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「市況かぶ全力2階建」常連の集合知とゆるやかチーム感は日本のネット空間の「よいところ」なのかも

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市況かぶ全力2階建」(市況かぶ)――。株式投資をする人であれば、見ている人も多いはず。何らかのテーマに沿ったツイートを集約・編集した記事が公開され、多くの反響を呼んでいます。根拠となる数字や鋭い洞察力が反映されたツイートやTwitter上で見知らぬ人同士のやりとりも多く記事になっています。

各種SNSで最も「ゆるく」周囲とつながれるTwitterでは、“独り言のようにつぶやいた”感想に予期しないリプライや反応が集まり、同じ興味を持つ見知らぬユーザーの意図しない交流が始まります。そこには知の交換を中心とした集合知や良質な議論を生み出す"ゆるい関係性"があるように見えます。

市況かぶを取り巻く常連読者間の「ゆるいつながり」や「弱い絆」は、新しいチームの形を示しているのかもしれません。サイボウズ式では市況かぶの常連さんを招いた座談会を実施してみました。聞き手は編集部 社会人インターン生のかにみそです。

市況かぶに初採用された日は「記事を何度も読んでニヤニヤした」

都内某所。市況かぶの記事にツイートがたびたび取り上げられる「常連さん」8人が集まりました。金融、ITから個人投資家、ベンチャー経営者、フリーターまで、その職業はさまざま。初対面の人たちも少なくありませんが、普段お互いのツイートを眺めていることや市況かぶの常連という仲間意識から、早々に打ち解けている印象でした。

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「市況かぶ全力2階建」のサイト

無邪気かつ嬉々として、当時の思い出を振り返る人が少なくありません。しかし、何度か採用されるうちに、記事を構成する1ツイートとして採用されるだけではなく、さらなる高み(?)を目指したくなるようです。

奇をてらってもダメ? 市況かぶで採用されやすいツイートとは

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市況かぶ 常連読者の西山圭さん。座談会で唯一の顔出しOKの西山さんは、チケットストリート株式会社の代表取締役会長だ

常連のみなさんはそれぞれ独自情報を収集し、ツイートしていました。市況かぶの記事では毒とセンスの混じったツイートだけでなく、数字や各種データを絡めた「徹底して調べる担当」によるツイートも目立ちます。パッと思いつきで適当に投稿できる内容ではなく、さまざまな情報から事実を裏取りし、慎重に投稿されたものです。

情報源として挙がったのは、有価証券報告書や適時開示に加え、東京証券取引所や金融庁、各企業、業界団体のサイト、EDINET、帝国データバンク、Yahoo!掲示板、2ちゃんねる、Twitterが多いようです。

特に誰かから頼まれたわけではないけれど、使命感や真摯な姿勢をもって有益な情報をツイートしようとはげむ常連たち。不確実な情報をウェブという大海へ発信するわけにはいかないというある種の強い責任感も感じさせます。属性や肩書もバラバラな人々ながら、ここにはチームのような連帯感を感じるところでした。

「ウェブは残念」と言い切るのはよそう

話は「管理人の正体」についても及びました。8月15日にアップされた記事「市況かぶ全力2階建の管理人が謎の人物である8つの理由」では、多方面から寄せられた情報をもとに管理人予想が行われています。ネット上で市況かぶの管理人は「気になる人物」です。

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座談会の後に思い出したのは「ウェブ進化論」騒動でした。2006年に出た『ウェブ進化論――本当の大変化はこれから始まる』の著者 梅田望夫さんは、ネット利用者の増加・検索技術の進化によってネット上に不特定多数の人々の「知」が集積するようになると指摘し、事象を好意的に唱えました。メディアや一部の選ばれた人だけではなく、誰もが表現者になれる可能性がもたらされたと論じたのです。

しかし2年後、梅田さんはあるブログサービスのコメント欄について、下記のように自身のTwitterで発言。当時の主張とは正反対の趣旨の発言をして、ネットでは炎上騒ぎも起きました。

「(中略)バカなものが本当に多すぎる。本を紹介しているだけのエントリーに対して、どうして対象となっている本を読まずに、批判コメントや自分の意見を書く気が起きるのだろう。そこがまったく理解不明だ」(原文ママ)

別のインタビューで「英語圏のネット空間と日本語圏のネット空間がずいぶん違う物になったことが残念」と語ったことも議論を巻き起こしました。ここで「残念」と評価されるウェブの代表格といえば2ちゃんねる、引いては2ちゃんねるまとめサイトです。梅田さんは実名中心の生産的な批判より、匿名で行われる悪意ある罵倒のほうが圧倒的に多く、結果的に日本のウェブのレベルを下げることになり残念だと主張していたのです。

しかし、現在マーケットを変動させるほどの影響力を持つ市況かぶの前身は2ちゃんねるまとめサイトです。市況かぶが実証したのは、ウェブ上の匿名の書き込みは、ノイズや落書きとして扱われるものだけではなく、1つ1つが集まると集合知になり得ることもあるという事実です。それが市場のガバナンスを確立するのに欠かせない存在に進化しているなら、日本のネット空間には「よいところ」もたくさんあるのではないかと感じさせられます。

アフタートーク:市況かぶの常連は「ゆるやかなチーム」なのか

市況かぶの常連さんに話を聞き、「ゆるやかな連帯感」が良質な集合知となり、新しい価値を産むことがわかってきました。企画担当のかにみそさんとのアフタートークを通じて、もうこのテーマを深堀りしてみようと思います。

「ひとつの場所にとどまって、いまある人間関係を大切にして、コミュニティを深めて成功しろというタイプのと、ひとつの場所にとどまらず、どんどん環境を切り替えて、広い世界を見て成功しろというタイプのもの。村人タイプと旅人タイプです」(『弱いつながり』P.54より引用)
「観光客は無責任です。けれど、無責任だからこそできることがある。無責任を許容しないと拡がらない情報もある。(中略)無責任なひとの無責任な発言こそが、みなさんの将来を開くことがあるのです」(同P.52より引用)

アフタートーク:一般意志2.0が反映されるようになった

文:池田園子/撮影:橋本直己


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