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続けられた理由は「仕事が楽しくなかったから」──カーネルハッカー・小崎資広(3)

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サイボウズ・ラボの西尾 泰和さんが「エンジニアの学び方」について探求していく連載の第4回(毎週火曜日に掲載、これまでの連載一覧)。

富士通のエンジニアとしてLinuxカーネルの開発に参加されている小崎資広さんへの「インタビュー:その3」。Linuxカーネルという巨大なソースコードと日々戦っている小崎さんのお話は、きっと「エンジニアの学び方」の参考になるはずです。

本連載は、「WEB+DB PRESS Vol.80」(2014年4月24日発売)に執筆した「エンジニアの学び方──効率的に知識を得て,成果に結び付ける」の続編です。(編集部)

文:西尾 泰和
イラスト:歌工房

前回はコードリーディングの手法をどうやって習得したのかについて伺いました。今回は「どうしてLinuxカーネルを学んでいこうと思ったのか」というところを深堀りしていきたいと思います。

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Linuxを選んだのは前向きな理由じゃないんですよ

俺プロジェクトは「ひとつでは多すぎる」

◆     ◆     ◆

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「仕事をサボって勝手にやってみたらうまくいった」「息抜きでやってるうちに詳しくなった」という逸話で、世の中の真面目すぎる人たちは少し気が楽になるのではないでしょうか。これを「倫理的によくないことだ」と考える方もいるでしょう。しかし「勝手にやる」の反対は「言われたことしかしない」です。こちらのほうが良いのでしょうか?

勝手に自分プロジェクトをやるなどの「明文化された正規の仕事以外を業務時間にやる行為」は「アンダー・ザ・テーブル」、「ブートレッギング」(密造酒作り)、「アングラ研究」、「シャドーワーク」などと呼ばれていて、いろいろな企業で行われています。この種のキーワードで検索してみれば、多くの事例が見つかるかと思います。

また、競争力の強い企業ではシャドーワークをやる社員が多く、その社員は年収が高い傾向がある、という研究結果もあります[2]。

小崎さんの場合は、シャドーワークに挑戦し、成功したことで「カーネルに詳しい人」という社内の評判を得ることができました。その結果、カーネルに関係しそうな課題が集まってくるようになり、堂々と業務時間を使ってカーネルハックを行えるようになりました。そして、この仕事を通して小崎さんの中にカーネルの知識が蓄積され、それによって小崎さんの転職市場での価値が上がったわけです。いわば給与とは別に「スキルを磨く時間」というボーナスをもらったようなものです。シャドーワーク成功の報酬として妥当なものだと思います。

次回は「どうしてコードを読もうと思ったのか」と「どうやって新しい言語を学ぶのか」について聞いてみたいと思います。(了)


[1]「人生複線の思想──ひとつでは多すぎる」(外山 滋比古/みすず書房/2014年)
[2]「シャドーワーク──知識創造を促す組織戦略」(一條 和生、徳岡 晃一郎/東洋経済新報社/2007年)


「これを知りたい!」や「これはどう思うか?」などのご質問、ご相談を受け付けますので、筆者、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


謝辞:

Web+DB Press編集部(技術評論社)のご厚意により、本連載のタイトルを「続・エンジニアの学び方」とさせていただきました。ありがとうございました。

インタビュー会場として、「イトーキ東京イノベーションセンターSYNQA(シンカ)」にご協力いただきました。ありがとうございました。


この記事を、以下のライセンスで提供します:CC BY-SA
これ以外のライセンスをご希望の場合は、お問い合わせください。


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