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僕らは「受け身で仕事したくない」っていうエゴで集まっている──TABIPPO流・組織づくりのヒント

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「カイシャは実態のないモンスターである」。

サイボウズ代表取締役社長の青野慶久は、著書『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』で、そう記しています。

ただ、すべてのカイシャが恐ろしくて、制御できないモンスターというわけではありません。なかには、愉快で楽しく、個人のチャレンジを後押ししてくれるカイシャも存在するはず。

そこで、サイボウズ式第2編集部は、愉快なモンスター(カイシャ)を探す旅に出かけました。従業員十数名の小さな会社が、どうやって1万人以上の旅好きを集める野外フェスを開催するに至ったのか。TABIPPO組織づくりの謎に、サイボウズ式第2編集部のメンバーが迫ります。

愉快なモンスターたちの話に耳を傾けてわかってきたのは、「自由と自立」の切り離せない関係性でした。

「みんなの顔が同じビジョンに向いているんだなって」

井手
井手
司会の井手です。サイボウズ式の読者と編集部員が集まってチームを組んだ「サイボウズ式第2編集部」のメンバーです。

今回の企画は「サイボウズ式第2編集部と愉快なモンスター」。愉快で楽しい、そして組織として魅力的な会社にお話を聞いていきます。

第1回のモンスターは、「旅で世界を、もっと素敵に。」を合言葉に、イベントやメディア運営、マーケティング事業を手がけるTABIPPOです。 本日はよろしくお願いします。
しみなお
しみなお
よろしくお願いします。
会場に向かって話すしみなおさん

清水直哉(しみずなおや)、通称しみなお。群馬県で生まれ、大学入学とともに上京。学生時代に世界一周のひとり旅へ。旅に夢中になり学生団体としてTABIPPOを設立。卒業後はインターネット広告代理店オプトに就職。26歳の時に退職し、TABIPPOを法人化する。創設から現在まで代表を務める。TABIPPOでは「旅で世界を、もっと素敵に」を理念として、幅広い事業を展開。多様性と主体性をベースとしたユニークな社内制度を作りながら、新しい時代の働き方・生き方にも挑戦中。 2018年3月からは旅人のための就職・転職支援サービスである「旅人採用」を責任者として立ち上げる。

井手
井手
今回のイベント企画が立ち上がった発端は、サイボウズ式第2編集部にいるメンバーが、もともとTABIPPOで学生インターンを経験していたからなんですよ。

彼女は「TABIPPOで人生がめちゃくちゃ変わった。ぜひサイボウズとコラボして、イベントをしましょう」と、第2編集部内で熱く語っていて。
会場に向かって話す井手さん

井手桂司(いで・けいし)。フリーランスのブランドエディターとして、「愉快で優しい企業」とファンとの関係を温かいものにする活動を支援。イベント時はサイボウズ式第2編集部員だったが、現在は編集部を卒業。心地よいチームのあり方やこれからの働き方に興味があり、サイボウズ式を愛読している。

しみなお
しみなお
うれしいですね。これまでは事業については外で話すことは多くても、組織づくりについて話す機会はあまりなかったかもしれません。

知らない方に向けて最初に簡単に会社説明をすると、僕らの目的は、とにかく若者に「旅」を広めること。現在は5つの事業を展開しています。
井手
井手
社員さんは何人くらいいますか?
しみなお
しみなお
オフィスには正社員が13人、学生インターンが7人います。それ以外にも、学生支部が全国9都市にあって、学生のボランティアスタッフは全国で約400人です。
井手
井手
その規模の社員数で、来場者1万人超えのフェスや、年間170回以上のイベントを全国で実施しているんですよね。そうやって高いアウトプットを出し続けているのは、学生インターンなどのいわゆる雇用関係にない人たちの心を動かしているからだと思ったんです。

というわけで今日は、しみなおさんだけではなく、社員のみっちーさん、インターン生のさくすけさんにも「仲間をつくるためには何が必要なのか」「どんなマネジメントをしているのか」といった疑問に答えていただけたらと思います。

みっちーさんはどうして TABIPPOに入社したんですか?
みっちー
みっちー
大学卒業後は商社に3年勤めていたんですが、学生の頃に携わった「BackpackFESTA」(*)のことがずっと忘れられなかったことが大きいですね。
会場に向かって話すみっちーさん

恩田倫孝(おんだ・みちのり)、通称みっちー。1987年生まれ、新潟県出身。慶應大学理工学部卒。学生時代に、「サハラに死す」を読んで極地と冒険に興味を持つ。TABIPPOでは、「旅大学」を運営。男13人のシェアハウスで社会人生活5年間を過ごす。2013年に世界一周へと出発。アメリカの砂漠での奇才フェス「バーニングマン」を旅のスタートに、900kmにも及ぶスペイン巡礼、ブラジルのサルバドールで現地のカーニバルへ参加。全10回の連載を「ordinary」にて執筆。現在は、旅好きが集まるコミュニティ「旅大学」の学長を務め、年間100回近くのイベントを行う。

(*)BackpackFESTAは、世界一周航空券をかけたプレゼン対決や世界中を旅した著名人によるトーク、音楽ライブなどで構成されるTABIPPOが運営しているイベント。「もっとたくさんの若者に旅をしてほしい」という思いのもと、TABIPPOの設立当初、まだ学生団体だった頃から毎年欠かさず開催している。毎年学生1万人を動員。

井手
井手
さくすけ君はどうですか?
さくすけ
さくすけ
僕は、旅を広めたいと思ってたどり着いたわけではなく、居心地の良さを感じて入ったんですよ。
会場に向かって話すさくすけさん

櫻井 啓介(さくらい・けいすけ)、通称さくすけ。1996年、東京生まれ福岡育ち。星空とビール、焚き火とハンバーグが好き。九州大学に通いながら、複数の団体で約50人をまとめる代表兼飲み会担当として活動。TABIPPOでは、2018年に福岡で開催された1500人規模のイベント「BackpackFESTA in福岡」の代表を務めた。現在は大学を休学し、TABIPPOインターンとしてイベントの企画・運営を担当。

井手
井手
というと?
さくすけ
さくすけ
大学1年生の夏休みに、一人で中国を旅行したんです。すると、帰国後に、周りの学生たちと話や感覚が合わなくなってしまって。居心地の悪さを感じ始めました。

ちょうどその時、先輩からTABIPPOを紹介されて飲み会に参加したんです。そうしたら、それがめちゃくちゃ楽しくて。
井手
井手
さくすけ君は、社員さんが一人もいない、学生だけでイベントを運営しないといけない現場を経験しているんですよね。実際にどうでしたか?
さくすけ
さくすけ
僕はTABIPPOに入る前、1年生の秋ごろに、2000人規模のファッションショーのイベントを主催して……、むっちゃくちゃ失敗したんです。 だから、TABIPPOで同規模のイベントを主催すると聞いたときには、正直「もう、いやだなあ~~~」って。

でも、そのときのリーダーが、なんだかワクワクさせてくれたんですよ。ここにいる仲間と一緒にやったら、すげえ楽しいんじゃないかって。

多分、そのときのメンバーはみんな同じ気持ちだったと思うんです。「みんなの顔が同じビジョンに向いている」と肌で感じられたのをよく覚えていますね。

自由に働くのはめちゃくちゃ大変。

自律心は、自由の中で育つ

井手
井手
サイボウズには会社としてのミッションがありつつ、豊かな社会を実現するために「個人としても自分の旗を持つことが大事だ」という価値観があります。

その上で、「モヤモヤがあるんだったら、ちゃんとそれを質問しなさい。聞かれた人は、それに対してちゃんと説明しなさい」という教えを守っています。会社の風土として、「質問責任」と「説明責任」を大事にしているんですね。

TABIPPOさんでも、「ここは絶対に守ろう」と決めていることはありますか?
TABIPPOの3人に質問する井手さん
しみなお
しみなお
TABIPPOは2010年に学生団体としてスタートし、2014年に株式会社にしました。3人で立ち上げた組織は、約2年間で一気に十数人に増えたんです。そのタイミングで、「社員のみんながバラバラのことを言うようになったな」と感じる瞬間がありました。

そんな時期に読んだのが、サイボウズの青野さんが書いた『チームのことだけ、考えた。』です。

「人間は理想に向かって行動するものだ」という言葉に感銘を受け、TABIPPOの組織づくりに反映させました。
井手
井手
それは興味深いですね。どのように反映させたのですか?
しみなお
しみなお
「今の世の中では、どういう組織が成果を上げられるのか」というロジック目線、そして「どういう組織を作りたいのか」という自分たちの理想の目線、その両方を掛け合わせて、4つの組織ポリシーを決めました。
4つの組織ポリシーの図
しみなお
しみなお
さらにそこからブレイクダウンして、8つの行動指針を掲げています。
8つの行動指針の図
しみなお
しみなお
TABIPPOの「役職がない」「上下関係がない」「事業予算という概念がない」などは、すべてこの行動指針や価値観から生まれたものです。 「会社とはこういうものだ」という考えからじゃなくて、自分たちの理想からつくったんですよ。

本質的に大事にしたい価値観を抽出して、会社の価値観として土台をつくる。それを事業や組織に反映している。それが今の組織につながっています。
井手
井手
革新的なことをやろうとして、生まれたのではなく、組織の理想から生まれたんですね。
TABIPPOの制度/考え方/ルールの図
しみなお
しみなお
そうやって組織をつくってわかったのは、実は個人にとって、自由に働くのはめちゃくちゃ大変だということでした。
Tabippoのオフィスの壁の写真
しみなお
しみなお
実は起床時間、出社時間、やる仕事など、決まっていることを続ける方が楽なんですよね。

こういったことが決まってないと、自分の頭で考えなきゃいけないし、責任感が生じるし、信頼関係も必要になってくる。そして何より、自立していなければいけません。
井手
井手
なるほど。さくすけ君は実際に働いてみてどう感じましたか?
さくすけ
さくすけ
最初は大変でした。「旅をしながら働ける」「むしろどんどんそういう働き方をしていこう」ってことを実行しようとすると、最初は慣れなくて。

入ったばかりの頃は、自分の要望を「言いにくいな」って感じていました。
井手
井手
社会人といきなり働くこと自体が未知なことだらけですから、学生の場合は特にそうなりますよね。
しみなお
しみなお
学生たちは、言ってしまえば僕らよりもっと自由なんです。ボランティアなんだから、やらなくても構わないわけです。それにサークルとかアルバイトとか、いろんな選択肢がある。

そんな中で、自分の意志で選んで何かをやるためには、そうとう自立しなきゃいけません。

だから、うちの会社に出入りしている学生を見ていると「すごいな」と感じます。「学生でこんなに自立して、行動を起こせるんだ」「チームワークを発揮できるんだ」って。自由の中でこそ自律心は育つものなんですよね。
向かい合うしみなおさんとさくすけさん

「なんで社員さんたちはこんなにケンカしてるの?」と

インターン生に言われることも

井手
井手
TABIPPOさんを外から見たとき、どちらかといえば楽しげな会社のイメージでした。実際に自由となると、その分大変なこともあるわけですね。
しみなお
しみなお
社外から見た時とのギャップには、1年くらい前に気づきました。こういう風に思われるんだなって。
みっちー
みっちー
インターンの子も、入ってすぐの頃、 「なんで社員さんたち、こんなにケンカしてるの?」って言っていましたよ。
笑顔のしみなおさん
みっちー
みっちー
一つ断っておくと、感情的になって怒ることはありません。「今この仕事をするのは、ビジョンに紐づいていないんじゃないか」とか、理由をしっかり持って議論しています。
井手
井手
意見をしっかりぶつけ合っているということですね。
しみなお
しみなお
いつも話し合いや議論での ぶつかり合いは直球ですよ。
さくすけ
さくすけ
ちゃんと裏付けや意図がある話なら、どんな内容でもしっかりと聞いてくれるので、言いやすいんですよね。
みっちー
みっちー
さっきもさくすけから「メッセンジャーで文章に『~』を使いすぎでうざい」 って怒られましたもん。
みっちーさんを怒るジェスチャーをするさくすけさん
しみなお
しみなお
僕もインターンや社員たちからガツガツ言われます (笑)。もちろん大変なこともあるんですが、言っていい空気感、思ったことを言う雰囲気を大切にしていますね。

個人のビジョンの総和が、会社のビジョンになるべき

井手
井手
お客さんから質問が来ているのでご紹介しますね。

「TABIPPOのビジョンが実現したというのは、どんな状況ですか。例えば30年後会社として何をしているのか、イメージを抱いていますか?」。

こちらはいかがでしょう。
しみなお
しみなお
これねー……。難しいんですよねえ。
みっちー
みっちー
具体的に「これが答えです」っていうのは出ないですからね。
話を聞く来場者たち
しみなお
しみなお
例えば、現在、日本人のパスポート保有率は4人に1人程度で、約25%。だから、国内のパスポート所持率が50%になったらうれしい。

けれども100%になったとしても、「世の中はもっと旅を通じてこういう風に良くしていける」という、新しいイメージはどんどん出てくる。

なので、僕らの会社にあんまりゴールがあるイメージができないんですね。
みっちー
みっちー
組織としても個人としても、「旅」が軸としてはあるけれど、メンバーそれぞれが向いている方向は違っていいと思うんですよね。

個人のビジョンの総和が、会社のビジョンになるべきだ」と思うんです。
話をするみっちーさん
みっちー
みっちー
僕はイベントや場づくりが好きなので、将来的には、不動産や街づくりに関わりたいと考えています。一方、本や雑貨を作りながら、世の中を良くしていきたいと思っているプロダクト系が好きなメンバーもいる。

となると、「将来、組織としてこれを達成する」という共通の到達点がないんですよね。
しみなお
しみなお
組織も個人も変化していくものなので、働いているメンバーの熱量とか、理想が実現できているのかが大事だと思っていて。 なので、30年後どうなっているのかは、そのとき働いているメンバー次第かな。
井手
井手
将来的に「何をやっているのか」というより、今のスタイルのまま、それがアップデートされていくという感じがしますね。
みっちー
みっちー
メンバー個人のビジョンの実現がつながって、TABIPPO全体で、旅で世界を素敵にしていくという状態が、僕は心地いいなって思いますね。

チームで大切なのは「自分が何を考えているのか」という情報を整えて発信すること

井手
井手
これまでTABIPPOさんの組織形態についてお話いただきましたが、それってTABIPPOが特殊だからできるんじゃない?と感じる人もいると思うんです。

メンバーみんながより楽しく働くために、既存の組織をどう変えていけばいいのか。変えようという意思はあるけれど、どうしたらいいかわかんないっていうモヤモヤしている方は少なくなさそうなので。

最後にそんな方に向けてアドバイスをいただけますか?
質問をする井手さん
みっちー
みっちー
自分が社内でやりたいことを意識して、会社に対して「もっとこうしたらいいのに」と考えている人がストレスを感じるのは、自分がほしい情報を得られないことだと思うんですよね。例えば、ほかの事業が何を目指しているのかわからない、とか。
井手
井手
たしかに必要な情報がない状態だと、「こうしたらいいじゃん」っていうアドバイスも意見も出せないですよね。
みっちー
みっちー
はい。なので、一つの切り口としては、情報をちゃんと整えること。 それはノウハウではなく、「こういうことを考えている」「組織をこう進めていこうと考えている」という哲学や思想を社内で共有できる状態に常にしておくのが重要だと思っていて。
井手
井手
というと?
みっちー
みっちー
実際に僕がこの1年間、「旅大学」のチームでさくすけと一番意識したのは、「自分が何を考えているのか」という情報を整えて共有することでした。それを意識することでチームが上手く回っているなと、肌で実感しています。
井手
井手
発信することで、情報を整えるんですね。たしかに、自分だけが中で何が行われているのかわからない謎の会議室とかあると、モヤモヤしますよね。
みっちー
みっちー
そう! 悪口を言われてるんじゃないかなとか、気にしちゃいます。悪口すらすべて教えてほしいですもん。
井手
井手
しみなおさんは、既存組織を変えることについて何かアドバイスはありますか?
しみなお
しみなお
もしティールやホラクラシーのような、フラットな組織にしようと思うなら、いくつかの要点に気を付けるだけで、すぐできるんですよ。

そのうちの一つは、みっちーがいま言っていたように、情報をオープンにすることです。 情報は権威がある場所に集まりますから、情報がオープンであれば、権威の集まる場所も分散し、必然的にフラットな組織になっていきます。

でも、ティールやホラクラシーなのか、達成型のヒエラルキーがある組織なのかというのは、正直どっちでもいいと思うんです。組織ごとの戦略の話なので。

ただ、それぞれの組織は大きく違うので、メンバーなら「自分がどこに所属したいのか」、経営する側なら「どういう会社をやりたいのか」という思いが大事です。
会場に向かって話すしみなおさん
しみなお
しみなお
僕らの会社は「受け身で仕事したくない」「主体的に働きたい」っていう思いで集まっているから、言ってしまえばこれはエゴなんです。

それに、僕は性格的にトップダウンの組織をやりたくありません。だから他の社員たちみんながトップダウン経営をしたいと言ったら、代表を辞めるでしょうね。

「今はどういう時代なのか」「これからどういう時代になっていくのか」ということと、自分の思いをすり合わせることが、これからの組織づくりに求められるのではないでしょうか。
執筆:松尾奈々絵/ノオト 撮影:二條七海

「あれっ、日本語学校で教わったことと違うじゃん!」──スイス人がサイボウズの面接を受けて感じたこと

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採用面接、聞いていた感じと違って「あれっ?」

日本語学校で学んだ面接の受け方 敬語たくさん覚えないといけなかった サイボウズの面接当日、緊張しているアレックス なんと面接会場にはキリンがいた 面接官の服装もとてもラフだった

アレックス
アレックス
サイボウズの中途採用面接を8月に受けました。緊張している上にスーツを着ていたので、汗がとまりませんでした。面接官がカジュアルな服で来たので、「あれ、思ったよりラフだな」と思いましたが、面接のトーンは普通にフォーマルでびっくり。

格好はフォーマルだけど敬語がうまく話せない僕と、服装がカジュアルだけど話し方がフォーマルな面接官は、本当に仲間になれるのかと思っちゃった(笑)。

「コーヒーに行こう」という言葉に対して、「あれっ?」

入社したての頃同僚からコーヒーに行こうと誘われた 海外ではそれはテラスでゆっくりコーヒーを飲みながらザツダンするということ 社内ラウンジでコーヒーを淹れて座るアレックス それを無視して通り過ぎようとする同僚 同僚がいなくなったと気付くアレックス どうして席に戻るんですかとアレックスが聞くと同僚はコーヒーを淹れたのでと答える

アレックス
アレックス
こちらの件は本当に驚きました。後ほど同僚に説明を聞いたら、「入社したばかりなのでコーヒーの淹れ方を教えようと思っただけです」と言われました。

もしかしたら彼も、勝手に自分のコーヒーを淹れてテーブルに座った僕のことを、「あいつ変だな」と思っていたかもしれません(笑)。

「日本人の名前を覚える方法を見つけた」と思ったのに、「あれっ?」

日本人の名前は覚えるのが難しいから僕は漢字を脳で変換しています 例えば森さんだと簡単でForestさんです 明石さんだとBright Stoneであっているかな 大槻さんは自信がないけどBig Treeでいいかな 別府さんになるともう全く分からないから別の方法を考えなきゃ

アレックス
アレックス
日本語を何年間勉強しても、名前が覚えられません。特に花、木等の漢字を使っている名前、特別な読み方をする漢字が入っている名前は、英訳してもあまり役に立ちません。

僕の今のやり方は、まず名前を画面で見て、ローマ字で覚えて、そしてなんとなく漢字を当てはめて記憶の中に一所懸命詰め込むこと。文字が見えなかったり、聞くだけだったりする場合はすぐ忘れてしまう確率が非常に高いです。
マンガ:夕海 編集:アレックス

なぜ今まで「本業だ、複業だ」と境界線を引くことにこだわってきたのだろう?

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サイボウズで複業を始めて1年半になる。

私の本業はNPO法人の運営なのだが、今まで、本業とサイボウズでの複業をきっちり分けることをかなり意識してきた。なぜなら、お互いの業務に影響を与えないことが、複業をする者の当然のたしなみだと思ってきたし、それがきっちり守れるからこそできるのが複業だと思ってきたからだ。

例えば、サイボウズの就業時間中にNPOの仕事をしていたら「お前、何やってんの?」ということになるだろう。時間的にもそうだし、仕事の内容的にもそうだ。会社のリソースを、他に使うのはもってのほかだ。

逆の言い方をすると、私がサイボウズのリソースを本業で使わないように、本業の知識やスキルを、複業であるサイボウズに持ち込むこともあまりよくないことだと思ってきた。

この考え方は、今も基本的には変わっていない。

だが、最近、本業と複業の境界線を厳密に引きすぎることに、ジレンマを感じるようになった。

私の本業とサイボウズでの複業

ここで、私の本業とサイボウズでの、それぞれの仕事内容や役割について簡単に触れておきたい。

私の本業はNPO法人しごとのみらいの運営である。職場の世代間ギャップや険悪な人間関係、ストレスなどの問題を解決するコミュニケーションの専門家だ。「もっと『楽しく!』しごとをしよう。」をテーマに企業研修や講演、メディアや専門誌への寄稿、コーチングやカウンセリングを行っている。

サイボウズでの複業は、主にブランディングと認知活動である。サイボウズ式の記事を企画・編集・執筆している他、サイボウズのワークスタイルやチームワークメソッドを社会に広げる事業の認知活動を担当している。

しごとのみらいの事業目的は「働きやすい職場を作り、楽しく働くビジネスパーソンを増やすこと」であり、サイボウズの理念「チームワークあふれる社会を創る」と通じるところが多い。実際、この理念に共感したから、サイボウズで複業を始めた。

一方、業務的には、しごとのみらいはコミュニケーション、サイボウズはブランディング・広報と異なるため、これまでは意識的に分けることができたのである。

複業の問題を本業のスキルで解決できないジレンマ

だが、サイボウズの業務や社内の雰囲気に慣れれば慣れるほど、本業と複業を切り分けることにジレンマを感じるようになってきた。それを一言で言えば、「サイボウズの問題を、本業の知識やスキルで解決したいのにできないジレンマ」である。

例えば、これはサイボウズ チームワーク総研でよく使う講演資料だが、サイボウズには在宅勤務や人事評価、育児休暇や採用などの「制度」や、情報共有クラウドや遠隔で仕事ができる会議システムなどの「ツール」、さらには、多様性重視、個性の尊重、公明正大といった「風土」がある。

サイボウズの制度、ツール、風土

これらは、他社からもご評価いただいている仕組みである。複業を始めた当初は、私の知識やスキルを持ち込む必要はない、むしろ、持ち込まないほうがいいと思っていた。なぜなら、サイボウズの優れた仕組みを、他のノウハウを持ち込むことで濁らせないほうがよいと思ったからだ。

でも、サイボウズに全く問題がないかというと、そうではない。例えば、以前、ある社員から、グループウェア上で次のような発言があった。

制度、風土等については研修を受けているが、1on1(※著者訳:1対1でざっくばらんに話をすること)やフィードバックのやり方(コーチングとか?)については各自独自な気がする。サイボウズとして 1on1 はこういうことを聞いて欲しいとか、マネージャーとしてこの部分を押さえて欲しいとか。そもそも 1on1 やフィードバックのやり方はこうすると良いよ?とかあっても良いのでは?

一言で言えば、「サイボウズには制度や風土はあるけれど、それを具体的に運用するためのコミュニケーションのやり方があったほうがいいのでは?」という提案である。

実は、このような印象を持ったことが私にもある。私自身も1対1で上司と会話をしたり、同僚とグループウェア上でやりとりすることが多々あるが、「ここをもう少しこう変えると、もっとコミュニケーションが円滑になるのにな」と思うことが何度かあった。

そもそも、「制度」「風土」「ツール」を下のレイヤーで支えているのはコミュニケーションなのではないか。

制度、ツール、風土を下支えするコミュニケーション

だが、本業であるコミュニケーションの知識やスキルを持ち込むと、本業と複業を混同することになってしまう。

しかし、目の前には困っている人がいて、自分の知識やスキルを活かせる課題がある。それなのに、それを活かすことができないなんて……。社内から「外部のコミュニケーション研修に行ったほうがいいのではないか」という声が聞こえてきたとき、「外部に研修に行くぐらいなら、ボクに聞いてよ―」と思ったのだ。

本業のスキルを生かしたほうがお互い幸せなのでは?

