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結婚に導く技術、愛妻家を育む技術

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日根氏と小菅氏

左より「ルナルナ」事業部長 日根麻綾氏、「日本愛妻家協会」主任調査員 小菅隆太氏

絶滅が危惧される「愛妻家」を調査、保護、育成する「日本愛妻家協会」の主任調査員を名乗る小菅隆太さんと、女性のカラダとココロをサポートするスマホサービス「ルナルナ」の事業部長で新婚ホヤホヤの日根麻綾さんの対談後編をお届けします。 前半では小菅さんが離婚寸前から「奇跡のV字回復」を果たすまでの経緯をたっぷり語ってくれましたが、後編では日根さんが、結婚になかなか踏み切ろうとしない恋人にどのように決断をさせたのか、そのマル秘テクニックを披露!  さらに、男性がなかなか気づかない、女性の身体と心の変化によって夫婦関係に生じる問題をどう乗り越えるか、といったことに話が進んでいきます。すでに結婚している人にも、これから結婚しようとしている人にも、より良い夫婦関係を築く上でヒントになる話が満載です!

結婚に踏み切ろうとしない男性をいかに決断に導いたか

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男性の主体性を引き出す

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変化する女性の身体と心

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更年期は深い夫婦関係にステップアップできるチャンス

愛妻家であると認定するのは妻

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アホでおバカな男というものを受け入れてほしい

temiru.png c53bdb7a04a817736e48015504687aadc9b30ab1.jpg 文:荒濱一 撮影:尾木司 編集:渡辺清美

【サイボウズ式編集部より】11月10日(火)、日本愛妻家協会の小菅氏とルナルナ事業部長の日根氏、サイボウズの青野社長が登壇する新たな男女のパートナーシップを探るイベント「おとなの、ぼくらの」課外授業を開催します。ご関心のある方はどうぞお申込みください。


ロボット掃除機は本当に便利なのか──コデラ総研 家庭部(52)

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テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第52回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「ロボット掃除機は本当に便利なのか」。

文・写真:小寺 信良

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ロボット掃除機といえば、長年iRobot社のルンバがその代名詞として君臨し続けており、今では類似品も含めて全部この手の製品は「ルンバ」と呼ばれてしまう状況にある。円盤状の自走式ロボットがあちこち動き回って掃除していく様を動画や量販店の掃除機コーナーで見かけた人も多いことだろう。今年も10月に新モデル「ルンバ980」が発売されたばかりで、公式ストアでの価格は13万5000円(税込)となっている。

一方サイクロン型掃除機で人気の高いダイソンも、「Dyson 360 Eye」でこの分野に参入した。他のロボット掃除機の4倍の吸引力として誇らしげだ。キャニスター型掃除機では、「吸引力が変わらない」ことを前面に押し出していたが、実際には吸引力は他社の半分ぐらいしかないというのは周知の事実である。ただその半分の吸引力がゴミを吸ってもずっと変わらないというのは事実で、そこを巧みに利用した広告を展開してきた。一方でロボット掃除機分野では本当に自信があるのか、吸引力を前面に打ち出すという広告宣伝を展開してしまうあたり、その巧みさに舌を巻く。こちらのお値段は、公式サイトで14万9040円(税込)となっている。

一般的なキャニスター型掃除機であれば、安いものは数千円、5万円も出せば高級モデルが手に入る。それがロボット掃除機ともなると、スタートラインが5万円からとなり、15万円弱ともなれば掃除機としては超ハイエンドということになる。キャニスター型なら、ビル掃除で使うような業務用機が買える値段だ。それでもロボット型掃除機を導入した人は、非常に満足しているようである。

筆者はロボット型掃除機の導入には、消極的であった。なぜならば、うちは仕事柄、常時借り物の家電製品が家中にゴロゴロしている。個人持ちの家電もあるのに、同ジャンルの家電がさらに2つ3つ常にある状態なので、おそらく一般家庭の2倍ぐらい家電製品があるはずである。このため、電源ケーブルの配線がテンポラリ的にあちこちに敷設してあるため、ロボット掃除機を走らせるスペースがないのである。

だが、一度ぐらいは使ってみないと、買った人が何に満足しているのか、その価値観がよく分からない。かといっていきなり10万円オーバーの出費をして、結局あんまり使わないということになってもイタい。というわけでAmazonやら価格.comやらをいろいろ調べて購入したのが、ツカモトエイムの「AIM-RC01」というモデルである。購入価格は1万2000円。これなら使わなくなっても諦めはつく。ツカモトエイムは、以前ご紹介した窓掃除ロボット「HOBOT-168」の販売代理店だ。

使ってみて驚いた!

AIM-RC01は、直径およそ25cmの円形お掃除ロボットである。正面に当たり検知のバンパーがあり、その下には回転する2つのブラシがある(写真1)。これでゴミを中央に掻き込み、吸引孔から吸うという仕掛けだ。バッテリは充電式で、自分で交換可能。自動で充電に戻るような機能は当然なく、ボディ横にあるコネクタに自分で接続する必要がある。

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写真1:本体裏側。2つのブラシで中央の吸引孔にゴミを掻き込む

実際どれぐらい掃除できるのだろうと、充電完了後、6畳のダイニングの床を掃除させてみた。フローリングなので掃除はしやすいはずだが、椅子がたくさんあるので、これは全部テーブルの上に乗せて動きやすくしてみた。

動作音はそこそこ大きく、ラジコンカーが動き回っているような音がする。前進よりもバックの方が音が大きい。机や壁に当たっては右回りに少しずつ角度を変えつつ前進していくので、気長に待っていればそのうち床全部が掃除できるという仕掛けである。ゴミが落ちていてもなかなかそこにヒットしないので、ずっと見ているとイライラするが、人がついているのであれば自動でやらせる意味がないので、仕事に戻りつつ終わるのを待った。

朝食はパンが多いため、テーブルの下にはどうしてもパンくずが落ちる。それらが綺麗に拾えればOKという程度に考えていたのだが、30分コースで掃除させて、クリーナーパックを開けて驚いた。パンくずなどの大きなゴミも拾えているが、それ以上に大量にフィルターに固まっていたのが、猫と人間の毛である。フィルターにびっしり、ほぼ2cmぐらいの厚みになっていた。

もともとダイニングには、普段からダスキンのフロアモップを常備させており、ゴミが目に止まった段階で掃除をしている。このときも2日前に掃除したばかりで、大したゴミは取れないと思っていたのだが、筆者の目に見えていないだけで、実際にはペットや人間の毛のような細いものが毎日大量に落ちているということなのだろう。

そもそも人間が掃除しなきゃと思うのは、埃のような形で、ある程度ゴミが認識できるようになった時点である。一方ロボットは、人間では汚れてないだろうと思って掃除をしないような部分も、実に愚直に掃除しに行くので、見えないゴミが拾えるわけである。従って人力による目立つところの掃除と、ロボットによる機械的なパターンの掃除の2つを組み合わせると、かなり綺麗になるわけだ。

丸いボディは角が掃除できないとか細かいことを言う人がもあるようだが、実際に使ってみると、そういうのは些細な問題である。筆者は埃があるのが許せないような潔癖性ではないが、さすがにあれだけの毛の塊を見せつけられると、せめてロボットだけは毎日動かしとくかという気になる。

実際に毎日動かしていても、今日は空振りだったということはなく、それなりの量の埃が取れる。バッテリが2部屋分ぐらいしか保たないのが残念なところではあるが、1日2部屋ずつ掃除できれば十分だ。

人間しか住んでいない場合はそれほど埃もないかもしれないが、ペットを飼っている場合、抜け毛の掃除を本気でやると、それだけでかなりの労働力が必要になる。それほど高級モデルじゃなくても、ロボット掃除機は効果があるということが分かった。(了)


「コデラ総研 家庭部」の「掃除」ネタ一覧
掃除機のリクツ──コデラ総研 家庭部(11)
いつ掃除するのか。今で……──コデラ総研 家庭部(12)
窓掃除なんかロボットにお任せ! HOBOT最高!──コデラ総研 家庭部(39) ◎2台目の掃除機にダイソンを買い増す──コデラ総研 家庭部(40)


本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


この記事を、以下のライセンスで提供します:CC BY-SA
これ以外のライセンスをご希望の場合は、お問い合わせください。

「志望動機は知名度とモテそうだから」で何が悪い──中川淳一郎さんに「定説の疑い方」を聞く

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「御社の理念に共感して」「人の笑顔が見たくて」

就職活動の面接時に見られる明らかに建前な志望動機。なぜ、本音を言えない状況が生まれるのか、「そう言うことが当たり前」という定説はどこからくるのか。なぜ私たちは"空気"を読むのか?

