水面だが、夏を過ぎると水が干上がって、ブルドーザが塩の山を作る塩田。水の色が赤っぽくて、ちょっと気持悪い。Google Mapsの地図で見ると湖の記法にはなっていないが、航空写真のほうで見ると、赤煉瓦のような色なので分かる。市村先生は、いろんな廃水が混じっていてとても人の口に入れられるような塩ではなくて、工業用の塩だとおっしゃるが、「アレキの赤塩」と言うとお土産になりそうな響きがある。湖が乾き始めると写真のように水際にカオスのストレンジアトラクタのようなものが見えてくる。自然は偉大だ。

この道路で目撃した交通事故の多さを敷衍すると、中央分離帯に乗り上げてしまったクルマに倒されたという原因はありそうだ。工場地帯のあるボルグ・エル・アラブからクルマ通勤の人がアレクサンドリアに帰るときのほうが、仕事の疲れや、帰りを急ぐあまりの事故が多いとすると、倒れ方の有意さの説明にはなっているかもしれない(※1)。大型トラックはともかく、そう簡単に乗り越えられる高さの中央分離帯ではないので、それも主たる原因でないように思われる(※2)。

車幅を大きく超えて木材を積載している大型トラックもよく走っているので(写真2)、荷物の木材が何かの拍子に照明灯を引っかけて倒すということも考えられる。実際、木材の運搬はほぼ一方的にアレクサンドリア方面行きなので、もっともらしそうだ。

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写真2:過積載トラックの一例。

しかし、照明灯が倒れる、あるいは倒される現場を見たわけではないので、すべては推測の域を出ない。本当の學問にするためにはもっと徹底的、長期的な観察や調査が必要なのである。しかし、天文学がそうであるように、電柱學も、自分の目で観測できなくても、バスの中での観察と研究を積み重ねれば、いろいろなことが分かってくるのではなかろうか。

となると、まず倒れ方の分類学が必要だ。路上観察學もそうだったが、分類学なくして、學問は始まらない。ここで正しい分類が行われればよかったのだが、予想どおりというか、残念ながらというか、電柱學は曲がった方向に向かってしまった。つまり、見事な倒れ方、この場合は、照明灯の高い部分でポッキリ折れて、折れた先がまだかろうじてつながっているという「美学的」な観点から、横綱、大関、関脇の称号を与えるといった、見た目だけの、世俗的、迎合的分類になってしまったのである。

横綱を写真3に示す。見事としか言いようがない。以来、私はE-JUSTからの帰路、横綱が近づいてくると胸が高まるまでになった。どうやったらこのような高い位置でポキリと折れることができるのだろうか。写真4の元照明灯はあまりにも高いところで折れたので、上部がなくなっているが、その立姿が美しい。張出横綱に相応しい。大関を飛ばして、写真5は関脇である。星の進化をいろいろな星の時間断面で観測する天文学と同様、電柱學でも超新星、もとい力士誕生が間近なものが観測される(写真6)。そうかと思うと、そもそも照明灯が最初から立てられたのかどうかが疑問に残る現場も見られる(写真7)。

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写真3: 横綱の折れ方。何度見ても惚れ惚れとする。折れている位置は高さ4メートルほどだろうか。朝の出勤時に撮ったので、手前側、つまりアレクサンドリア側に美しく倒れている。

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写真4:張出横綱。孤高を保つ鉛直の立姿は見事。どうしてこうなったかが最も不可解な「力士」。さすがピラミッドの国、エジプトだ。

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写真5:関脇。これに限らず、三役はほとんどがアレクサンドリア側に倒れている。

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写真6:力士誕生か? これを見ると、なんらかの衝突が力士誕生の原因の一つであることが読み取れる。

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写真7:集団で倒れている照明灯。どれもかなり原形を留めているので、最初から立ててなかったのではないかと疑われるくらいである。

この矮小化された番付編成作業によって、異国の地で新しい學問を生み出そうとした私の小さな野望は大きくしぼむことになった。いやぁ、「老人熱し易く、學成り難し」とはよく言ったものだが、毎日退屈な電車通勤をしているとか、毎日ルーティンワークしかしていないと思っている若いみなさんなら、これよりはもっとましな學問が生み出せるのではなかろうか。(つづく)


※1:朝の遅刻に関しては、学生もそうだったが、みなさん、あまり気にしない。インシャラー(神の思召のままに)の国なのだ。
※2:事故渋滞で道が詰まってしまうと、大型トラックがこの中央分離帯を乗り越えて反対車線に入り、そのまま逆走することがよくある。びっくりだが、これもインシャラーなのだろうか。いや、偉大なフレクシビリティなのかもしれない。


竹内先生への質問や相談を広く受け付けますので、編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


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仕事の人間関係でズルく得する3つのコツ

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【サイボウズ式編集部より】この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズの外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回ははせおやさいさんが考える「職場における人間関係の押し引き」について。

こんにちは。はせおやさいです。
今日は「主に職場における人間関係の押し引き」について、思っていることを書いてみようと思います。

つい「言い過ぎる」ひとたち

職場に限らない話かもしれないのですが、いろんな場面で、相手と意見が合わなくて、さらに相手の意見について自分が強く反発を感じてしまうとき、語気荒めに反論を続けていると、だんだんヒートアップしてしまうことってありませんか。

議論というのは不思議なもので、なんとなく「やりこめられた」と感じてしまうと引っ込みがつかなくなって、ただ相手に負けを認めさせるために言い返してしまう場面を見かけることがあります。

単なる意見の相違なのだから、ズレてしまっている部分はしかたがないとして、最終ゴールのために建設的な議論をしようと軌道修正を試みても、感情論のぶつけあいになってしまいます。最悪のパターンとしてお互い引くに引けず、「もう好きにしろ」となってしまうと、あとあとの関係にまでネガティブな影響を及ぼしかねません。

では、どうしたらよいのでしょうか?