そこで、このジレンマを解消すべく、できることから動いてみたいと思った。

私は新潟在住で、東京のオフィスには月に一回出勤する。そのタイミングで、ランチを兼ねたコミュニケーション勉強会を始めることにした。ランチの時間なら、誰にも迷惑をかけることもない。グループウェアに「コミュニケーションの勉強会をやりますよー」と書き込んだら、10名ほどの人が参加してくれた。初回のテーマはコーチングにした。

反応はまぁまぁよさそうだ。

コミュニケーション勉強会

今後は、さらに発展させて、社内外に向けた勉強会を定期的に開催したり、社内研修にしたりできたらおもしろいと考えている。本業の知識やスキルを活かすことによって、サイボウズの社内がよりよくなるなら、私にとってもうれしいことだ。

また、更に発展させて、チーム作りに必要なコミュニケーションの知識やスキルを一緒に開発してもいいし、成果が実ればチームワーク総研の研修として社外に提供してもいい。また、しごとのみらいが研修の社外パートナーになってもいい。

このように、本業と複業を融合すれば、幸せになれる人たちが増えそうだ。

このことに気がついてから、私はこう思った。「なぜ今まで、本業だ、複業だと境界線を引き、分けることにこだわってきたのだろう」と。そこで、2019年を迎えた今年の個人的なテーマとして「本業と複業の融合」を掲げた。

100人いれば100通りの「複業の形」があっていいのでは?

とはいえ、実際には「そこは、切り分けておいたほうが……」ということもあるだろう。理想通りにならないこともあるかもしれない。

また、『サイボウズで働いて「複業には4種類ある」と痛感し、やっぱり複業はいっしょくたには語れないよねと思った話』でも触れたが、複業の形は本当にさまざまだ。

サイボウズで働いて「複業には4種類ある」と痛感し、やっぱり複業はいっしょくたには語れないよねと思った話

私のように、今までの知識やスキルを活かした複業の形もあれば、全く関係のない業種・業態の複業もある。この例が、すべてに適用できるとはさらさら思っていない。融合するにも、社内の理解が必要であろう。

だが、私にとっては(あるいは、サイボウズにとっても)、融合させるほうが良さそうだし、境界線を引かなくてもいいのなら今までより自然体でいられそうだ。まずは、社内に伝え、勉強会を続けることから始めてみたい。

【2/27 開催】イベント「それぞれの人の中にある才能を殺さないために、マネジャーにできること」──サイボウズ副社長 山田理×北野唯我

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今年4月に、サイボウズ副社長である山田理が執筆する『新しいマネジャーの教科書(仮)』の出版を予定しています。

もともとは離職率28%のブラック企業だったサイボウズの人事のトップとして、人事制度や働き方の根幹を考え続け、働き方改革のリーダー企業として知られるようにまでに会社を進化させた山田。

本書では、多様な個性の尊重がますます重要になるこれからの時代の理想マネジャーとはどんなひとなのか、「新しいマネジメント論」をまとめています。

pic.png マネジャーは、「地位」ではなく「役割」でしかない── #理想のマネジャーってなんだ、取材文字起こし全文公開13

今回はその出版前のイベントとして、今年1月に新著『天才を殺す凡人』を出版した株式会社ワンキャリア最高戦略責任者の北野唯我さんをお呼びして、「それぞれの人の中にある才能を殺さないために、マネジャーにできること」というテーマで対談します。

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個性を生かす時代、これからのマネジャーはどういう姿勢が必要になっていくのか──。

部下との付き合い方を模索している方、チームのマネジメントに迷われている方、当日は質疑応答の時間も設けておりますので、どうぞ奮ってご応募ください。

※当日の様子は撮影させていただき、後日「サイボウズ式」にて記事にさせていただきます。ご了承ください。

イベント概要

題名: 『新しいマネジャーの教科書(仮)』出版前イベント
北野唯我× 山田理 トークイベント
日時: 2018年2月27日(火)19:00~21:00(受付開始18:30〜)
定員: 110名
参加費: 1,620円(税込)
申し込み: ご応募はこちら
※応募者多数の場合は抽選とさせていただき、当落関わらず 2/26(月)までにメールにてご連絡いたします。

■会場

青山ブックセンター本店(HP)
Google Maps abchp_map_jp.jpg 表参道駅でエレベーターをご利用のお客様は、B1出口が便利です。
提携駐車場はコスモス青山ビルの地下になります。
青山通り沿いのオーバルビルの駐車場ではございません。
コスモス青山ビルの駐車場は通常1時間600円ですが、当店で3,000円以上ご購入のお客様は2時間まで半額でご利用いただけます。

■アクセス
表参道駅B2出口 徒歩7分
渋谷駅 (東口 / 宮益坂側) 徒歩13分

登壇者プロフィール

サイホ〓ウス〓山田+(1).jpg山田理(やまだ・おさむ) サイボウズ株式会社取締役副社長 兼 サイボウズUSA社長。1992年日本興業銀行入行。2000年にサイボウズへ転職し、取締役として財務、人事および法務部門を担当。初期から同社の人事制度・教育研修制度の構築を手がける。2014年グローバルへの事業拡大を企図しUS事業本部を新設、本部長に就任。同時にシリコンバレーに赴任し、現在に至る。

yuiga.kitano(宣材用)+(1).jpeg北野唯我(きたの・ゆいが)
兵庫県出身。新卒で博報堂の経営企画局・経理財務局で中期経営計画の策定、MA、組織改編、子会社の統廃合業務を担当。その後、ボストンコンサルティンググループに転職し、2016年ワンキャリアに参画、最高戦略責任者。レントヘッド代表取締役。1987年生。『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が発売2月で10万部。2作目『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)は発売4日で3万部。

「できるだけ子どものゲームには寛容でいたい」と思っていた我が家、はじめてのゲーム禁止令

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ほのぼのデジタルネイティブ育児漫画

kobeniさんが子育てをする中で感じた発見をマンガにする連載「ほのぼのデジタルネイティブ育児」。今回は「子どもに対するデジタル教育には寛容でいたい」と思ったkobeniさんが、ついにゲーム禁止令を発動した話。ゲーム禁止をしてみて子どもに起こった変化とは?

連載に少し間が空いたのはゲーム禁止をしていたから ゲーム禁止1日目には禁断症状、5日目には友達と外で遊ぶように 一番笑ったのはゲーム禁止8日目にラノベを書き始めたこと 見守りSwitchでアラーム設定をしてゲームを解禁したが、子供が勝手にアラームオフに 昔と違って「クリア」のない世界でずっと遊んでいられるし、内容も高度で飽きない ゲームの魅力もわかりつつ、ゲームもゲーム以外もいろいろ楽しめる生活を送ってほしい

コミュニティの学びは会社で生かせる。ゴールだけ見て走り、結果はあとづけでもいい──前田デザイン室

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印刷会社でマネージャーをしている赤松翔さんは、仕事に頭打ち感があったといいます。そんな彼が飛び込んだのは「前田デザイン室」。関西を中心に活動するデザインコミュニティです。

雑誌を作るプロジェクトを進める中で気づいたのは、役職も上下関係もないチームの価値。会社とは真逆ともいえます。プロジェクト参加にあたり、時間の関係からフルコミットが難しいと感じて、編集・校正の役割に徹しました。

「もっと役に立ちたい」「いいものを作りたい」。当初は時間を費やせなかったはずなのに、活動を進めながら感じたことは、チームで仕事をすることに対するピュアな気持ちでした。

前田デザイン室でいっしょに雑誌を作った編集長・浜田綾さんと、コミュニティとチーム作りを振り返ります。

「会社でコミュニティのようなチームって、作れますか?」

コミュニティはどれ1つとして同じものはない。迷ったら飛び込み、嫌だったらやめればいい

赤松さん
赤松さん
前田デザイン室は、初めてお金を出して入ったオンラインサロンなんです。驚いたのは、メンバー同士のコミュニケーションが活発だったことです。

前田デザイン室は、元・任天堂デザイナー前田高志が率いるクリエイティブ集団。 「おもろ!たのし!いいな!」をモットーに、世の中に新しいクリエイティブを大量投下し続けるコミュニティ

赤松さん
赤松さん
正直、オンラインサロンのイメージって、主催者や講師から教えてもらうセミナーのようなものが一般的だと思っていました。だけど、メンバー同士でのやりとりが多いんだなと。
浜田さん
浜田さん
オンラインサロンを知らず、入ったことのない方から、「ブームに染まってる人たちだ」「得体の知れないグループだ」と言われることはよくありますね(笑)。

ただ、わたしが知っている限り、どのオンラインサロンも目的や個性があります。当たり前なんですけど、同じサロンやコミュニティはありません。
前田デザイン室の浜田綾さん

浜田綾(はまだ・あや)さん。ライター・編集者。オンラインサロン「前田デザイン室」所属・運営。「箕輪編集室」にも所属しており、過去に運営を経験。企業で10年間ビジネス文書の作成を経験し、2017年6月にフリーとして、「コトバノ」という屋号で開業。同年8月箕輪編集室にて電子書籍「嫌われ者たちのリレー式コンテンツ会議」の編集リーダー、2018年9月前田デザイン室の雑誌「マエボン」編集長を務める。日本一のオンラインサロンの編集者を目指す、二児の母。Twitter:@harapekokazoku

浜田さん
浜田さん
家庭や会社以外のサードプレイスがある人は、依存先を複数持っていることもあり、幸せだと思うんです。別に、オンラインサロンを押し売りするつもりはないんですけど……。

もし気になったら飛び込んでみたらいいし、入ってみて嫌だったら、やめればいいんですよね。それぐらいカジュアルなものだと思っていて。
赤松さん
赤松さん
そうそう。コミュニティだし、一方通行のオンラインサロンじゃないですから。ちなみに、前田デザイン室はメンバー同士の互助関係がある場所だなって感じています。

友人から「何それ、大丈夫?」って言われることもあるんです。けど、それはどちらかというとWebでの一方的な偏見だと思うんです。

コミュニティは会社じゃない。「絶対にしなければいけないこと」もない

浜田さん
浜田さん
わたし、オンラインサロンに入った時って、あんまり自信がなかったんです。
赤松さん
赤松さん
え、そうだったんですか。
浜田さん
浜田さん
うん。わたしは前田デザイン室で「運営」に入りました。割と目立つポジションに入ったにもかかわらず、です。

前田デザイン室に入る前に、箕輪編集室というコミュニティにも入っていて。そこでも最初に運営を引き受けたんです。でも、「なんでわたしなんだろう? わたしでいいのだろうか?」って思っていました。

でも、運営目線でコミュニティを見るようになると、気になることがあったんです。
赤松さん
赤松さん
何ですか?
浜田さん
浜田さん
オンラインでの文章の書き方や伝え方です。TwitterやFacebookを見て返信することもそうで。

普段がライターの仕事をしているからかもしれませんが、いろんな人とコミュニティで触れ合ったら、テキストコミュニケーションが苦手な方もたくさんいるって気づいたんです。

もちろん、それが悪いわけじゃない。みんな違って当たり前だから。
赤松さん
赤松さん
うんうん。
浜田さん
浜田さん
逆に、いろんな個性を持つ方とやりとりして、自分はテキストコミュニケーションが得意なんだ、と気づけました。

なので、みんなに対して「できるだけ気持ちよく返事をすること」を考えていますね。これは、過去に運営チームに所属させてもらった「箕輪編集室」でも感じてたんですけど。

これが「運営」という役割をまっとうする中で、自信になってきたスキルです。
赤松さん
赤松さん
めっちゃ同感です。浜田さんは、代表の前田さんだけでなく、コミュニティメンバーにも対外的にも、ていねいな対応をしているのを何度もみています。
前田デザイン室の赤松翔さん

赤松翔(あかまつ・しょう)。「前田デザイン室」「サイボウズ式第2編集部」に所属。本業では雑誌ライター・編集を経験。現在、印刷会社キングプリンターズ・マーケティング部マネージャー。未来のチームや組織作りを考えるため「サイボウズ式」を立ち上げ当初から愛読。30代半ばを超え、さまざまな社外活動に参加。藤村編集長とは中学時代からの同級生。今回は所属しているコミュニティの楽しさの秘密を知りたく話をおうかがいしました。

浜田さん
浜田さん
そう。オンラインコミュニティの場合、掲示板やチャットでのテキストコミュニケーションが基本だと思います。

でも、これってちょっと不自由じゃないですか。
赤松さん
赤松さん
直接顔を見合わせてやりとりできないですからね。
浜田さん
浜田さん
だからこそ、余計に「ありがとう」や「すごいね」と伝えることを大事にしています。割とほめ合うし、できなかった時もそれを責めない。それよりも、できるように応援するんです。

わたし自身も過去にコミュニティ運営において、あるいは1メンバーとして、できてないことがいっぱいありました。でも誰も「なんで、できひんのや」とは絶対に言わない。

逆に「応援しよう。だから、できるようにもっと声かけていこうよ」という風土があったんですよね。
赤松さん
赤松さん
やっぱり、コミュニケーションを大切にしている風土があるコミュニティなんだな、と強く感じました。
浜田さん
浜田さん
そもそも、コミュニティって会社じゃないですし、「絶対にしなければいけないこと」もないんですよね。

その方が望んで入るものだし、やりたくてやっている。だから、それがうまくいくように応援をする方が絶対いいんですよね。

あと、自分が身を置いているコミュニティだったら、楽しみたいし、いやすくなった方がいい。だからその場作りを、率先してやっているみたいな気持ちです。
赤松さん
赤松さん
これって、コミュニティで得た経験を元にしたコミュニケーションスキルですよね。なにか勉強されたわけでは……?
浜田さん
浜田さん
してないです(笑)。すべて体験と気持ちからですね。

会社にコミュニティの要素を取り入れるのって、難しい?

赤松さん
赤松さん
浜田さんのコミュニティ内での運営としての振る舞いがとてもいいなと思って。

というのも、わたしの会社でリーダー研修があったんです。そこでは「聞く」「質問する」「叱る」などのワークが、1回4時間、全8回ありました。

そこで学んだことと浜田さんの考え方って、ほぼ変わらないんですよね。
浜田さん
浜田さん
え、そうなの?
赤松さん
赤松さん
はい。「否定から入らず、まずは相手の話を聞く」とか、「相手の立場や気持ちに立ってコミュニケーションしましょう」とか。

これって、2000年代初期の根性論や体育会系のような指導方法とは違うな、って。そういう考えのほぼすべてが、文化として根付いている前田デザイン室はすごいなって。
浜田さん
浜田さん
とくにガイドラインもないですし。
赤松さん
赤松さん
それが自然にできているのは、時代にも合っているとも感じていて。

もう1つ所属している「サイボウズ式第2編集部」でも、マエボン(*)プロジェクトとまったくいっしょのチーム作りをしてたので、なおさら同じことを感じています。

それがコミュニティの存在意義を作っていて、そこで互助精神が生まれたり、成長したりできる文化はいいなって。 
前田デザイン室で作られたマエボン

前田デザイン室で作られた(*)「マエボン」。編集長をはじめ、雑誌の制作経験者ははほぼいない状況のなか、2ヶ月という短い期間で作られた。あるイベントの出しものとして企画されたものだったのだが、青山ブックセンターや銀座 蔦屋書店、代官山 蔦屋書店、名古屋ロフト店、紀伊国屋書店梅田本店、スタンダードブックストア心斎橋など、数々の有名書店で取り扱われることに。 表紙のキャラは「童心くん」

藤村
藤村
コミュニティのようなチームを会社の中で作ろうってなると難しい?
会社とコミュニティについて質問するサイボウズ式編集長の藤村

サイボウズ式編集長の藤村。関西で活動する前田デザイン室のお話を聞くべく、故郷の大阪に戻ってきて、取材に参加。いきなり出てきてすみません。

赤松さん
赤松さん
結論から申し上げると、特に風土がトップダウンの会社だと絶対に難しいと思う。
藤村
藤村
難しい、か。
赤松さん
赤松さん
わたしがコミュニティで活動している理由は、サードプレイスを求めていて、かつ自己啓発活動なんだけど、どうやったらコミュニティの学びを会社に還元できるのかは意識してるんやんか。

学んだことは会社にも少しずつ取り入れていて。例えば、自分のチームだけでも雑談やミーティングを増やして、「何に困っているか」「何がしたいか」っていうのを聞くようにしたかな。
藤村
藤村
少しずつ、会社にコミュニティで得た考えを取り入れている。
赤松さん
赤松さん
そうなんです。以前は、トップダウンだったけど、今は、自部署・他部署にかかわらずミーティングを増やしました。

いいものを作るためのミーティングのなかで、コミュニケーションをする。これは少しずつ増えてきているかもしれない。少しずつチームが変わったようにも感じるかな。

決めることはもちろんマネージャーのわたしが決めるんですけど。
藤村
藤村
うんうん。
赤松さん
赤松さん
あと明らかに変わったのは、声がけですね。
藤村
藤村
おお、基本のところ。
赤松さん
赤松さん
「上司がすべてだ」って思っていた人たちにも、全然違う部署の人にも、まずは話を聞いてみる。スキル的なことじゃなく「どうしたい?」「やってみたい?」とか

実験的かもしれないけど、新しい価値を作る上では必要だし、会社の風穴を開けることにもつながるんじゃないかと。

コミュニティは、本来の目的だけに走れる活動が生まれやすい。それは、会社でも生かせる

浜田さん
浜田さん
コミュニティの学びを、少しずつ会社に入れようとしてるんだ。
赤松さん
赤松さん
そうですね。会社は、わたしが入社したころに比べて人数が1.5倍に増えているんですよ。

こういったチームの作り方を「みんなでいっしょにやろう」と思っていたんですけど、全社で一斉に、というのは難しくて。
コミュニティで得た知見を会社でも実践しようとする赤松さん
赤松さん
赤松さん
とりあえず2人で話してみるとか、4人で新しいツールを使ってみるとか。小さく始めることって大事だなって。たった半年やってみただけなんですけど、やってみて一番気づいたことです。

で、失敗してもいいやっていう空気を作ろうと意識してますかね。
藤村
藤村
こういう気づきって、会社で働いているだけだと気づかなかった?
赤松さん
赤松さん
絶対に気づかない。例えば、Webの記事を読んで、チーム作りやツールの使い方を知ったとしても、「それを実際にやってみる」ってことにはなかなかならないと思う。きっと困ってないからじゃないかな。

逆に、コミュニティに参加してみた実体験があったからこそ、会社で小さく始めることができた。
藤村
藤村
なるほどね。
赤松さん
赤松さん
まぁ、会社なのか、コミュニティなのかは、本質的には関係ないのかなとは思いましたね。

もし、浜田さんがもう一回会社員に戻ったとして、今のコミュニティの経験って生かせそうですか?
浜田さん
浜田さん
生かせると思う。幻冬舎の箕輪さんやZOZOの田端さんみたいに「会社をうまく利用する」というと言い方は悪いかもしれませんが、うまくお互いがWIN-WINになるような働き方ができると思います。
フリーライターとして複数のコミュニティで活動する浜田さん
赤松さん
赤松さん
確かに。
浜田さん
浜田さん
やっぱり会社に雇われているという感覚が強いと、会社や上司にお伺いを立ててみたいに考えがちだけど、本質的には、会社の利益になればいい。ここを見て仕事をする人になるんじゃないかな。

……うん。そう、やりたいなって思いますね。
赤松さん
赤松さん
「コミュニティをよくする」活動も、根本的には同じ話ですよね。
浜田さん
浜田さん
そうですよね。

オンラインサロンで本質的なコミュニティマネジメントができるのは、「金銭が発生しないから、本来のあり方が実現する」って思っていて。本当はこの考え方を会社に持ち込めたらいいんだけど。

きっと同じようにはいかないけど、近づけていけたら多分もっと働きやすいんだろうなって思いますね。
赤松さん
赤松さん
まだ、わたしは会社でチャレンジ段階ですが……。

与えられた仕事以外での自発的な提案を拾わない会社って、昔は多かったと思います。「その仕事はあなたの仕事じゃない。集中してこれをやってください」みたいな。
会社でチャレンジをする赤松さん
赤松さん
赤松さん
「でも、やりたければチャレンジしてみよう」って感覚を持ったんですよ。そこはやっぱり一番感じた変化かも。

マエボンにかかわっていなかったら、この感覚は絶対ないです。いいもの作る人の気持ちをやっぱりないがしろにしたらあかんみたいな。
浜田さん
浜田さん
赤松さんは「所属している印刷会社でいい印刷物を提供する」のがゴールだから、そこがぶれていなければいいんじゃないかな。

例えば上司の確認を一回怠ったからって、それが利にかなっているなら、いいんですよね。

本当はそうあればいいのに、会社に慣れてしまうと上司のお伺いを立てることが、仕事にすり替わっているときがある。利益ももちろん大事ですけど、それだけじゃ「創造」できないから。

コミュニティって、本来の目的である「プロジェクトのゴール」だけを見て走るっていう活動になりやすいんですよね。それは、多分会社でも生かせる。
赤松さん
赤松さん
前田デザイン室流のところもずいぶん多くて、勉強になります(笑)。

会社でプロジェクトをやるときって、部署やなれ合いで固まりがちなんですよ。セクショナリズムを外して、いろんな部署からメンバーやアイデアを募集しはじめてみる。

部署をまたいで掃除の担当をやってみるでもいいし、新年会を盛り上げたい人で募ったらいい。きっと、そういうことから始めればいいんですよね。

トップダウンでは伝わらないことがたくさんあるので、「今、やりたい」という方から、会社の活動を広げていくことにチャレンジしていると思います。

編集長としてやったことは全部あとづけ。すべてにかかわり、熱中して、やりきっただけ

赤松さん
赤松さん
マエボンプロジェクトのチーム作りって、具体的にどんな感じでした?
浜田さん
浜田さん
マエボンプロジェクトは、わたしが編集長となり、2ヶ月の短期間で約90ページの雑誌を作成しました。

メンバー数はのべ50人くらい。みんな会社や学校に行きながら、制作して。雑誌制作は未経験者が9割で、編集長すらも未経験者でした。
赤松さん
赤松さん
わたしは印刷会社に勤めていて、編集や校正を一部担当したんですけど、作り方が仕事とは全然違ったんですよね。

ディスコードっていうツールを使ってプロジェクトごとに分けて、全員、それが見れるようになっています。
前田デザイン室で活用しているチーム向けのツール「ディスコード」

チャットツール「Discord」を使ったマエボンプロジェクトのやりとり。ページ割や役割でチャットグループが分けられているが、そのすべてのグループは誰でも見られるようになっている

赤松さん
赤松さん
浜田さんが編集長をやることになってから、何を意識してチーム作りをしましたか?
浜田さん
浜田さん
うーん、いろいろ意識したことはあるんですけど、そういうのは全部あとづけですね。
赤松さん
赤松さん
そうなんだ。
浜田さん
浜田さん
うん。結果として、ツールを使ってまめに連絡を取ったり、通常1回でいい入稿作業を4回やったり、とかあるんですけど。

そもそも雑誌が作られる工程すら知らなかったんですよ。みんなが提案してくれてできたことですし、オープンな場で共有するのも、前田デザイン室では当たり前ですし…。

多分、赤松さんのように雑誌を作ったことある人からすれば「ええっ」て感じだと思うんですけど、これはわたしが「知らなかった」からこそ実現できたのかなって。
赤松さん
赤松さん
びっくり。
浜田さん
浜田さん
だから、すべては自分の気持ち。

なんか、「初めての編集長として頑張ったね」みたいに言われるし、実際に頑張ったんですけど、全部わたしがやりたくてやったことなんですね。雑誌を作りたいっていう気持ちが強かった。

いざ雑誌作りをやってみたら、みんなが言ってるアウトラインがどうとかよく分からないし、「ノンブル(※)って何?」から始まったんで。
※ ノンブル…順序をあらわす数字。冊子のページごとに欄外に表示されている。
浜田さん
浜田さん
だけど、走りながら「あ、そっか。入稿があるからデータがそろわないと困るんだ」「じゃあどうしよう」とやってきたわけで。

とにかく、全部にかかわろうと思いましたし、一番行動しようと思った。チーム作りで工夫したっていうのは、結果論なんです
浜田綾さん
赤松さん
赤松さん
なるほど。
浜田さん
浜田さん
コミュニティで雑誌を作りたいし、編集をやりたかった。だから紙媒体の経験もないけれど、編集長として手を上げました(笑)

わたしはライター、編集者として会社勤めした経験はありません。例えば「編集者になりたい」「出版社に入りたい」と言ってもそれは難しいでしょう。。

そんな時にコミュニティで雑誌「マエボン」を作るってなった。「じゃあ、わたしがやりたいです」みたいな感じでした。
赤松さん
赤松さん
全部あとづけって感覚、めっちゃいいと思うんですよね。夢中になって、熱中して、やり切ってるっていうことじゃないですか

でも、会社の仕事とかになると、どうしてもね。「数字があって、計画があって、目標があって」みたいな。
浜田さん
浜田さん
そうですよね。
赤松さん
赤松さん
好きで熱中してることが伝播していくことと、意図的に周りを巻き込むことは、違うんですよね

その人からあふれ出てきてる熱意にみんなが感化されて、いっしょにムーブメントを起こしていく。それがチームが自走していくポイントなのかなって。
浜田さん
浜田さん
それは室長の前田さんが、「やりたい」って思いから「やろう」っていつもおっしゃっていて。そこから、マエボンにかかわったクリエイターたちを、知ってもらいたいって気持ちが強くなりました。
取材に同席してくれた前田デザイン室の前田さん