これはあくまで一例でしかない。これらの根源となる空気や定説はなぜ作られるのか? 定説に流されず、Twitterなどで自説を展開する中川淳一郎さんは、空気に縛られずにとても軽やかに見える。空気や定説を疑い、“思い込み”を無くしていくための考え方を聞いた。

終身雇用は0.3%。定説に惑わされるな。

ほげほげ

中川淳一郎さん。1973年生まれ。東京都出身。ライター、編集者、PRプランナー。一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を請け負う。2001年に退社し、しばらく無職となったあとフリーライターになり、その後『テレビブロス』編集者に。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など、さまざまなネットニュースサイトの編集者となる。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『凡人のための仕事プレイ事始め』『ウェブで儲ける人と損する人の法則』『内定童貞』など。

定説を疑うには︎「大事な人はそこまでいない」ことに気づくことが必要

ほげほげ

中川淳一郎さんの携帯。その通りで本当に仕事関係が9割以上だった

就活生に伝えたい—「内定ゴール」が持つ意味とその反動

ほげほげ

「今、仲が良い人が5年後のそうかというと、そんなことない」とグサグサくる言葉を笑顔で語りかける

(*)株式会社人材研究所 代表取締役社長 曽和利光氏。採用後ろ倒し対策のコンサルティング、面接官・リクルータートレーニング、イベント選考アウトソーシングなどの採用をすべて一気通貫で行う。

「弊社の欲しい人材は残業してもガタガタ言わない人」が“嘘”になる就職活動

ほげほげ

「就職活動、本当腹立つ!」と中川さん。その表情の裏にはどこか就活生が共感できるものがある

定説なんか信じ切ってどうするんですか?

ほげほげ

中川淳一郎さんの財布。ガムテームで頑強に固められていたが、財布としての機能を果たしていた。レシートは100枚を優に超えるほど溜まっていたが、お金は逃げていないそうだ。まったく定説に流されていない例だ

聞き手:中川健吾/写真:尾木 司

中川淳一郎さんのコラム「専属社員なし、みんな初体験――無茶苦茶なNEWSポストセブンはなぜうまくいったのか?もどうぞ。

「言わなくても分かっているだろう」という甘え

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サイボウズ式編集部より:著名ブロガーをサイボウズ外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただく「ブロガーズ・コラム」。はせおやさいさんが考える「チーム運営で意見を1つの視点ととらえることの大切さ」。

こんにちは。はせおやさいです。

チームで一緒に働く仲間とはいえど、それぞれの正義やそれぞれの理念があります。アウトプットの表現方法は、必ずしも自分と同じとは限りません。今回はそういう「みんな違ってあたりまえ」に気付けず、失敗しそうになったときの話を書きたいと思います。

チームメンバーと大喧嘩したときの話

そのときのわたしは20代後半。いくつかプロジェクトをこなし実績もできたので、ある大きな案件の担当として奮起していました。誰もが知っている会社と大規模なサービスを企画・提供しましょう、という契約が固まりかけていたからです。自分でも初めてに近い規模の大きな案件で、苦労は多いものの、さまざまな関係部署への調整に走る日々を楽しんでいました。

契約の骨子がほぼ固まり、次はサービスの詳細な仕様を固めて、最終的な契約金額に落とし込めたらいざスタート、という段階まで話が進みました。わたしは社内に戻り、自分のチームのエンジニアに案件について概要を説明し「技術的な見積りを立てる必要があるから、相談に乗ってほしい」と依頼しました。

もちろん、事前にチーム内で案件が動いていることは共有していたので、当たり前のように協力してくれるものと思っていたところ、まさかの全否定……

「規模が大きすぎて技術的な負荷が高い」「いくらもらっても、うちでは対応しきれるわけがない」、さらには「そのサービス、うちでやる必要あるの?」とまで言われました。

こんなに大きな案件を受注できたら、売り上げも実績もダントツでつくし、みんな喜んでくれるはず! そう思っていたわたしのプライドは思いっきりへし折られ、大口論となりました。「予算が足りないなら取ってくる」「スケジュールが短いなら交渉してくる」といってもダメ。あまりのくやしさに業務用エレベーターに隠れて泣いたことをよく覚えています。

メソメソ泣いていても仕事は進むわけで、資料の締切も迫ってきます。どうしようと途方に暮れてしまいました。

「なぜ、彼はそんなことを言ったんだろう?」

泣いても提出期限は待ってくれるわけがなく、仕方がないので分からないなりに技術資料を作らねばなりません。ひとまず、自分がよくわかっていない部分の基礎知識を勉強し、なんとかエンジニアの彼と話しができる糸口を見つけよう、と思いました。

根っからの文系なので技術的なことはサッパリでしたが、幸か不幸か、ほかのチームのエンジニアが書籍や資料を貸してくれたり、質問にも応じてくれたりしました。数日かけて、ひとまず相手の話になんとかついていける状態まで知識をつけたとき、ハッと気付きました。

今までの自分は、あまりにも相手の仕事を知らなさすぎて、こちらの要望を伝えれば、彼の知識の範囲で「うまいこと」やってくれるだろうと、どこかに甘えがあったこと。

「技術的なことなんて、分かるはずがない」と思って逃げていたけれど、自分がこういうサービスを作りたい、そのためにはどうしたらいいのか知る必要があるという目的があれば、分からないなりにも、なんとか話についていけるまでにはなるのだということ。

分からないことは、素直に分からないといって聞けば良いのだ、ということです。

同時に、いっしょのチームで働いている彼の仕事を、わたしがまったく理解できていなかったように、彼もわたしの仕事を理解できていないのではないだろうか、ということにも思い至りました。

分かり合えているはずなんてない、から始めた

ひとまず周りの助けを得て資料の体裁を整え、自分でも技術面の説明ができる程度には知識をつけた状態で、取引先に提出する前に一度、同じチームのエンジニアである彼のところに行きました。今度は丸投げではなく、作った資料のレビューをしてほしい、という前提で。

資料のレビューをしてもらう前に「なぜ、この案件をわたしがやりたいと思っているのか」を説明しました。確かに今のチームにとっては分不相応なレベルの案件かもしれないが、この企画にはこういう目的があり、こういう使命を感じている。だからやるべきだと思っているし、できないことは解決していきたい。その実現をこういう形で考えてきたので、ダメ出しも含めプロとして力を貸してほしい、ということを伝えました。

ちょうどそのとき読んでいた本に「WHYからはじめよ」という1冊がありました。簡単に説明すると、その内容は人を動かすためには、「WHY」→「HOW」→「WHAT」の順番が大切であり、まず「WHY」、なぜそれをやるべきなのかから伝えるべきだというものでした。

それまでのわたしは「同じチームなんだから、目的は共有できているだろう」「わたしがなぜこんなにも必死で案件をまとめようとしているか、いちいち説明せずとも、きっと理解してくれているだろう」と思い込んでいて、「WHY」の説明をサボっていたんですね。

チームの仲間なんだから当然でしょという子供じみた甘えがあったんです。「WHY」の部分の説明を飛ばし、「HOW」や「WHAT」の部分だけを彼に説明して、力を貸してくれと無理強いしても、案件の規模が大きかった分、ネガティブな反応になっても仕方がありませんでした。

そこで、自分でも想定されるリスクを理解したうえで、それでも「なぜ」やるべきだと思っているのか。そのことについて言葉を尽くして説明し、理解してもらうことに時間を割いてみようと思ったのでした。

あと一歩だけ、踏み込んでみる

結果、相手も歩み寄りを見せてくれ(根負け、とも言うかもしれませんが)、実際の最終提案までこぎつけることができました。まず「WHY」から説明することを意識したからなのか、わたしの「WHY」を彼が理解してくれたからなのか、企画を相談すると逆に技術的な視点から「もっとこういうこともできるけど」と新たな提案をしてくれたり、事前に想定されるリスクを洗い出してくれるようになりました。

つまり、彼自身も「頼まれたからやる」ではなく、「チームメイトとして一緒に取り組む」という姿勢をとるようになってくれたのです。それは「何をやるか」ではなく「なぜやるか」を理解してもらえたからだ、と感じています。

目的に至るためであれば、手段を変更して構わないケースが多々あります。自分が考えて選んだ手段が、必ずしもベストではない可能性もあります。そのためにチームがあり、様々な視点をもつことのメリットがあるのだ、ということ実感できました。

この経験を通じてわたし自身、相手の領域について「分からないから、知らないから」と言って逃げずに、分からないなりに知りたい、理解したい、という姿勢を示していくことが大切だと学びました。

同時に、わたしが相手のことを理解していないのと同じくらい、相手もわたしがやりたいことや考えていることを理解できていない、という前提を身につけることができました。この習慣は、いつどこでどんな人が見ても、自分の企画の意義と目的を伝えられるようにする良い訓練になりました。