仕事で議論になったとき、ちょうどいい「やめどき」がある

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議論には「切り上げどき」というのがあります。

目安として、当該の議題についてお互いの意見が出尽くしたなと感じたとき、そこでいったん話を切り上げましょう。「その意見はさっきも聞いたな」と思ったり、「これはさっきも説明したな」と感じたときは、もう出尽くしたと思ってよいでしょう。

そこまで議論が煮詰まったら、相手と対面するのではなく、一緒に紙に箇条書きで書き出したり、ホワイトボードがあればそこに図解するなどして、双方が「同じ方向を見る」という行動を採るのがおすすめです。意見が出され尽くした状態で双方が向かい合ったままだと、議題ではなく「お互い」についての感情が湧いてきてしまい、「言わなくていいこと」を言ってしまう導火線に火がつきやすくなります。

切り上げどき以降は向かい合って意見をぶつけるのではなく、両者が同じ方向を見て意見を整合していくんだというポーズを取りましょう

あえて「ちょっと負け」てみよう

「切り上げどき」がいまいちわからないという場合、もうひとつの目安があります。

お互いが意見を言い合って、「ここも、ここにも議論の穴があるな」と感じた場合でも、だいたいの解決案や改善案が出てきている状態なら、反論したい気持ちをグッとこらえ、議論の決着に努めましょう

「負けるが勝ち」ではありませんが、要するに「まだ言い返せるぞ」と思っていても、「いまのアイデア量なら改善案がまとめられそうかな」と感じたなら、自分が負けて引き下がる。

相手に言い負かされたくないがために、つい次から次へと反論し続けてしまう人を見るときがありますが、はっきり言って不毛です。そして、自分自身のプライドを守るためにする反論はえてして「言い過ぎ」になる場合が多い。

もちろん、相手の言っている内容が誤っていたり、ズレを放置したままだと禍根を残しそうだと感じられた場合は適正に修正するべきですが、あくまでそれは「マイナス点をフォローする」ため。自分の「言ってやった」気持ちを満たすために反論することは、絶対に避けましょう

「返報性の原理」をうまく利用しよう

お互いがお互いの言い分をきちんと吐き出し、意見をぶつけあうことも重要です。だからといって、自分の意見だけをただ一方的に押し付けては意味がありません。まず自分の意見を相手に伝えたければ、自分が先に相手の言い分を聞くこと

人の心理には「返報性の原理(法則)」があるそうです。これは「相手から何かをしてもらった場合、お返しをしなければいけないという感情を抱く」心理のこと。ちょっとズルい方法かもしれませんが、この原理を利用しましょう。

まず、相手の言い分をすべて聞きましょう。納得がいかないなと思うことがあっても、途中で相手の話を遮ったりせず、ひとまず話し終えるまで待つ。そうすると、相手は言いたいことをどんどん吐き出したので気持ちがスッキリしていきますし、「自分の意見ばっかり言ってしまったけど、だいじょうぶかな」という心理が働きます。

また別のメリットとしては、相手が何をどう思っていたかを引き出せるので、後から提案や指摘をするこちら側がより多く情報を持つことになり、有利に話を展開することができます。相手にまず言いたいことを全部話させて、あとからゆっくり自分の持って行きたい方向に話を誘導してしまえばよいのです。

以上のように「議論のやめどきを意識する」「あえてちょっと負けておく」「まずは相手から先に全部話させる」の3つのコツで、仕事関係の人間関係はずいぶん改善するのではないかと思います。特につい言い過ぎて険悪な空気を作ってしまう人ほど、このテクニックは有効です。

言い過ぎてしまう人の多くは「下に見られたくない」「舐められたくない」と思うようなのですが、仕事での人間関係は上下ではなく、その集団においてベストの選択肢はなにかを探る対等な関係です。上下を意識してしまう人ほど、自分が相手に「負けたくない」と思っていないか、優越感を持とうとしていないか、自分を振り返ってみるといいのかもしれません。

仕事での人間関係のコツは、まず相手の言い分をちゃんと聞き、「両者にとってベスト」の解決策を模索すること。
そのためにも、

「議論のやめどきを意識する」
「あえてちょっと負けておく」
「まずは相手から先に全部話させる」

この3つ、ぜひ、実践してみてもらえればと思います。

今日はそんな感じです。
チャオ!

はせおやさいさんより
今回のコラムでは「ズルく得をする」コツを紹介してみました。返報性の原理は「ドア・イン・ザ・フェイス」とも言われるそうで、スーパーなどにある「試食コーナー」も、この原理を利用したプロモーション戦略とのこと。ご参考まで。/個人ブログ「インターネットの備忘録」もぜひどうぞ

イラスト:マツナガエイコ

実は日本的!? ブルーボトルコーヒーの「街に長く根付く」海外展開の流儀

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サードウェーブコーヒーの先駆けとして知られる米国生まれの「ブルーボトルコーヒー」。創業者のジェームス・フリーマン氏が「本当に美味しいコーヒーを作りたい」との思いから、2002年に自宅ガレージで焙煎をはじめ、今やサンフランシスコやLA、NYなど米国内で16店舗を展開するまでに。

そのブルーボトルコーヒーが、海外初進出となる日本1号店「ブルーボトルコーヒー清澄白河ロースタリー&カフェ」を2月6日、清澄白河にオープンします。日本での出店・運営を手がけるのはブルーボトルコーヒージャパン合同会社。文化の違いや物理的距離のあるアメリカチームと連携しながら「サンフランシスコの風を感じられるようなカフェをつくりたい」と準備を進めています。

海外拠点と日本拠点が上手くコミュニケーションを図りながら、事業を進めていくのは決して簡単なことではないはず。それを可能にするチーム術とは?アメリカチームと日本チームとの橋渡し役を務める、同社ビジネスオペレーションズマネージャー・井川沙紀さんに話を聞きました。

目指すは「おばあちゃんの家」、ブルーボトルは日本的?

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ビジネスオペレーションズマネージャー・井川沙紀さん

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採用倍率は68.8倍、新社員に理念を伝えるには

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店舗があるのは清澄白河の閑静な住宅街。元々工場だったという建物が雰囲気を漂わせている。

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海外チーム連携は至難の業? ブルーボトル流 意識のすり合わせ

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チームメンバーの変化

井川さんにお話を伺った後、カフェ内を案内してもらいました。清澄白河ではカフェコーナーの数倍の広さのロースタリー(焙煎所)が併設されています。

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室内にある焙煎機

アメリカのショップと同じく、毎日そこで豆が焙煎され、焙煎後48時間以内の新鮮な豆を販売します。カフェコーナーに隣接した部屋では、ロースタリーを併設する全店舗で行われる「カッピング」と呼ばれる作業がスタッフ全員で行われていました。

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カッピングの合間のお時間をいただき、リテールマネージャーの宮崎さんとクオリティコントロールマネージャーのケビンさんにも話を聞いてみました。


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リテールマネージャーの宮崎さん







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クオリティコントロールマネージャーのケビンさん





ブルーボトルコーヒー 清澄白河店 フォトレポート


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2Fのオフィスに併設されたキッチン



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オープンにはみなさんが迎えてくれるでしょう!



(文:池田園子、撮影:橋本直己、聞き手:椋田亜砂美 編集:小沼悟)

王者Yahoo!ニュースは、なぜ自社メディアを始める必要があったのか

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Yahoo!ニュースが月間100億ページビューを突破した──。それを知ったのはこの記事だった。運営の母体はYahoo!ニュース。「Yahoo!ニュース スタッフブログ」というメディアを運営し、 「news HACK」という切り口で自社情報を発信している。日本最大級のニュースサイトを持つヤフーがわざわざ自社メディアをする必要があるのか。素朴な疑問をぶつけてみた。

なぜ自社メディアを始めたんですか?