写真左は、前田高志(まえだ・たかし)さん。オンラインサロン「前田デザイン室」主宰・株式会社NASU代表取締役/グラフィックデザイナー・アートディレクターから、2018年漫画家に転身。/2001年任天堂入社。広告デザインや会社案内などに携わる。2016年父の認知症をきっかけに離職。受賞歴:Art Directors Club、OneShow Design入賞、全国カタログポスター展経済産業省商務情報政策局長賞など。今回の取材にも同席してくれて、しっかりみんなの声に耳を傾けてくれていた。Twitter:@DESIGN_NASU

赤松さん
赤松さん
そのピュアな気持ちって、かなり大事じゃないですか。むしろそれがないと、あんまりコミュニティで活動する意味もないと思っていて
浜田さん
浜田さん
ほんとそう思います。会社でできることだったら会社がやったほうが、そりゃクオリティも高いに決まってるし。
赤松さん
赤松さん
だから、9割初心者でも「やりたい」ってなるのかなって。

困ったこともたくさんありましたが、それを乗り越えていく快感もありました。メンバー同士でアイデア出して、いいものを作りたいって気持ちがすごかったです。
浜田さん
浜田さん
だから制作途中で、忙しくてできなくなった人がいても、誰かがやってくれるんですよね。「やります」って。必ず誰かが出てくれて、みんなで乗り越えていく感覚がありましたね。
赤松さん
赤松さん
浜田さんは、そのなかでもみんなに配慮していた。それが多分チームにもだんだん浸透していっている感じもあったんですよ。
浜田さん
浜田さん
みんながすごい、お互いが配慮しあって助け合ってましたよね。直接は言ってないんですけど。
イベント登壇する浜田さん

浜田さん自身、マエボン発刊から、イベント登壇する機会も増えた。

赤松さん
赤松さん
そうですよね。そういう配慮の話はまったく出てなかった。それがすごいなって。チームが徐々にできあがっていく様子を見ているのも、とにかくおもしろかった。それが、浜田編集長からどんどん広がっていったのかな、と。
浜田さん
浜田さん
ありがとうございます。本当に結果論だし、あとづけなんですけどね。
赤松さん
赤松さん
浜田さんが編集長としてマエボンを作ることに誰よりもコミットしてるし、誰よりもチームのことを考えている。それが伝わっていった結果っていうのがあるのかもしれないですね。
浜田さん
浜田さん
ありがたいです。泣きそうになってきた(笑)。
赤松さん
赤松さん
泣かんといてください(笑)。今日はたくさんお話いただきありがとうございました。
サプライズに思わず涙してしまった浜田さん

マエボンの編集長に対する「お疲れ様サプライズ」。全メンバーからの寄せ書きに、浜田さんも泣いちゃった。

企画・執筆:赤松 翔 / 写真:木村 駿生 / 編集:藤村 能光 / 撮影協力:前田デザイン室

海外でも「会社という存在に対する疑問」はあるのか? サイボウズ式がグローバル向け発信をはじめる狙い

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サイボウズ式では今後、全世界へ向けて英語記事や、海外の事例や専門家を取材した記事を積極的に発信していくことになりました。サイボウズは現在、キントーンをアメリカ市場で展開すべく奮闘中。そこで自社メディアであるサイボウズ式でも、私たちの思いを伝えていきたいと考えています。

そのためのキーマンとして編集部に加わったのが、スイス出身のアレックス。スイス外務省と慶応義塾大学職員を経てサイボウズに入社した、異色のキャリアの持ち主でもあります。

サイボウズ式はこれから、世界へ向けてどんなメッセージを発信していくのか? アレックスとコーポレートブランディング部長の大槻幸夫(サイボウズ式初代編集長)の2人で、ざっくばらんに語り合ってもらいました。

スイスではサイボウズの名前を聞いたことがなかった

大槻
大槻
最初にアレックスからの応募書類を見たときは、そのキャリアに驚いたんですよ。

アレックス
アレックス
そうですか?

大槻
大槻
スイス外務省から大学職員を経て……。労働政策について関わってきた経歴があり、それは僕たちが扱うことの多い働き方というテーマにも通じると思ったんですよね。

あと、実際に会ってみたら「日本人と話しているのかな?」と思うくらいコミュニケーションが自然でした。日本語はとても上手だし、謙虚さと落ち着きがあって会話もしやすいし。

アレックスに話しかける大槻

大槻 幸夫(おおつき・ゆきお)。サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部長。「サイボウズ式」の初代編集長。

アレックス
アレックス
とんでもない。日本語はまだ上手だとは思えないです……。

大槻
大槻
「謙虚」って、まさにそういうところですよ(笑)。

ちなみに、スイスを出て日本に行くことはいつ頃から考えていたんですか?

アレックス
アレックス
アニメの影響で、子どもの頃から日本に興味を持っていました。学生時代に日本から来た留学生と友だちになったり、スイス外務省時代には日本の外務省の方と接することがあったり。

それでさらに興味を持ち、旅行で何度か実際に日本を訪れる中で「ここに住んでみたいな」と。外務省を辞めて日本へ来たんです。

大槻に話しかけるアレックス

Alexander Steullet(通称アレックス)。サイボウズ式のグローバルコンテンツ担当として、2018年11月にサイボウズへ入社。 ソ連生まれ、スイス出身。

大槻
大槻
サイボウズへ応募した理由は何だったんですか? 外務省も大学職員も、割とパブリック寄りの職務経歴だと思うんです。サイボウズは随分と文化の違う組織だと思いますが……。

アレックス
アレックス
はい、こういう会社は初めてです。正直に言うと、お世話になっていたエージェント会社のリクルーターさんに勧められて、初めてサイボウズを知ったんです。スイスではサイボウズの名前を聞いたことがなくて。

大槻
大槻
そうでしょうね(笑)。

アレックス
アレックス
もともと希望していたのは日本の大手企業だったんですが、ただ日本語を翻訳するだけではなく、自分で記事を書いて発信するような仕事もしてみたいと思っていました。

そんなときにリクルーターさんが、「サイボウズにはコーポレートブランディングでオウンドメディアを手がける部署がある」と教えてくれたんです。

サイボウズは早く、世界レベルでの会話に参加すべき

アレックス
アレックス
サイボウズはなぜ、海外でのブランディングを強化しようと考えたんですか?

大槻
大槻
サイボウズはアメリカに現地会社の「kintone Corporation(サイボウズアメリカ)」を立ち上げ、副社長の山田が社長となってキントーンの展開を進めています。

ただ、アメリカはITの本場だけあって競合がとても多いんです。キントーンと同じカテゴリーの製品が毎週1つは誕生しているような印象です。

アレックス
アレックス
非常にスピード感があり、厳しい市場だと。

大槻
大槻
製品プロモーションも大事ですが、それだけでは差別化しきれないと感じていました。

それでは、僕たちは何を売りにするべきなのか。考えた結果、サイボウズの理念や文化をアメリカでも伝えていくべきだと思ったんです。

アレックス
アレックス
「チームワークあふれる社会をつくる」という理念ですね。私がサイボウズを知ったときも、この理念が強く印象に残りました。

大槻
大槻
アメリカ製の製品はトップダウンなところがあって、マネジャーが「みんなの動きを把握したいからこのツールを使う」ために便利な製品が多いようですね。

対して、サイボウズのキントーンの売りは、ボトムアップで「みんながチームのコミュニケーションを良くしたいから導入する」ツールだといえます。


これはサイボウズが持つ働き方へのこだわりにもつながっています。僕たちが『サイボウズ式』で発信してきたメッセージを海外にも届けていくことが、競合との差別化になると考えているんです。

アレックス
アレックス
私もぜひ、サイボウズの理念を海外へ発信していきたいと思っています。

ただ今のサイボウズ式を見ていると、日本の有名人のインタビューや日本の文化を紹介するような「日本フォーカス」の記事が多いですよね。

大槻
大槻
そうですね。

アレックス
アレックス
本当にチームワークあふれる社会をつくるなら、日本のアイデアだけではなく、世界中のアイデアを集めて良いものを取り入れていくべきじゃないかと思います。

日本に限らず、海外の先進的な事例を取材して、そこから学んでいく必要があります。いつか国内外で先進的な思想を持った企業が生まれてくると思いますが、そこから学んでアップデートしていかないと、サイボウズはイノベーティブな存在だとは言えなくなります。


そうなってしまうのはとてももったいない。私たちは早く、世界レベルでの会話に参加をしなければいけないと思うんです。

大槻とアレックスがテーブルに座って語っている

サイボウズが大切にする「多様性」って?

アレックス
アレックス
サイボウズではかなり自由な働き方ができますよね。
自由すぎる……! サイボウズが最近はじめた新しい「働き方制度」について聞いてみた

大槻
大槻
はい。

アレックス
アレックス
世界的にも進んでいる企業の一つだと思います。

もちろん、海外のテック系企業にも柔軟なところは多いです。フレックスタイム制や在宅勤務といったポイントだけを見れば、サイボウズが特別というわけでもない。


でも、理念と制度と風土があるという点では、唯一の会社だと思うんです。

大槻
大槻
理念と制度と風土。

アレックス
アレックス
チームワークあふれる社会をつくるために、自分たちがチームワークあふれる会社であろうとしていますよね。

そのためにいろいろな制度があるし、働いているみんなは「制度があるから乗っかろう」という感じではなく、「自分がやりたいことをやって、チームに貢献するために制度を利用しよう」と考えています。

大槻
大槻
そうですね。だからこそ働き方が「100人100通り」になるんです。

アレックス
アレックス
そうして理念と制度と風土から生まれるメッセージは、サイボウズにしか発信できないと思います。

でも、サイボウズの考え方という点では、私は入社前にちょっと疑っていた部分もありました。

大槻
大槻
疑っていた?

アレックス
アレックス
はい。サイボウズは「多様性」を大切にしていますよね。それがよくわからなかったんです。

海外の、例えばアメリカの企業であれば働く人は人種も宗教もさまざまなので、自然と多様性について考えることになります。でも日本の企業の場合、働いている人はほとんど日本人ですよね。背景が全然違うと思いました。


そうした中で語る「多様性」ってなんなのだろう?と。

大槻
大槻
ああ、なるほど。

アレックス
アレックス
でも入社後にいろいろな方から教えてもらって、少しずつわかってきました。サイボウズが言う「多様性」って、「みんながそれぞれの働き方で働ける」ということですね。

大槻
大槻
はい。

そういえばこの間、アレックスがツイッターで発信しているのを見て新しい発見があったんですよ。

アレックス
アレックス
発見?

大槻
大槻
「サイボウズの多様性って、よく言われる“Diversity”ではなく“Individuality” (個性)なんじゃないか」ということを言ってくれていて……。

つまり、ここで働く一人ひとりの個性を大切にするということですよね。「たしかに!」と思いました。


実際にサイボウズで働く人を見て、多様だと感じますか?

アレックス
アレックス
そうですね。なんと言うか、変わった人が集まっていますよね。

大槻
大槻
(笑)。

アレックス
アレックス
日本の会社には「みんなが同じように働かなければいけない」というイメージを持っていましたが、サイボウズにはそうした考え方がないと思いました。

みんな、「自分の個性が魅力になるんだ」と考えていて。同じように進むのではなく、「自分の個性をどう発揮するか」ということを考えて動いていますよね。

海外にも「会社という存在に対する疑問」がある

大槻
大槻
ちなみにアレックスは、海外へ向けてどのような記事を作りたいと考えているんですか?

アレックス
アレックス
いろいろあります。まずは、すでに公開されている記事の中から海外にも響きそうなものを選んで、翻訳していきたいと思っています。

大槻
大槻
これまでの記事だとどんなものが響きそうですか?

アレックス
アレックス
サイボウズの社内から生まれたストーリーがおもしろいです。

例えば『大事な商談の日なのに、保育園に預けられない─両親の代わりに営業チームで子守をした話』。

大事な商談の日なのに、保育園に預けられない──両親の代わりに営業チームで子守をした話

大槻
大槻
これは本当にたくさんの人に読んでもらえた記事ですね。

アレックス
アレックス
この記事にある人間関係のエモーショナルな部分は、海外の人々にも届くと思います。こうした記事をどんどん翻訳していきたいですね。

オリジナルコンテンツとしては、今のサイボウズ式の中心である「100人100通りの働き方」についての考え方も発信していきたいです。海外向けの記事では、もっと幅を広げるチャンスもあるかもしれません。

大槻
大槻
というと?

アレックス
アレックス
会社という存在に対するさまざまな疑問に答えたいんです。

会社は儲けを追いかけるだけでいいのか? 個人と会社はどんな関係を築くべきなのか? 会社とはただ出社して仕事をするだけの場所でいいのか? 今の時代に必要なリーダーシップは?

大槻とアレックスが笑顔で話している

大槻
大槻
海外でも、会社という存在に対する考え方はどんどん変わってきていますよね。

アレックス
アレックス
はい。こうした疑問を考えるきっかけを作り、コミュニケーションが生まれるような記事にしていきたいですね。日本に紹介できるものは、どんどん和訳していきたいと思います。

大槻
大槻
アメリカでのインタビュー取材なんかも?

アレックス
アレックス
はい。働き方に関する専門家はアメリカにたくさんいます。アメリカで出版された本が翻訳されて日本に入ってくるケースも多いですよね。「これは」と思う方にインタビューしていきたいです。

ヨーロッパにもおもしろい専門家がたくさんいますし、労働問題に関する専門機関の本部は私のふるさとのスイスにあるので、取材してみたいですね。

大槻
大槻
アレックスのすごいコネクションが発揮されそう……!

アレックス
アレックス
いやいや、それは期待しすぎですよ。

大槻
大槻
この「謙遜のワンクッション」が実に日本的だなぁ。

アレックス
アレックス
新しく海外で一から挑戦することにワクワクしていますか?

大槻
大槻
それはもう、思いきり。

サイボウズ式を立ち上げたときのように、僕たち自身もさまざまな社会課題に触れ、悩みながら進んでいく姿を見せていきたい。めちゃくちゃ気合いが入ってます!

執筆:多田 慎介 / 写真:明石 悠佳 / 編集:大槻 幸夫 ・ Alex Steullet
「あれっ、日本語学校で教わったことと違うじゃん!」──スイス人がサイボウズの面接を受けて感じたこと

「サイボウズの株価が上がらないのは、市場に嫌われているからですよ」と言う株主に、解決策も聞いてみた

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「サイボウズはマーケットから嫌われているから株価が上がらない」

「60代以上の人に認知されていない」

2月5日に開催した「サイボウズ株主Meetup Vol.1」で、参加者の株主のみなさんから出てきた一言です。

「株主vs経営陣」の構図を抜けて、株主と経営陣で会社のビジョンを考えるためのMeetup。そもそも株主のみなさんはどんなことを考えているか。株主としてサイボウズにできることは? みんなで語り合いました。

「株主vs経営陣」の構図をイメージしがちじゃないですか。それがイヤ

青野
青野
株主のみなさん、本日はよろしくお願いします。

僕がサイボウズの社長に就任したのは、14年前の2005年。なんとか生き残りながら、今日に至りました。

「株主のみなさま」と一口に言っても、サイボウズの株を昨日買って今日売る人もいれば、株を長期に渡って持っている人もいらっしゃいますよね。

株主のみなさま一人ひとりが、いろいろな意見をお持ちだと思います。今日はぜひその声を聞かせていただき、ディスカッションしながら、僕たちとチームをつくり、会社を盛り上げていきましょう。
株主Meetupに登壇した青野慶久

青野慶久(あおの・よしひさ)。1971年生まれ。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を行い、2011年からは、事業のクラウド化を推進。著書に、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない』(PHP研究所)など。

山田
山田
こんにちは、サイボウズ副社長の山田です。

僕が入社したのは2000年。管理部門や人事部門を統括したあと、2014年からはアメリカで事業本部を新設するために、サンフランシスコに移住しています。

実は僕、株主総会が大嫌いなんです。
株主Meetupに登壇した山田理

山田 理(やまだ・おさむ)。サイボウズ 取締役副社長 兼 サイボウズUSA(kintone Corporation)社長。1992年日本興業銀行入行。2000年にサイボウズへ転職し、責任者として財務、人事および法務部門を担当し、同社の人事制度・教育研修制度の構築を手がける。2014年からグローバルへの事業拡大を企図し、米国現地法人立ち上げのためサンフランシスコに赴任し、現在に至る。

山田
山田
株主総会といえば、「株主vs経営陣」の構図をイメージしがちじゃないですか。それがイヤなんですよ。

サイボウズでは、「株主のみなさんとチームになって、サイボウズのビジョンを考えるにはどうしたらいいのか?」を、2年前から模索しています。

今年は、株主のみなさんとMeetupを開催することにしました。ちなみに、重大発表はありませんからね(笑)。お互いに交流して、楽しい1日にしましょう。

「サイボウズはマーケットから嫌われているから、株価が上がらないんですよ」

山田
山田
今回は「株主のから騒ぎ」として、テーマについて株主同士で話し合ってもらいます。今日はみなさまが主役、僕がMCです。

それでは、参加者のうちの5名の方に前に来ていただいて始めましょう。
5名の参加者が株主Meetupの舞台に登壇
山田
山田
最初のテーマは「株価が上がらないのですが、どうしたらいいですか?」。

「株主に聞かれても知らんがな」って話かもしれませんが、どう思いますか?
株主さん
株主さん
ずばり、サイボウズはマーケットから嫌われているからですね。だから、マーケットや株主と仲良くしてもらえれば、株価は簡単に上がると思いますよ。
山田
山田
ほう。「マーケットはサイボウズが嫌い」。青野はマーケットが嫌いなんですよね。あ、僕は好きなんですよ(笑)。
社長の青野に無茶ぶりをする山田
山田
山田
こういう提案がありましたけど、青野さん、どうでしょう?
青野
青野
えええ。
会場笑い
青野
青野
なぜ、マーケットから嫌われちゃうんですかね?
無茶ぶりがおもしろい株主Meetupの一場面
株主さん
株主さん
マーケットは基本的に利益が好きだからです。青野社長は「利益は絞りカス」だとおっしゃいますよね。
青野
青野
言っていますね。
株主さん
株主さん
上場しているからには、会社は利益を株主に還元する使命があります。

そこを否定されると、「じゃあ、どうしてマーケットにいるの?」となるんです。
青野
青野
ひとつエピソードがあります。僕が社長に就いたとき、投資家から「IR活動をしなさい」と言われて、投資家を回って広報活動をしたんです。

そのあと、M&A(企業の合併買収)に手を出したら、時価総額で1000億円以上になりました。株価が今よりも何倍も高くなって、もう意味がわからない数字なわけです。
株主さん
株主さん
そうでしたね。
青野
青野
今度は、投資家が「だいぶ儲けさせてもらったよ」と言って、価値が上がった株を売ってしまった。

そのとき、「僕は何をしているんだろう、時間がもったいないな」と思ったんです。
株主さん
株主さん
市場はそうやって循環していくメカニズムですから。投資家は意図的に利益を追求するものなので。
株主さんからは株式市場に関するご意見が
株主さん
株主さん
その結果、利益が出ている会社に、しっかりとお金が集まる。さらに、その会社が生み出したサービスで社会が豊かになる。

それを否定してしまうと、そもそも「資本主義」と「株式会社」自体を否定することになりますよね。
山田
山田
うんうん。そういうことですよ、社長。ちゃんとメモしておいてください。
キレッキレの山田
青野
青野
うーん(笑)。
困り顔の青野
株主さん
株主さん
ただ、誤解がないよう言わせてもらうと、僕は本っ当にサイボウズが大好きなんです。

「Cybozu Days」にも子どもといっしょに行って、青野社長と写真を撮りました。
青野
青野
あ、本当だ。今日のTシャツもサイボウズじゃないですか!
株主さん
株主さん
そうなんです。本当にサイボウズが大好きなので、これからも応援しています。

株主総会がおもしろくて株を買った。60代以上にもっと知ってもらいたい

株主Meetupのテーマは株主総会へ
山田
山田
さっそく熱いですね。続いて、前に座っているあなた。なんでサイボウズの株を買おうと思ったんですか?
株主さん
株主さん
2018年の株主総会が楽しかったからです。株主総会にはつまらないイメージしかなかったけれど、サイボウズは違った。

「こんなに楽しい株主総会があるのか!」と衝撃を受けて、ファンになったんです。
「個人が会社を使うという働き方はおもしろい」──ホリエモンと新しいカイシャを議論したら、生き方の話になった
山田
山田
株主総会で、株主を増やす会社はめずらしいですよね。「サイボウズの株価を上げたい」についてはどうすればいいんでしょう?
株主さん
株主さん
60代以上の人にも認知が広がればいいと思いますよ。わたしは、囲碁が趣味で、70代以上が集まる「囲碁クラブ」に通っているんです。

そこでサイボウズの名前を出しても、「知っている」と言われたことがほとんどなくて。50代くらいの方だと「あ、キントーンの会社だ」と言う方が多いんですけどね。
山田
山田
これは囲碁クラブにも広報しないといけませんね。

「株主vs経営陣」と対峙して戦う理由はない。お金だけで完結せずに、もう一歩踏み込んでほしい

山田
山田
次のテーマです。「株主に求めるもの」。

サイボウズのチームワークあふれる社会をつくるために、業務が拡大していくために、株主としてできることは何でしょう?
株主さん
株主さん
株主は基本的に、お金を出している時点で完結はしています。できることがあるとしたら、IR活動をサポートすることでしょうか。
山田
山田
いいですね。ほかにどうですか? これ、普段は考えたこともないですよね。
株主さん
株主さん
いつもは株主として、業績が上がるように経営陣に要求することを考えていますからね。
山田
山田
そうですよね。

だけど僕は、「株主vs経営陣」と対峙して戦う理由はないと思うんですよ。むしろ、株主のみなさんの力をお借りしたいんです。
株主のみなさんとチームになりたいと話す山田
山田
山田
「お金を出しているのに、これ以上何を求めるの?」と言いたくなるかもしれません。

だけど、お金だけで完結せずに、さらにもう一歩踏み込んでほしい。そして僕らとチームになって、いい社会を作るための何かができれば、おもしろいと思うんです。
株主さん
株主さん
株主が、地方にいる社員の家族のケアをするのはどうでしょう?

働き盛りのサイボウズの社員さんのなかには、親御さんの介護や病院へのお見舞いなどが必要な人がいますよね。

近くに住んでいる株主が、その親御さんの話し相手になれると思うんです。
株主Meetupの参加者のみなさん
ほかの株主さん
ほかの株主さん
いいですね! まさに、株主ネットワーク。
株主さん
株主さん
そうです。その親御さんの子どもはサイボウズの社員だから、初対面でもサイボウズの話ができますよね。

そうやって楽しく過ごして、「じゃあ、また来ますね」とすれば、遠くに住む社員さんは2カ月に1回くらいの頻度で帰省すればいい。そのかわり、週に1回くらいは株主が話し相手になれます。
山田
山田
すごくいいじゃないですか! 60代以上の方にも認知が広がるかもしれない。
株主さん
株主さん
株主としても、サイボウズの話が思いっきりできれば、楽しいですし。
山田
山田
素晴らしい。素敵なアイデア、ありがとうございました。
山田
山田
ではメンバーを入れ替えて、から騒ぎを続けますよ。

次は「サイボウズの素晴らしさとは?」。僕らが言われるとうれしいので、ちょこっと聞いてみたいです(笑)。
サイボウズのいいところを株主さんに聞いてみた
株主さん
株主さん
10年前くらいにサイボウズの株主になったんですけど、実はそのあと、ほったらかしにしていまして……。
山田
山田
いまの株価がいくらかなんて、あまり見ていなかった?
株主さん
株主さん
見ていません。
山田
山田
株主の鏡ですよ。良い株主さんですね、見ないでいいです!
株主さん
株主さん
ははは、ありがとうございます。昨年の株主総会にたまたま行ったらおもしろくて。「すごい会社だな」と注目しはじめました。

「企業理念を石碑に刻むな」。環境やチームの考え方が変われば、ビジョンを変えてもいい

山田
山田
次のテーマは「将来どんな会社になってほしいか」。
株主さん
株主さん
近視眼的になって、「目の前のことだけ」しか考えられない会社には陥ってほしくないです。
山田
山田
たとえばどんなことでしょう。
株主さん
株主さん
「人」を忘れて、変化できない会社にならないでほしいんです。そうすれば、いきなり大きくはならなくても、生き残っていけると思うので。
山田
山田
まさに「企業理念を石碑に刻むな」ですね。これは、環境やチームの考え方が変わればビジョンを変えてもいい、という意味なんですけど。
企業ビジョンは変わってもいいと話す山田
山田
山田
石碑に「青野が考えた企業理念」を刻んだとしますよね。そしたら、僕らの代を継いだ人が、「青野さんだったら、どうするか?」を考えるようになる。

企業理念を作ったときと環境は変わっているのに、ですよ。創業者の思いだけが残れば、結局は変わらない会社になってしまいます。
株主さん
株主さん
そうですね。
山田
山田
だから、企業理念さえ変えてもいいと。「企業理念を石碑に刻むな」を石碑に刻む。うーん、ややこしい(笑)。
株主さん
株主さん
Googleを抜いて、世界一のIT企業になってほしいですね。
山田
山田
Googleを抜いてほしいという意見が出ました。どうですか、社長!
青野
青野
わかりました、必ず。

Googleは検索エンジンが中心なんですが、僕たちは検索エンジンで勝とうとは思っていません。

チームがあって、その人たちが効率良く、楽しくチームワークを発揮するツールでは、絶対にGoogleに勝ちたい。そのために、海外にも拠点をつくっているので。
グループウェアで世界に挑むという決意を話す青野
山田
山田
ほかどうでしょう?
株主さん
株主さん
日本のIT企業にはオリジナリティーが少ないと思っていましてね。ちっちゃなモノでもいいから「これはサイボウズが発祥だ」といえるものがあるといいなと。
株主さん
株主さん
ITに強くない人の意見にも耳を傾けてほしいですね。

わたしはあまりITには強くないんですが、「こんなものがほしいけど、世の中にはない」というサービスがたくさんあるんです。
山田
山田
ITに詳しくない方でも使えるサービスがほしい。
株主さん
株主さん
そうですね。それをどんどん実現してもらえれば、もっとファンが増えて、会社は発展すると思いました。ぜひお願いします。

Cybozu Daysに株主だけしか入れない「株主専用ブース」を設けてみませんか?