「WHY」を常に考えよう

ふり返ってみると、わたしが「WHY」の説明をサボっていたのは、自分自身でもそこまで突き詰めて考えていなかったからかもしれない、と感じます。

突き詰めて考えるのはめんどうだし、説明を省いて済むなら、正直そのほうが楽です。なのですが、楽さに流れ、取り返しのない失敗をしてしまうこともある。そのために、「WHY」をいつどこで誰にでも説明できるよう、筋トレのようなものだと思って常に考える習慣をつけました。

そうすると、議論の反射神経が鍛えられたように、いつどんなふうに質問されても、即座にYES/NOの意思決定ができるようになったのです。根本の「WHY」さえ自分の中ではっきり決まっていれば、あとはそれをどうやって実現するかだけ。

選択肢がどれだけ増えても、「何のためにやるのか」が明確であれば、短時間でベストを探し判断しやすくなったのです。これは公私ともにも使える反射神経になり、わたしのその後を支える頼もしいスキルとなりました。

もし、相手に自分のやりたいことがなかなか伝わらない、チームの仲間やパートナーがどうしても思うように動いてくれない、と悩んだとき、まず「相手と自分は別の人間で、分かり合えているはずがない」からスタートし、自分が相手に「WHY」をしっかり伝えられているか? をふり返ってみるといいかもしれません。

今日はそんな感じです。
チャオ!

イラスト:マツナガエイコ

(*)コラムのイラストは、サイモン・シネック氏の「ゴールデン・サークル」をもとに作成しました。


チームにおける人間関係について情報共有ができないチームの人間関係は破綻する 「チームワークにおける人間関係」が完全にわかる記事まとめ

料理だけは「ぼくが作ったら負け」だと思ってた――イクメン社長が忘れていた素朴な幸せ

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2014年に青野社長のイメチェン企画を断行したサイボウズ式。今年もやります、チャレンジ企画! ということで青野社長に今回チャレンジしてもらったのは、ずばり「料理」です。

前編では、大学時代に週11個のカップラーメンを食べていたせいで「体が黄色い」と友人に言われたことがあるという衝撃的な過去を暴露した青野社長。後編では、この企画を通じてイクメンに磨きをかけた姿を見ることができるかもしれません。『青野社長の料理教室』開講もそう遠くない……?!

料理はストレス解消になる

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料理もやっと折り返し地点へ。気持ち新たに、気合を入れ直します。

ここで、ガチャガチャと卵をかき混ぜていた青野社長に「ボウルの下に濡らした布巾をひくと安定しますよ」と先生からのワンポイントアドバイスが。これは帰ってからもすぐ使える学びだと大喜びでした。

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ついに全ての具材を混ぜ合わせるときがきました。青野社長の不安げな表情にご注目ください。


料理は化学実験みたいなもの

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「くぅ~。」濃い味好きの青野社長。8割を連呼していましたが、結局お味噌はすべて入れました。

料理の楽しいところは、自分の食べたいものを作って食べれるというところ。「料理を楽しみ、食事を楽しむ」ことが上達への一番の近道ですね。

そして、ついに一大イベントの時間がやってまいりました! ぶあつい擬製豆腐を裏返すという任務が先生より青野社長へ言い渡されます。

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天池先生「もう少ししたら、このまな板を使って裏返してくださいね。」
青野社長「……(笑)。」

チャーハンの話ですっかり楽しくなっていた青野社長、先生の言葉で現実に引き戻されました。一歩間違えれば今までの努力がすべて泡と消えてしまうというプレッシャーの中、はじめてのフライパン返し(?)成功なるか――。










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大成功! 拍手喝采です。


料理はコミュニケーションツールになる

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青野社長「前に子どもにから揚げを作ったとき、衣を付けなさ過ぎて「これちがう」と言われたんですよ。」
天池先生「衣がカラッとしていないとから揚げという感じがしないですからね~。」

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そうこうしている内にごはんが炊けました。枝豆の豊かな香りに青野社長も上機嫌です。

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天池先生「シュワシュワという音がカラッと揚がる温度のしるしです。あとはブクブクの様子を見て火を調節してくださいね。」
スーツよりもエプロンの方が似合う気がしてくる1枚です。

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おいしそうにできました!


センスが光る?盛り付けはみんなちがってみんないい

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左:天池先生作、右:青野社長作
青野社長「どっちがいいとかじゃないから。これ多様性だから。」

最後のから揚げの盛り付けのポイントは、骨を外側に向けて並べること。空いたところには、ミドリとして旬のかぼすを置いたら完成です! 炊き立ての枝豆ごはんにあたたかなお味噌汁を協力して取り分け、揚げたてから揚げとできたてフワフワの擬製豆腐、そしてひんやりと冷えた酢の物を並べます。

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「3品できたらいいほう」と言っていた青野社長。このクオリティに驚きを隠せません。


幸せはすぐ近くに落ちている

ついに! 実食のお時間がやってまいりました。はじめての料理教室。お出汁を取るところから始め、盛り付けまで5品を同時進行でしっかりと作り上げた青野社長。手間をかけた分だけ感動もひとしおです。まずは、お味噌汁を一口。

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ずずっ。

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「(えっ……めっちゃうまいやん……。)」

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「(か、から揚げは……?)」

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がぶり。

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「!!!!!?????」

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「(くう~~~~~……。)」

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「……うまい(恍惚)。」

「から揚げは男のロマン」と言っていた青野社長。大好きなから揚げがおいしく出来ていることに喜びが溢れます。

青野社長は、今回の料理教室で食材を知ることの大切さを知り、これからは食材と仲良くなれそうだと話します。そこにはもう、「料理だけはぼくが作ったら負け」と思っていたというかつての姿はありませんでした。

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奧様に報告すると、「つぎの木曜日(※)を楽しみにしてる」との返事が!
(※)毎週木曜日はパパ料理デー

青野社長の言葉にその場にいる全員が深くうなづきました。また、「料理初心者にありがちな悩みが解消されたから、もっと料理を楽しめそう」とのことでした。

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美味しいごはんは、いい笑顔の元。
天池先生、クックパッド料理教室さん、本当にありがとうございました!


それからどうなった?

あの料理教室から早一ヶ月。以前お子さんに「これじゃない」と言われたから揚げの再チャレンジは? 料理に対する心境の変化は? などなど、その後の料理事情はいかがなものか青野社長に直接インタビューをしてきました!

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お子さんに好評だったという「ナポリタン焼きそば」。しかし、やはり茶色かった。

思った以上に育成されていたようで、青野社長は「イクメン」から「主夫」に進化しようとしていました。

料理にハマる男性が増えつつある昨今、果たして青野社長の料理教室はニーズがあるのか? そもそもサイボウズ式による(無茶ぶり改造)企画の次回はあるのか――?

次回作にご期待ください!


(写真:尾木司、文:石川涼子)

ガチガチに基礎を学ばないと面白くならないのは、お笑いも仕事もいっしょ

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サイボウズ 大阪梅田オフィスのオープンに伴い、よしもと新喜劇 座長の辻本茂雄さんが梅田オフィスにお祝いに。開所式に参加した社長の青野慶久と話をしてみたところ、早速意気投合。話題は新喜劇のチームワークにはじまり、仕事における基礎の大切さ、お笑いの世界での挫折と覚悟など、さまざまな話題が広がりました。

後編「4700円払って新喜劇に来てくれるお客様に、「できひん」っていうのはプロじゃない」に続きます。

心は大阪にありますから

(*)茂造じいさん:辻本茂雄さん扮する吉本新喜劇のキャラクター

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辻本茂雄(つじもとしげお)さん。1964年10月08日生まれ、A型。大阪府阪南市出身。趣味はグルメ数珠つなぎ。1986年04月NSC大阪校5期生

子どもも変化も、まずは受け入れよう

お笑いはストーリーであり、チームワーク

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サイボウズ代表取締役社長 青野慶久。1971年生まれ。1997年にサイボウズ株式会社を創業し、取締役副社長に就任。2005年に代表取締役に就任

ガチガチの基礎がないとおもしろくないのは、お笑いもサッカーもいっしょ

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1着とっても上に上がれないお笑いの世界で「どうしたらええねん」

どうやってオリジナリティを出していくか? 3カ月仕事なくなった時もあった

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ただ、思いだけは、この思いだけは共感してほしい

後編「4700円払って新喜劇に来てくれるお客様に、「できひん」っていうのはプロじゃない」に続きます。

文:藤村能光/写真:遠山桜王

4700円払って新喜劇に来てくれるお客様に、「できひん」っていうのはプロじゃない

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サイボウズ 大阪梅田オフィスのオープンに伴い、よしもと新喜劇 座長の辻本茂雄さんが梅田オフィスにお祝いに。開所式に参加した社長の青野慶久と話をしてみたところ、早速意気投合。