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Yahoo!ニュース スタッフブログ

たとえ100億PVでも、自社メディア立ち上げ時は不安だらけ

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井上芙優さん。メディアサービスカンパニー ニュース本部 編集部 編集

無色透明だったYahoo!ニュースが、表情を持ち始めた?

「1PR、1Give」、ドヤ顔は絶対しない

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山崎潤さん。メディアサービスカンパニー ニュース本部 企画部 アナリシス リーダー

会議は不定期、ザツダンでOK

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宮本真希さん。メディアサービスカンパニー ニュース本部 編集部 編集

歴史を掘り起こすのは「50年後の編集部員のため」

24時間稼働のニュース業界で、新しい働き方を提示できるか

8_yahoo-team.jpg 聞き手:藤村能光、石川涼子/写真:谷川真紀子

「園で預かる」だけじゃない!──企業や家族と「こどもの未来をつくる」保育士の新しい働き方

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こどもみらい探求社

こどもみらい探求社共同代表の二人。左よりフリーランス保育士の小竹めぐみさん、こどもみらいプロデューサーの小笠原舞さん。

保育士不足がさけばれているなか、問題となっているのが保育士の待遇や労働環境。厚生労働省の調査によると「賃金が希望と合わない」「他職種への興味」「責任の重さ」といった理由から、資格を有していても保育士としての就業を希望しない人も多いそうです。

そんななか、フリーランス保育士の小竹めぐみさんとこどもみらいプロデューサーの小笠原舞さんは、「保育士は保育園以外でも活躍できる!」と既成概念を打ち破り、合同会社こどもみらい探求社を2013年に設立。保育士の専門性を生かした新たな活動に取り組んでいます。

保育の現場で課題を感じ、子どもたちとオトナの架け橋となるべく活動を始めたおふたりに、活動内容やそこにかける思いについてたっぷりお話をうかがいました。

保育士視点で企業活動をプロデュース

小笠原舞さん

小笠原舞さん 合同会社こどもみらい探求社共同代表、asobi基地代表。法政大学現代福祉学部現代福祉学科卒。こどもの存在そのものに魅了され大学在学中に独学にて保育士国家資格を取得。社会人経験を経て保育現場へ。すべての家族に平等な子育て支援をするために、また保育士の社会的地位を向上させるために「こどもみらいプロデューサー」という仕事をつくる。2012年にはこどもの自由な表現の場として“大人も子どもも平等な場”として子育て支援コミュニティ「asobi基地」を立ち上げる。

卒園後も個性を大切にしてもらえるのだろうか?

こどもみらい探求社

小竹めぐみさん 合同会社こどもみらい探求社共同代表、NPO法人オトナノセナカ代表理事。聖徳大学短期大学部専攻科 保育専攻卒業。保育士をする傍ら、家族の多様性を学ぶため世界の家々を巡る1人旅を重ねる。特に砂漠とアマゾン川の暮らしに活動のヒントを得て、2006年より講演会等を通して【違いこそがギフトである】と発信を始める。幼稚園・保育園などで勤務した後、こどもがよりよく育つための“環境づくり”を生業にしようと決意し、園に属さず自由に動くフリーランス保育士の肩書で独立。

保育園がなくても保育はできる

おやこ保育園

「おやこ保育園」の様子(こどもみらい探求社提供)

自分の力でその子らしく育っていくために

文:尾越まり恵 撮影:橋本直己 聞き手・編集:渡辺清美 

サイボウズ式編集部からのお知らせ:
「パパこそ、情報交換が必要だ!」といという声から生まれた「パパノセナカ」。サイボウズ式とのコラボ版を2月6日(金)19:30 - 21:30に、RYOZAN PARK大塚 こそだてビレッジにて開催します。サイボウズ ワークスタイルムービー「大丈夫」「パパにしかできないこと」を酒の肴にパパだらけの安全基地で飲み学びをしませんか? 詳細・お申し込みについてはこちらをご覧ください。


障子の効能──コデラ総研 家庭部(33)

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テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第33回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「障子の効能」。

文:小寺 信良
写真:風穴 江(「tech@サイボウズ式」編集部)

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筆者宅は3LDKの借家だが、そのうち2部屋が和室だ。小さな四つ角に建っているため、南西向きの和室が一番日当たりがいい。角に面した2辺が障子張りの窓なので、トータルでの障子の面積は結構な広さである。

日中はほぼずっと日が差し込むのだが、直射日光が当たると中のものが日焼けするため、ほとんど障子は閉めっぱなしである。だが和紙は明るく光が拡散するので、閉めていても部屋はかなり明るい。

障子にとっては日当たりが良すぎるのもまた考え物で、夏場は糊がパリパリに乾いてしまい、障子紙が剥がれてくる。従って、年に1回はどこかの障子を貼り替える羽目になる。そんなわけで、我が家では結構な種類の障子紙を試してきた。ここではその成果をお話ししたいと思う。

ネコがいると障子の桟を使って上に上ろうとするので、障子が破れたりする。ちょこっと破れるたびにいちいち塞いだり貼り替えたりするのも面倒なので、一時期プラスチックの障子紙を貼っていたことがある。これは障子紙の背面や両面にプラスチックのフィルムを貼り付けることで、破れにくくしたものだ。ネコを飼うお宅に人気があるという。

これはただの紙の障子と違い、伸縮性はまったくない。従って、多少たるみがあっても霧吹きをかければピンとするみたいなテクニックがまったく使えない。また桟に貼り付けるのも糊ではなく、細い両面テープを使用する。まず桟に両面テープを貼り、その上に障子紙を載せていくので、最初に水平垂直をきちんと合わせて貼り始めないと、斜めになって隙間が空いてしまったりする。貼り直しがきかないので、割と難しい部類に入るだろう。

結果的にはネコが飛び込んでも破れないぐらい丈夫なのでその点は良かったのだが、夏の強い日差しで両面テープの糊がダメになり、上の方から剥がれてきてしまった。紙自体に重さが結構あるので、剥がれるときは自重でベロッと一気に剥がれ落っこちてくる。そうなると、もうちょこっとした手当でどうにかなるものでもなく、いったん全部剥がして両面テープの貼り直しである。それほど日当たりがない部屋ならもっと長持ちするのだろうが、うちの環境にはあまり向いていなかった。

ただネコ的には、これは破れないと学習する効果はあったようで、あまり障子にイタズラはしなくなったのは幸いであった。

手間いらずのアイロンタイプ

しばらくは糊で貼るタイプの普通の紙のものを使っていたのだが、先日久しぶりに違う方式のヤツを試してみようと思い、アイロンで貼り付けるタイプを買ってみた。片面が全部糊が付いており、紙を当てて桟の部分にアイロンがけするだけで、簡単に接着できる。特にコードレスアイロンがあれば、手が届かない奥の方は反対側に回って自由に作業できるというメリットもある。