ワークショップでは株主さんがチームになり、やりたいことを検討

「から騒ぎ」後は、チームに分かれて、「株主としてやりたいこと」を話しあい、発表してもらいました

ワークショップに青野も参加
株主チームのテーブルを回る山田

青野と山田もテーブルをまわり、各グループの様子をうかがいます

株主チームA
株主チームA
キントーンが「イケてるぞ」「1万社突破!」とは聞いているんですが、実際にプロダクトに触れたことがないんですよ。

実際に体験して「こんな操作性なんだ」って知りたいです。
株主チームB
株主チームB
経営陣だけじゃなく、社員さんとも交流したいですね。

今回のような意見交換会を開催してもらったり、Cybozu Daysの株主版や、サイボウズ社内に「株主と交流できるスペース」を設けてもらったりしてもいいかもしれません。
株主さんから「サイボウズの株主としてこうしたい」という発言が
株主チームC
株主チームC
うん、サイボウズ製品を使ってみたい。いい会社だとは思っているんですけど、実際に製品を触ったことがないので。良さを知ったら、株主から発信できるのかなと思いました。
株主チームD
株主チームD
個人的な話をすると、わたしは今年72才で、年金生活者。会社がこんなに株主をこき使っちゃダメですよ。
株主さんから苦言をいただく場面も
株主チームD
株主チームD
会社が成長するためのアイデアを出すのは、残念ながら株主の仕事じゃない。あんたたちに頑張ってもらわなきゃ。

できることといえば、みなさんが話しているように、株主の身の回りで、サイボウズの製品を伝えることでしょうか。
株主チームD
株主チームD
あと1つ、いまの経営の殻を破るなら、社外取締役やアドバイザーを有効に利用するのはどうなんだろう。いまの経営陣には出てこないアイデアを出せるのではないかと。
司会
司会
実際に行動に移してみようというアイデアがあるチームはいますか?
株主チームA
株主チームA
僕たちのチームからは、Cybozu Daysに株主だけしか入れない「株主専用ブース」を設けるアイデアが出ました。
山田
山田
どんなことをするんですか?
株主チームA
株主チームA
今日の様子を写真で展示して、今回のようなテーマを株主同士で語れるようにするんですよ。しかも、飲み物とお茶菓子が出てくる。
株主さんと一緒にカンファレンスでブースを出せないかというアイデアが
株主チームA
株主チームA
ブースをガラス張りにすれば、株主ではない人は「いいな、楽しそう」と思って、株を買いたくなるかもしれません。
山田
山田
いいですね。すぐにでも実現できそうです。
株主チームA
株主チームA
「いっしょにやるよ」と言ってくれる社員さんがいれば、実現したいと思うのですが。
山田
山田
誰かいる?
田中
田中
わたし、やります!
株主チームA
株主チームA
よろしくお願いします!

世界の競合に負ける気はしない。僕たちのチームには、一緒にチャレンジする1万人の株主がいるから

締めの挨拶をする青野

ここから、乾杯のごあいさつを

青野
青野
今日、「サイボウズの株主はやっぱりすごいな」と感動しまして。

こんなにサイボウズを知ってくれて、こんなに意見を言ってくれて。「会社を経営していて、よかった」と改めて思いました。

「Googleを抜いて、世界一のIT企業に」というお話がありました。正直、Googleはとんでもなく強い会社なんです。

世界の時価総額ランキングには、Googleをはじめ、マイクロソフトやアリババなど、僕らと同じグループウェアを提供している会社が入っています。

でも正直、負ける気がまったくしていなくて、ですね。
 株主さんとチームを組むことの可能性を語る青野
青野
青野
その理由は、僕たちのチームには、いっしょにチャレンジしてくださる株主のみなさまがいるからです。

サイボウズはいま、社員数800人くらいの会社です。ただ、株主は1万人近くいます。つまり、その人たちとチームを組めば、メンバーは10倍に増える。

そのチームでチャレンジすれば、Googleにも追いつけるはずです。

株主のみなさまは、一人ひとり考え方も違えば、普段の取り組みもノウハウも人脈も違います。これをぜひシェアして、チームワークしていく必要があるんだなと強く思いました。

Googleを上回るようなソフトウェア企業にしていきますので、引き続き力を貸していただければと思います。

それでは、乾杯!
株主さんと話す山田 株主Meetupのワークショップの一場面 付箋を使って、ワークショップを進めます 株主Meetup終了後の懇親会は、サイボウズのオフィスツアーを実施 懇親会では、株主さん同士の会話が生まれました 株主Meetup、次回開催をお楽しみに
執筆:流石香織/編集:松尾奈々絵(ノオト)、藤村能光/撮影:小野奈那子/企画:森 信一郎
2019年3月30日開催、チームワーク経営シンポジウムの申し込みはこちらから
「個人が会社を使うという働き方はおもしろい」──ホリエモンと新しいカイシャを議論したら、生き方の話になった
「株主といっしょに作る」株主総会は、本当に実現できませんか?──カヤックCEO柳澤さんとサイボウズで議論してみた
役員のボーナスの一部が、株主のさじ加減で決まるのはアリですか?──株主と会社の理想の関係について議論してみた

マネジメントはいらない、論文数で評価しない──R&Dの理想を追求したサイボウズ・ラボは、こんな組織になった

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「R&D」を知っていますか? 

R&Dは、Research and Developmentの略称で、企業の研究開発業務、またはそれを行う部門・組織のことを指します。企業が将来的に市場で優位性を獲得するための研究・開発を行うことが、一般的なミッションとされています。

とはいえ、実際どういう組織なのか、なかなか想像がつきませんね。

サイボウズにも「サイボウズ・ラボ」という、研究開発を担う子会社があります。今回は、「ラボってどんな組織?」という疑問に答えてもらうために、サイボウズ・ラボの研究員・西尾泰和が、サイボウズ・ラボ社長の佐藤鉄平に話を聞きにいきました。

折しも佐藤は、2018年に社長に就任して、丸1年が経ったところ。

ラボの存在意義は、どうなるかわからない未来、いわば不確実性に対応するということ

西尾
西尾
鉄平さんがサイボウズ・ラボの代表取締役社長になって、1年が経ちましたね。
佐藤
佐藤
ねえ。
西尾
西尾
僕は、「ラボ内に何か変化が起こるのかな」と期待していたんですよ。なのに特に何も起こらなかった。

今日はその「どないなっとるんや」というところを、追及させてもらおうかと(笑)。
佐藤にインタビューする西尾

西尾泰和(にしお ひろかず)。2006年、24歳で博士(理学)取得。2007年よりサイボウズ・ラボ株式会社にて、チームワークや知的生産性を高めるソフトウェアの研究に従事。著書に『コーディングを支える技術』『word2vecによる自然言語処理』『エンジニアの知的生産術』など。2014年技術経営修士取得。2015年より一般社団法人未踏の理事を兼任。2017年からサイボウズ・ラボ株式会社で働く傍ら、株式会社ビープラウドでも複業を行う。Twitter: @nishio

佐藤
佐藤
おお、がっつりインタビュアーな感じなんだね。
西尾
西尾
で、社長になってどうですか? 意識していることってあります?
佐藤
佐藤
いやー、マネジメント、というかコントロールしないってことですよね。
西尾
西尾
ほう。といいますと?
佐藤
佐藤
ラボの存在意義は、どうなるかわからない未来、いわば不確実性に対応すること。

だから、「この研究をしてください」と指示を出してしまうと、その時点でラボの存在意義と矛盾しちゃうんです。
質問に答える佐藤

佐藤鉄平(さとう てっぺい)。1982年新潟県生まれ。2007年サイボウズにエンジニアとして入社。Garoon、kintoneの開発を経て、2015年7月グローバル開発本部副本部長に就任。2018年に執行役員グローバル開発本部長兼サイボウズ・ラボ株式会社代表取締役社長に。Twitter: @teppeis

西尾
西尾
確かに。R&Dとしての役割を果たせていないことになりますからね。
佐藤
佐藤
そうそう。だからメンバーは、会社の方向性を理解した上で、各自の専門性をどう生かすのかを考えて動いてもらわないと。

でもそれは、ラボだけが特別じゃなくて、本社も同じ。今後のサイボウズは、よりメンバーやチームが自律的に動けるような場になっていくんだと思います。
佐藤
佐藤
これまで部長と呼ばれていた人たちも、チームを管理するのではなく、支援する立場にシフトしていきます。
西尾
西尾
ふむふむ。じゃあ鉄平さんが代表になって「何も変化がなかった」のは、マネジメントが不要だから、むしろ良いこと……?
佐藤
佐藤
まあ、実際には8月に僕がキントーンのプロダクトマネジャーをやることになっちゃって、2018年の後半はほとんどラボに手がかけられなかったという理由もある(笑)。
西尾
西尾
ははは。そりゃ緊急度の高い方が優先されますからね。
佐藤にとりあえず納得した顔を見せる西尾

共感は本社より大切?

「ラボには理想への共感しか縛るものがない」

西尾
西尾
ラボをマネジメントしないとはいっても、組織である以上、人を束ねるために必要なことはありますよね?
佐藤
佐藤
「チームワークあふれる社会を創る」というサイボウズの理想への共感ですね。
西尾
西尾
理想への共感は、本社の採用でも重要視していますよね。本社と変わらず、ということですか。
佐藤
佐藤
むしろ、本社よりも重要だと思っています。ラボには理想への共感しか縛るものがないから。
西尾
西尾
というと?
佐藤
佐藤
本社ならチームとしての仕事があるし、具体的な業務がある。

でも、ラボは個々人でテーマを設定しての研究活動が中心。だから、サイボウズの理想への共感が強い人じゃないと、「入っても何をすればいいのかがわからない」って、ぼんやりしちゃうんですよ。
西尾
西尾
なるほど。自由なラボだからこそ、「何をしたらいいですか?」って上司に聞くような組織じゃない、と。

長期的な視点・専門的な研究でビジョンを達成していくのがラボの姿

西尾
西尾
サイボウズとは別の組織として、ラボ自体の理想やビジョンはありますか?
佐藤
佐藤
1つは、視点が長期的だということです。

本社は、いま提供しているプロダクトとか、具体的なビシネスやユーザーを考えて活動している。
西尾
西尾
ふむふむ。
向かい合って話す佐藤と西尾
佐藤
佐藤
それに対してラボは、「こうなるかもしれない」とか「こうなったらいいな」という観点で研究したりプロトタイプを作ったりしている。もう少し長期的な視点だよね。
西尾
西尾
「来るかどうかわからない未来」を見つめる視点なんですね。
佐藤
佐藤
そうそう。そしてもう1つの違いは、メンバーがエンジニアリングの専門性を持っていること。

要するに、「長期的な視点で各々のエンジニアリングの専門性を使って、サイボウズの掲げているビションを実現するために動く」のがラボの理想の姿なんだろうな、と。

エンジニアリングってそもそも何?「社会をより良くしていくための学問」って?

西尾
西尾
「エンジニアリング」って言葉は人によっていろいろな解釈があると思うんです。鉄平さんはどのようにとらえているんですか?
佐藤
佐藤
エンジニアリングは、日本語だと「工学」と訳されるけど、一般的には「技術」のイメージが強いと思うんだよね。

でも僕は、もっと広い意味で考えていて。たとえば、文部科学省による「工学」の定義には、「自然科学だけでなく社会科学の知見も使って社会に有用なものを作る学問」みたいなことが書いてある(*1)。

(*1)工学は、数学と自然科学を基礎とし、ときには人文社会科学の知見を用いて。豊かな経済基盤に立脚した安心・安全な社会を実現するために有用な事物や快適な環境を構築する学術分野である。(文部科学省 工学系科学分野の研究動向(要旨)より)

向かい合って話す佐藤と西尾
西尾
西尾
そう説明すると、世間一般の「エンジニアリング」という言葉のイメージとは異なる印象かもしれません。
佐藤
佐藤
本社の開発本部は、エンジニアリングの中でも技術を使って製品を開発する活動が中心。そこをもう少し、概念として広い分野に取り組むのがラボの研究なんだよね。
西尾
西尾
うんうん。
佐藤
佐藤
技術的な部分の探究以外にも、ラボの場合は「そもそもチームワークってなんだろう」とか「どんなことをしたら、よくなるだろう」とか、社会科学的な研究も視野に入って……。
話す佐藤
西尾
西尾
「チームワークあふれる社会」というビジョンを目指すなら、「じゃあ、その社会って何?」「そこにどういう力学が働いているの?」と問う視点を持つ必要がある。

社会システムに対する、システムエンジニア的な視点という感じですね。
佐藤
佐藤
まさにそう。問題を解決するにはいろんなアプローチがあるけど、ラボでは工学面からアプローチをしているよね。
西尾
西尾
「工学面から」とは、仮説を立てて、試して、結果を見て、仮説を修正して、というように実験を回していくイメージですか?
佐藤
佐藤
うん。自然科学的な研究によって、問題を解き明かしていくというとわかりやすいかも。
西尾
西尾
なるほど、実験科学的といってもいいかもしれませんね。

論文や特許の数を評価基準にせず、カウントすらしないのはなぜ?

西尾
西尾
「サイボウズ・ラボユース」(*2)もそうですが、サイボウズは「未踏ジュニア」(*3)にも協力しています。

本社もラボも、社会貢献の枠組みで人材育成に力を入れていますよね。

(*2)世界に通用する日本の若手エンジニアの発掘と育成を目指すことを目的とし、学生の若手クリエイターに研究開発の機会を提供する場として、2011年3月31日に設立。1年間学生が自分の好きなプロジェクトに取り組むのを、サイボウズ・ラボのメンバーがメンターとして参加する。

(*3)独創的なアイデアを持つ小中高生クリエイターに対し、各界で活躍するPMやその他専門家による指導、また最大50万円の開発資金の援助を行うプロジェクト。

佐藤
佐藤
そうだね。
西尾
西尾
彼らはサイボウズ製品の直接的なユーザーではないし、特に「未踏ジュニア」は、高校生以下を対象にしているから、短期的には採用にもつながらないですからね。
佐藤
佐藤
「将来、いいエンジニアに育ってほしい」という思いもあるけど、エンジニアにならなくてもいい。「そんな経験を持つ人が増えれば、より良い世界につながるはずだ」という考えが根底にあって。
西尾
西尾
たしかに。
佐藤
佐藤
ラボでは評価を行う上でも、「社会に貢献しているかどうか」というのが重要なポイントとなっています。
西尾
西尾
R&Dなどの研究機関では、論文や特許の数による評価制度を採用しているところが少なくない。

でも、サイボウズ・ラボだと、その数を評価基準にしていないし、カウントすらしてないですよね。
向かい合って話す佐藤と西尾
西尾
西尾
「個々が取り組んだ結果、こういう価値が生まれました」という個別の成果を、事後的に評価していますもんね。なんでこういう体制なんでしょうね?
佐藤
佐藤
サイボウズにとっては、数を基準としちゃうより、ビジョンに向かっていくのが当たり前だと思っていたから、自然とこうなったんじゃないかな。

人生の責任は取れないけれど、半年からでどうですか?

西尾
西尾
ラボにはいま、10人ほど在籍していますよね。今後、人数を増やす予定はあるんですか?
佐藤
佐藤
組織にマッチした人がいれば増やしたいです。
西尾
西尾
マッチした人……。どういう人を募集しているのか、言語化しないとマッチした人を探すのは難しいですよね。

「チームワークあふれる社会をつくっていくために何が必要か」を考えられる人で、専門性を持っていて、自分で動いていける人?

うーん、そんな人をどうやって見つけたらいいんですかね?
佐藤
佐藤
そうだなあ。西尾さん、誰か呼んできてよ、いい人。
西尾
西尾
いやいやいやいや。
笑う西尾
西尾
西尾
「いい人紹介してよ」って、いろんな人から言われますけど、まず「いい人」の定義が明らかじゃないと、紹介できないですからね。
佐藤
佐藤
その通りだ(笑)。
西尾
西尾
それに紹介した人が、将来その組織でハッピーになるかどうかがわからないと、紹介した側としては責任を持てなくて、腰が引けちゃう。なので、とりあえず入ってみてから考えてもいいと思うんですよね。

「人生の責任は取れないけれど、半年からでどう?」とかできればいいけど。
話す佐藤
佐藤
佐藤
あ〜。半年限定とかインターンとか、まずお試しできる機会を増やしていくと良いのかもしれないですね。
西尾
西尾
学生なら「サイボウズ・ラボユース」から、気軽にかかわれますからね。

ラボに必要なのは、個人が創造性を最大限発揮できるマネジメント

西尾
西尾
ラボがどういう組織なのかを発信するというのは、今後の課題の1つかもしれませんね。

今後、ラボでチーム作業を推進することを、考えていますか? 
佐藤
佐藤
やるとしても固定的なチームではないですね。プロジェクト単位で、くっついては散らばる感じ。
西尾
西尾
それでいえば、現状でも同じですね。シナジーがあると感じたらすぐくっつき、終わったらすぐ離れる。
佐藤
佐藤
ラボのメンバーは、それぞれの専門性を持っているから、言ってしまえば組織立って動く必要がないんですよ。

個々のメンバーがテーマを持って取り組んでいく場所だから、チームをまとめる必要がない。
西尾
西尾
うん、そうなりますよね。
佐藤
佐藤
だから、社長になってからも、組織として特に何も起こさなかったのかも。そのあたりはちょっとメンバーに甘えているのかもしれないけど。

全体がゆるやかなチームだから、個人が創造性を最大限発揮できるマネジメントが必要なんだろうね。
西尾
西尾
なるほど。今日は鉄平さんのいろんな考えが聞けて面白かったです。

これからラボがどんなチームになっていくのか、僕も楽しみにしています。

対談後、キントーン上でこんなやりとりが……。

キントーン上の佐藤さんと西尾さんの会話。佐藤:「西尾さんと1.5時間対談するのは脳ミソが疲れますね」西尾:「脳が鍛えられますね!」
執筆・小栗詩織/編集・松尾奈々絵(ノオト)/撮影・栃久保誠/企画・鈴木統子
「たとえ報酬がゼロでも、複業をやっていた」──西尾泰和がサイボウズ・ラボを辞めずに、機械学習の技術顧問を始めた理由
エンジニアがイノベーションを実現するための7ステップ──中土井僚×西尾泰和、U理論で未来から学ぶ方法を解き明かす
U理論はエンジニアの学び方を変えられるか?――中土井僚×西尾泰和、過去の枠組みにとらわれないイノベーションのプロセスを考える

「会社でモヤモヤしたことを言いづらい……」とためらっていたら、同僚に一喝されてしまった

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「新しい働き方」「自由な働き方」「働きやすい会社」──。ここ数年で、世の中でよく聞くようになった言葉たち。サイボウズも「働きやすい会社」として取り上げていただくことがあります。

そして、実際に中にいるとなかなか気づかないのですが、サイボウズには、転職してきた人やお付き合いのある企業の方々が思わずびっくりしてしまうような「ちょっとおかしい」会社の常識があるようです。

「働きやすい会社」には、世の中の常識からちょっと外れた、その会社ならではの少しおかしいアタリマエが存在するのかも……? 

そんな常識を少しずつ紹介していく連載、「働きやすい会社のヘンなところ」。第3話は、働く中で生まれる「モヤモヤ」に対する向き合い方についてのお話です。

第3話:先輩にイジられるのが辛い……。そんな時どうすればいい?

ラウンジで落ち込んでいる細野さんに、篠原さんが声をかける飲み会で細野さんの過去の写真が見つかり、それ以降、チームのみんなが冷やかしてくるのだと説明する細野さんいやだと思うのなら、ちゃんと言った方がいいと言う篠原さん。質問責任と説明責任という言葉を知っているか細野さんに尋ねる過去にサイボウズで起きた、「新人がイヤホンをつけて仕事するのはいかがなものか」という議論について説明する篠原さんもし嫌だったら聞いてみようと思う細野さん、しかし過去の記憶が蘇り、なかなか実行に移すのは難しそうなのであった

「説明責任」と同時に、「質問責任」がある

サイボウズには、「質問責任」と「説明責任」を大事にするという文化があります。社内制度や人間関係、誰かの発言などに対してモヤモヤしたことがあれば、小さなことでも質問・意見する責任があり、また、質問された側にはちゃんとそれに対して答える責任がある──。モヤモヤしているのに直接言わず、隠れて居酒屋などで愚痴を言うことは「悪」とされます。

自分より目上の人に対しては、なんだか意見しづらい。そんな時にも、「質問する側にも責任がある」という共通認識を持つことで、年齢や立場に関係なく、フラットに議論できる文化がつくられていると感じます。

モヤモヤしたことがあれば、すぐにその場で解消する──。これは、チームで気持ちよく仕事する上でとても大事な姿勢なのではないでしょうか。

(つづく)

マンガ:山里將樹 企画編集:明石悠佳

理不尽を受け入れること──質問責任と説明責任が大事
「長時間労働と定時退社の社員が仲良く仕事」なんて、あり得ないと思ってた
「転職先、会話が少なくて寂しい……」と思いきや、オンラインがにぎやかだった

「あれっ、日本人のカタカナ英語ってヘンじゃない?」──スイス人が日本でのコミュニケーションで難しいと思うこと

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アレックスの「あれっ?」、サイボウズに入社したスイス人の観察記、第2回。

2018年の11月にサイボウズに入社したアレックスと申します。スイス出身です。よろしくお願いいたします。

……という自己紹介は、そのまま日本語学校で覚えたものです。就職活動では、尊敬語、謙譲語、ビジネスマナーなどが必要になると聞いたので、フラッシュカードやYouTubeで毎日寝る前に練習しました。そして、同じシェアハウスに住んでいる日本人のハウスメイトにも「日本で働くのはどんな感じ?」と聞いていたので、なんとなく日本で働くイメージは、頭の中にありました。

しかし、いざサイボウズに入社してみると、教わったイメージと違っていて「あれっ?」と思うことが何度もありました。この連載では、「サイボウズでの会社員生活」で得た気づきを、外国人視点でお伝えしています。サイボウズに入社したスイス人の観察記、第2回です。

日本の会社の時間管理、聞いていた感じと違って「あれっ?」

レストランで友人と食事をするアレックス。友人によると、ヨーロッパに比べると日本は働きにくいと言う。アレックスはその違いを尋ねる。

時間管理が厳しく、1分の遅刻でも遅延証明書が必要、と説明する友人。それに対して、「そんなことをしていたらもっと遅くなるのではないか」とあきれるアレックス。

ランチは12時に一斉にとると説明する友人。どこにも行列ができているから、効率が悪いのではないかと答えるアレックス。

サイボウズに入社後、「タイムカードがあるのか」と部長に尋ねるアレックス。「タイムカードはない。電車が遅れた時はフェイスブックのメッセージなどで連絡をくれれば大丈夫だ」と答える部長。

ランチの時間は何時からか尋ねるアレックスに対し、好きな時に行っていいと答える部長。

いちいち管理はしない。仕事さえすればお任せしますよ、と笑顔で話す部長に対し、「サイボウズって本当に日本の会社?」と思うアレックス。

アレックス
アレックス
僕には、伝統的な日本の会社で働いている外国出身の友達が数人います。その働き方は、大体2つのパターンに分類される気がします。

1つ目は、日本人社員とまったく同じようなパターン。勤務時間が決められていて、残業が多くて、自立性がない。機械の歯車みたいな感じ。2つ目は契約社員で、タスクも働き方も、日本人の社員とは違うパターン。自立性はあるけれど、社外の人のように見られている感じ。