前編「ガチガチに基礎を学ばないと面白くならないのは、お笑いも仕事もいっしょ」につづいて、辻本さんの競輪選手・お笑い芸人としての挫折、貪欲に自分を成長させるための考え方、プロフェッショナリズムへと話題が広がります。

うどんの鉢が競輪の挫折と芸人への挑戦をもたらしてくれた

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辻本茂雄(つじもとしげお)さん。1964年10月08日生まれ、A型。大阪府阪南市出身。趣味はグルメ数珠つなぎ。1986年04月NSC大阪校5期生

お客様は4700円払ってきてくれる、"できひん"はプロじゃない

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サイボウズ代表取締役社長 青野慶久。1971年生まれ。1997年にサイボウズ株式会社を創業し、取締役副社長に就任。2005年に代表取締役に就任

これでいいと構えたら、成長は止まる

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51歳、新たな挑戦

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僕らは1個仕事をやってナンボ

辻本茂雄さんと青野慶久の対談 前編「ガチガチに基礎を学ばないと面白くならないのは、お笑いも仕事もいっしょ」はこちら。

文:藤村能光/写真:遠山桜王

カフェにBARに公園も! サイボウズの日本橋オフィスが実用性と居心地を見事に兼ね備えていてすごい

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サイボウズ社長 青野慶久とライターの砂流恵介さん、きりんとーんさん

こんにちは、砂流(スナガレと読みます)です。僕は普段、「オフィス訪問(HRナビさん)」の取材をしています。そんなつながりで今回お邪魔したのは、2015年7月に移転したサイボウズさんの新オフィスです。

サイボウズさんといえば、日ごろから「新しい働き方」や「新しい価値を生み出すチーム」について考えている会社です。その新オフィスはどんなことになっているのか……。さっそく見ていきたいと思います。

引っ越し先は、2015年4月にできたばかりの「東京日本橋タワー」。日本橋駅に直結で徒歩圏内に3駅20路線が利用できる便利さに、レストランやイベントホールを完備した高層オフィスタワーです。

東京日本橋タワーです

駅直結などの便利さも良いのですが、このタワーのすごいところはこれだけではありません。なにがすごいかって、なにもかもが巨大なこと。まずは、駅から直結の連絡スペースをご覧ください。うーん、無駄にでかい。

日本橋駅から直結のエントランス

エントランスもこの通り。ここも無駄にでかい。

こちらは7階のエントランスです。お客様はまずこちらにいらっしゃってください

そしてエレベーターの中! ちょっとでかすぎません?

エレベーターはざっと20人くらいは乗れそうですよ

マジな話、僕の部屋よりでかいんですよね……。

砂流さんのお部屋より大きい、だと?

と、タワーに入っただけで期待値があがってしかたないですが、オフィスはどんな感じなのでしょうか? サイボウズさんのオフィスはタワーの27階と28階。まずは、27階にお邪魔します。

27階は鳥と昆虫とキリンが生息するテーマパーク

エレベーターを降りるとなにやらオフィスっぽくない景色が……

ビルと受付ロビーはギャップがあります

中に入ると公園がありました!

サイボウズ 日本橋オフィスは公園なんですねぇ

ここは「サイボウ樹パーク」というそうです。

「どうも、サイボウ樹パークです」(ペンギンさん)

それにしてもキリンさん存在感ありすぎでしょ。

「どうも、キリンです」(きりんとーんさん)

オフィスを案内してくれる方を待っているあいだに、記念写真を撮ってみました。

どちらがきりんとーんさんで、どちらが砂流さん?

サイボウズさんのロゴの前でもパシャリ。

エントランスには燦然と輝くロゴがある!

輝くサイボウズ ロゴ(本日2度目)

そうこうしていると今回オフィスを案内してくれるお二人が! 人事担当の中江さん(左の女性)と青野さん(右側男性)。仲良く相合傘で登場です。

「どうもー、人事部の青野と中江です」

お邪魔した日は雨だったのですが、サイボウズさんでは突然降ってきた雨などで困っている訪問者に傘を無料で渡しているとのこと。それで相合傘なんですね。

雨が降っていたら、サイボウズアンブレラをお持ちくださいね

僕は記念撮影をして待っていましたが、「サイボウ樹パーク」の芝生に座って待つのが一般的。

サイボウ樹の芝生で、やすらかなひとときを

芝生には各所にタブレットが配置されていて、サイボウズ式などサイボウズさんのコンテンツを見ながら待ち時間を過ごせます。

サイボウズ式をどうぞよろしくおねがいします!

お二人がまず案内してくれたのは、入り口にある自動販売機。お客さんは、このなかから好きな飲み物を無料で飲めるそうです。

自動販売機のお飲み物はすべて無料ですので、おひとつどうぞ

僕が選んだのは力水。Dr Pepper(ドクターペッパー)や力水が常備されているとか、センス良すぎです。

ドクターペッパー!

次に案内してもらったのは「CYBOZU CAFÉ TORI」。

鳥カフェと呼ばれております

「鳥」という名前がついているだけに、いろんな場所に鳥がいました。

どうも、鳥です

オブジェにも鳥がいるこだわりよう!

どうも、鳥です(2回目)

あと、なぜかマトリョーシカも。

ここでマトリョーシカ! 鳥の流れちゃいますのん

このカフェは、サイボウズさんのサービス導入を考えている人が専門のスタッフさんからサービスの説明や運営方法を説明してもらえるスペース。平日は毎日受付をしており、完全予約制で対応してくれるそうです。僕もお二人にサービスの説明をしてもらいました。

鳥カフェではお客様からの導入相談を受け付けています

カフェは「鳥」以外に「森」と「空」があり、それぞれ名前にピッタリな外見をしています。コチラは森カフェ。

モリカフェもあるんです。

森カフェを別角度から。森ですね

森カフェのとなりには、こんなスペースも。なんか秘密基地みたいでワクワクしますよね。

秘密基地でございます

秘密基地の中でもお話しできます

森カフェにはいたるところに、昆虫がいました。こういった細かいところまで徹底しているところ、大好きです。

パークですからね。昆虫もいるでしょう

コチラは空カフェ。

森を抜けると、空カフェなわけです

パッと見たところ空っぽいイメージがないようにも見えますが、カフェの前には虹の橋がかかっていたりと、全体で見ると空に見えるようになっています。

空に虹がかかっています。レインボウ

ちなみに、この虹色の橋はサイボウズさんのサービスカラーになっていて、ピンク(メールワイズ)、黄色(kintone)、緑(デヂエ)、青(Office)、水色(サイボウズLive)、紺色(Garoon)を表しているそうです。

せっかくなので、近くにいる社員さんに声をかけて、虹の橋で写真を撮らせてもらいました。みなさん、「え〜、写るの恥ずかしいんですけど」といいながらも……

たまたま通りかかった社員を巻き込んでみると

この通り! 社員さんの仲の良さが伝わってきますね!

ポージングうまい! 撮影慣れしているのか?

エントランスはカフェ以外に、さりげなくサイボウズマンがたたずんでいたり。

ボウズマンも健在ですよ

ハンモックがあったり。

もちろんハンモックでお待ちいただいても大丈夫。

サイボウズさんのノベルティがもらえるガチャガチャがあったりと、至るところに遊び心もある作りになっていました。

ガチャガチャ、回していってくださいね

こちらはサイボウズのロゴを模した笛ラムネです

遊び要素が目立って見えますが、誰でも使えるフリースペースもたくさん用意されています。こちらはファミレスをイメージされたスペース。外の景色を見ながら、打ち合わせや仕事ができます。

通称ファミレス席と呼ばれています

ファミレススペースの正面はこんな感じ。

こちらは一人で仕事をするのに向いています

エントランスは以上です。

セミナールームが2つも完備された会議室エリア

続いては会議室を案内してもらいます。コチラが会議室の入り口。エントランスとは違う雰囲気がぎゅんぎゅん伝わってきて、なんだか違う世界に飛び込むような楽しさがあります。

ここから先はお客様とのお打ち合わせのスペースです

こちらの会議室は海がモチーフになっていました。

空から海?

壁には海鳥が飛んでいます。

何の種類の海鳥かしら

会議室の名前をみてみると「種子島」でした。どうりで海!

