
サイボウズは、2014年12月に働くママをテーマにしたムービー『大丈夫』、2015年1月にはそのスピンオフムービー『パパにしかできないこと』を公開し、各方面から賛否両論、様々な意見が寄せられたことで話題となりました。
そして2015年12月、今度は仕事と育児に奮闘するパパをテーマにしたドラマが公開されました。主人公の片岡を演じた田中圭さんもそんな娘を持つ父親の一人。撮影終了後、田中圭さんに、ドラマ制作プロジェクトを担当したコーポレートブランディング部長 大槻幸夫がお話を伺いました。
まるで他人の夫婦の会話を覗き見る感覚だった
長期間にわたるドラマ撮影ありがとうございました。特に前半は猛暑の中昼間からエアコンを切っての撮影、大変だったと思います。
今回のドラマでは仕事と育児の両立をパパ視点で描きました。田中さん自身は主人公の片岡についてどのようにお感じになりましたか?
実際の育児は、ほとんどの家庭でお母さんがメインでやっていると思うんです。片岡夫妻ももちろんそうで、片岡本人は仕事と育児を両立しているつもりでも、現実には休みの日に息子と遊ぶことしかできていない。でも、育児も仕事もどちらも頑張ろうという「思い」はある。そういった片岡の感情がすごく好きで、どういう風に演じていこうかと入る前から楽しみにしていました。
なるほど。演じていただいて印象的だったシーンはありますか?
奥さまとの確執といいますか……思いのほか関係が冷え切っていたのは印象的でした(一同笑)
どのご家庭にもああいった局面はあるかなという感じがしますね。
そうなんですかね。他の家庭の夫婦二人っきりで行われる会話を覗き見ることはないので、見てはいけないものを見ているような気持ちになって、どきっとしました。
ドラマの片岡夫妻のように、離れ切らない距離感でお互いの疲れや思いがすれ違ってしまっているご家庭も少なくはないと思います。ただ、ちょっと新鮮ではありましたね。
良かれと思ってやったことが奥さまを怒らせてしまうことは男性にありがちに感じました。
やっぱりお父さんは常に子供と一緒にいられるわけじゃないので、どうしてもお母さんより甘くなりますよね。ちびちゃんとお母さんのペースとちびちゃんとお父さんのペースが多分違うから、そこをわかった上でお母さんとお父さんのペースがバランスよくできたらいいんだろうなと思います。
失う前に気づけるようになりたい
最初は頼まれごとをしても「いやあ、俺は……」と言っていた片岡ですが、最終的に相手や周りの気持ちを汲みとっていけるように成長しました。もう一つのテーマであるビジネスマンとしての片岡はいかがですか?
片岡はきっと根はすごくいい人で、仕事もでき人柄も含めて周りの人に信頼されているんだと思います。だからこそ何かを頼まれた時に悪気なく「えー嫌だよ。だって俺の仕事じゃないでしょ?」と言ってしまう。
それは裏を返せば、現場を見て自分の知らないところでの苦労やそれぞれの立場に触れた時に、素直に反省し取り入れていけるということでもある。のちのち出世していくんだろうなと思います。
職場での気づきとご家庭での気づきってどちらも「相手の気持ちに寄り添う」という点で結構似ていると思うんです。今回のドラマでそういったことを描きたいと思っていたのですが、何かお感じになったことはありますか?
仕事仲間と違って、家族の関係は切っても切れないじゃないですか。家族の絆は大切で、本当は一番に考えなければいけないものなのに、近すぎてつい甘えてしまう。
家族をはじめとする人とのつながりの大切さを失う前に気づけるようなすごい人間に私はなりたいと思いました。

思い出作りが育児に繋がっていくと信じている
サイボウズの社長の青野は「イクメン社長」ということで結構メディアに出ているんです。現在も第三子が生まれて時短勤務をやっています。
最近の「イクメン」というトレンドを田中さんはどうお考えですか?
「トレンド」って言われるとあまりピンとこないです。父子家庭の方もいますし、昔から「イクメン」と呼ばれるような人はたくさんいたと思います。そういった家庭における父親のあり方って流行り廃れがあるものではないと思うんです。
ぼく自身もちびちゃんがいるので、育児の苦労だったり楽しさだったりを共感できる人たちが「イクメン」という感じですね。
田中さんご自身は、結構育児をされているんですか?
いや、そうは思っていないです。そもそも「育児」って何なんですかね……。僕ができることって休みの日に家族とどこかへ出かけることやちびちゃんと二人でちょっとお散歩に行くことなんです。やってないと声を大にして言いたくないし、かといってやっているとも言えないなと。
お休みも不定期だから難しいんですよね。でも休みの日には家族と一緒に思い出作りはするようにしています。育児というよりは一緒に遊んでいる感じですね。それが結果として育児に繋がってくれると信じています。
なるほど。育児の方針をご夫婦でお話しされることはありますか?
あまりないですね。幼稚園や小学校の進路など、ちびちゃんの環境が変わる時はもちろん相談しますけど、今はまだ子供が小さいのであまり気にしていないです。でも今後出てくると思います。

パパ友っていらっしゃったりするんですか?
パパ友というより、友達がパパになっている感じです。ただ友達としての関係が強いですね。子供を介して出会ったお父さんたちとは、あまり話していないです。お母さん方はよく家に来ているんで挨拶はしますけど。
男性って女性と比べるとあまり社交的じゃないっていいますね。
そうなんですかね。女性は本当にすごいじゃないですか。噂しか知らないですけども、名前をいうだけで「あー、〇〇さんはね」とすごく詳しかったりとか。僕は物心ついた時からお芝居の世界にいるので、おっかないと思っちゃいました。
育児や子育ての話はお友達とされるんですか?
子供のことも話しますけど、やはり友達という方が強いです。あと奥さんのいないところでしか話せないような話はします。
ちょっと聞いてみたいです(笑)
いえいえ、別に。奥さんがいないところで奥さんを褒め称える会をね(笑)
ものすごく大事ですね。必ず奥さまに伝わりますから。
ドラマの話に戻りまして、オダギリジョーさんとの初共演はいかがでしたか?
僕はひとりで興奮していました。「オダギリさんだ!」って(笑)
仕事と育児がどちらも楽しくなるように
前回作ったムービーは西田尚美さんが演じられたお母さんが主人公の働くママ向けのものでした。でもYouTubeのアクセス解析をみると、実は女性より男性の方が見ているんですよ。でもコメントはせず、自分の心の中にそっと思いをしまっている。
最後になりましたが、ドラマを見てくれるであろうパパ達に向けてメッセージをいただけますか。
もちろん育児も仕事も大変だと思うんですけど、自分のために仕事をして、自分のために家族を愛して、それが結局家族のためになり、広がっていく感覚が僕は好きなんです。
大変なこともいっぱいあるけど、楽しいことも絶対あるし、自分を支えてくれる人たちのことを考えるとおのずと笑っていられるのかなと思います。片岡夫妻が最終的にどうなるのかはわからないですけど、このドラマをみて「うちの家族はもう少し互いに優しいな」「奥さんともう少し話してみようかな」と思っていただけると嬉しいです。
前回の西田尚美さんのムービーもそうですが、実際に似たような経験がなくても、子育てしている人は共感でき、どきっとするような瞬間や感情がこのドラマにはいっぱい描かれていると思います。この作品を見て自分の経験を思い出してくれてもいいし、自分が同じ立場になったらと想像してくれてもいい。
とにかくみなさんの仕事と育児がどちらも楽しくなるように願っています。