サイボウズは、やはり日本の伝統的な企業とは違い、「100人100通り」の考え方で、自立性が重視されています。同時に、チームで働くのをみんなが楽しんでいます。僕にはサイボウズの働き方が合っているかな。

日本語でフィードバックを受けることに対して「あれっ?」

アレックスが海外で働いていたときは相手の言いたいことを文脈から察することができた。自分のレポートに対し、「面白い情報があった」と言われるアレックス。

「レポートが面白かった」ではなく、「面白い情報があった」と言われ、全体的には面白くなかったのかな、と推測するアレックス。

笑顔でそう言った上司の様子を思い浮かべながら、今後は気を付けようと考えるアレックス。

しかし、アレックスは日本に来てからそういうニュアンスがわからなくなった。「レポートありがとうございます。わかりやすかったですね」と言われるアレックス。

わかりやすいとは、難しくなくて良いという意味か、子供っぽいという意味か混乱するアレックス。

部長が無表情だったことを思い出し、部長の本心がまったくわからず、ストレスでがっくりするアレックス

アレックス
アレックス
言葉や文化がネイティブな日本人ほどわからない外国人にとって、相手の本意を表情や言葉づかい、文脈から推測するのはとても大変です。

日常のかんたんな業務においてもそうです。特に言葉づかいにこだわっているサイボウズ式編集部員とのやりとりは、たまにフラストレーションの原因になります。自分もオシャレな言葉を使いたい、校正不要な文章を書けるようになりたいとは思うのですが……。

いつかできるようになるのかはわかりませんが、とりあえず勉強を頑張ります。サイボウズのみんなが寛容なのが、とてもありがたいです。

英語っポイけど、それ全然英語じゃないよ……。カタカナ英語に対する「あれっ?」

カタカナ英語は外国人に伝わりやすいと思っている人が多いかもしれないけど、実は意外とわかりにくいと考えているアレックス。

例1、ウイルスは、外国人が聞くと、wheels、日本語で車輪と誤解される。英語の発音は、ヴァイラスに近い。

例2、コンセントは、外国人が聞くと、consent、日本語で同意と誤解される。英語では、socketという。

例3、リスケは、外国人が聞くと、risqué、キワドイという意味になってしまう。

例4、ブレインストーミングの略のブレストは、外国人が聞くと、breast、胸という意味。略語は伝わらないどころか誤解を招くこともあるので気をつけましょう。

アレックス
アレックス
日本人が普段使うカタカナ英語で、実は英語ではない言葉は、意外と多いです。「この言葉は英語だから、外国人にも通じるはず」と思っている日本人の方は、少なくないんじゃないでしょうか。

カタカナ英語を使う際は、本当に「英語」なのかを考えたほうがいいんじゃないかなと思います。外国人と話すときは、普段使っているカタカナ英語が英語で通じるかどうかを相手に聞いてみましょう。きっと、コミュニケーションがスムーズになります。

ちなみに、いまは私もめちゃカタカナ英語を使っています! 「ブレストしましょう」とか……(笑)。

マンガ:夕海 編集:アレックス

「あれっ、日本語学校で教わったことと違うじゃん!」──スイス人がサイボウズの面接を受けて感じたこと

アメリカでも、カイシャが人を幸せにする方向に進んでいないのではないか──社長 青野×副社長 山田、海外に再挑戦する理由

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「なぜサイボウズは、2度目の海外進出に挑んでいるんですか?」

サイボウズ式編集部の新メンバーとして海外発信のミッションに挑むアレックスは、素朴な疑問を感じていました。

サイボウズは過去に一度、アメリカへ進出して失敗しています。それなのになぜ、また海外へ出ていこうとするのか……。

その問いに答えてもらうため、アレックスは代表取締役社長の青野慶久と副社長の山田理を「サイボウズBAR」に招いたのでした。今日はアレックスがバーテンダー役。

「ちょっと時間は早いけど、とりあえず乾杯しましょうか」

人が追いかけ続ける海外の景色とは――。

「インターネットなら世界中で売れるやろ」。1回目のアメリカ進出で、見事に大失敗

アレックス
アレックス
そもそもの話になりますが、サイボウズが2001年にアメリカにオフィスを開いたのはなぜですか? これが1回目の挑戦ですよね。

青野
青野
創業者の3人(*)とも、もともとグローバル志向が強かったんですよね。最初に作った「サイボウズ Office 1」は、1998年1月に英語版を公開していて。

(*)高須賀宣、畑慎也、青野

山田
山田
それって、創業の翌年ですよね? まだ3人しかいないとき。

青野
青野
そうそう。事務所は2DKのマンションでした。

あり得ないですよね。まだ日本での売上もほとんど立っていないのに、友だちの旦那さんのオーストラリア人に製品内の文章を訳してもらって、ホームページも作って。

でも当時から、何とか海外へ進出したいと思っていました。

山田
山田
僕が入社したときも「世界へ出ることにこだわっているな」と感じましたよ。「インターネットやねんから、世界中で売れるやろ!」みたいなシンプルなノリで……(笑)。

青野
青野
今にして思えば、そんなノリだけで売れるはずがないんですけどね(笑)。1回目のアメリカ進出は、見事に大失敗で終わりました。
サイボウズの社長青野慶久や副社長山田理がサイボウズのBARに乾杯しています

サイボウズの社内にある「BAR」で、2人にお話を聞きました。まずは乾杯

山田
山田
最初のときは3年間やりましたよね。

青野
青野
そうですね。前任者が3年やって、その後は僕が引き継ぎましたが、ほぼ「敗戦処理をするだけ」という状況でした。

山田
山田
スタッフは現地採用で、日本からは人をほとんど出していませんでしたよね。

青野
青野
日本側からほとんど支援がない状態で、「とりあえずアメリカはアメリカで頑張ってね」という感じ。

山田
山田
あの当時って、「海外でうまくいかない日本企業あるある」だった気がするんです。中間管理職が予算だけ渡され、限られた条件の中、自分たちでやるしかないという。

ローカライズだ何だと言いながら孤軍奮闘して、本社に助けを求めても大変さを理解してもらえない。逆に「何でそんなに金がいるねん」と言われてしまうような……。

青野
青野
それじゃあ出口が見えませんよね。

山田
山田
そう。まさに「出口の見えないトンネル」ですよ。

僕たちは十分にリソースを持っていなかったのが、逆によかったのかもしれません。撤退の決断をずるずると引き伸ばすことがなかったから。

文化も企業の形も違うのに、ノー調査で突撃してしまった

アレックス
アレックス
その中でも特に大きな失敗の理由はなんですか?

青野
青野
いや、もう、すべてにおいてダメでしたね。

そもそも日本の事業で資金的な余力を得られていないのに、アメリカにも投資し続けなければいけないという無理ゲーでしたし。

山田
山田
フルコミットできなかった?

青野
青野
全然できない。

山田
山田
製品的にはウケたんですか?

青野
青野
日本でいちばんウケた「スケジュール共有」の機能も、アメリカではダメでした。

お客さんのところにヒアリングにいったら、「なぜ上司に僕のスケジュールを見せなきゃいけないんだ? 上司が僕のことを信頼していれば、見せる必要はないじゃないか」と言われるんですよ。

山田
山田
ああ。

青野
青野
施設予約の機能も通用しませんでした。アメリカでは大きな会社は役員や社員が個室を持つから、「会議室を押さえる」というニーズがなかったんです。

山田
山田
文化も違うし、企業の形も違うということですね。

青野
青野
はい。だから、アプリケーションに依存するのではなく「もう一つ下のレイヤーにいかなきゃいけない」と思いました。

例えばPCなら、どこの製品にもインテルのCPUが入っているじゃないですか。

僕たちもそんな感じで、完成品はベンダーさんに任せて、その下を支えるレイヤーの製品を作らなきゃといけないんだと痛感しましたね。
サイボウズの社長、青野慶久が話しています

青野慶久(あおの・よしひさ)。1971年生まれ。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を行い、2011年からは、事業のクラウド化を推進。著書に、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない』(PHP研究所)など。

山田
山田
アプリケーションだと、競合もめちゃくちゃ多いですしね。

青野
青野
うん。アメリカでは、超ニッチな領域でもパッケージベンダーが何社もあるんですよ。

びっくりしたのは、「ファミリー経営しているリムジン会社用」のパッケージソフトがあって。

山田
山田
もう、よくわからないレベルのニッチさですね(笑)。

青野
青野
日本だったら絶対パッケージにはならないでしょ?

市場自体が大きくて、どんどん新しいプレイヤーが参入してくるから、自分たちの立ち位置をしっかり決めておかないと太刀打ちできないんですよ。

山田
山田
それは今も変わらないし、もっとすごい状況になっています。プレイヤーは世界中から集まって来ているし、GAFA(*)に代表される超大手は利益をどんどん投資に回していくし。

(*)Google、Apple、Facebook、Amazonの4社

青野
青野
最初に進出したときは、そんな分析はまったくしていなかったんですよね。ノー調査で突撃。

山田
山田
「調査してから行くなんて、ベンチャーの感覚じゃない!」みたいに思っているところがありましたよね(笑)。

青野
青野
「まずは行くんだ」と。リサーチを兼ねてね。

2回目のチャレンジのときは日本の事業も伸びていたし、山田さんが入って上場して10億円ほど調達できたので、国内の売上も順調で資金的な余裕もありました。

文化に依存せずに提供できるサービスについては、マイクロソフトのような最強の競合とも棲み分けられるよう研究していました。

「本社をアメリカへ移すべきでは?」「子育てがあるから無理」「じゃあ僕が行ってもいいですか?」

アレックス
アレックス
最初に海外へ出る目標がアメリカだったのはなぜですか?

青野
青野
まずは世界で最も市場が大きいこと。日本では10%くらいのシェアを取らないと儲からなくても、アメリカなら3%で利益が出る。それならニッチな分野でもやっていけるのでは? と思いました。

もう1つは、アメリカに世界最高峰のソフトウェア企業が集まっていることですね。そこで実績を残せれば、さらなるグローバル展開が見えてくる。

山田
山田
「アメリカを制する者は世界を制する」のがITの世界ですよね。

だから僕は「本社をアメリカへ移すくらいの気持ちでコミットすべきでは?」と提案したんですけど。

青野
青野
そうでしたっけ。

山田
山田
青野さんに「子育てがあるから無理」と言われたんですよ(笑)。

青野
青野
ああ、言ったかも(笑)。

山田
山田
それで「じゃあ僕が行ってもいいですか?」と。
サイボウズの副社長、山田理が話しています

山田 理(やまだ・おさむ)。サイボウズ 取締役副社長 兼 サイボウズUSA(kintone Corporation)社長。1992年日本興業銀行入行。2000年にサイボウズへ転職し、責任者として財務、人事および法務部門を担当し、同社の人事制度・教育研修制度の構築を手がける。2014年からグローバルへの事業拡大を企図し、米国現地法人立ち上げのためサンフランシスコに赴任し、現在に至る

青野
青野
僕としては、山田さん以外の人に任せる選択肢はありませんでした。

どんなに資金があっても、アメリカでもう一度戦うには「最高のサービスを生み出せるチームを作る」しかないと思っていたんです。

しっかり時間をかけて、サイボウズっぽいチームを作らなきゃいけない。そのためには山田さんに行ってもらうしかないと。

山田
山田
チームを作る過程では「日本のメンバーをどう巻き込めるか」が大事で、そのためには「青野さんと僕が握れている」ことが必須でした。

間に本部長が入って青野さんと話しているレベルではなく、実質的に青野さんがアメリカへ行ってコミットしているような状態じゃないと進まない。

だから、僕が青野さんと同じように判断できることは大きいですね。

青野
青野
そうですね。

山田
山田
現地での採用もそうです。いくら夢を語っても、日本のベンチャーが立ち上げた事務所に入ろうとしてくれる人はどうしても少ない。

でも、日本の副社長が来ているとなれば本気度も伝わります。

「権限はちゃんとあるのか?」と聞かれれば、「俺が来てるってどういうことだと思う?」と答えられますからね。

青野
青野
安心感を持って働いてくれる人が増えることで、サイボウズっぽい風土の会社になっていくんですよね。

日本で言うところの働き方改革はとっくに終わっているアメリカ。だけど幸せじゃない?

アレックス
アレックス
サイボウズには「チームワークあふれる社会をつくる」という理念があって、僕もそれに共感しているのでここにいます。

アメリカにもサイボウズの理念をそのまま輸出できていると思いますか?

山田
山田
少しずつではありますが、共感してくれる仲間は増えています。

アメリカは多民族でダイバーシティが当たり前なんだけど、「優秀な人がいかに会社を成長させ、株価を上げられるか」ばかり注目されている面もあると思っていて。

優秀な人たちでさえ「お金のために自分はどこまでやらなきゃいけないの?」「もっと人生を良くしていきたいんだけど」と感じるようになってきている。それも背景にあるのかもしれません。

青野
青野
アメリカの「カイシャを取り巻く雰囲気」も変わってきているということですね。

山田
山田
そうですね。かつてはアメリカにも高度成長期があって、ゼネラル・モータースなどの大企業で長く働くことがステータスとされる時代がありました。

青野
青野
だけど、ITベンチャーがたくさん出てきて世界トップの経済力を持つようになった。

山田
山田
はい。リモートで働くことなんて当たり前になっていて、日本で言うところの働き方改革はとっくに終わっているんです。

でも、そんな働き方改革を経験した人たちが今になって「幸せじゃないよね」と感じ始めている。
サイボウズ式のグローバルコンテンツ担当、Alexが話しています

Alexander Steullet(通称アレックス)。サイボウズ式のグローバルコンテンツ担当として、2018年11月にサイボウズへ入社。 ソ連生まれ、スイス出身。

青野
青野
日本では「長時間労働をやめよう」と言われているけど、アメリカではティール組織でいうところのオレンジ、「成果主義に支配された組織」に疲れ果てているのかもしれませんね。

山田
山田
だから、僕たちはアメリカでも、働き方を語る文脈で面白い立ち位置にいると思うんですよ。

サイボウズの文化が広まっていけば、キントーンも自動的に広まっていくはずです。

従来型の社内システムでは基本的に権力を持つ人が情報を統制して成果主義を推進するけど、キントーンは真逆で、みんなに情報を開放していくための仕組みですから。

幸せになるために人が作ったカイシャが、人を不幸にしている

青野
青野
もともとカイシャって、人が幸せになるために人が作ったものじゃないですか。それが日本では存在感が大きくなって「カイシャさん」になっちゃった。

人のためにカイシャがあるんじゃなくて、カイシャさんのために人がいるような状態になっています。

アメリカではちょっと違って、CEOが人やお金を支配する仕組みとしてカイシャを利用している。

これって、「幸せになっていない人が多い」という点では共通していますよね。

山田
山田
はい。「人が幸せになるために活動するんだ」という根本は変わらないんだと思います。それをやるためにカイシャという仕組みが便利だから使っているだけで。

だけど、今は日本でもアメリカでも、カイシャが人を幸せにする方向に進んでいません。

だから僕たちはシンプルに「人を幸せにするカイシャにしよう」と言えばいいんだと思います。そこで働いている人が幸せになるためにカイシャがあるのだと。

青野
青野
それって、まさにサイボウズっぽいですよね。働き方も生き方も100人100通りであることを大切にしながらチームワークを実現できれば、めちゃくちゃ楽しいんだよと。

山田
山田
そうですね。「100人100通り」のメッセージって、僕はアメリカのほうが響くんじゃないかと思っています。日本では多様性といっても男女差くらいしか出てこないけど、アメリカでは人種や宗教、LGBTについても考えているので。

アレックス
アレックス
でも現実には、マイノリティと呼ばれる人が格差の下に置かれている状況でもあります。

山田
山田
だからこそ「100人100通りでいいんだ。あなたの属性は一切関係なく、あなたが幸せになることこそが大事なんだ」と伝えていきたいんですよね。

このメッセージは、アメリカが長い歴史の中でずっと目指してきた理想像とも重なります。ずっとやりたくて仕方がなかったこと、でもまだ実現できていないこと。

青野
青野
うん。

僕たちは、アメリカの夢を応援できる存在としても活躍していきたいですね。
執筆:多田 慎介 / 写真:土田 凌 / 編集:藤村 能光 ・ Alex Steullet
「あれっ、日本人のカタカナ英語ってヘンじゃない?」──スイス人が日本でのコミュニケーションで難しいと思うこと

結婚という「契約の重さ」が私には合わなかった。1度目は法律婚、2度目は事実婚を選んだ理由──水谷さるころさん

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人生100年と言われる時代に、今このタイミングで一生の愛を誓っていいの? 失敗したらどうしよう? これまでキャリアを築いてきた自分の名前を変えたくない──。そんな思いが頭をよぎって、「結婚」を躊躇している人もいるかもしれません。

そんな時、「事実婚」という選択肢が浮かんできたとしても、まだまだ一般的ではないその選択肢に懐疑的な人もいると思います。法律婚を前提につくられている社会で、不利益を被(こうむ)ることはないのかな? そもそも「法律婚」と「事実婚」って何が違うの?

そんな思いをもとに、「法律婚」と「事実婚」、そのどちらも経験されているイラストレーター・マンガ家の水谷さるころさんにお話を聞きました。

1回目の結婚では、「結婚生活をなめていた」ことに気づいた

徳
水谷さんは30歳で初婚を経験されていますが、結婚する前はどんな「結婚観」を持っていたんですか?
水谷
水谷
当時は、「結婚=籍を入れるもの」「結婚=幸せ」という図式になんの疑問も抱いていませんでしたね。

というのも、自分が生まれ育った家族のあり方に影響を受けていまして。
徳
どんなご家庭だったんですか?
水谷
水谷
うちは、父が稼いで母は専業主婦、夫婦仲も超円満、郊外の戸建てに住み、4人姉弟全員が都内の私立校に通うといった、昭和後期の典型的な「恵まれた家族」でした。

しかも、父はいわゆる亭主関白でもなく、お酒も飲まず、母にも私たちにも優しい人。
徳
絵に描いたような幸せな家庭で育ったんですね。
水谷
水谷
そうなんです。だから、結婚すれば両親みたいに幸せになれると思い込んでいて、私も時期がきたら結婚するものだと信じて疑わなかった。「とにかく結婚したい」と思っていましたね。
お話をされる水谷さん

水谷さるころ(みずたに・さるころ)。1976年1月31日、千葉県生まれ。女子美術大学短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。1999年に「コミックキュー」にてマンガ家デビュー。2016年に自身の結婚、離婚、事実婚で再婚したアラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。さらに出産した経験をもとにしたコミックエッセイ『目指せ! 夫婦ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)を刊行。新刊『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している』趣味は空手。好きな食べ物は「鶏肉+ゴハン」。

徳
結婚相手に求めることはあったんですか?
水谷
水谷
それが、私が結婚相手に求めていたのは、「一緒に暮らして話し相手になってくれること」のみだったんです。お金を稼いで養ってくれなくてもいいし、家事もやらなくてもいい。

だから、アラサー当時付き合っていた彼に、「共働きで、家事も全部私がやるから大丈夫!」と宣言して、結婚したわけです。
徳
なんともたくましい宣言……。ですが、共働きで家事も全部ひとりでやるのは、とても大変なことですよね。
水谷
水谷
完全に結婚生活をなめていましたね。私はそれまでもずっと、家で仕事と家事をしていたので、一人分増えるくらいどうってことないと思っていたんです。

でも実際は、負担がどんどん増えていきました。彼にとっては「家事はやってもらって当たり前」。かといって「私がやるから」と言ってしまった以上家事も仕事も、自分だけが頑張らないといけない関係性に疲れてしまって。

結婚の良い面ばかり見ていたので、自分を助けてくれない人と暮らすのが辛いということが想像できてなかったんです。
徳
それはしんどいですね……。

「結婚したんだから、旦那さんに養ってもらうんでしょ?」と、ギャラの値下げ交渉をされた

水谷
水谷
それなのに、周りからは「夫に養ってもらっているんでしょう」という目で見られていたんです。結婚してはじめて、女性は男性の所有物とみなされることがあるんだなと気づきました。
徳
具体的には、どんなことがあったんですか?
水谷
水谷
一番衝撃的だったのは、結婚を理由に、ギャラの値引き交渉をされたことですね。「結婚したんだからお金に困ってませんよね? 旦那さんに養ってもらうんだからいいでしょう」と。
徳
えっ……!
水谷
水谷
「女性の収入は家庭の補助である」という先入観を潜在的に持っている人が、いまだにいるんです。安くしたいという前提があって、その理由としてうっかり口にしただけかもしれないけれど、男性には言わないですよね。
徳
なんとも不平等な話ですね……。
水谷
水谷
一方、元夫は結婚して「妻を養っていく覚悟ができた」と社会的評価が上がっている。その時に、私は「ブランディングが必要だった」と反省しましたね。
徳
ブランディング?
水谷
水谷
はい。結婚した女性が世間からどう見られるのかを、もっと考えなきゃいけなかったんだなあって。私の場合、「結婚してもずっと仕事を続けていきます」アピールをもっとしないといけなかった

私は「親が喜ぶようなちゃんとした結婚式」を挙げたせいで、「家庭に入って悠々自適な生活を送るんだな」と勝手にイメージされちゃったんですよね。
仕事について語る水谷さん
徳
結婚生活の実態と周りのイメージのギャップがあったんですね。

水谷さんのお母さまは専業主婦ですが、水谷さんにその考えが一切ないのはなぜですか?
水谷
水谷
やりたい仕事ができているからですかね。私は幼い頃から絵を描くのが好きで、それを仕事にして生活できていたので、続けていきたいし、向上心もあった。

母の時代は、結婚することが家を出る唯一の手段で自立の道だったけれど、私たちの時代は女性が働くことも当たり前。結婚して仕事をやめる選択肢を最初から持っていませんでした。

離婚してはじめて、「自分の親は幸せな家庭を築いていたんだ」と気づいた

徳
離婚を意識されたのはいつ頃だったんですか?
水谷
水谷
結婚して2年くらい経った頃ですね。3年半でいよいよ限界がきて、このままじゃ子どもがつくれない! と私が白旗を上げて、33歳で離婚しました。

元夫は「オレが結婚したかったわけじゃないし」みたいな感じでしたし子どももいなかったので、「解散だ、解散ー!」という感じのノリでわりとあっさり。
徳
解散(笑)!
水谷
水谷
離婚後は、ひとりで毎晩反省会ですよ。夜な夜なネットで、他の家庭の事情を垣間見て、ああ、私はなんて世間知らずだったんだ、と。

たまたま自分の親が運よく幸せな家庭を築いていたことに対して、何の疑問も持たなかった自分を恥じました。
徳
離婚を経験したあと、再婚に対してのモチベーションはあったんですか?
水谷
水谷
ありました。元々一人きりの生活がイヤで結婚したので(笑)。ただ、そのための選択肢が法律婚だけではないこと、パートナーとして自分に合う人をちゃんと考えなきゃいけないことにも気づきました。
結婚についてお話される水谷さん

結婚というより「法律婚」に向いていないんだと思った

水谷
水谷
結婚についていろいろと調べていく中で、法律婚と事実婚についても調べて、私は結婚というか「法律婚」に向いていないと思ったんです。
徳
法律婚に向いていないと思った理由はなんだったのでしょう?
水谷
水谷
法律婚は、役所に婚姻届を出すと国が夫婦としての関係を保証してくれますが、契約として重い。私が契約に対して忠実であろうとする性格だからだと思うんですが、その契約が結婚生活において重荷になっていたんですよね。

法律で契約された関係なんだから「一生我慢しないといけないんだ」と自分を追い詰めてしまった。さらに「結婚式」で「神様に誓った」みたいなのにもかなり縛られていましたね。

でも、幸せになると神に誓ったことが原因で不幸になるのはおかしいな、と。
徳
なるほど……。
水谷
水谷
一回失敗したこともあって、もうあの時と同じテンションで法律婚はできないと思ったんです。
徳
「契約の重さ」が一番大きな理由だったんですか?
水谷
水谷
そうですね。事実婚は同居を始めた瞬間は「事実」が少ししかなく「仮契約」的なので、結婚生活という実態を積み上げていって、自分たちの家族のかたちをカスタマイズできます

いつでも引き返せるので追い詰められることもない。法律婚で最初に本契約をして、そこに忠実であろうとして挫折したので、契約力が弱い事実婚の方が自分には向いていると思いました。

結婚で「男だから」「女だから」という役割に縛られるのは窮屈

徳
その後、36歳の頃に現在の旦那さんと事実婚をされていますよね。事実婚の合意はすんなり取れたのでしょうか?
水谷
水谷
今の夫も離婚を経験してるんです。仲良くなったきっかけも、「我々はなぜ結婚に失敗したか」というバツイチ同士の話題で盛り上がったこと(笑)。

おたがいに一回失敗して、法律婚に向いていないこともわかっていたので、一緒に暮らすなら事実婚にしようとすんなり決まりました。

ただ、親は反対しましたね。
徳
そうなんですね。
水谷
水谷
事実婚は「ちゃんとしていない」から「いざという時に責任を取ってもらえず、女性であるあなたが損をする」と。