種子島です

会議室の中はこんな感じ。おしゃれです。

間接照明だけをつけるとムーディーになります

続いての会議室は「バルセロナ」。

バルセロナです

「種子島」とは一変して情熱の赤が基調になっています。

壁には闘牛士さんの絵が掛かっているんです

サイボウズさんの会議室には港町(種子島とヒューストンは宇宙ポート)の名前がついています。ITの港町(ポート)になって、色々な人を迎えたり来てもらったりする場所になる想いをこめているそうです。

僕が特に印象残った会議室は「ケープタウン」。

ケープタウンです

こちらの会議室は通常の会議室として使えるだけでなく、ユーザー調査などができようにガラス越しに会議室がのぞけて、声が聞こえるようになっています。

あら、なんだかいい雰囲気の二人ね

写真は、僕が中江さんのLINEを聞こうと頑張っているところを心配そうに見つめている青野さん……。

ちなみに二人からは青野の姿はまったく見えません

会議室のスペースにはセミナールームも2つ完備されています。

セミナーを実施する場合はこちらで

こちらのセミナールームはすべての席にパソコンと液晶が用意されています!

シンクライアント端末です

この日はサイボウズ式の藤村編集長がセミナー登壇の練習をしていました。お題は「オウンドメディアの今後について」。「サイボウズ式はPVについて、指標としては追ってないんですよね」と、気になるお話をされていましたが次のセミナールームへ。

「サイボウズの藤村でございます」っていつも言っている気がする

もう1つのセミナールームはカジュアルな印象でした。セミナールームごとに雰囲気が違うのは良いですね。

セミナールームは2つあります

この規模のセミナールームが2つ完備されているだけでもすごいと思いますが、27階にはもう1つ大人数を収容できる場所があります。それが、「CYBOZU BAR」。読み方は、「サイボウズ バル」。バーではなくバルだそう。

社内外でイベントをやることも多いバル

なかに入ると、オフィスとは思えないイケてるBARが! これ、普通にお金がとれるクオリティです。

ゆったりとした雰囲気で、人同士が交流できるように

BARのなかには、座ってゆっくりできるスペースも用意されていました。

お子さまがいらっしゃる場合は、こちらのスペースをご活用ください

BARではセミナーの実施以外に、社員さんのランチタイムや就業後の交流にも使われているそうです。BARなのでもちろんお酒も飲めます。たまらんですね。

後方に小窓があったので開けてみたら、受付のロゴマークから顔が出る仕様になっていました。

サイボウズ ロゴの一部がパカっと開きます

調子にのって乗り上げようとしたらサボテンがささった。

サボテンとの絶妙な距離感の確保がキモです

偶然目の前を通った“あの人”と記念撮影!

27階は以上です。28階の業務スペースを案内してもらおうとしたら、エントランスにインタビューなどでよく見たことがある方が……。あれは社長の青野さん! オフィス訪問させてもらっていることを説明して記念写真を撮らせてもらいました。

社長の青野慶久、登場! たまたまエントランスを通りかかっただけなのに、お声がけしてすみません……

青野社長は、僕が社長を発見したときもオフィスに訪問していたお客さんと記念撮影をされてました。人気者だなぁ。

記念撮影にまで応じていただき、ありがとうございます!

撮影するときに「キリンをいれた3ショットでいいですか?」とお願いしたら、キリンにまたがろうとしてくれたのはここだけの話。ノリ良すぎて思わずこっちが「そんな体を張っていただかなくても大丈夫です」って言ってしまいました……。

サイボウズ社員が働く28Fは?

続いては、業務スペースの28階を案内してもらいます。コチラは28階の入り口。

さて、ここからは執務室エリアです

右側には、営業さんのロッカーと

フリーアドレスな社員向けのロッカーです

ノベルティグッズが置かれていました。ノベルティがたくさんあると営業先でお土産に困らなくていいですよね。

サイボウズノベルティたち

業務用スペースにも、フリーで使えるエリアがたくさんありました。照明がめっちゃおしゃれですよね。

ここはフリースペースですね

あまりにキレイだったんで照明だけとってみた。

「取り上げていただきありがとうございます」(照明さん)

奥のファミレスっぽいスペースでお仕事されている方がいたので、ご一緒させてもらいました。

お仕事中にもかかわらずありがとうございます

「この机、ホワイトボードになっているんですよ」と教えてもらったので、2人でお絵かきタイム。

机がホワイトボードになっているので、絵が書けます

「ワン!」

なんで犬!

ここは、休憩スペース。ドリンクやカップラーメンやパンの自販機なんかも置いてあります。

続いてラウンジです

自動販売機たち

天気が良い日に外眺めたら最高なんだろうなぁ。

取材当日はくもりぞらでした

休憩室には、ペッパーくんもいました。

つぶらな瞳のペッパーくん

ペッパーくんに話しかけると、ちゃんとアクションをとってくれます。この日は、偶然その場にいたイケメン社員さんを巻き込んでペッパーくんに写真を撮ってもらいました。ハイチーズ!

撮影までやってくれるペッパーくん

こちらは、パソコンを接続することで多拠点でオンライン会議ができる施設です。

「そら、そうよ。」

続いて案内されたのはカラフルなイスがたくさん並んだ会議室。座って待っていると……。

この会議室は「レインボー」です

「この会議室は遠方にいる人間と円滑に会議ができるように作られたものなんですよ」と、会議室の説明をしてくださる女性が。こちらは、人事部の中根さん。青野さんと中江さんの上司の方です。

レインボーは10人くらい入る会議室です。二人で入ると余計に広く見えます

「今、デモの準備をしているんで少し待ってくださいね」とのことだったので、中根さんにサイボウズさんやオフィスについて質問してみることにしました。

社内恋愛もOK! ただし1回に限る

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中根 弓佳(なかね・ゆみか)。サイボウズ株式会社 執行役員 事業支援本部長。二児の母、2度の育児休暇を取得

雰囲気を出してみるの写真↑イメージ図

ロマンチックなのが、オフィスが22時に一度消灯するときに見える夜景。ハンモックとかで一緒にその時間を過ごすと距離がグッと縮まるかもしれませんね。

なんて話が盛り上がっているあいだに準備が整いました。普段は大阪オフィスにいる社員さんと会議することが多いそうですが、今回は違う会議室にいる藤村編集長と会議をしてみます。このシステム、片方の画面で遠方にいる人を映しつつ、もう片方で自分のパソコンの資料を映すといった使い方ができるそうです。

2つのモニタが使えるんです

これだけでもすごいのですが、手を降ったりすると上方にある2つのカメラが人をサーチしてその人間にフォーカスを当ててくれます。すごすぎます……。
砂流さんと編集長の服装が似ている件

業務用スペースは以上です。

サイボウズさんのオフィス、がっつり紹介させてもらいましたが、まだまだ紹介しきれてない場所があるくらい色々なスペースがあって、細かいところまで考えられたオフィスになっています。

遊び心がこれだけありながら、実用性と居心地の良さも兼ね備えている素晴らしすぎるオフィスでした。イケメン&美女もたくさんいるし、働いている社員さんがうらやましすぎますね。

日本橋オフィスにいらっしゃった際にランチをお探しの方は「サイボウズ日本橋、おすすめランチマップ[Rettyお墨付き]」を。日本橋オフィスをもっと知りたい方は「サイボウズ株式会社 に行ってきた!(941::blog)」もどうぞ。

執筆:砂流 恵介、写真:尾木 司


ロボット掃除機は、将来どうなっていくのか──コデラ総研 家庭部(53)

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テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第53回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「ロボット掃除機は、将来どうなっていくのか」。

文・写真:小寺 信良

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廉価なロボット掃除機を導入して、3週間ほどが経過した。ここのところは2日に1度ぐらいの稼働率で、ダイニングや廊下などを掃除させている。

実際にある程度の期間運用して分かったのは、電源ケーブルに絡んで身動きが取れなくなるというケースは案外少ないということだ。これにもコツがある。ケーブルが1本だけにょろっとしていると、ぐいぐい突っ込んでいってローターブラシに巻き込んでしまう。しかし束ねた状態だと、押しても動かないので、単なる障害物だと判断して引き返すので、巻き込むまでに至らない。単独で存在するケーブルは壁際に寄せたり、重さがあるものをケーブルの上に乗せておけば、それがジャマーとなって巻き込むことはない。

また、吸えるゴミのタイプもだんだん分かってきた。人間には見えない小さなゴミを取るのは得意だが、案外大きなゴミ、例えばティッシュの切れっ端みたいなものは吸いきれず、ローターブラシにはじき出されることが多い。おそらくこの辺りが、機種による違いになるだろう。吸引力が強ければ、大きなゴミも問題なく吸えるはずである。

この、目に見えるものが掃除できるかというのは、人間にとっては大きな評価基準になる。吸えていないのが目に見えれば、それは結果として掃除ができていないという評価になってしまう。実際にゴミパックを開けてみれば、人の目には見えなかった大量の小さいゴミが取れているのだが、それは購入して自分の家で運用してみるまで評価できない。