障子の中心から端へ向けて、シワやたるみを伸ばしながら桟に沿ってアイロンがけするイメージである。従って仕上がりもいい。さらにはプラスチックの障子紙とは違って紙には違いないので、霧吹きをかけてピンと張るというテクニックも使える。ただ一部の紙はこの霧吹き技が使えないものもあるようなので、その辺は購入時にチェックしていただきたい。

夏場の日差しで一部剥がれるところも出てきたが、その部分だけもう一度アイロンをかけるとまたすぐにくっつく。貼り替えるときは、またアイロンを当てながら剥がすだけなので、水も使わず、さらに乾燥するまで待つ必要もないので、その点でも楽な障子紙である。

今和室があるお宅がどれぐらいあるのか分からないが、日本の家屋に障子が長い間定着している理由は、和紙が採光と断熱、さらには通気性、吸水性といった条件を満たした素材だからである。一節によれば、障子の断熱効果は厚手のカーテンを超えるという。

実際にうちでは換気する際に、ガラス窓を開けて障子だけにするのだが、暖気が逃げずゆっくりと換気できるので重宝している。また室内中のホコリやニコチンなども吸収する効果があるとも言われており、通気性や吸着性を確保するためには、年1回の貼り替えが推奨されている。

さすがに毎年全部貼り替える家庭は少ないだろうが、いっぺんにやらず、傷んだところから順次貼り替えていけば、結果的に2~3年で貼り替えられることになる。障子はあとから簡単に付けられるようなものでもないので、ないところにはないわけだが、最近になって和室の良さを見直しているところである。(了)


本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


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「Ctrl+Tab」にひそむ「仕事と作業の切り分け」の秘密

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【サイボウズ式編集部より】この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズ外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回はファーレンハイトさんが考える「キーボード・ショートカットの活用から考える仕事に対する考え方」についてです。

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会議に出た際に「あ、この人きっと要領悪いな」と思う瞬間がある。

資料を映すためにパソコンをプロジェクターに接続し、パワーポイントを全画面表示にするために右下にカーソルを当てて、クリックする瞬間だ。「F5を押せよ!」と思う。(環境がWindows、アプリケーションにOfficeを使用しているケース)

会社員ならご存知かと思うが、キーボード・ショートカットという機能がある。機能に対して割り当てられた複数のキーを操作することで、任意の操作を可能にするものだ。有名どころでいえば、Ctrl+Cでコピー、Ctrl+Vで貼付け、みたいなね。

これくらいメジャーなものだとさすがに使っている人も多いけれど、ちょっと難しいものになると途端に使わなくなる人が多い。たとえばアプリケーション切り替えに使用するAlt+tab(めっちゃメジャーだと思うけれど)を使うのではなく、マウスを使ってアプリをぽちっとしていたり。

おそらくソフトウェア開発をしているような技術職の方々は、このあたりにマジヤバのスキルを持っていると思うのだけど、一般的な事務職の面々(特にIT系じゃない業界・業種)はあまり使っていないケースが多い。かくいう俺自身も複雑なショートカット(3つ使うような)は熟知していなくて、自分がPowerPoint、Excel、Wordで頻繁に使うものだけを把握しているにすぎない。

キーボード・ショートカットを敬遠する"マウス病"

今日は"まったく・ほぼショートカットを使っていない人"をターゲットにこれを書いているわけだけど、俺が個人的に思うのは「多くの人は"マウス病"にかかっているなぁ」ということ。GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)は本当に素晴らしくて、というか俺はDOS時代のパソコンは知らないのですが、それでもマウスだけを使って作業をするのは非効率的だ。

キーボードから目も手も離して、マウスをつかんで、カーソル合わせて、カチッ。で、またキーボードに手を戻す。文字に起こしてみるといかに非効率的な作業をしているかが分かります。これがなくなるだけで時間が短縮される上に、肩も凝らない。けっこうマウスは肩こり・腕のしびれの原因ですからね。

俺が新人時代に受けた洗礼なのですが、先輩が作業をしているのを横で見せてもらっていたんですね。そしたらその人がマウスを全然使わないの。キーボードをちゃっちゃかやってるだけで、サクサクと資料ができていく。<圧倒的なスピードの違い>を目の当たりにした。

「できるから良いじゃん」ではなく、「より効率的にできる」ということを目の前で見せてもらったんです。頭をガツンと殴られた気分でした。いわゆるコンサル部隊の人と仕事をしたときもそのあたりの効率を重要視していたのが記憶に残っています。

キーボード・ショートカットは慣れろ

で、使っていない人は単純に「慣れ」の問題なんですよね。1)グラフィカルでない動き方と頭のなかが一致しにくい、2)ショートカットを覚えるのが面倒。これだけだと思う。

マウスと比較して、自分の操作とパソコンの動作がひも付きにくいのは事実なんだけど、「視覚」に頼らずに、"自分の出した命令にパソコンが従っている"と意識すると、少しとっつきやすくなる。ガシガシにコマンドを打つわけじゃないので、しばらく「とりあえず試してみる」だけで自分になじんでくるものだと思います。

そしてショートカットは自分なりに法則を作っていくことです。たとえば俺はCtrlをファイル系の操作、Altをアプリ系の操作みたいなイメージでつかんでいます。「Ctrl+F4はファイルを閉じる」「Alt+F4はアプリごと閉じる」「Ctrl+tabはアプリ内でファイルを切り替え」「Alt+tabはアプリの切り替え」という風に。「+tや+nは新規を開く系」みたいに。

だいたいは頭文字になっている(a=all, s=save/sendみたいに)ので簡単なものはすぐ覚えられると思いますよ。本当に「使ってみる気があるか?」だけだと思います。Excelのシート切り替えとかすげー便利よ。

個人的には右クリックした際に出てくるメニュー・アプリケーションメニューをクリックした際に出てくる「カッコ内のアルファベット」は覚える必要もなく、マウスでクリックする必要もないショートカットの便利さを体感するのにうってつけなので、お試しにすごく良いなぁと思う。

キーボード・ショートカット・オタクになる必要はない

さて、話をまとめにかかりますが、俺はキーボード・ショートカットを使えること自体が仕事のできる人とは決して思っていない。世の中にはショートカット・オタクのような人はざらにいて、そこまで習熟する必要もないと思う。

ただ、仕事を<頭を使って考える>と<作業>という要素に切り分けたとき、なるべく作業(特に単純作業)の時間は減らしたほうがいい。そして、考える時間を多く取る時間配分にした方が良い。そういった意味で、生産的でない時間を極力減らす一助という側面として、ショートカットのようなスキルは意味があるんじゃないんでしょうか。