もういい大人なので、許諾を得る必要はないと思いましたが、ちゃんと説明すればわかってもらえるという信頼関係はあったので、両親に理解を得られるように話はしました。とはいえ、ある程度やってみないとわからないので見切り発車ぽくはありましたが。
徳
親の意見や世間体ではなく、「自分のたちが生きやすい結婚のかたち」を選ばれた。
水谷
水谷
一回失敗したことで私たちは自由になりましたね。「正しい」ことより「好きなこと」をしようと。でも、離婚を経験していなかったら、疑問を抱きながらも「正しさ」に引きずられたままだったと思います。
徳
おふたりは結婚に対して、どんな疑問を抱いていたんですか?
水谷
水谷
結婚をして「男だから」「女だから」という役割に縛られることを窮屈に感じていたんです。夫は「男だから」世帯主や稼ぎ頭になることに疑問を抱いていて、かたや私は「女だから」という理由で、家事全般を担っていてた。

「男」と「女」という役割に縛られずに、もっと合理的に能力に対して、均等に家庭内で家事育児を割り振ればいいよね、と意見が一致しました。

契約よりも、家族であるという「事実」が重視される

徳
事実婚で、生活に困ることはありますか?
水谷
水谷
それがないんですよ。

子どもの口座を開設したり、入院や手術で家族のサインが必要になったりしたときも、一緒に暮らしている家族であるという「事実」があれば、たいていの手続きはクリアできるんです。
徳
そうなんですね。てっきり、そういうところで困るのかと思っていました。
水谷
水谷
もし事実婚で困るとすれば、法律そのものより、会社の規定などのローカルルール、社会のシステムに弊害があるのだと思います。

実際に病院で「事実婚ではサインさせない」というケースも稀にあるらしいのですが、それは「法律」じゃなくて「ローカルルール」なんです。

徐々に、いろんな家族のかたちに合わせて社会も変わっていければいいですよね。
徳
あらためて、法律婚と事実婚、両方の結婚のかたちをご経験されてみて、どう感じられていますか?
水谷
水谷
私の場合、法律婚では、「この人と一生一緒に生きていく」と誓った結婚式が幸せの最高潮で志も一番高く、そこから「おやおや? 思っていたのと違うぞ?」と思いながらも型にはまろうとして、ひとりで我慢と努力して息苦しくなってしまいました。

一方、事実婚は「この人と死ぬまで一緒にいられたらラッキー」くらいの気持ちで最初の志は低く、そこから信頼と実績を積み上げていくかたちです。最終的なゴールを決めていないから、おたがい関係が続くように努力もするので、理解が深まって仲も良くなるんです。

事実婚は法的なつながりが薄い分、「事実」をどれだけ積み上げられるかが重要なんだなと感じていますね。
徳
まさに、その言葉の通り、「法律」で結ばれた関係ではなく、積み上げた「事実」でつながる関係性。
事実婚についてお話される水谷さん
水谷
水谷
もちろん、うまくいかないこともあります。完璧じゃない人間同士、苦手なことや癖もあるので、過去と同じ失敗もします。

ですが、おたがいに苦手なことを受け止め合って、変わっていくことも含めて、話し合いを重ね、心地よく暮らすためのルールを更新し続ける。そうして「事実」を積み上げて、私たちなりの家族のかたちを築いていきたいと思っています。
執筆・徳瑠里香/撮影・三浦咲恵/編集・明石悠佳・柳下桃子
シェアハウスで共同子育て。一番の良さは、「親以外の手が増えること」ではないんです──東京フルハウス
「夫婦だから」とすべて共有しなくていい。大事なのは、ひとつの強い関係よりたくさんの弱い関係──佐々木俊尚・松尾たいこ

親の意見が気になって、自分らしい就活ができない──悩める就活生が、臨床心理士の信田さんに相談してみた

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やりたいことを考える前に親の顔が浮かんでしまう

みっちゃん
みっちゃん
私は今、母親との関係性について悩んでいて、今日は信田さんのお話をお伺いしたくて来ました。
信田 さよ子
信田 さよ子
何に悩んでいるの?
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信田さよ子(のぶた・さよこ)。1946年岐阜県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部哲学科卒業、同大学院修士課程家政学研究科児童学専攻修了。臨床心理士。駒木野病院勤務、CIAP原宿相談室勤務を経て1995年 原宿カウンセリングセンター設立、現在に至る。

みっちゃん
みっちゃん
「母親の意見に従わなくてはいけない」という、謎の恐怖心があるんです。大学を卒業したら東京で就職したいと思っているんですが、母には「東京で就職したら、縁を切る」と言われていて……。

どうしても、自分のやりたいことよりも先に親の顔が浮かんでしまうんです。
信田 さよ子
信田 さよ子
なんでお母さんは、みっちゃんを東京に行かせたくないんでしょうね。
みっちゃん
みっちゃん
私の親戚は、ほとんど全員が地元に住んでいることもあり、母は、とにかく家族が近くにいることに価値を置いているんです。

たとえば大学に進学するときも、東京のいい大学へ行くよりも実家から通える大学へ行ってほしい、と。
信田 さよ子
信田 さよ子
それはなぜでしょう?
みっちゃん
みっちゃん
親として、遠くにいると感じ取れないことも、近くにいれば感じ取れると思っているのかもしれません。小さい頃、私がいじめられていたことに気づくのが遅れたことも気にしているようです。
手をつよく握りしめるみっちゃん
信田 さよ子
信田 さよ子
娘の自己防衛能力を信じていないわけですね。

お母さんは地元の親族中心のコミュニティの中だけで、荒波にもまれることもなく安全な人生を歩んできたのかもしれませんね。それが幸せだったから、娘にも同じような道を歩んでほしいと思っている。
みっちゃん
みっちゃん
私も東京へ出てくるまでは、母親の価値観を信じていたので、それがいいと思っていたんです。でも実際に東京へ出てきて、いろんな価値観があることを知って、もやもやし始めました。
信田 さよ子
信田 さよ子
お母さんの視点で言えば、禁断の果実を食べてしまったのですね。

親の意思だけではすぐに変えられない事実を無理にでもつくる

信田 さよ子
信田 さよ子
具体的には、何を一番恐れているんですか?
みっちゃん
みっちゃん
やっぱり、親に縁を切られることが一番怖いです。でも、親に従っても自分自身が幸せになれないし、親を変えることもいろいろ試したけれど難しくって。どうすればいいのかわからないです。
みっちゃんに語りかける信田さん
信田 さよ子
信田 さよ子
「親と縁を切る」「親に従う」「親を変える」以外の選択肢もありますよ。
みっちゃん
みっちゃん
えっ?
信田 さよ子
信田 さよ子
まず、東京に行く理由になる「決定打」をつくってみましょう。そのときは、「やりたいことができた」などという内的要因ではなく、外的要因にすることがポイントです。

たとえば、東京でしか就職先が決まらなかったとか、熱烈に企業からスカウトを受けた、とか。
みっちゃん
みっちゃん
なるほど……。
信田 さよ子
信田 さよ子
内的要因では、言いくるめられてしまうこともあるでしょう? だから、親の意思だけではすぐに変えられない事実を無理にでもつくってみることも、ひとつの方法だと思いますよ。
強く主張する信田さん
みっちゃん
みっちゃん
考えたことがなかったです。
信田 さよ子
信田 さよ子
結局、完ぺきな解決方法はなくて、最終的には自分の意見をどこまで通すかです。

それに、親は自分が示した道を子どもが選ばなかったことで、機嫌を損ねるかもしれないけれど、縁を切るなんてなかなかできない。ある種の脅しだと思いますよ。

どれだけ言っても子どもを変えることができないということに気がついたら、認めてくれることも多いと思います。

親族の世界から飛び出すのは、宇宙へいくほど大きいものではない

みっちゃん
みっちゃん
ほとんどが公務員といった、いわゆる「安定した職業」に就いている親族の中で、ひとりだけ国際結婚をした親戚がいるのですが、その人は「まがいもの」と言われています。

私が東京で働くことを選択したら、同じようになるのかなと思うと、振り切れないんです。
顎に手を添え考える信田さん
信田 さよ子
信田 さよ子
でも、みっちゃんが恐れている「親族」って、せいぜい20人程度でしょう?
みっちゃん
みっちゃん
はい……。
信田 さよ子
信田 さよ子
世界はこんなに広いのに、その人たちに嫌われることを恐れて何もできなくなるって、すごくもったいないと私は思いますけどね。

親族だけが自分の世界だと思って生きていると、そこから飛び出すことは「宇宙へ行くようなものだ」と思ってしまうかもしれないけれど、そんなことはないんです。
手を大きく振り下ろしながら語りかける信田さん
みっちゃん
みっちゃん
たしかに……。自分の世界を広げていくには、どうしたらいいのでしょうか?
信田 さよ子
信田 さよ子
まず、自分だけの「秘密」を持ちましょう。秘密という、親の知らない自分だけの世界をつくる。
みっちゃん
みっちゃん
秘密? 親にはあらゆることを報連相するのが当たり前だと思っていたので、秘密を持つということ自体、考えたことがありませんでした。
信田 さよ子
信田 さよ子
1から100まで親が子どものすべてを知るなんてことはできないし、する必要はありません。秘密をつくることで、少しずつ自分の世界は広がっていくと思います。

文学作品を読むこともおすすめです。文学作品を通して、多様な価値観や人間関係を知ると、自分の今持っている価値観が当たり前じゃないことに気づきますよ。たとえば、毎年、芥川賞受賞作品は必ず読むとかね。

親の前の自分とありのままの自分、どちらもいていい

みっちゃん
みっちゃん
私だけではなく、周囲にも、就職や結婚など将来の選択を考える際に親の意見を気にしている人は多い気がします。これはどうしてなのでしょうか?
信田 さよ子
信田 さよ子
それは、実は統計的にも証明されていることなんです。私たちの世代は高度経済成長期で、学歴も職歴も親を超えることが当たり前でした。だから、親を超えて養っていくことが親孝行だと思っていたんです。

でも、今は世の中がずっと低成長で、子どもが親を超えられないことも往々にしてある。だからこそ、大きな親の存在が子どもを苦しめてしまうことがあるんですね。
落ち着いた表情で話かける信田さん
みっちゃん
みっちゃん
たしかに、親の意見に従っておけば、失敗しないんじゃないか、と思ってしまいます。
信田 さよ子
信田 さよ子
でも、時代は変化していて、親世代が安定していると思っている公務員などの非正規雇用が増えてきています。

大企業だってどうなるかわからない。そうなってくると、安全とされている道を選ぶよりも、やりがいを持って自分が満足できる仕事を選ぶことが大事になってきます。
みっちゃん
みっちゃん
「親の価値観はもうあたりまえじゃない」ということを、関係性を崩さずに伝えるにはどうしたらいいでしょうか?
信田 さよ子
信田 さよ子
「ダブルスタンダード」を持つことです。
みっちゃん
みっちゃん
タブルスタンダード?
信田 さよ子
信田 さよ子
そうです。ダブルスタンダードというのは、親の前の自分とありのままの自分、どちらも認めるということ。

親は子どもから否定されることを嫌がるので、表向きは「お母さんの言う通りだよね」と親の意見を聞き入れるふりをして、自分の意思を尊重した選択をしていく。それもある種の秘密です。

親に抵抗してもなかなか勝てないので、真正面から全力でぶつかる必要はありません。
 微笑みながら話しかける信田さん
みっちゃん
みっちゃん
私はいつも全力でぶつかろうとしてしまいます。
信田 さよ子
信田 さよ子
全力でぶつかると、傷つくことも多いでしょう? 傷つきすぎると立ち直れなくなってしまうから、余力は残しておいたほうがいいですよ。

全力でぶつかるふりをして、2割くらいの力を残しておく。
みっちゃん
みっちゃん
なるほど……。ダブルスタンダードを身につけるコツはありますか?
信田 さよ子
信田 さよ子
自分と同じような悩みを持つ人たちと、ネット上でもいいので、たくさんつながってください。彼らと交流するときの自分と、母と対峙するときの自分は違っていいんです。「本当の自分」とか「何が真実か」とかは考えない。

作家の平野啓一郎さんが『私とは何か──「個人」から「分人」へ』で書かれているように、「私」の中に「分人」はたくさんいるんです。親に対しての自分、職場での自分、友だちといるときの自分、ひとりのときの自分、全部違ってあたりまえ。それは何も、悪いことではないんですよ。

少しずつでいいから、お母さんと上手な距離感を保てるようになるといいですね。
執筆・徳 瑠里香/撮影・尾木 司/企画編集・みっちゃん、明石悠佳
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「サイボウズはなぜ在宅勤務用PCまで支給するんですか?」情シスに聞いたら、理念へのこだわりがすごかった

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100人100通りの働き方を実現しているサイボウズ。自由な働き方の裏には「在宅勤務用PCを支給」「マウス・キーボードは好きなものを選択可能」など、個人の要望にあわせてシステム環境を整える文化があります。

とはいえ「やりすぎじゃないの?」「制度を悪用する人はいないの?」「情シスは大変じゃないの?」という疑問も浮かび上がります。

今回はサイボウズを支える情報システム部を直撃。情報システム部の青木哲郎さんと鶴村修二さんに、情シスのあり方について語ってもらいました。

全社員がMacもWindowsも選べて、在宅用PCも配布って本当ですか?

仁田坂
仁田坂
サイボウズは週3日勤務の方やリモートワークの方など、かなり多様な働き方をしている社員がいますよね。

柔軟な働き方を実現させるには、情報システム部門の支えも必要となります。今日は情シスのお二人が日々どのように100人100通りの働き方を支えているかを聞かせてください。
青木
青木
よろしくお願いします!

100人100通りの働き方のシステム面でいうと、サイボウズでは個人の要望に合わせてデバイスを支給していますね。
青木哲朗さんの写真

青木哲朗(あおき・てつろう)。大学卒業後、事業会社のSEとして10年以上インフラ構築に携わる。サイボウズには2014年7月に中途入社。以来情シス一筋。

仁田坂
仁田坂
働き方だけでなく、会社支給のデバイスも100人100通りということですか。
青木
青木
はい。まず、PC標準機は4〜6種類の中から自由に選べます。
サイボウズの標準機PC(4〜6種類の写真)

サイボウズの標準機PC。MacもWindowsも選べるようになっている。

仁田坂
仁田坂
めっちゃいっぱいある……。
鶴村
鶴村
全社員がMacもWindowsも選べるようになっていて、4種類の中から選択できます。

開発職であれば、それにプラスしてデスクトップ1種と、開発向けMacBook Pro1種類の6パターンを用意しています。
青木
青木
これまで新入社員の方にはひとまずWindowsを支給し、配属後に好きなPCを選択可能としていたのですが、今年から入社前にWindowsかMacかを選択してもらうようにしたところ、Macばかりになりました(笑)
仁田坂
仁田坂
すごい。PCの種類を限定したほうが、情シス的にはコストがかからなさそうですが……。
鶴村
鶴村
おっしゃる通りです。正直PCの種類が少ない方が調達コストが安いですし、故障時の対応も楽なんです。

でも、業務に必要なシステムは人それぞれ違うので。社員が最高のパフォーマンスを出せるよう、最大6種類から選べるようにしています。
鶴村修二さんの写真

鶴村修二(つるむら・しゅうじ)。サイボウズに新卒で入社。営業を経験した後に情シスへ異動。

仁田坂
仁田坂
うーん、懐が広い。
青木
青木
PCってふつう与えられるもので、選ぶという概念はないじゃないですか。僕もサイボウズに中途入社してびっくりしました(笑)。
仁田坂
仁田坂
ただ、そんなにいろいろなメーカーのPCが選べる場合、情シスとしては大変じゃないですか?

MacとWindowsで挙動が違うので、マニュアルを2種類用意しなければいけなかったり。トラブルの切り分けもやることが多くなりそうです。
鶴村
鶴村
正直、大変なことも多いです(笑)。でも、Macの方が効率よく仕事できる方もいるので今の運用にしています。

何か社内システムを導入する時も「Macでも使えるかどうか」を必ず要件に入れていますね。
仁田坂
仁田坂
徹底されていますね。あと、サイボウズでは「在宅勤務用のPCもほしい」といえば支給してもらえると聞いたのですが……。
鶴村
鶴村
支給していますね。なんなら、在宅勤務用のディスプレイも希望があれば支給します。
仁田坂
仁田坂
なんと! なぜそこまでするのでしょうか?
鶴村
鶴村
「在宅勤務をするたびにPCを持ち帰るのが面倒だから」「在宅勤務だとモニターがなくてやりづらいから」という理由で、在宅勤務をしづらくなってしまうのはよくないですよね。

コストはかかりますが、100人100通りの働き方ができるサイボウズだからこそ、いつどこでも最高の仕事ができる情報システムを提供する。それが、サイボウズ情シスのミッションなんです。
仁田坂
仁田坂
あくまでも理念にもとづいているということですね。

マウスやキーボードも価格上限なしで購入OK。やりすぎじゃないんですか?

鶴村修二さんの写真
鶴村
鶴村
ちなみに、マウスやキーボードも本人の希望があれば上長への申請なしで好きなものを買うことができます。
仁田坂
仁田坂
価格制限もないんですか?
鶴村
鶴村
ないです。

先ほど言ったように、サイボウズの情シスの仕事は「社員が最高のパフォーマンスを出せるシステム環境を提供すること」。

生産性が上がるのであれば、高いキーボードやマウスの購入も大歓迎です。
仁田坂
仁田坂
やりすぎな気もしますが、あくまでも理念の実現のためだと。
鶴村
鶴村
そうです。トラックボール、指への負担が少ない静電容量無接点方式のキーボード、好みのパームレストなど、さまざまな要望がありますよ。
キーボードの写真

Happy Hacking Keyboard Professional2 (24,990円のキーボード)。特に開発職は、好みのキーボードを購入する人が多い。

仁田坂
仁田坂
エンジニアからすると、楽園のような環境ではないでしょうか。
青木
青木
厳しい面もあると思いますよ。サイボウズだと自分の業務を円滑に進めるにはどんなツールが必要なのか自分で考えなければいけません。

「自分の成果が出ないのは、PCのスペックが悪いから」「ディスプレイがないから」と会社のせいにすることができないですからね。
仁田坂
仁田坂
たしかに……!

ちょっと気になるのは、予算です。「サイボウズはお金があるからそんなことできるんでしょ?」と思う方もいらっしゃるのかなと。

IT投資にすごく積極的な気がするのですが、実際はどうなのでしょうか?
青木
青木
一応、売り上げに対するIT投資の比率は見ていますね。

サイボウズの場合、多様な働き方を実現するためにIT投資が他社より若干多いのかもしれませんが、その投資が必要かどうかの判断は必ずしていますし、お金を湯水のように使っているわけではないです。
仁田坂
仁田坂
売り上げとのバランスは見ているんですね。

ちなみにITへの投資って効果が見えにくいと思うんですが、定量的に効果測定はしているんですか?
鶴村
鶴村
定量的な測定はしていないですね。
仁田坂
仁田坂
ええっ。「この社員の希望で買った3万円分のキーボードって、正しくアウトプットされてるのかな。ムダだったんじゃないのかな」とはならないんですか?
青木
青木
ムダかどうかというより、社員のパフォーマンスやモチベーションが定性的にどれだけ上がるかを考えています。

たとえば社員の希望で3万円の良いキーボードを買ったとしても、使う年数でいうと2〜3年ですよね。

500日使うと考えれば、1日60円くらいなんですよ。それで社員のパフォーマンスやモチベーションが向上するのであれば、安い投資です。
仁田坂
仁田坂
うーん、たしかに。そう言われてみると、妥当な投資のように思えてきました。

制度を悪用する、欲張りな社員はいないんですか?

鶴村さん、青木さんの写真
仁田坂
仁田坂
とはいえ、キーボードやマウスは好きなものを選び放題、価格制限もないとなると、「あれもこれもたくさん買いたい」という欲張りな社員も出てくるかと思います。そういった場合はどう対応しているのでしょうか?
青木
青木
「いろいろ買いたい」という欲張りなケースでも対応していますね(笑)。

実際にあったケースだと、「PC4台と使いやすいキーボードを2つ用意してほしい」という要望がありました。
仁田坂
仁田坂
ん? 1人の社員に対してですよね?
青木
青木
はい。その方はエンジニアの社員で、業務の都合でもともと2台のデスクトップ端末を使っていたんです。

なので「在宅勤務をするときにも今のPCを追加で2台ほしい」「使いやすいキーボードも、在宅用と会社用で2台ほしい」ということでした。
仁田坂
仁田坂
それはさすがにNGですよね……?
青木
青木
いえ、OKです。
青木哲朗さんの写真
仁田坂
仁田坂
えーっ!
青木
青木
業務に必要なら支給しますし、それで本人がパフォーマンスを発揮できるのであればいいと思っています。この場合はさすがに、上長に確認を取った上でそろえましたが(笑)。
仁田坂
仁田坂
情シスの現場を担当されているお二人は、この状況をぶっちゃけどう思っているんですか?
青木
青木
個人的には、やりすぎでしょって思うときもあります(笑)。 
仁田坂
仁田坂
やっぱり!
青木
青木
でも、みんなの働きやすさを考えて理想を追求するのが、サイボウズの情シスの特徴なんです。

サイボウズの理念である「チームワークあふれる社会を創る」ためには、まず自分たち自身が「チームワークあふれる会社」でなければいけない。そのために必要なシステムを提供しているだけという認識です。
仁田坂
仁田坂
ビジョンを達成するために必要なことをしているだけだと。
鶴村
鶴村
そうですね。情シスのミッションが明確なので、現場の仕事はやりやすいです。

そこまで個人の要望に対応していたら、情シスは大変じゃないんですか?

取材風景の写真
仁田坂
仁田坂
サイボウズの情シスが目指す姿はわかりました。

ただ、そこまで個人の希望に合わせて端末を貸し出していると、依頼の対応や、端末管理も相当大変なんじゃないでしょうか。情シスだけずっと残業している……とか。
鶴村
鶴村
そんなことないですよ。

電話やメールで要望に対応していたらたしかにキリがないかもしれませんが、サイボウズではキントーンを使って依頼を効率化しているので、大変だと思ったことはないですね。
仁田坂
仁田坂
出ました、キントーン。キントーンは日々の業務を円滑にするクラウドサービスですよね。
鶴村
鶴村
はい。「このマウスがほしい」「在宅用PCを希望します」などの問い合わせはキントーンですべて受け付けて、ステータス管理をしています。
キントーンのIT窓口アプリのキャプチャ。購入申請はフォームに入力するだけなので、電話やメールは使わない

マウスやキーボードの購入依頼はフォームに入力するだけでよく、電話やメールは使わない。

仁田坂
仁田坂
ここに依頼内容を入力すれば、書類を提出したりハンコを押したりする必要はないんですね。
鶴村
鶴村
はい。どの依頼がどこまで進んでいるのかも一目でわかります。
キントーンのIT窓口アプリの一覧画面。

キントーンに寄せられた依頼の一覧。依頼ごとにステータス管理ができるようになっている。

鶴村
鶴村
また、「このキーボードで間違いないですか?」「購入したので取りに来てください」などのやりとりもシステム内で完結するので、電話やメールを使わずにすんでいます。
キントーンのIT窓口アプリのコメント欄

購入に必要なやりとりは、オンラインで完結する。

仁田坂
仁田坂
効率的ですね。

ただやっぱり、ここに記入するだけでいいなんて、制度を悪用して高いマウスやキーボードを買いまくる社員がいないか心配になります(笑)。
鶴村
鶴村
それが意外といないんですよね。
青木
青木
実はキントーンに登録された依頼内容は、全社員にオープンになっています。
仁田坂
仁田坂
なんと。
青木
青木
サイボウズでは「公明正大」を大事にする理念があって、こうした申請内容も含め、社内のやりとりが基本オープンなんです。

なので、合理的な理由もないのに高額なキーボードの申請をしている人がいたら、周囲からの信頼度が下がってしまう。

サイボウズには「質問責任」と「説明責任」という文化があるので、「あれ?」と思った購入依頼があれば僕たちも理由を確認しますし、質問された人は自分がなぜその備品が必要なのかを説明する責任があります。
仁田坂
仁田坂
オープンな申請が、良い意味での抑止力になっているということですね。

あとは、社員一人ひとりの要望に合わせて端末を配布していると、端末管理が煩雑になると思うのですが……。
鶴村
鶴村
端末管理もキントーンで効率化しています。
キントーンのPC管理アプリのキャプチャ

誰がどのPCを借りているのか、リアルタイムで把握できる

鶴村
鶴村
エクセルだと大変かもしれませんが、キントーンならいつでもリアルタイムの貸し出し状況がわかるので、誰が何を借りているかは一目瞭然です。
仁田坂
仁田坂
キントーンがあれば、どこにいても情シスの実務ができそうですね。
青木
青木
そうですね。実際うちの情シスメンバーは子育て世代が多いので、時短勤務やリモートワークをしている社員は多いです。複業をしているメンバーもいますよ。
仁田坂
仁田坂
さすが!