店頭デモや家電レビューでは小麦粉などをまいて吸引させているが、これなどは小さいゴミでも可視化できるぐらいの量にまで増やさないと、成果が見えないからである。実際に小麦粉をぶちまけてしまったら、のんきにロボット掃除機など動かさず、普通に掃除機で吸った方が早い。すなわちロボット掃除機は、現段階ではありもしない状況の上で評価されているに過ぎない。

動作を可視化する

そうはいっても、成果の可視化というのは、白物家電にとっては重要だ。ダイソンのキャニスター型掃除機は、ゴミが溜まる部分を透明にして、成果を可視化したことが高い評価に繋がった。ダイソンのロボット掃除機も、ゴミパック部分は透明だ。従来の概念では、ゴミをなるべくユーザーに見せないように溜め、触らずに捨てさせるのがセオリーであったわけである。

ドラム式洗濯機は、ドア部分が透明で中が見えるようになっているため、動作の様子を確認することができる。元々コインランドリーに置いてあるような業務機はすべてドアが透明だが、これは中身が確認できれば取り間違いがないといった理由からだろう。最初から透明ありきのものは、家庭に入っても透明のままである。

三洋電機の白物家電部門を買収した中国ハイアールは、今年6月に全体がスケルトンの縦型洗濯機の実働モデルを公開した。同じ頃シャープは、天板が透明で内蓋がなく、洗濯中の中身が見える縦型の洗濯機を発売した。中の動作を確認したい衝動は、誰にもある。動作の可視化は、自動化への信頼や期待と表裏一体ではないかと思う。

もうひとつ、ロボット掃除機で可視化できるのが、走行ルートだ。多くのロボット掃除機は、基本的には対物センサーと、転落防止センサーしか備えていない。まっすぐ進み、ぶつかったら向きを変えてまた進むという繰り返しだ。ぶつかって反転するときの角度を微妙に変えることにより、動作がループしないようになっている。ということはすなわち、限りなくランダムに走行させることで床面全体をカバーしようとする発想である。

これはある意味、計画性のない動きなので、当然無駄も出る。すでに掃除したはずのルートを何度も横切ることになるからだ。もちろん1度で綺麗に吸い込むことができないのであれば、何度でも通って構わないのだが、やはり人間の目には無駄な動きが多いように見える。

現時点で最も進んだロボット掃除機であるルンバの最新シリーズは、カメラなど複数のセンサーを駆使して部屋の間取りをマッピングし、椅子の脚などが入り組んだ場所の掃除も、ランダム性に頼らずに走行できる。基本動作が直線で、走行場所に重複がないため、目的を持って走行している様子が可視化される。価格が12万5000円もするのは当然で、中身的にはもはやスマートフォン並みである。

多彩なセンサーを搭載するという方向性は、やがて他社も追従してくるだろう。問題は、センサーから送られてくる膨大なデータから、意味のある情報に統合処理を行うプロセッサとプログラムである。これを本体内に搭載すると、価格は急上昇する。ルンバが高性能なのは分かっていながら、多くの家庭で導入が進まないのは、費用対効果に躊躇するからである。

しかし考えようによっては、ここはITにチャンスがあるとも言える。掃除機がWi-Fiに接続し、センサーからのデータを流し込むと、そこに繋がっているPCやスマートフォンがデータ処理を行って本体に戻す。あるいはクラウドに送って処理するという手も考えられる。頭と手足を分離することで、手足のコスト上昇を抑えるわけである。

この点で言えば、ロボット掃除機は、すでにハードウェアのベースは中国製の廉価なものがたくさんある。従ってソフトウェアベンチャーがファブレスで手を出しやすいジャンルであろう。市場性から考えれば、掃除をしなくていい家庭など存在しないわけだから、まさに無限の市場があると言っても過言ではない。(つづく)


本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


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サイボウズの給料は「あなたが転職したらいくら?」で決めています

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「市場価格は適当に決まるから、給与は最終的には適当に決める」「でも、そのプロセスの説明責任はしっかり果たす」

こう話すのは サイボウズ副社長 兼 サイボウズUS社長の山田理。創業以来、人事評価制度を決めては変え、変えては決め、紆余曲折をたどってきました。

そして今、サイボウズの給与は「市場価値」から決めています。それは社外/社内的価値の2軸から定められるものです。給与が決定した後は徹底的に「説明責任」を果たします。「市場評価は適当」と話す裏側にある、サイボウズの人事制度の変遷を追いかけてみます。

2015年10月28日開催、「Gartner Symposium2015」の講演を再構成したものです。

サイボウズの山田です。最近注目を集めているサイボウズの働き方や人事制度の中で、今回は「市場価値」について話してみます。市場価値を意識していかないといけないのが、世の中の流れかなと思っています。

僕は社会人として8年間、日本興業銀行で働いたあと、創業2年目のサイボウズにジョインしました。当時は15人くらいの規模だったかな。事業支援全般や人事を担当して、2015年4月から単身一人でアメリカに乗り込んで行きました。

いまもサイボウズUSの社長としてサンフランシスコに住み、10人くらいのメンバーでやっています。

市場価値って何のために評価するの?

今日は人事制度や人事評価について、「評価って何のためにするの?」「市場価値って何のため?」をテーマにお話ししたいと思います。そもそも僕が銀行員の時は一切考えなかったことです。

サイボウズという会社の成長にあわせて人事制度を作る中で、そもそも「評価するのは何のためだろう?」というのを考えるきっかけがありました。

サイボウズの人事制度は、紆余曲折があって今の形に行きついているんです。まずはこれまでの人事制度をずらっと話してみようと思います。

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個別評価は、評価を受ける側の納得感がなかった

最初は個別評価です。「あなたは頑張っているね、頑張っていないね、できているね、できていないね、だからお給料はこれくらい」という感じで、社長がメンバーを個別に評価をしていました。

そこから人が増え、1人1人個別に評価するのが難しくなってきたので、目標管理制度にしました。目標は個人で設定して、上司が「あなたは80%できた」などと評価して給料を決めていました。

これは「どれだけできたか?」という成果に基づいて評価する、いわゆる成果主義というものです。

ただ、問題がありました。「上司の判断が辛い/甘い」という不満が出てくるんですね。評価を受ける側の納得感がなく、もっと納得のいく評価をしてほしいという声があり、評価の精度を高めていく必要がありました。

市場評価・360度評価、誰を見て仕事をすればいいか分からなくなった

そこで取り入れたのが「社内市場評価」です。社内の全事業部長が「あの人に自分の事業部に入ってほしい」と思ったら、そのメンバーに「キテキテカード」を渡すんです。このカードが集まった人ほど、社内での市場価値が高くなっていくというものです。

360度評価もやってみました。アットランダムに5人くらい選び、「あの人のここは良かった、ここは良くなかった」と評価するものです。

この2軸を加えて評価をすると、1人の上司だけではなく、回りの上司やほかのメンバーもその人の評価をするので、納得感が出ると思っていました。

でも、ここでも問題が出ます。こうすると、多面的に評価されるので何となく納得感は出てくるものの、いったい誰が評価したかのが分からなくなってくるんです。

「上司の山田さんからは8割できたと言われていたのに、なんでC評価なんですか」「分からへん……。もしかしたらほかの事業部長に好かれてないんかも?」「ええ~、じゃあ僕どうしたらいいんですか?」「分からへん……」「ええ~」みたいなやりとりが出てきたんです。

結局、誰を見て仕事をすればいいか、誰を信頼すればいいか、わからなくなってしまったんです。チームの一体感も希薄化し、このタイミングで離職率も上がっていきました。そこで人事制度を「もう1度原点にかえって考えよう」となったんです。

階層の定義を撤廃、職種間で不公平感が生じた

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サイボウズ取締役副社長 兼 サイボウズUS社長の山田理

当時の社員数は100人くらい。まだ1人1人を評価できる規模にもかかわらず、今後の規模拡大をにらみ、「相対評価」を取り入れました。全員の評点を1位から100位まで並べ、上位2割はS評価、下位の数%はE評価、みたいな感じです。

そして、E評価を2回とれば、「退場」。どれだけ全員が頑張ろうが毎回必ずE評価が何人かでるにもかかわらずです。やっぱり「ええ~」という反応でした。

それじゃいかんとして、絶対評価を取り入れます。そのため、能力を職階に応じて定義する必要がありましたので、「階層の定義」というものをつくりました。職階ごとに能力を定義するのは、僕がいた銀行にもありましたし、一般的な評価制度と何ら変わりません。

違いといえば、多くの企業が階層を定義してはいるものの、基本的には年功で給料が上がっていくのに対して、階層ごとに定義した定量的および定性的な能力の水準を、特性や成果を見てクリアしているか、していないかのみで評価をするというところです。つまり、1人1人の顔見て評価する。原点回帰ということです。

ただここでも問題が発生します。定義が示す言葉自体は何となく正しいけど、給料と釣り合っていないという点です。

アウトプットが給与に見合っていない、職種ごとに需要のばらつきがあり採用が難しくないポジションの仕事もある──。それなのに階層は職種間で一緒なので、給与も一緒。

「それって何かおかしくない?」となっていきました。そこで、1度階層の定義を撤廃し、給与を階層で決めるのをやめることにしました。

そして、今やっている「市場価値を取り入れた」評価制度を取り入れました。

評価の目的は「成長サポート」と「給与決定」の2つ

評価は何のためにするのか? 今回のテーマに戻ります。

僕、銀行にいた時も評価されるのは嫌だったんです。みなさんも嫌じゃないですか? 他人にとやかく言われるの。一方で、評価するのも嫌なんですよね。いい評価しても「何であいつだけ」。悪い評価したら「何で私だけ」となる。どっちにしても評価すると嫌われるにきまっているじゃないですか。だから、僕は評価するのもされるのも、嫌だったんです。

じゃあ、評価なんかされたくもないし、したくもないにもかかわらず、会社としては評価をしないといけない。それってなんでなんだろう?