仕事のできる人は、作業時間を多く取ることで「仕事をした気分になる」こととは無縁な存在のように俺は感じます。

また、別の側面として「いったんできてしまえば後ですごく楽になるのは分かっているが、覚えるのが面倒/やるのが面倒」ということに対して非効率的なことを繰り返す人は多い。たとえば二時間かかってExcelのマクロを組んだとしても、数ヶ月に渡って使い続ける集計の手間を削減できるのであれば、それは価値のある投資でしょう。このあたりはコンサル部隊のお兄ちゃん、お姉ちゃんに教わった仕事のスタンスだったりしました。

ひとえに仕事は「自分が高いパフォーマンスを出せる場で戦う」ことが大事であるのと同時に、「いまだスキルは伴っていないのだけど、やっていくなかで自分の未知のスキルを高めていく」ことが有能な人になっていく秘訣なんだと思う。

ファーレンハイトさんより普段はブログ「My Favorite, Addict and Rhetoric Lovers Only」、Web媒体「AM [アム] 」で恋愛・人間関係について書いています。サイボウズ式のブロガーズ・コラムでは、仕事・チームワークにおける他人との関係性について何らかの価値を提供できたらと思っています。

イラスト:マツナガエイコ

専属社員なし、みんな初体験――無茶苦茶な「NEWSポストセブン」チームはなぜうまくいったのか?

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はじめまして。ネットのニュースを編集することが多い編集者の中川淳一郎と申します。今後、サイボウズ式で「チーム」について書くことになりました。初回は私が所属する「NEWSポストセブン」(NPS)のチームについて。「こんなチームの作り方があったのか!」と当初から驚かされたので、ここに報告します。

寄せ集めチームが5年も続いた?

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NPSは小学館が運営するニュースサイトで、「週刊ポスト」「女性セブン」「SAPIO」「マネーポスト」の4誌の中からネットと親和性の高そうな記事を選び、編集をし直したうえで見出しも独自につけて掲載するサイトです。たとえば「引退の決意固いと言われる浅田真央 1年後に復帰する説登場」なんかがそうです。

ほかにも、「オリジナル記事」と呼ぶこれら4誌とは別の独自記事も存在します。これは「NHK朝ドラ人気が民放各局にも波及 出演者が高視聴率を連発」などですね。

2010年10月に開始し、このたび無事5年目に突入しました。関係者一同「よくぞここまでもったものだ……」と少しだけ感慨に浸っております(多分)。というのも、NPSは基本的には寄せ集めなチームに見えるからですね。現在は1名の専属社員がいますが、元々は専属社員が一人もいないという無茶苦茶なチームだったのです。

専属なし、無茶苦茶なチームの始まりとは?

NPS開始の発端は、私が2010年2月に小学館でネットについて講演をした際に、社員のN氏と名刺交換をしたことです。「今度、話を聞かせて下さい」と言われ、数日後にフレッシュネスバーガーでビールを飲みながらネットの話をしました。N氏はややポカーンとしており「今度もっと詳しい者を呼びますので……」となり、後日紹介してもらったのがK氏です。

このK氏が結果的にはNPSのプロジェクトリーダーになるわけです。その後も何度も会い「ニュースサイトを作ろう」という話がまとまりました。ちなみにK氏は現場の人ではなく管理職のため、雑誌も含め、ほかの仕事もマネジメントする立場です。

以後、K氏は社内でスタッフ集めを開始しましたが、まったく新しいことをするだけに、そしていつ潰れるかは分からないため、専任はつけられません。

アッ、その前にネットビジネスで心がけるべき3箇条 

あっ、その前に、私がネットビジネスをするにあたって心がけることをエラソーに3つ話していたので、そこから紹介します。

【1】頑張り過ぎない
【2】お金はあまりかけない
【3】失敗のニオイがしたら躊躇せず撤退する

ネットというものは、何が当たるかよく分からないんですよ。ここで挙げた【1】【2】【3】は基本的には「あんまり期待しないでうまいこといったら儲けもの」という考えです。

幸いなことに、大型機械を買ったりするワケでもないので、余計な設備投資費はかからない。だったら期待値を低めにし、投資額を極力抑え、いつでも撤退できるようにするのが堅実です。

そもそも、カネをかけまくって作った凝ったサイトであっても、基本的には見出しの力とテキストの内容が集客力につながるので、見栄えだけ良くしても意味ありません。

専属ナシ、兼務から始まるチーム作り

NEWSポストセブン開始前

チームをアサインするのは事業責任者でプロデューサーのK氏、広告担当はN氏(女性セブン担当)。ここがガチッと決まっていたのですが、後がちょっと変わっています。前述の4誌から1人ずつ担当者が来て、記事の編集作業を「兼務」することになったのです。

マネーポストは季刊誌のため、編集作業期間以外は他の週刊誌(SAPIOは当時隔週誌)と比べて余裕があります。編集期間を終え、それほど忙しくなさそうにしていた編集者・S氏とM氏にK氏が「今時間ある?」と聞き、二人は「ありますよ」と。そのまま会議室へ行き「ニュースサイト作るんだけど、手伝える?」と聞かれ、「はい」と二人は答えます。

S氏はマネーポストだけでなく週刊ポストも担当し、S氏に至ってはSAPIOも担当することになりました。技術周りのデザイナーやプログラマーは、女性セブンの会員サイトを担当していたT氏がアサインしました。

ちなみに私は、全雑誌の編集に外部スタッフとしてかかわることに。ただし、年内で撤退し、小学館の社内にネットのノウハウを獲得した人々が社内でネットの知識を広めてください、と伝えていました。

5月からこれらメンバーに加え、広告担当でネットに詳しい別のK氏を加え、どんなサイトにするかの会議を繰り返し、10月にようやくNPSはスタートしたのでした。

NEWSポストセブン開始後

実際に記事を作り出す作業を始めると、すぐに人手が足りないことに気付きます。何せ、1冊読むのに4時間かかる。そこで過去4年間一緒に別のニュースサイトを作ってきたライターのA氏に女性セブンを、Y氏に週刊ポストの作業を手伝ってもらうことにしました。

その時も「Aさんゴメン、来週水曜日から、毎週午後2時に小学館に来れますか? 終了時間は8時くらいです」と言ったら「えっ?」と言われた後「まぁ、大丈夫ッスよ」で2人が組み込まれることに。そして弊社のY嬢には週刊ポストを手伝わせ、なし崩し的に広告営業まで担当してもらうことになりました。というか、Y嬢は広告営業の経験ゼロでした。

「よく分からんが、気付いたらチームに組み込まれていた……」――。全員がそんな状態でした。

忘年会でリーダーが言った一言

10月。オープンとともにすさまじいアクセスを稼ぎ、初月は目標値の3倍、12月まで爆発的に伸びました。当時のネットではゴシップや各界の識者に取材したネタはなかったということ。新聞社が出す社会派の記事とスポーツニュース、各種ノウハウ系記事やネタっぽい記事は多かったのですが、そのすき間のニーズを突けたのが成功の要因でしょう。

そんな折りに行われた忘年会でK氏はこうスピーチしました。

「おかげさまで成果を出せたうえで、こうして忘年会を開くことができました。ここにいる全員が誰一人として欠けてはいけないプロジェクトだったと思います」

私も同感でした。外部の人間も含め15人ほどのチームで、一人一人が初体験ながらも役割を与えられ、見よう見まねで仕事を進めたらあら不思議、うまくいっちゃった! というものでしたが、確かに仕事をしない人が一人もいない稀有なプロジェクトだったと思います。

ただし、このプロジェクト自体は、すでにプロの記者が長時間かけて取材したものをネットに転載するというモデルなので、元ネタが良かったのが最大の要因でしょう。

寄せ集めだったチームはなぜうまくいったのか?