拠点の増加に伴い、社員をどうサポートできるかが今後の課題

青木哲朗さんの写真
仁田坂
仁田坂
サイボウズは在宅勤務用PC配布など、やりすぎなシステム投資をしている印象でしたが、あくまでも理念にもとづいて必要な投資をしているのだとわかりました。
青木
青木
そうですね。セキュリティを担保しながら働きやすい環境を追求していくのは難しいこともたくさんありますが、それがまたやりがいでもあります。
鶴村
鶴村
実は2018年の年末に行われた「サイボウズ・オブザイヤー」で、情シスが一番感謝されている部署としてMVP表彰されたんですよ。

※サイボウズ社内の年間MVPを決めるイベント。社員が「ありがとう」を伝えたい人にコメント付きで投票し、一番多かった人が選ばれる仕組み。

仁田坂
仁田坂
情シスといえば業務部門と対立しがちな印象ですが、そんな情シスが社員から一番感謝を集めている部署だなんてすごいですね。
青木
青木
あれは嬉しかったですね。普段からお礼の言葉をいただけることは多いのですが、まさか自分たちのチームが表彰されるなんて思っていなくて。今年も受賞できるようにがんばりたいです。
仁田坂
仁田坂
今後はどのようなことに取り組んでいきたいですか?
青木
青木
ここ数年でWeb会議システムの刷新を行なった結果、在宅勤務などはかなりやりやすくなりました。最近はサイボウズがこれまで掲げてきた「100人100通りの働き方」が文字通り実現されてきていると感じます。

おかげさまでビジネスも好調で拠点も増えているのですが、すべての拠点に情シスメンバーを配置できるとは限らない。

在宅勤務している社員も含めて、「情シスがいない拠点のメンバーをどうフォローできるか」が今後の課題になると思います。
鶴村
鶴村
今年はオフィス増床や新拠点追加、新しいビデオ会議システムの導入など、また新しいチャレンジが目白押しなので、引き続きサイボウズの柔軟な働き方を支えていきたいと思います。
執筆:仁田坂淳史(株式会社ZINE)/撮影:内田明人 /企画編集:熱田優香
サイボウズのPC標準機はどれもメモリ32GB積んでるって、正直ムダじゃないですか?

情シス業務を効率化させるキントーンの詳細はこちら


家族が幸せになるなら、そのあり方はなんでもいい──「フルタイムで働く妻と、専業主夫」を試すことになった話

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こんにちは、はせおやさいです。

我が家はわたしと夫、そして昨年生まれた娘(0歳)の3人編成です。結婚して約1年半となりますが、そのあいだ、「夫婦ともにフリーランス」→「わたしが出産育児で休業」の時期を経て、現在、「フルタイムで働く妻と、専業主夫」という役割分担を試しています。

わたしは出産後半年で会社員として社会復帰をしたのですが、はじめての育児、しかも双方の親は遠方&高齢で頼れない状態の、いわゆる「核家族」。掃除などの家事をはじめとした家庭運営だけでなく、乳児を抱えた状態で、どうやってこの家を維持しようと悩み、かなりの時間を夫との話し合いに費やしました。

今回はそんな我が家の経験について書いてみようと思います。

妊娠出産、フリーランスから会社復帰を決意

2017年、子どもを妊娠したのを機に、わたしは会社員を辞め、フリーランスのWebディレクター・ライターとして活動をしていました。どんどん大きくなるお腹を抱えつつ、自分のペースで働けるフリーランスは快適で、一度住んでみたかった海のそば、神奈川県逗子市への転居も果たせました。

さて2018年5月、無事に女児を出産。引き続きフリーランスで仕事を続け、のんびり子育てでもしようかと思っていたところへ青天の霹靂(へきれき)が……。前職で同僚だった方から、「会社に戻ってこないか」とのお誘いがあったのです。

そのとき娘は生後3か月で、まだ生まれたてホヤホヤです。首も座っておらず、常に誰かが見ていなければいけない状態で、授乳もだいたい4時間おき。夜は夫がミルクを与えてくれていたものの、夫の仕事が忙しいときはわたしが夜中じゅう起きてお世話をする必要がありました。想定していた働き方は「夫婦どちらもフリーランスで共働き」。やや不安定かもしれないけれど、とにかく一緒に過ごしたい気持ちが強い我が夫婦としては、その働き方が理想的だと思っていました。

そこへ誘ってもらった、「フルタイムの正社員」でのお仕事。いやいや、無理!! と思いました。ですが、たびたびのお声掛けに詳しく話を聞いてみたところ、仕事内容は魅力あるもの。何より「あなたと一緒にまたぜひ仕事がしたい」という熱意に心が揺れました。

社内規定により、時短勤務が使えない……

ですが、この決意をするには大きな問題点がありました。社内規定により、育児休暇や時短勤務などの制度は入社後、一定期間使えなかったのです。

夫の実家は遠く、わたしの実家は両親高齢で、両親からの援助は期待できませんでした。私がフルタイムで働くと、「日中は夫が娘の面倒を見る」ということになってしまいます。

一度は、「仕事をしながら夫が娘の面倒を見る」ことで話がまとまりかけましたが、とはいえ、夫も取材や打ち合わせで夜中まで外出することがままある仕事。やはり仕事をしながらでは無理、という話になりました。

わたしが外へ働きに出た場合、少なくとも娘を保育園に入れるまでの数か月、「共働き」は維持できそうにありません。このままでは、にっちもさっちもいかないことに......!

夫が専業主夫に。その間は、わたしが大黒柱になろう

そこで我が家が暫定的に出した結論は、「いったん夫が専業主夫になる。その間は、わたしが大黒柱になって家計を支える」というものでした。

もちろん問題は山積みです。収支面はクリアになったとして、いったん専業主夫になるのは簡単かもしれないけれど、そのあと彼がまたキャリアに復帰できるのか。

もし復帰できたとしても、いわゆる「マミートラック」、つまり育休明けのお母さんが陥る「復帰はできるけど第一線では働けない」状態になるのではないか。

そしてそもそも頼りにしていた保育園に落ちて、娘の面倒を見る人が誰もいなくなった場合は、どうするのか。

考えれば考えるほど、問題点が出てくるような気がしてやみません。しかし迫ってくるオファーの返答期限と、どんどん育っていく娘。もう、決めるしかありませんでした。

もしものことを考えて、保育園の数だけでなくベビーシッター、一時預かりなどの選択肢が多い都内へ転居することに。そして、わたしはフルタイム正社員の正式オファーを受け、夫は一部の仕事を残しつつ業務を整理し、専業主夫になりました。

決め手になったのは「キャリアのチャンス」

その決断に踏み切った大きな要因としては、夫はまだ20代、わたしはもう40代という年齢でした。働き盛りの20代男性と、40代女性という属性で比べたら、キャリアのチャンスはわたしのほうが、圧倒的に少ない。そしてこの次のチャンス自体があるかどうかも分からない。

ならばいったんわたしのキャリアを優先させてもらおう、という判断でした。これがベストなのか、今でも迷うときがあります。プレッシャーもあります。わたしのキャリアを優先してもらったけれど、もし成功できなかったら? わたしのワガママで、夫に無駄な遠回りをさせたことになるのでは? とも。でも、腹を決めてやってみるしかない。そう思いました。

そして同時に、夫はこの専業主夫期間を活かして仕事に関わる講座に通い、仕事を控えて学びに充てる「溜め」の期間として活用してみる、ということになりました。

「娘のお世話をフルでできる人が家に2人いる」ことの安心感

さて都内への転居、入社、来年4月の保育園入園を目指した準備・申込みなどを経て、現在の役割は「家(家事と育児)のことは夫」「外で稼いでくるのは妻」と大まかに分かれました。

この体制にしてみてよかったのは、「もしかしたら、男性も育児に向いている面があるのでは?」と実感できて、夫に娘を安心して任せられるようになったこと。

それまで「育児は母のメインタスク」という先入観があり、娘の世話を夫に任せるのにどこか罪悪感があったのですが、いざ新生児を連れて検診へ行ったり、日々の買い物へ出かけたりしようとすると、力仕事なので腕力のある夫のほうが有利です。

実際、産婦人科でも「パパのほうが手が大きいので、赤ちゃんをお風呂に入れるとき安定するんですよ」とアドバイスをもらったこともあります。実際、娘をベビーカーに連れ出すようになって、電車の乗り換えや移動で夫の腕力が頼りになることも多々あり、なおさらこの思いは強まりました。

また会社員復帰後、泊まりの出張が数回あり、否応なしに夫がワンオペで娘の世話をすることがありました。もともとかなりの範囲を夫は対応できたのですが、1人でお風呂に入れるためのリハーサルをしてみたり、分担していた授乳準備をまるまる任せて段取りを確認してみたりと、最初はハラハラしましたが、今となってはすっかり手馴れたものです。

そうなると「娘のお世話をフルでできる人が家に2人いる」ことになり、それぞれ1人で出かけるときがあっても安心して任せあえるようになりました。

それぞれ出来る範囲で家事をがんばる、最悪、死ななきゃ何でもいい

一方、もともと料理が得意ではなかった夫に家事のリードを任せるのは不安もありましたが、そこは仕事と同じで、「一度任せたら相手のやり方に口を出さない」ルールを適用しています。中食や外食、デリバリーなどの選択肢がグッと増えたという意味では、都内に転居してきたのも正解だったと思います。

それ以外の家事は緊急的に「あるべき姿のハードルを下げる」を適用。このスタイルの家庭運用に慣れるまでは「それぞれ出来る範囲で家事をがんばる、最悪、死ななきゃ何でもいい」というレベルまで引き下げつつ、おたがいの負担を見ながらちょうどいい高さまで家事ハードルを戻していく予定です。

発見として、この役割分担を開始してみて個人的に感じたのは「稼ぎをひとりで担う」という精神的なプレッシャーでした。期間をある程度区切ったとはいえ、自分ひとりの稼ぎで家族3人の生活を支える、という状況が間近に迫ると、思いのほか精神的な重圧がありました。

本当にうまくやっていけるんだろうか、と思うと、入社前日の夜には不安で思わず泣いてしまったほど。

これは支出と収入のバランスが十分取れていたとしても起こりうるストレスだと思います。もし自分が倒れたら、もし仕事がうまくいかなくなったら……など、心配のタネは尽きません。

自分が大黒柱を背負うことになってみてはじめて、「パートナーのうち、片方だけが経済的責任を担う」ことの重圧と不安定さを痛感しました。実際その立場になってみないと、ここまでの実感はできなかったと思います。

働き方は「HOW」であって「WHAT」ではない

そうして新しい家庭運用の方法を開始してみて思うのは、夫婦のあり方、働き方は、あくまで「HOW」でしかない、ということでした。

わたしたちは「共働き」がしたいわけでもないし、夫が専業主夫であることやフリーランスでいることにこだわりがあるわけでもありません。あくまでそれは「HOW」であり、わたしたちの「WHAT」ではないのです。何より大切なのは「WHAT」の実現であり、その実現のために「HOW」があるのではないだろうか、と思うのです。

わたしたちがしたいこと、わたしたちの「WHAT」は、「夫婦、そして娘が幸せになること」です。もしこの運用でわたしが快適に思っていても、夫がどこかで不満を感じていたら意味がありませんし、逆もまた然りです。

夫婦のみならず娘を含めた「全員が幸せになる」を最終ゴールとして設定するのは非常に難しく、一生「この状態がベスト」には辿り着けないかもしれません。

それでもおたがいの状況や希望や、やりたいこと、やりたくないこと、やってほしいと思っていることを聞き合って尊重し、工夫をして乗り越え、よりベストに近い形を模索していくのが我々なりの夫婦のあり方なのだと思います。

わたしの親世代では、専業主婦がマジョリティでした。わたしの両親も、わたしが子を産んでも外で働いていることにまだネガティブなリアクションをするときがあります。

それでも少しずつ変わっていく時代の中で、今までのロールモデルや、誰かがつくった「あるべき姿」にとらわれず、自分たちの「なりたい姿」を追い求め、ベストに近い選択肢を探し続けることが、「夫婦や家族をつくる醍醐味」なのではないだろうかと思っています。

まだまだ試行錯誤中の我が家ですが、これからもこんなふうにして「家族をつくる」をしていけたらよいなと思います。

今日はそんな感じです。

チャオ!

執筆・はせおやさい/イラスト・マツナガエイコ/企画編集・明石悠佳
「夫婦だから」とすべて共有しなくていい。大事なのは、ひとつの強い関係よりたくさんの弱い関係──佐々木俊尚・松尾たいこ
人生の選択肢がありふれる今、選択肢が狭まることは「ラッキー」かもしれない──桜林直子×紫原明子
結婚という「契約の重さ」が私には合わなかった。1度目は法律婚、2度目は事実婚を選んだ理由──水谷さるころさん

「あいつ、家でちゃんと仕事しているのか?」──コミュニケーションが難しい在宅勤務を円滑にする工夫

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地方でNPO法人を運営しながら、サイボウズで副(複)業している竹内義晴が、実践者の目線で語る本シリーズ。今回のテーマは「オンラインコミュニケーション」。リモートワークは、働く場所の自由度が増す反面、オンラインでのやり取りが中心になり、難しさもある。遠隔地で気持ちよく働くために、何を意識し、どのように問題を解決しているのか。

私のサイボウズでの働き方の特徴は、「地方在住で週2日複業」「フルリモートワーク」である。月に1回、東京のオフィスに出社する以外は、新潟での在宅勤務が中心だ。

この働き方ができるのは、クラウド上のグループウエアやテレビ会議システム、チャットなど、オンラインツールの恩恵によるところが大きい。

だが、オンラインツールは働き方を自由にする一方で、対面によるコミュニケーションの量が減るとともに、独特の難しさもある。

しかし、先日、複業&リモートワークをはじめてからの約2年間を振り返ったとき、改めて気づいたのだが、私はこの2年間、会社に電話をしたことが一度もなかった。すべてがオンラインコミュニケーションだった。それにもかかわらず、仕事はちゃんと回っていた。これには自分でも驚いた。

また、フルリモートで働くからこその、「オンラインコミュニケーションの可能性」も見えてきた。

そこで、オンラインコミュニケーションを円滑にし、気持ちよく働くために意識していることや、工夫していることを紹介したい。

オンラインコミュニケーションの難しさ

最初に、オンラインコミュニケーションの難しさについてまとめておきたい。

意図せぬ誤解が生じやすい

オンラインコミュニケーションは文字でのやりとりが中心になる。顔の表情や声のトーン、身振り手振りといった非言語情報がないため、対面コミュニケーションと比べると情報量が圧倒的に少なくなる

そのため、直接話せば大したことではないのに、「○○さんのひと言で傷ついた」「そんなつもりじゃなかったのに」というように、意図せぬ誤解が生じやすい。

冷たい印象で伝わりやすい

仕事をしていると、「Aさん、そういう言動は混乱を招くので、○○にしたほうがいいと思いますよ」のように、相手に改善を求めるシーンがよくある。

だが、非言語情報のない文字コミュニケーションでは、言葉の意味をそのまま受け取るしかないため、否定的、断定的な表現は、対面コミュニケーションよりも冷たい印象で伝わることがある。

私自身、仕事にかかわらずオンラインでやりとりすることがとても多いが、「もう少し、こういうふうに言ってもらえると、変に傷つかなくて済むのにな」と思った経験が幾度となくある。

心や体の状態を共有しにくい

相手の体調や気分を知ろうとするとき、顔色やため息、全体的な雰囲気から察することがよくある。だが、オンラインコミュニケーションではこれらを察するのは難しい。

テレビ会議のシステムを使って、カメラを常時オンにすれば伝えられなくはないが、常に監視されているような感じがするし、在宅勤務の場合は自宅を常に晒すことになり、あまり気分がいいものではない。

また、「胃の痛さ」を言葉で説明するのは難しいように、心や体の状態は文字に起こしにくく、周囲と共有しにくい

話したいとき、話せない(タイムラグがある)

仕事をしているとき、「○○がわからないから、ちょっと確認したい」といったことがよくある。

たとえば、出張の旅費精算の仕方がわからないとき、オフィスなら経理担当者に「○○さん、旅費交通費の精算なんですけど、ちょっと教えてもらっていいですか?」と聞くことができる。

だが、オンラインコミュニケーションの場合、この「ちょっと確認したい」がやりにくく、タイムラグも生じやすい

仕事の進捗や成果が見えにくい

複数のメンバーと仕事をする場合、おたがいのタスクが、次の仕事に影響を与え合うことがよくある。対面コミュニケーションの場合、「○○の件なんですが、今、どんな感じですか?」と、気軽に聞くことができる。

だが、オンラインコミュニケーションの場合は、仕事の進捗や成果物が見えにくい。「ちゃんと進んでいるのかな?」と不安になることがある

逆にオフィスにいるメンバーも、遠隔地にいる同僚の動きが見えなければ「ちゃんと仕事をしているのかな?」と不安になるだろう。

寂しい

遠隔地で、一人で働くのは、意外と孤独だ

リモートワークは孤独リモートワークで場所から解放されたのに、精神的に縛られた。けどやってよかった──パリ×新潟からリモートの本音を語ってみた

オンラインはコミュニケーションを難しくする「悪の元凶」なのか

ここまで、オンラインコミュニケーションの難しさについて見てきた。

「メールを使うようになってから、職場のコミュニケーションが減った」といった意見を聞くことがよくある。オンラインツールの出現によって、便利にはなったし、多様な働き方ができるようになった。だが、その分、コミュニケーションが減った……という指摘だ。

たしかに、そういった一面はある。「直接話したほうが手っ取り早い」「直接話せば、こんな問題は起きない」「顔と顔を合わせるからこそ、コミュニケーションと言えるんだ」という意見もあるだろう。

しかも、ここに挙げたように、オンラインコミュニケーションには難しさもある。

だが、2年間在宅勤務をしてみて、オンラインコミュニケーションが、コミュニケーション不足になる「悪の元凶」なのか……というと、そうでもないのではないか。オンラインだからこそできる関係構築もあるのではないかと思うようになってきた。

オンラインだからこそできる関係構築

たとえば、サイボウズの社員のなかには、「直接話すときは言葉数が少ないが、オンラインではおしゃべりな社員」がいる。これをお読みの方のなかにも、「電話よりも、チャットやSNSのほうが気軽に話せるし、先方の都合や時間を気にしなくてもいいから好き」という人もいるだろう。

同僚に対して「○○さん、すごいね」と、面と向かって伝えるのはなんとなく恥ずかしいが、オンラインだと、なぜか素直に言えてしまうこともある。

また、サイボウズでは在宅勤務している/していないにかかわらず、オンラインが賑やかだ。仕事に必要なノウハウや会議の議事録、上司への相談ごとやちょっとしたつぶやきなどの情報がグループウエア上でオープンになっているため、新潟にいようが、オフィスにいようが働き方は同じで情報の格差もない。

オンラインがにぎやか「転職先、会話が少なくて寂しい……」と思いきや、オンラインがにぎやかだった

さらに、オンラインコミュニケーションはその気軽さゆえに、チャットのようなやり取りをすることで、対面よりも接触機会が多い。

米国の心理学者ロバート・ザイアンスによれば、「接触回数が多いほど親しみを感じる」そうだ。オンラインコミュニケーションは、うまく使えば接触機会を増やし、チーム内の親しみや信頼関係を創るツールになり得るのではないか。

オンラインコミュニケーションを円滑にする工夫

とはいえ、在宅勤務ならではの工夫もある。ここからは、私がリモートワークをする上での「オンラインコミュニケーションの工夫」のいくつかについて紹介しよう。

誤解を生じないようにする工夫

ネット上では、意見の食い違いからおたがいを批判し合っているようなシーンをよく見かけるが、意見の食い違いは、相手の意見を読んだときの「解釈の間違い」によって生じることが多い。

そこで、解釈の間違いを防ぐために、ひと言目に「解釈の確認」を入れることにしている。

たとえば、「テレビ会議だと、ちょっとした発言をしたいとき、オフィスの会議室で話しているメンバーの会話の流れを止めてしまわないかと不安」という社員に、私は以前、次のような「解釈の確認」を入れた。

ひと言で要約して確認

このように、相手の意見を「なるほど、あなたが言いたいのはこういうことですね」のようにひと言で要約し、「あなたのおっしゃることを、私は○○と解釈しましたが、合っていますか?」と確認し、解釈の食い違いが起こらないように工夫している。

特に、論点がいくつかありそうな長い文章のとき、この「解釈の確認」を入れると、相手と認識を合わせやすくなる。

冷たい印象を和らげる工夫

文字でのやりとりでは、顔の表情やジェスチャーで伝えることができない分、「文字に表情をつける」ようにしている。

たとえば、「ありがとうございます」のひと言も……

  • ありがとうございます。
  • ありがとうございます!
  • ありがとうございますー
  • ありがとうございます~
  • ありがとうございますm(__)m
  • あざっす!

のように、ビックリマークをつけたり、伸ばしたり、顔文字をつけたり、あえて砕いて伝えたりすることで、無機質な文字に表情が生まれる。

また、話の内容が否定的か、肯定的かにかかわらず、相手との関係がギスギスしないよう、できるだけ肯定表現を使うよう意識している。

たとえば、「Aさん、そういう言動は混乱を招くので、○○にしたほうがいいと思いますよ」という意見を伝えたい場合、一般的には「“あなた”を主語にした否定表現」+「アドバイス」になりがちだ。だが、否定されると、受け取った側は反発心を抱く。

そこで、「“私”を主語にした肯定表現」を意識している。たとえば、「私は、△△を○○にしていただけたほうがうれしいです」のように、

また、「今日中に報告書を提出してください」のような命令口調も強い印象を与えやすい。そこで、「今日中に報告書を提出することはできますか?」のように”疑問形”にすると、柔らかくお願いするニュアンスになる。

同じことを伝えるにも、できるだけ、気持ちよく伝えたい。

心や体の状態を伝える工夫

体調や気分などの非言語情報を伝えるために、私は「気分天気」というのを日報に書いている。気分天気とは、体や心の状態を天気で表したものだ。

気分天気

体調や気分を言語化するのは難しい場合も多いが、天気で表現することで、言語化しにくい心や体の状態をメンバーと共有することに役立っている

先日、気分天気がしばらく「くもり」の日が続いていることに気づいた、編集部員の明石悠佳が、「竹内さん、くもりが続いているようですが、大丈夫ですか?」と声を掛けてくれた。仕事のことで、しばらくモヤモヤしていたのだが、気づいてくれただけでうれしく、話をするきっかけができ、助かった。

話したいとき、話す工夫

「話したいとき、話せない」について。

これは「工夫」ではないかもしれないが、グループウエアやSNSのメンション(相手を指定して通知する)機能を使い、「@○○(メンション)さん、□□について教えてください」のように、相手を直接指定して、通知が届くようにしている。

他の社員もグループウエアを使って仕事をしているため、会議中などを除けば、多くの場合すぐにレスポンスが返ってくる。こうすることで、タイムラグはゼロではないが、かなり短くなっている。

少なくとも、メールを送って返信がないときの、あの「ヤキモキする感じ」はない。

仕事の進捗を見せる工夫

物理的に離れており、他のメンバーから見えないところで働いているため、できるだけ、「仕事の見える化」をするようにしている。

たとえば、朝、PCに向かってまず行うのは、今日行うToDoリストの作成だ。そして、グループウエア上に書き込む。

ToDoリスト

仕事が終わったら、日報を書く。「今日やったこと」「今抱えているタスク」「所感」など、一日の出来事をこまめに書いている。また、業務内容だけではなく、思ったこと、感じたことをプライベートも含めて積極的に伝え、自己開示するようにしている。

「分報」というのも書いている。日報が「一日の報告」なら、分報は「分刻みの報告」だ。「○○が終わったよ」「あー、疲れたー」「今、行き詰まっている」「ちょっと休憩」など、その時々の仕事や気分など「何気ないひと言」をつぶやき、共有するのが「分報」の目的だ。

分報

寂しさを解消する工夫

オンラインコミュニケーションによって生じている寂しさを、オンラインで埋めるのは難しい。

そこで、一週間から隔週で、「ザツダン」というミーティングをテレビ会議で行っている。「ザツダン」とは、リーダーとメンバーが1対1で30分、悩みや課題などを自由に話すことができる時間だ。

なお、サイボウズでは組織変更したら部長がいなくなった部署もあり、サイボウズ式編集部では「リーダーとメンバー」だけではなく、「メンバー同士、誰とでも」話すことができる。

普段、文字でのやり取りが中心なだけに、会話の大切さを痛感している。

働き方によってコミュニケーションも多様になる

ここまで、リモートワークのオンラインコミュニケーションの難しさと、気持ちよく仕事をする工夫について見てきた。

「地方在住で週2日複業」「フルリモートワーク」という働き方ができるのは、オンラインツールがあってこそだ。

だが、こういった働き方やコミュニケーションの仕方は最初からできていたわけではない。仕事をするなかで、「こういう場合は、こういうふうに伝えたほうがいいな」「こういう情報を伝えたほうが、相手に理解してもらえそうだな」といった試行錯誤の上、編み出してきたのである。