いろいろと考えた結果、評価には2つの目的があるなと。1つは成長のサポート。自己流でやるよりも誰かからアドバイスもらったほうが、成長しやすい。個人の成長をサポートするために評価をしたり、してもらったりするほうがいいんです。そしてもう1つは、給料を決めるため。

この2つの目的を意識して評価をすることが大切だというところに行きつきました。

市場価格は案外「適当」に決まっている?

では市場価値はどうすれば分かるか? 一般的な市場価格決定のメカニズムについて考えてみます。

まずは、需要と供給の関係から。供給がたくさんあって需要が少なければ、価格は下がる。逆なら価格が上がりますよね。価格は、こういった要因に影響されて決まっています。

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もう1つは、売値と買値です。価格が決まるのは、市場で売値と買値が合致したところです。売りたい人は高く売りたい、買いたい人は安く買いたい。それが市場です。

売り値を上げれば上げるほど「高く」売れるチャンスがあり、買い値を下げれば下げるほど「安く」買えるチャンスがあります。言い換えると、給料を上げたければ、高い売り値を出していく。そうすると給料が上がる「チャンス」が得られるわけです。反対に、黙っていたら売り圧力が掛かって給料は上がらない、もしくは、下がる傾向にある。このようなメカニズムから、市場の価格が日々実際に形成されています。

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何が言いたいかというと、世の中の価格は意外と「適当」に決まっているということです。サイボウズの株だって、毎日価格が変動します。サイボウズが劇的に変わっていないのに、ですよ。株価は結構適当に変わりますし、投資家は適当に決まった価格で株を売り買いしているんです。

ただ、それこそが市場価値であり価格の原理だ、いうことなんです。それを大前提に、人材の市場価値も考えていくべきだと思うんです。

給与は「社外/社内の価値」の2軸で評価する

サイボウズの給与は「その人の市場価値」で決定されます。市場価値とは「社外的価値」と「社内的価値」の2つで決まります。給与の評価は2ステップで決めていきます。

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社外的価値は、「転職したらいくらもらえそうかという金額」です。その人が転職市場でどれくらいの値段が付くか? 当然、転職する会社によってオファーの金額は異なりますよね。そこから金額のレンジを決めていくんです。

この社外的価値の金額感は、僕らには決められません。また、この金額感は転職を考えたことがあれば何となくわかるでしょうし、少なくとも人事をやっていたら知っているはずです。スキル(職種や経験年数)、属性(年齢や地域)を加味して、決まってくるものですよね。

金額レンジの算出には、給与統計も参考にしています。ITの大企業で30歳課長だったら、40歳部長だったらこれくらいの給与水準、というのは分かるわけです。これで社外的価値のレンジを決めていきます。

社内的価値=覚悟×スキル

次は「社内的価値」です。こちらは社内の話なので、みなさんの会社とは違うかもしれませんが……。

サイボウズで社内価値が高い人とは「社内で信頼度が高い人」を指します。サイボウズでの信頼度は「覚悟×スキル」で測ります。

覚悟はサイボウズへのコミットメント。会社に対してどれだけ尽くせるか、理想への共感度が高いか。ちなみに覚悟は、各人の選択により増減するものですので、必ず会社に尽くさなくてはいけない、というわけではありません。

ただ単に、自らが選択したサイボウズへのコミットメントに応じて信頼度が変わるということだけです。それに各人のスキルを掛けあわせて信頼度をはかります。ちなみにスキルは努力により増やすことができるものではありますが各個人により生まれつき差があるものでもあります。

この覚悟×スキルによる信頼度が一番大きなポイントですが、これに「抜けられたら困る」という人にはプレミアムがつくような「社内需給」や経験年数や同職種のバランスなどを考慮する「社内相対感」などを加味して、社内的価値を算出します。

(後編に続く)

人事評価は適当でいい?──ココナラ南CEO×サイボウズ山田副社長 人事制度対談」もあわせてどうぞ。

文:藤村 能光/写真:鈴木 亜希子

「出現する未来」の引き金を、自分で引くために──U理論・中土井 僚(3)/西尾 泰和の「続・エンジニアの学び方」

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サイボウズ・ラボの西尾 泰和さんが「エンジニアの学び方」について探求していく連載の第24回(これまでの連載一覧)。U理論の伝道師、中土井 僚さんにお話を伺うシリーズ(3)です。

本連載は、「WEB+DB PRESS Vol.80」(2014年4月24日発売)に掲載された「エンジニアの学び方──効率的に知識を得て,成果に結び付ける」の続編です。(編集部)

文:西尾 泰和
イラスト:歌工房

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中土井さんとの対談(前編後編)のフォローアップ記事の第3回です(第1回第2回)。

今回は、中土井さんがオブジェクト指向に出会ったときの話、そしてそれがU理論のどの部分に対応しているのかを伺っていきます。

◆     ◆     ◆

オブジェクト指向という言葉を生み出しSmalltalkを設計したアラン・ケイは「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」「未来はただそこにあるのではない。未来は我々が決めるものであり、宇宙の既知の法則に違反しない範囲で望んだ方向に向かわせることができる」などの言葉も残してますね。

「出現する未来」という言葉は「自分と無関係に出現する」というニュアンスで受け取られてしまうことも多いです。しかし、U理論をよく読んでいると、むしろ「自分が変化のきっかけになりうる」という点が強調されているように思います。そういう意味では「出現する未来」は「私が引き金を引く未来」なのですね。

この記事の読者にはソフトウェアエンジニアも多いかと思います。ソフトウェアエンジニアには、「ソフトウェアを作って公開する」という引き金の引き方ができるわけですよね。この能力を活用して、楽しい未来が出現させられるといいなと思います。(つづく)


「これを知りたい!」や「これはどう思うか?」などのご質問、ご相談を受け付けています。筆者、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


謝辞:
◎Web+DB Press編集部(技術評論社)のご厚意により、本連載のタイトルを「続・エンジニアの学び方」とさせていただきました。ありがとうございました。


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自責を相手に強制する「詰め」の無意味さ

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自責を相手に強制する「詰め」の無意味さ

サイボウズ式編集部より:著名ブロガーをサイボウズ外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただく「ブロガーズ・コラム」。今回は、朽木誠一郎さんが考える「正解のないチームマネジメント」について。

はじめまして、朽木誠一郎です。僕は27歳になるまで大学生をしておりまして、卒業後はウェブ系のベンチャー企業に就職、半年後にいきなり管理職に昇進してそこから1年ほどチームのマネジメントをするという、基礎なしの応用一発勝負みたいなキャリアを歩んできました。

数学なんかでも、基礎をないがしろにして問題を解こうとすると、ある程度のレベルまではなんとかなっても、越えられない壁に突き当たることがありましたよね。社会には難問どころか正解なしの悪問がゴロゴロしているので、さまざまな解法へのアプローチを知るという意味で、僕のこれまでの紆余曲折がみなさまのお役に立てば幸いです。

「なんでできないの?」はマネジメントを失敗に導く

さて、世の中には詰める上司というのが存在します。「詰める」の定義はなかなか難しいですが、ここでは「部下の失敗を叱責する行為」としましょう。

この定義だと、僕も部下の指導をするときに「詰める」ことはあります。上司と部下にかぎらず、立場に非対称性がある関係においては、ごく普通のマネジメント方法でしょう。そして、落とし穴というのは、得てしてこのように、一見当たり前の場所にあるものです。