あれから4年、専属の社員が1人つき、オリジナル記事を作るライターが常駐するなど、チームは少しずつ形を変えてきました。NPSのプロジェクトが、それなりにうまいことやったと評価してもらえている最大の理由は

寄せ集めではあったが、向いている方向は同じだった

このことに尽きるでしょう。2010年初夏の段階では「出版社はネットを何とかしなくてはいけない」という焦燥感がある中、NPSに一発トライし、「小学館のプレゼンスをネット上で高めてやれ、広告費を獲得しつつ、書籍の販売支援をやっちまおう!」という共通の目的がありました。

それまで紙の仕事では味わえなかったネット民による「拡散」「コメント」など様々な「反応」を得ることに快感を覚え、ネットニュースの仕事に楽しさを見いだせた――これが「同じ方向」です。

K氏からは件の忘年会の席で「1月からも仕事を続けて下さい」と言われ、今でも継続させてもらっています。外部の人間も含め、普段いる場所はバラバラだけど、心は1つという稀有な体験が今でも続いています。

文/中川淳一郎

2人に1人が働けない農村で、家族を養う仕事を作り出すには?──ボツワナ育自分休暇

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こんにちは。元サイボウズ社員の長山です。現在、育自分休暇制度を利用して、アフリカのボツワナ共和国で2年間のボランティア活動(青年海外協力隊)にチャレンジしています。今回は活動開始から約1年、ちょうど折り返し地点のタイミングでこれまでの活動を振り返ってみたいと思います。

1年たって、まずはひとこと

赴任当初はホームシックで落ち込んだりもしましたが、1年もたつとすっかりボツワナになじんできました。日本に帰ったらボツワナのごはんが食べれなくなるとおもうと……今からボツワナが恋しいです。

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こちらの主食はパリッジ。メイズ(甘くないとうもろこし)の粉を炊いたもの。もちもちしてて美味しい

ボツワナってどんな国? 覆るアフリカのイメージ

ボツワナにきてからはじめての育自分休暇日記なので、まずはボツワナを紹介したいと思います。

ボツワナ共和国は、アフリカ大陸の南部に位置するサバンナの地。日本の1.5倍の面積に人口約200万人(群馬県と同じくらい)が住んでいます。広々とした土地に少ない人口密度で、のびのびした雰囲気です。

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ほぼ真っ平らな地形。砂っぽい土地に草木がもしゃもしゃと点在している

ボツワナ人はおしゃべり好きで、明るく、ちょっと甘えたところもあるけれど、そのぶん他のひとにも親切です。初対面でカタコトの外国人の私にも、とても気さくに話しかけてくれ、すぐに仲良くなってしまいます。カラっとした性格なのかと思いきや意外と嫉妬深い面もあり(男女関係のもつれによる事件がいっぱいあるらしい)、そんなウィットで人間的なところもまた魅力だったりします。

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同僚とイベントスタッフの仕事をしたときの写真。 みんなノリがいい。

ボツワナの経済を支えているのはダイヤと観光、そしてウシ! アフリカのダイヤというとなんだか紛争とか武器とか怖いイメージがありますが、ボツワナはこれまでに紛争の歴史のないとっても平和な国です。

また、野生動物の楽園と高級ロッジがたくさんあります。目の前に広がるサバンナはまるで「ライオンキング」の世界感。たくさんの旅行者がボツワナの大自然に溶け込む高級リゾートロッジで、至福のときを過ごされています。

たとえばボツワナ北部のカサネは、一言で言うとリアルサファリパークです。野生動物保護区に加え、普通の国道にもゾウやキリンが現れます。ただ、ボツワナの人が住んでいる場所の大部分にいるのはウシやヤギといった家畜です。わたしも日々ゾウやライオンに出くわして怯える毎日とはほど遠く、道路の脇で草をむしゃむしゃしているウシやヤギを横目に、ほのぼの通勤するのが日常です。

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人の数よりウシのほうが多い。ボツワナビーフは赤身で美味しいです。

ボツワナは政治が安定しています。ダイヤモンド輸出で得たお金をきちんと福祉や教育にあてていることもあってか、命にかかわるような貧困のイメージを感じることはありません。

もちろん道を裸足でかけまわっている子どもや電気のない村や、調子の悪いプリンターをたたいて直そうとするITオフィサーなど、途上国っぽいところもあります。でも、生活水準は首都に限らず地方の村も想像していたより近代的で、「紛争」「飢餓」「井戸掘り」といったいわゆる”アフリカのイメージ”は、みごとにくつがえされました

「失業率49%」を変えたい 同期隊員とクラフトプロジェクトを立ち上げ

なんとなくボツワナのイメージをつかんだところで、続いては私の活動に触れてみます。

私は現在、ボツワナの村落部の所得向上をめざして、同期の隊員とハンドメイドクラフト商品の製作・販売のプロジェクトにチャレンジしています。ここまでの道のりは楽ではありませんでしたが、ひとに恵まれ、楽しく活動しています。

「ボツワナ国内の都市と地方の経済格差の是正」

これがもともとボランティア要請書に書かれていたミッションでした。ボツワナの農村部では失業率が49%と高い数字で、村に仕事をつくるプロジェクトが求められていました。

2014年の3月にボテティ郡を管轄する役所に派遣され、コミュニティ開発を担当するスタッフとして働きはじめたのですが……。配属先の上司からは「村人の才能をひきだしてほしい」というコメントと担当地域の支援状況が書かれたレポートが手渡されたのみで、具体的なプロジェクトを指示されるわけでありませんでした。配属して1週間くらいは、オフィスでただ椅子に座っているだけの日々でした。

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職場の上司。「コーラとチキンパイ買ってきて」と、よくお使いに出されます。

うーん、このままでは何もはじまりそうにないぞと思い、自作したクラフト(バックや花のコサージュ)をオフィスに持ち込み、「こんなの村でつくって売ってみたらどうでしょう?」と打診してみました。