働き方は、これからもますます多様になるだろう。それに伴って、コミュニケーションの方法も変わっていくだろう。ビジネスコミュニケーションは、今、変革期にあるのかもしれない。

執筆・竹内義晴/イラスト・マツナガエイコ

「あれっ、お疲れさまって言い過ぎじゃない?」──スイス人が日本の会社で思うこと

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アレックスの「あれっ?」、サイボウズに入社したスイス人の観察記、第3回。

2018年の11月にサイボウズに入社したアレックスと申します。スイス出身です。よろしくお願いいたします。

……という自己紹介は、そのまま日本語学校で覚えたものです。就職活動では、尊敬語、謙譲語、ビジネスマナーなどが必要になると聞いたので、フラッシュカードやYouTubeで毎日寝る前に練習しました。そして、同じシェアハウスに住んでいる日本人のハウスメイトにも「日本で働くのはどんな感じ?」と聞いていたので、なんとなく日本で働くイメージは、頭の中にありました。

しかし、いざサイボウズに入社してみると、教わったイメージと違っていて「あれっ?」と思うことが何度もありました。この連載では、「サイボウズでの会社員生活」で得た気づきを、外国人視点でお伝えしています。サイボウズに入社したスイス人の観察記、第3回です。

日本人に勝手なイメージを持っていたけど、実際は違って「あれっ?」

アレックスが日本に来る前に抱いていた日本人のイメージは、シャイで静か、忙しそう 日本に来てから、アレックスは日本人の多様性に気づいた。例えば、たこ焼き屋台で働いているおしゃべりな関西人 日本の田舎を旅行したアレックス。東京よりも田舎の方が時間がゆっくりで、人もゆったりと過ごしていることを知る 日本人の友だちと話すアレックス。友だちに「欧米の人はカジュアルでちょっとルーズなイメージがある」と言われて、欧米人みんながそうではない、と考える アレックスが、友人が欧米人に対して先入観のあるイメージを持っているのは、自分が以前日本に対して勝手なイメージを抱いていたのと同じだと気づきます 「どこの国にも多様性があるんだよな」と思いながら、アレックスは「スイスに来てみたらわかるよ」と友人に話します

アレックス
アレックス
サイボウズの面接を受けた時に、「サイボウズの多様性についてどう思いますか」と聞かれました。そのときは、「社員の大半は日本人だろうから、多様性はあまりないんじゃないかな」と思っていました。

でも、入社してたくさんの同僚と仲良くなるにつれて、みんなそれぞれに個性があって、さまざまな性格や趣味、経歴を持っているのだとわかってきました。日本人には日本人なりの多様性があるんですね。

一方、いまだに日本人の方から、「ヨーロッパの人はみんなジャガイモが好きなんですか?」ときかれることがあります。ヨーロッパの多様性についても知ってもらえたらうれしいなと思います(笑)。

正しい敬語を使いたいと思っているけど、「あれっ?」

入社したばかりのアレックスは、正しい敬語を使うように気をつけていました。上司に原稿を読んでもらうように頼まれたアレックス アレックスが敬語で正しく答えるように考え込んでいます アレックスがどう答えたらいいか考えているうちに、上司に「お願いします」と言われ、結局「はい」としか言えなかったアレックス 数か月後、上司に出張に行けるかを聞かれ、「めっちゃ行きたい!」と答えるアレックス 驚く上司とアレックス 調子に乗ってしまったと、丁寧すぎる日本語で謝るアレックス。「それはやり過ぎです」と上司に言われてしまう

アレックス
アレックス
敬語はなかなか自然に使えません。上司に対して「タメ口」で話してしまったり、友人に対して敬語を使ってしまったり。

母語じゃないと、言葉づかいにはかなりのエネルギーを使うし、間違えてしまうことがよくあります。日常的に敬語を使うのはほとんどあきらめましたが、もしカジュアルに話しすぎてしまったら、お許しください!

会社で、「お疲れ様です!」って言い過ぎて「あれっ?」

出勤するアレックス。同僚に「お疲れさまです」と言われる ラウンジにて、ほかの同僚に会ったときも、「お疲れさまです」とあいさつ 会議室に「お疲れさまです」と言いながら入ってくる同僚。アレックスも「お疲れさまです」と返事する 会議後、「お疲れさまです」と言って部屋から出ていく同僚。アレックスもやはり「お疲れさまです」と答える トイレで同僚と会い、「お疲れさまです」と挨拶されて少しびっくりしながら、「お疲れさまです」と返事するアレックス
アレックス
アレックス
「お疲れ様です」は、仕事が終わったら使う表現だと日本語学校で習いました。1日仕事を頑張ると疲れるから、仕事終わりに「お疲れ様です」と言うのだと思っていました。

なので、働き始めたころは、朝に職場に着いたばかりのときや、トイレで同僚と会ったときに「お疲れ様」と言われると、「なんで? 何に疲れたんですか?」とよく思っていました。同僚に疑問をぶつけたところ、「ただの挨拶ですよ。考えすぎなくて大丈夫」との答え。そのときから、「お疲れ様です」を、わたしもさまざまな場面で使うようになりました。

さて、これで第3話が終わります。お疲れ様でした。

マンガ:夕海 編集:アレックス

「あれっ、日本人のカタカナ英語ってヘンじゃない?」──スイス人が日本でのコミュニケーションで難しいと思うこと
「あれっ、日本語学校で教わったことと違うじゃん!」──スイス人がサイボウズの面接を受けて感じたこと

週休3日制って、本当に実現できるんですか? 休息の専門家に聞いたら「1日ごとの行動計画が必須」だとわかった

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「週休3日制は、人間が働くのにちょうどいいバランスなんです」

アレックス・スジョンーキム・パンさんはこう話します。パンさんは、レストフル・カンパニーの創業者で、米スタンフォード大学の客員教授です。

AIをはじめとするテクノロジーの進化により、人間の働き方が大きく変わることが予測される一方、人手不足問題を抱える日本の「働き方改革」はまだ始まったばかり。

今後、「働き方」はどのように変わっていくのでしょうか? 週休3日制のメリットや、実際に導入するためのポイントを聞きました。

週休3日制なら、いい仕事をしながら自由な時間も手に入る

アレックス
アレックス
まず、週休3日制を推奨する理由を教えてください。総労働時間を減らすのが目的なら、たとえば週休2日のまま、1日4時間勤務でもいいのではないでしょうか?
パン
パン
何事も一歩一歩です。100年前の経済学者たちが、将来的には週15~20時間労働が実現するだろうと考えていたように、いつか1日4時間勤務を実現できるかもしれません。

でも、現実問題として今のところは難しいですよね。

アレックス・スジョンーキム・パン。 レストフル・カンパニー代表、米スタンフォード大学客員研究員。米ペンシルバニア大学院にて科学史を専攻し、Ph.D取得。著書『シリコンバレー式よい休息』で、クリエイティブな人々の人生にとって、休息がいかに重要であるかについて論じている。

パン
パン
多くの人にとって、週休3日はちょうどいいバランスなんです。いい仕事をしながら自由な時間も手に入る。このバランスは、フレックスワーク(*1)の仕組みにはあまりないものです。

(*1)フレックスワーク:労働開始時間や終了時間や働く場所を、従業員が柔軟に選べる制度。

フレックスワーク制度がストレス軽減につながるとは限らない

アレックス
アレックス
ワークライフバランスを求める人にとって、フレックスワークはありがたい制度のように思えますが。
パン
パン
フレックスワークは、しかるべき方法で、社内で広く使われるのであれば、非常に有効です。

でも、米国と英国における最近の研究で、思わぬ結果が明らかになったのです。
アレックス
アレックス
思わぬ結果......。
パン
パン
1つは、フレックスワーク制度を使う人が少ない場合は、フレックスワークを選ぶ人に対して、文化的ペナルティが与えられるということです。

具体的には、おもしろい仕事は与えられず、出世も遅くなるということです。また、21時まで会社にいる人に比べて、「仕事に打ち込んでいない」と考えられるふしがあるのです。
アレックス
アレックス
労働時間が長い人のほうが「仕事熱心」で、「仕事中心の生活を送れる人」と思われてしまうということですね。
パン
パン
そうです。もう1つのマイナス点は、特に子どもを持つ女性に、かなりのストレスがあることです。

生物学的数値でストレスを測定する研究が先日発表されました。全般的な結論は、2人の子どもがいて、柔軟な働き方をしている女性のストレス値は、子どものいない男性に比べて40%、子どもが1人いる女性よりも20%高いということがわかっています。

フレックスワークがストレス軽減につながる証拠は、不十分だということです。

パンさんは、著書『シリコンバレー式よい休息』で、労働と休息の関係性や、創造性を発揮するうえで休息が果たす役割について論じている。

パン
パン
フレックスワークをするには、ほかのメンバーとの調整に多大な労力を割かなければならないんですよね。同僚への情報共有の責任がありますし、仕事を滞らせないことを証明しなければいけません。
アレックス
アレックス
たしかにスケジュールを調整するために、同僚と交渉もしなければなりませんね。
パン
パン
この心理的な苦労は何重にも入り組んでいます。でも、週休3日制の場合は生じません。なぜなら、たいていみんなが月〜木でオフィスにいるからです。
アレックス
アレックス
週休3日制の場合でも、何かしらの調整が必要なのでは?
パン
パン
週休3日制の導入によって、会社全体で達成しなければならない課題はあります。でも、経営状態のいい企業は、結果、予想外のコストが発生するどころか、利益を得ることができます。
アレックス
アレックス
成功した会社はどのような利益を得たのでしょう?
パン
パン
広告業界は徹夜や夜中までの過重労働が伝統みたいなものですが、私が見た広告代理店の多くには、社員が20%の労働時間を削減しながらも、これまで通りクライアントを離さず、新規顧客も獲得していました。

労働の質に加え、クライアントとの関係の質も上げられたんです。週休3日制がいかに有効か、決定的に証明していますよね。
アレックス
アレックス
いいことづくしだったんですね。
パン
パン
従業員が最大1000人規模の企業を約100社研究した結果、この利益はどの会社にも見られました。しかし、サンプル数は決して多くありません。業界や企業の規模によって、結果が異なるかどうかはまだ断言できません。

週休3日制を成功させる3つのポイント

アレックス
アレックス
週休3日制を実現するためには、どのような工夫が必要ですか?
パン
パン
週休3日制のために会社がすべきことは3つです。

(1)効率よくミーティングをすること。
(2)1日をリデザインして、集中できるまとまった時間を確保すること。
(3)テクノロジーをうまくコントロールすること。
アレックス
アレックス
詳しく教えてください。
パン
パン
まず(1)について、会議の時間を短時間にする必要があります。全員出席の1時間の会議なんてやっている場合ではなくて、数人の重要なメンバーが10分ほど打ち合わせるようなスタイルにしなきゃいけない。
アレックス
アレックス
短時間にする分、密度の濃い会議にする必要があるんですね。
パン
パン
(2)は、1日の計画を立てるということ。午前中は最重要タスクに集中して、ミーティングは短いものだけにする。クライアントとのピッチやそのほかのミーティングは午後に回す、というようにね。

こうすることで、社員一人ひとりが集中する時間を3、4時間確保できます。
アレックス
アレックス
生産性を上げるために、時間の使い方をデザインする、と……。
パン
パン
その通りです。(3)についてですが、テクノロジーはとても重要な要素です。

テクノロジーのおかげで、今やメールやSlackをいつでもチェックできます。しかし、どれほどの時間を使い、何について、誰がコミュニケーションすべきなのか、しっかり考える必要があるでしょう。
アレックス
アレックス
いつでもどこでもチェックできる分、自己管理が必要なんですね。
パン
パン
(1)〜(3)を実践した人々からは、高い満足度を得ていることも報告されています。だれもが、時計が17時を回った時に「そういえば今日、何をしたっけな?」なんて考えたことがありますよね。

そんなことが起こらないように1日をデザインすれば、みんなもっとハッピーになるんですよ。

IIH Nordic社。オンラインマーケティングとデジタル分析を行う会社で、週休3日制を取り入れ、大きな効果を上げているという。

クライアントもあなたの会社と同じ問題を抱えている

アレックス
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(1)〜(3)は社内での取り組みですが、社外に向けて実施すべきことはありますか?
パン
パン
クライアントの期待をマネジメントすることです。
アレックス
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週休3日制の導入についてクライアントを説得するのは、少し難しそうですね......。
パン
パン
みなさん、とても心配するんですが、実際にやってみると、それほど大きな問題ではないとわかるものです。

ニーズを把握し、非常事態に備えておけば、クライアントは協力的になってくれるはずです。なぜなら、クライアントも同じ問題を抱えていて、あなたの会社が同じ問題解決をしていると映るからです。
アレックス
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たしかに、「社員の幸福度を上げて、効率性と収益性を高めたい」という考えは、クライアント企業も抱いているはずですもんね。
パン
パン
長年のビジネスパートナーであるのなら、クライアントはあなたの会社のカルチャーを理解しています。そして、あなたの会社が実行できるのなら、彼らもたぶん実行できるんです。
アレックス
アレックス
クライアントの理解を得るためには、まず何から始めたらいいでしょうか?
パン
パン
はじめに、「これは一定期間の実験で、いずれ終わりますよ」と伝えると、相手の理解も得やすいです。

早めにKPIを明確にしておくのも大切ですね。

「キャッシュフローはどうなっている?」「納期は守られている?」の確認も必要です。数字が安定、または伸びているのなら安心です。そうでないなら、もっと難しい決断をしなきゃなりませんが。
アレックス
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成果を維持できていることを証明しないといけないんですね。

零細企業の取り組みが、5年後には有名企業に取り入れられているかも

アレックス
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こういった実験は、大企業よりも、小さい企業のほうがやりやすいと著書に書かれていますが、なぜですか?
パン
パン
小さい会社の方が、企業文化と業務プロセスの変革を試しやすいからです。

「大企業だからできない」というような障壁があるわけではないと思うのですが、企業文化の変革は、小さい企業から始まって、やがて大きな企業へと浸透していくというパターンが多い。
アレックス
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たしかに。
パン
パン
近年、企業がすぐにスケールするという事実があります。

ある土地の零細企業による風変わりな実験が、5年後にはフォーチュン100(*2)企業の間でニューウェーブになっているかもしれない。

(*2)米フォーチュン誌による企業ランキング

パン
パン
オラクルやグーグルだって、週休3日制への移行を阻むものは何もないですよ。とても優秀な企業ですから、すぐにやりこなせるでしょうね。
アレックス
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週休3日制をすでに取り入れている大企業はありますか?
パン
パン
日本のZOZOと韓国のWoowa Brothersがあります。

どちらも社員数が約1000人で、どんどん成長していますが、私の知る限り、今のところ週休3日制をやめるつもりはないようです。

週休3日制なら、仕事で燃え尽きなくて済む

アレックス
アレックス
日本では急速な少子高齢化が進んでいて、深刻な人手不足に直面しています。勤務時間の削減は、経済を停滞させませんか?
パン
パン
もし生産性の維持が目標でしたら、経済は停滞しないでしょう。

長期的には2つの重大なインパクトがあります。

1つは、キャリアの寿命が延びることです。

多くの人は「週5日働くよりも週4日働いて3日休むほうがいい。ストレスが少ないし、体力も奪われない。」「燃え尽きて引退しなくて済みそうだ。自分の好きなことをしてるけれど、これを20年後もしている自分の姿が想像できるよ」と話しています。

大規模な組織にとって、労働力を長く引き止められることは、多大な利益となるでしょう。
アレックス
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無理なく仕事を楽しめれば、年をとっても、仕事を続けられるということですね。
パン
パン
もう1つは、勤務時間を短縮すると、会社でのテクノロジーの使い方を考え直すようになることです。

「従業員からどれだけ労働時間を搾取するか」という発想をやめて、「テクノロジーでどれだけ生産性を上げ、いかにして得たものを社員と分け合うか」という発想になります。
アレックス
アレックス
ふむふむ。
パン
パン
モバイルのテクノロジーは、社員に22時にメールする手段ではなく、社員が邪魔されずに仕事できる環境をつくり、1日の終わりに解放されるための手段だと考えましょう。

報酬に対する考え方を変えたら、週休3日制を取り入れられた

アレックス
アレックス
日本には、残業代に依存する社員がたくさんいます。勤務時間の削減で、労働者は不利益をこうむることになりませんか?
パン
パン
残業は廃止するか、残業が発生したときのルールを変更すべきです。

給料のかなりの額が残業代として支払われていることや、時給制の働き方は大きな問題です。
アレックス
アレックス
現状に問題があると。
パン
パン
長年、時間に対する報酬をクライアントに請求してきた法律事務所に話を聞きました。彼らにとって、週休3日制への移行は、想像を絶することです。

なぜなら、彼らには「クライアントに請求可能な時間数を最大化すべし」という考え方が刷り込まれているからです。

でも、時間でなく案件に対する報酬へと徐々に移行し始めたようで、週休3日制を導入する余地も生まれています。
アレックス
アレックス
報酬が何に対して支払われるかの考え方を変えたのですね。
パン
パン
はい。ですが、時間あたり報酬のうち、どれだけの割合で人材が実際に働いて稼いだものなのかは、よく考える必要があります。
アレックス
アレックス
みんなが満足できるように週休3日制の実現するには、さまざまな制度や環境を整える必要がありそうですね。働き方を考えるためのヒントをたくさん聞くことができました。ありがとうございました。
翻訳:河崎環/編集:藤村能光、鈴木統子/執筆:Alex Steullet

複業のやりすぎで、心身のバランスを崩した話。「複業との付き合い方」を考え直してみた

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今から2ヶ月ほど前のある日。私は突然、会社に行けなくなってしまいました。朝起きて「行こう」と思っても、涙がポロポロとあふれて止まらず、足が動かなかったのです。

その日は大切な取材があり、行かなければならないと分かっていたのですが、どうしても、心と身体が言うことを聞いてくれませんでした。何度も何度も行こうとしたのですが、ダメでした。結局チームのみなさんに事情を話し、その日から1週間会社を休むことに……。仕事は好きだったので、自分がそうなってしまったことに、心底驚き、戸惑いました。

後日振り返ってみると、こうなってしまった大きな原因のひとつとして、1年前に始めた「複業」の存在がありました。本業も複業もフルスロットルで走り続けた結果、自分の体力とストレスのキャパシティが限界を迎えてしまったのです。

今日は、私がこの経験から学んだ「複業との向き合い方」について、書いてみたいと思います。

1年前に始めた「複業」。仕事が楽しくて仕方なかった

私は普段、サイボウズで週5日フルタイムの正社員として働いています。仕事内容は、サイボウズが大事にしている価値観を伝えるためのコンテンツ制作。具体的には、Webメディア「サイボウズ式」の運営や、今年発売予定の、副社長の書籍制作などを担当しています。

サイボウズで編集者として働いていると、1年前ほど前、サイボウズ以外の方から「一緒にお仕事をしませんか」とお声がけをいただきました。いわゆる「複業」のお誘いです。そしてそれがきっかけとなり、フリーランスの編集者・ライターとしても仕事をはじめることになりました。大学時代から編集者になりたい、特に文章に関わる仕事がしたいと思っていたので、こんなに嬉しいことはありませんでした。

本業でも複業でもプライベートでも、ずーっと、何かしらの文章を書いたり編集したりしていました。嘘偽りなく、仕事が楽しくて仕方なかったです。

仕事が全部おもしろそうに見えて断れない

複業をはじめたばかりの頃は、そこまで複業の仕事が多くなかったので、本業と複業の両立にまったく問題はありませんでした。どちらもバランスよくこなし、人間関係も広がり、好調な時期が続きました。

ですがしばらくすると、「明石さんは複業をしている」という認知が広がったことも関係して、複業でいただく案件の数が増えていきました。

大学時代からずっと憧れていた方へのインタビュー案件や、興味あるテーマでのコラム執筆、書籍の編集、イベント登壇……。

いただく仕事の話はどれも魅力的で、私は水を得た魚のように、精力的に仕事を増やし続けました。「今を逃したら、もうチャンスが来ないかもしれない」。そんな焦りや不安もあいまって、断るという選択肢はほとんどありませんでした。「まだ若いんだから、少しくらい無理しても大丈夫」という根性論のもと、私は次から次へと案件を受けるようになっていきました。

受けたからには、しっかりと期待に応える。本業も手を抜かない。複業をはじめたとき、このふたつは絶対に守り抜こうと心に決めていたので、次第に私は「自分の時間」を削るようになっていきました。プライベートや趣味、睡眠の時間を減らして、複業に充てるようになっていったのです。

複業をはじめて10ヶ月が経つころには、毎月の複業に充てる時間は80時間を超えていました。大好きだったはずの読書や映画鑑賞はほとんどできず、4・5時間睡眠が当たり前、旅行先でも常に原稿の締め切りに追われ、毎月1日休みがあるかないか……といった状態に。さらには都内から遠方に引っ越したこともあり、往復の通勤時間は3時間を超えていました。もともと体力はある方ではなく、まったりした生活が好きだった私にとって、それはかなりのストレスが溜まる毎日でした。

そして、そういった「無理」を積み重ねた結果起きてしまったのが、前述の出来事でした。

追い込まれた原因は「時間のなさ」

会社に行けなくなったとき、ひさしぶりに何もしない時間ができたので、私はそれまでの1年間を振り返ってみました。なんでこうなってしまったんだろう? どうすれば、再発せずにすむだろう?

そう考えると、私を一番苦しめていたのは「時間のなさ」だと気づきました。ただでさえ、締め切りがつきまとう編集やライティングの仕事。時間に余裕がなくては、心身ともに追い込まれてしまいます。

「なるべく締め切りには余裕を持たせるようにスケジューリングする」「複業の量を無理のない範囲で調整する」などといったぼんやりした決めごとでは、きっとまたキャパオーバーの仕事量を詰め込んでしまうことは明確でした。ただでさえ断りづらい性格をしている私には、しっかり実行できる具体的な対応策が必要だ、と思いました。

そこで私が行ったこと。それは、「時間の使い方」に対する「理想」と「現実」のギャップを埋める作業でした。

時間の使い方の「理想と現実のギャップ」を徹底的に考えた

「すべての問題は、理想と現実のギャップから生まれている」。これは、サイボウズが大事にしている考え方のひとつです。この考え方が私は大好きなので、「時間がなくてしんどい」という今回の問題に対しても、何にそんなに時間を使っているのか、どんな使い方だったらしんどくならないのか、自分の「理想」と「現実」を見つめ、ノートに書き出すことにしました。

理想と現実と課題をまとめたイラスト。理想は「時間をつくり、心身ともに余裕を持たせる」こと、現実は「とにかく時間がなく、心身ともに疲弊している」。課題は「複業と通勤時間がネックになっている」

こうやって自分の「理想」と「現実」を洗い出してみると、解決すべき課題が浮き上がってきます。私の場合は、複業と通勤がネックとなって、自分にとって大切な読書や睡眠の時間が圧迫されている事実がありました。

そこでまず、上司と相談し、在宅勤務の日数を増やすことで、負担になっていた通勤時間を減らすことにしました。それまでは、ほとんど毎日都内に出ていたのですが、週2日は固定で在宅勤務をすることに。

そして複業も、今までは際限なく受けていたのですが、週10時間という物理的な制限を設けることにしました。「複業20時間」よりも「複業10時間+読書や睡眠10時間」の方が、私にとって幸福度が上がる、理想の時間の使い方であることに気づいたのです。

物理的な制限を設けたことで「断らざるをえない」状態ができ、その結果自分にとっての「案件を受ける基準」が定まったことも、大きな効果でした。

複業は「人生を豊かにするため」であって、「疲弊するため」にやっているわけじゃない

私は「人生を豊かにしたい」と思ってはじめた複業が、いつのまにか生活を圧迫し、自分を疲弊させるものに変わってしまっていました。それはあまりにも本末転倒で、悲しい出来事です。

だからそうならないためにも、「理想の時間の使い方」を常に考え、時には諦めることをも覚え、自分をコントロールしていくことが、何よりも大切なのだと今は思うようになりました。

時間の使い方をあらためたことで、読書や映画鑑賞をする時間が増え、パートナーとの対話が増え、思考する時間が増え、ひとつひとつの案件にかけられる時間が増えました。その結果、自分にとっても周囲にとっても、ポジティブな影響を及ぼしていると感じます。

複業は、ちょうどいいバランスさえつかめれば、会社以外での自分の居場所を見つけ、スキルを磨き、さらには自己実現にも繋がるとても素敵な行為です。けれど一歩間違えれば、疲弊してしまう原因にもなりかねません。

この経験を忘れずに、自分にとってちょうどいいバランスを探りながら、複業とこれからも向き合っていこうと思っています。

執筆・明石悠佳/イラスト・マツナガエイコ/編集・藤村能光
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