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人類に残された時間は残りわずか──U理論・中土井 僚(7)/西尾 泰和の「続・エンジニアの学び方」

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サイボウズ・ラボの西尾 泰和さんが「エンジニアの学び方」について探求していく連載の第28回(これまでの連載一覧)。U理論の伝道師、中土井 僚さんにお話を伺うシリーズ(7)です。

本連載は、「WEB+DB PRESS Vol.80」(2014年4月24日発売)に掲載された「エンジニアの学び方──効率的に知識を得て,成果に結び付ける」の続編です。(編集部)

文:西尾 泰和
イラスト:歌工房

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◆     ◆     ◆

「テクノロジーとイノベーション」を「テクノロジーが生物になる」と主張する本だと紹介したのは、キャッチーな言葉だけ取り出してしまったように思うので少し補足します。

ブライアン・アーサーの著書「テクノロジーとイノベーション」(原題:「The Nature of Technology: What It Is and It Evolves」)と、彼が参考にしたケヴィン・ケリーの「テクニウム」(原題:「What Technology Wants」)では、テクノロジーの発展を生物の進化のアナロジーで考えています。

ケヴィン・ケリーは、生命の進化には構造的必然性・歴史的偶発性・機能的適応性の3つの力が働き、テクノロジーの進化には構造的必然性・歴史的偶発性・意図的開放性の3つの力が働く、と述べました。つまりこの2つは3つの働く力のうちの1つが異なるだけで、共通の構造があるというわけです。ここで言う「開放性」は組み合わせることが可能である性質です。原題のWhat Technology Wantsの答えとしては、生物は環境に適応して生き残ることを欲し、テクノロジーは他のものと組み合わせて製品となることで生き残ることを欲したわけです。

生物に関しては、既存の遺伝子に変異を与え、組み合わせて個体を作り、その個体が環境に適応できるか「自然淘汰」というテストが行われ、パスした個体が次の個体を作ることで改善のサイクルが回ります。

同じように技術に関しても、既存の技術知識に変異を与え、組み合わせを作り、その組み合わせが「役に立つか」というテストが行われ、パスした組み合わせを元にまた新しい組み合わせが作られることで改善のサイクルが回ります。

ケヴィン・ケリーは、このテストが社会の集団的自由意思によって行われると考え、ブライアン・アーサーは商業的に利用可能であるかどうかによって行われると考えました。この市場による商業的テストには、既に広く使われている部品を改善するのは有利、多様な組み合わせが可能な(開放性が高い)部品を作ると有利、などの特徴があります。それによって、多様な組み合わせが可能な部品が作られ改善されていく、これがテクノロジーが発展するプロセスだというのがブライアン・アーサーの主張です。

で、そのような部品が増えていくと、可能な組み合わせパターンは増えていきます。探索範囲が広がるのに、人間の探索能力は大して変わらないので、探索範囲外の領域が増えます。既存の広く知られた枠組みに従って探索している人たちは狭い範囲に密集してしまいます。その枠組みを外すと競合のいない広いブルーオーシャンが広がります。「意外な組み合わせが、市場に出してみたら予想外に好評」ということが起こりやすくなるわけです。(つづく)

参考文献:
[1]「テクノロジーとイノベーション」(W・ブライアン・アーサー、みすず書房、2011年)
[2]「テクニウム」(ケヴィン・ケリー、みすず書房、2014年)


「これを知りたい!」や「これはどう思うか?」などのご質問、ご相談を受け付けています。筆者、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


謝辞:
◎Web+DB Press編集部(技術評論社)のご厚意により、本連載のタイトルを「続・エンジニアの学び方」とさせていただきました。ありがとうございました。


この記事を、以下のライセンスで提供します:CC BY-SA
これ以外のライセンスをご希望の場合は、お問い合わせください。


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