というのも、私の担当する村では過去に、村人たちの所得向上を目指したソーイングやクラフトのプロジェクトをやっていたのですが、それがイマイチ盛り上がっていないようだったからです。

何がうまくいかない原因かはわからないけれど、その原因を念入りに調べることに時間をかけるよりも、まずはある程度の仮説から目に見える商品をつくり、プロジェクトとして走らせながらトライアンドエラーを繰り返したほうが効率がいいと考えました。そこで「自分のような初心者でも簡単につくれて、観光客やボツワナ人に売れそうなもの」をテーマに、試作品をつくってみました。

するとオフィスの女性たちに受けたんです。上司の一声で「やりましょう!」となりました。

こうしてプロジェクトの方向性は決まったものの、簡単には進みません。クラフトの作り方を教える女性が住んでいる村は、役所のあるレタカネ村から約170kmも離れています。村には電気がなく、彼女たちは現地語しか話せずコミュニケーションがとれません。

というか、英語もあまり得意ではない私は、役所のオフィサーとの会話も当時は簡単にはいきませんでした。そんな状況でしたが、同期の日本人の隊員やボツワナ人の同僚に助けられながら、なんとかクラフト制作のワークショップを開催しました。

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はじめてのワークショップ。バックのつくり方を教えているところ。

「まだ来たばかりなのに頑張りすぎ」な私を救ってくれたもの

このとき、ボツワナにきてから約3ヶ月、仕事をはじめてから2ヶ月くらいの時期でした。ひとことでいうと、「まだ来たばっかりなのに、頑張りすぎ」ました。

そのころはほかの仕事も重なり、1ヶ月くらい自宅に帰れず、電気なし生活を送っていました。慣れない環境での責任のある仕事、自分では到底たちうちできなさそうな根深いボツワナの課題に気づいて打ちひしがれるなど、心身ともにまいってしまいました。

そのときに助けてくれたのが、サイボウズのみなさんから頂いたメッセージカードでした。

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ボツワナに旅立つ日にサイボウズ社員のみなさんから頂いたメッセージカード

「ワークライフバランスに悩んだら・・・」

「ワークもライフも楽しむことです。楽しいバランスは皆違います。そして明日は今日とも違います。一年後はまた違います。自分は変わります。環境も変わります。 “生き残るものは変化できたものだけだ byダーウィン”」

「日本に帰りたくなった時」

「成長とは自分を変えること。環境を変えるのではなく、自分を変えて成長しろ! でも無理するな。あきらめること!\(- o-)/」

自分も、周りも、まだ変化の途中。今できないことはあきらめよう最低限のできることを積み重ねていけば、少しずつ変化して今とは違う結果になるはず。 みなさんの言葉に助けられ、前向きに考えられるようになりました。

「家族を3カ月養うお金」が稼げるように

その後、同期の隊員が村の女性向けにビーズアクセサリーのワークショップを開催し、商品の幅がぐっと広がりました。そこで本格的にブランド「Gift from Botswana(ギフト フロム ボツワナ)」をたちあげ、ロゴやカタログ、Webサイトを作り、販売促進に力をいれていきました。

4ヶ月後に首都ハボロネで行われた見本市では、計141点、約5万円分の商品を売り上げました。まずは順調なスタートでしたが、「ボランティアが帰国したあとも持続可能な販路と生産販売の仕組みをつくる」というのが難しいです。もちろん仕組み化するものは販売だけでなく、商品の生産管理や材料の調達も。試考錯誤の毎日です。

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南部アフリカの伝統的なテキスタイルでつくった布ビーズのアクセサリー

もう1つやったことがあります。この取り組みをボツワナから日本へも広げたいと思い、日本向けの活動紹介サイトを作り、2015年からはアクセサリーのネット販売もはじめました

私はマーケティングアイディアを考えるのは得意ですが、物品管理や業務コーディネートが苦手。リーダーシップを発揮してプロジェクト運営のしくみづくりをしてくれるのは、同期隊員です。異なるバックグラウンドの彼女と仕事をするのは楽しく、自分にない新しい発想や仕事の進め方を学びました。これは、会社を離れて得られたもののひとつです。

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同期隊員の圓山さん。ビーズ商品の開発と、プロジェクトの仕組みづくりを担当しています。

約9ヶ月の活動で、村の女性たちだけでクラフト商品をつくれるようになり、ひとりあたり13,000円ほどを稼ぐことができました。私が支援している村は、全体が政府の生活保護を受けていて、1家庭あたり月3,900円ほどを政府から支給されています。つまり彼女たちは「家族を3ヶ月養うお金」を稼いだことになります。

村では現金の支給以外にも食料品が現物支給されているので、このプロジェクトの収入だけで生活費をすべてまかなうレベルに達するまではまだ長い道のりですが、まずは村の方々が自分たちの力で稼ぎ、外の世界とつながる」ということが大事な一歩だと思っています。

(後編は2月20日に公開予定です。)

文:長山悦子、編集:吉田将来


これまでの育自分休暇日記
「長山、会社やめるってよ」 イケダハヤト×アフリカで働くことを選んだ4年目社員
育自分休暇日記──4年目社員、アフリカへ。会社を辞めて気付く「常識」のちがい

最速で新しい職場環境に適応するための技術

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【サイボウズ式編集部より】この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズの外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回は、日野瑛太郎さんによる「新しい環境にすばやく適応できる人がおさえるべきポイント」について。

異動や転職といった事情で、今までいたチームを離れて新しいチームに移らなければならなくなることがあります。環境が変われば、また新しくいろいろなことを学習し、環境に適応していかなければなりません。仕事のやり方を覚えることはもちろん、人間関係も基本的には最初から構築しなおす必要があります。

僕が以前働いていた会社は異動がかなり頻繁にある会社だったので、僕自身何度かチームを移る経験をしています。すばやく新しいチームに適応できた異動もあれば、なかなか新しいチームになじめずに苦労したこともあります。新しい環境へすばやく適応ができると、自分が嬉しいだけでなく新しいチームのメンバーも喜んでくれます。すばやく環境に適応することはとても重要です。

世の中には、「環境の変化」にすばやく適応できる人となかなか適応できずに苦労する人がいます。両者の違いはいったいどこにあるのでしょうか。僕自身の経験や、あるいはチームに素早く溶け込むことができた人を分析してみると、新しい環境にすばやく適応できる人は一定のポイントをおさえていることがわかります。今日はそんな「最速で新しい環境に適応するための技術」について考えてみたいと思います。

まず把握すべきは「人間関係」

チームを移った際に、一番最初にやらなければならないことはなんでしょうか? 仕事のマニュアルを読むことでしょうか? それとも、プロジェクトの全体観を把握することでしょうか?

どちらも大切なことではありますが、すばやく新しい環境に適応したいのであればそれ以上に大切なことがあります。それは、新しいチーム内の人間関係を把握することです。名前や役職はもちろんのこと、各メンバーがチーム内ではどのような「キャラ」なのか、みんなから頼られている人がどの人で、(いればですが)要注意人物はどの人なのか、といった情報は可能な限り素早く・正しく把握する必要があります。

仕事そのものよりも人間関係の把握を優先して進めなければならない理由は、それがそもそも仕事をはじめるための前提になるものだからです。余程の能力がない限り、新人は誰かの力を借りずに完全で一人で立ち上がることはできません。質問をすべき時にそもそも誰に聞けばよいのか、どのような質問の仕方をすればよいのかといった勘所は、人間関係を把握することではじめてわかります。人間関係の把握は、チームで働くための大前提だと言えます。

そうは言っても、どうやって把握すればよいのかわからなくて困るという人もいるでしょう。前のチームのメンバーなど自分のよく知っている人が新しいチームのメンバーを知っているのであれば、その経路で情報を入手するのが手っ取り早いです。そのような共通の知人がいないのであれば、新チームの中で自分と年齢や立場が近い人をひとり捕まえて、ざっくりと聞いてしまうという手もあります(たとえば「◯◯さんって、どういう人ですか?」というように)。必ずしも確度が高い情報が得られるとは言えませんが、過去にやりとりされた社内メールやSNSなどを見てみるというのも時には役に立つかもしれません。

わからないことは「自分で調べること」と「人に聞くこと」に分類する

人間関係を把握したら、いよいよ仕事内容を覚える段階に進みます。前のチームでやっていた仕事と近い仕事を任せられたというのであればあまり問題はないかもしれませんが、チームが変わることでまったく種類の違う仕事を一から覚えなければならなくなることも少なくありません。

そういう場合は容易に「わからないことばかり」の状態に陥ります。会議で出てくる用語の意味がわからない、手続きの方法がわからない、みんながすごいと言っていることの何がすごいのかがわからないなどなど、新しい環境には「わからないこと」がほぼ必ず存在します。

新しい環境に素早く適応したいのであれば、「わからないこと」をそのままにしておいてはいけません。わからないことに出会ったら、とりあえずわからなかったことをメモし、あとで必ず解決させます。これをどれだけ意識的にできるかが、新しい仕事を素早く覚えられるかに関わってきます。

「わからないこと」に出会った場合、解決方法は大きく2つに分かれます。「自分で調べる」か「人に聞く」かです。ある「わからないこと」を解決する際に、どちらを選択するかは重要です。ググればすぐにわかることを人に聞いてばかりいると、鬱陶しい人のように思われます。一方で、チームの独自ルールや用語などは人に聞かなければ絶対にわかりません。こういう情報は人に聞いて解決しないと著しく時間をムダにします。

用語などがどちらに属するものなのか判然としない場合は、とりあえず最初にググってみるというやり方がおすすめです。情報が出てこなかったり、世の中一般で使われているニュアンスとチームでの使われ方が違うようであればそれはほぼチーム独自の用語です。その場合は人に聞いて解決しましょう。また、質問はある程度まとめて一気にするようにすると、相手に鬱陶しく思われずに済みます。

最初の信頼獲得がカギ

これは人間関係一般について言えることですが、最初に形成された印象はなかなか変わるものではありません。そういう意味では、新しいチームに入ってから最初にする仕事はかなり重要だということになります。最初に任せられた仕事で周囲の期待に応えることができれば、チームの中で一定の地位を築くことができます。逆にいい加減な仕事をすると、その負の印象がずっと定着します。最初の信頼獲得が今後の働きやすさを決めるといっても過言ではありません。

ですので、新しい環境で一番最初に取り組む仕事には全エネルギーを集中するだけの価値があると言えます。どんな仕事にも全力で取り組むべきだという考え方には、僕は賛成しかねるのですが(仕事の重要度に応じて出力するエネルギーを適宜調節することは燃え尽きを防ぐためにも重要だと個人的には思います)、それでも最初の仕事ではエネルギーの出力を最大にしなければなりません。「環境が変わったばかりだからうまくできないのはしょうがない」という言い訳は、長期的には自分を苦しめることになります。

みなさんがすばやく新しい環境に適応し、チームメンバーの最初の信頼を獲得できることを祈っています。

日野瑛太郎さんより
普段は「脱社畜ブログ」というブログで、日本人の働き方の記事を書いています。このブロガーズ・コラムでは、チームワークという観点から働き方について新たな視点を提供できればと思っています。

イラスト:マツナガエイコ

【葛藤】知恵をシェアしてしまう若手たち……。トップクリエイターが悩む広告業界の変化

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株式会社東北新社取締役の中島信也さん(左)、有限会社谷山広告の谷山雅計さん(右)

サイボウズが2014年12月1日に公開した、働くママをテーマにしたショートムービー『大丈夫』。そしてそのスピンオフムービー『パパにしかできないこと』を2015年1月5日に公開しました。SNSを中心にさまざまな立場の方から多くの意見が寄せられ、賛否両論あることからも話題を集めています。

前回の記事ではムービー制作にメインで携わった3人の働くママとともに、クリエイティブに携わった2人のベテランクリエイターに、ムービー制作の舞台裏を語っていただきました。

今回は若手クリエイターの働き方や子育てについて、ムービー制作プロジェクトを担当したコーポレートブランディング 部長大槻幸夫が、有限会社谷山広告の谷山雅計さん、株式会社東北新社取締役の中島信也さんにお話を伺いました。


「俺の背中を見て学べ」では若手はついてこない

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クリエイティブディレクションとコピーライティングを担当した谷山雅計氏。これまでの実績に「Yonda?」(新潮社)、「日テレ営業中」(日本テレビ)、「ガス・パッ・チョ!」(東京ガス)、「TSUBAKI」(資生堂)、「マルちゃん正麺」(東洋水産)がある

子育てから得られる経験は何物にも代えがたい

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クリエイティブ監修の株式会社東北新社 取締役 中島信也氏。日清食品カップヌードル「hungry ? シリーズ」のCMで、日本人として初のカンヌ国際広告祭グランプリを受賞。サントリー燃焼系アミノ式の「グッバイ、運動。シリーズ」。ホンダ ステップワゴン 「こどもといっしょにどこいこう。」(1997- 2004年)。NOVA 「異文化コミュニケーション」 :宇宙人役で声の出演もしている

チーム内ポジション争いから、皆で協力し合うチームへ

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(取材:池田園子、撮影:谷川真紀子、編集:小沼悟)


広告クリエイターの働き方を考える:
【反省】男性クリエイターはわかってなかった、働くママの「本当の気持ち」
広告業界で働くママたちが描く「働くママのリアルな気持ち」

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