詰める上司の台詞としては「なんでできないの?」が定番です。部下が思わぬ失敗をしたとき、思わず口をついて出ることもあるでしょう。できない理由を聞きたいというよりは「このくらいはできてくれよ」というニュアンスを含んでおり、もともとは部下の成長への期待の表れと言えないこともない台詞だったはずです。しかし、この質問が招くのは、上司の期待とはおそらく反対方向の結果です。

「なんでできないの?」はその表面的な意味合いよりも、相手に自責か他責かのスタンスを問うていることに着目するべきです。前提として、ビジネスの現場では他責(他人の責任)よりは自責(自分の責任)にしたほうが成長できると言われていますし、僕もそう思います。

しかし、もし自責にすることを他人に強制されるとなれば話は別です。そのような行為は、マネジメントを失敗に導くことを、上司は自覚するべきだと思います。

他責より自責は成長につながるが、自責を強制しない方がよい

というのも、上司に「なんでできないの?」と聞かれた部下が、クライアントや(その部下の)部下といった外的要因を原因として挙げれば、他人のせいにするスタンスをさらに詰められるのは想像に難くないでしょう。

他責よりは自責のほうが成長につながるという前提がある以上、失敗の原因を自分以外のせいにしたことを叱責されるというのは、一見正当にも思われます。しかし、注意しなければいけないのは、これが不自由な2択であることです。

自責にしない限り上司が詰めるのを止めてくれないのであれば、部下はしぶしぶ自責にするしかありません。「なんでできないの?」は一見オープン・クエスチョンのようでいて、答えは「自分のせい」か「自分以外のせい」の二択であり、かつ失敗の原因を自分以外におくことはそもそもよしとされないのです。つまり、詰めるという行為は自責を強制するのと同じことになります。

上司に「どうして売り上げが翌月にスライドしたの?」と聞かれた部下が「クライアントの社内稟議に時間がかかり」「(その部下の)部下がクロージングに失敗し」と答えたら、上司としては思わず、他責にする部下への叱責をはじめてしまうでしょう。部下はここで、「自分がクライアントとの調整に失敗しました」「自分の部下の管理が行き届きませんでした」と答えるしかありません。

しかし、これでは上司による思考の強制であり、どれだけ上司の意見が正当であったとしても、叱責の程度次第ではパワハラやモラハラにあたる可能性があります。これは上司側も胸に手を当てて考えなければいけませんが、詰めるタイプの上司は一部に「詰める」という行為を誇らしげに語る傾向があります。でも、それは体罰を自慢する教師と同じであり、社会的に許容できないというスタンスをとるべきだと僕は思います。

「いつも詰められている部下」を生み出すのは「詰める上司」

そもそも、押し付けられた思考で人間は変化するのでしょうか。ここでいう変化とは、認知と行動の様式の変化を指します。人間はまず主観的にモノゴトを認知し、認知にもとづいて行動しますが、次第にこの認知から行動につながる思考パターンに、固有の一定の偏りが生まれます。この思考パターンのクセこそ、仕事ができる、できないを左右する重要なポイントです。

たとえば、課題を後回しにしていいか、すぐやるべきかの判断は、それまでの人生における選択と結果により形成された思考パターンのクセに左右されます。課題を後回しにするのは仕事ができないビジネスパーソンの特徴ですが、これは経験上は後回しにしてもなんとかなっていたので、「後回しにしてもなんとかなるだろう」と判断するようになったのでしょう。失敗を繰り返す部下には、本来このような思考パターンの補正が必要です。

一方で、詰める行為によりアプローチできるのは、あくまでも行動パターンです。特定の行動をしたマウスに電流を流すような実験がありますが、罰を与えられたマウスは、あくまでも電流を流された行動をしなくなるだけです。実験により、また別の条件を設定されれば、何度でもその条件に応じた罰を受けることになるでしょう。残念ながら、このような実験のマウスには、罰を逃れる方法がありません。

「クライアントとの調整ができませんでした」「部下の管理が行き届きませんでした」──これは本当にそうなのですが、ここで上司が「で、どうするの?」とさらに詰める行為におよんでも、部下は「次回はがんばります」としか言いようがありません。本当は、このような失敗の背景にこそ、クライアントへの連絡や、(その部下の)部下へのリマインドを後回しにする思考のクセが隠れているかもしれないのに、です。

もう一例「わかってるの?」という、これも定番の台詞を紹介します。これに「わかっています」と答えると「ではなぜ失敗したのか」、「わかっていません」では「なぜわかってないのか」と詰められます。要するに正解はなく、上司の気が収まるまで叱責に耐えるのがゴールです。このような環境では、部下は上司の言いなりになって、思考を放棄してしまいがちです。実験で電流を繰り返し流されるマウスとも、大差がないのです。

失敗がカイゼンの対象だとすれば、本当はここがPDCAサイクルにおけるC(Check)とA(Act)にあたり、課題の洗い出しと改善をする重要なタイミングです。CとAに時間をかけるべきというのは、事業全体については定説ですが、このような個別のケースになると、すぐ目に見える結果を追求しがちです。そのひとつの表れが「詰める」という行為なのかもしれません。よく言えば、部下との認識合わせを早急におこなったとも表現できるのですから。

しかし、人材とは本来、一朝一夕に育成できるものではありません。罰で相手の行動パターンを補正できても、思考パターンまでは補正することができません。そのため、詰められる部下は何度でも詰められることになります。ある意味では、オフィスの風物詩である「いつも詰められている部下」を生み出しているのは、「詰める上司」に他ならないのかもしれません。どうしてこのようなパラドックスが生み出されてしまうのでしょうか。

なぜ問題がある「詰める文化」はなくならないのか

繰り返しになりますが、部下を「詰める」ことは僕にもあります。放っておいても結果を出せる人間もいれば、適切なタイミングでお尻を叩いてあげないと(体罰的な意味ではなく)結果を出せない人間もいるためです。ただしその方法として、「なんでできないの?」に代表されるような、自責を相手に強制する「詰め」は意味がないと、僕は思います。また、相手を叱責するという指導は、そもそもできるだけしたくないとも。

誰だって、怒られたくないし、怒りたくもないのではないでしょうか。それなのに、どうして詰める文化が生まれてしまうのかには、過去に自分が詰められて指導されたためにそれ以外の指導方法を持っていないとか、これまで詰めて指導した部下の育成が上手く行った成功体験があるとか、あとは企業文化として詰めることが常態化しているとか、さまざまな理由があるでしょう。

でも、指導方法が詰める一択では芸がないし、詰めて育った一握りの人材の陰ではたくさんの人材が潰れているのかもしれません。詰めるのが企業文化だとしてはばからない会社からはすぐに逃げ出したほうがいいです。前述したように、パワハラとかモラハラとかのセンシティブな問題をはらんでいる行為ですので、その自覚が薄いようであれば、他にも何かと苦労することになると思います。

「詰める」のは簡単です。まず、自分の感情をコントロールする必要がありません。叱責された部下は思考を放棄するのでマウントしやすくなり、権力を誇示できるため気分がよくなってしまう上司も一部にいることでしょう。心理的に選択しやすい指導方法だからこそ、詰める文化はなくならないし、詰める文化を存続させるために詰められる部下が出現するという構造的な問題もありそうです。

では、もし部下が失敗をした場合は、どう指導すればいいのでしょうか。以前、跳ねっ返りの強い部下の失敗を「詰めて」いたときのことです。一通りヒアリングを終えて、僕はまず「そもそもココがちがう」とミスを指摘し、最適だと思う方法を提示しました。しかしその部下は、その方法が最適であるとしながらも、「気にくわない」と言います。こちらも若干カチンと来ながらですが、その部下の言い分を聞いてみることにしました。

「自分がまちがっていたことは理解している。だけど、どんなにバカバカしい失敗だったとしても、否定しないでほしい。私は認められたい」──要約するとこんなところです。場合によっては、開き直りをさらに詰めることになりそうですが、そのときの僕は「たしかに、そういうものだよな」と思いました。当たり前ですが、部下は人間です。その心の機微を無視したマネジメントは成功しないか、コミュニケーションロスが大きいと気付いたのです。

しかし、ここまで説明してきたように、さまざまな問題のある「詰める」という指導方法を安易に選択するようになってしまったとき、「相手を成長させて、生産性を上げる」というビジネスの現場における指導の本質が失われがちであることは、マネジメントをする立場の人間として心に留めておきたいと思います。つい叱責のために口を開きかけたときは「その指導は誰のためにあるのか」と、自分に問いかけるようにするのはいかがでしょうか。

マネジメントは時代と相手により自由自在に変化する、良問であり難問です。正解までたどり着けないと知りつつ特定の解法にこだわるのは、試験のような部分点もない以上、時間のムダになってしまいます。

これまで自分にとって有効だったとしても、目の前の問題の役に立たないのであれば、さっさと捨てて次に行きましょう。さまざまな解法でトライ・アンド・エラーをしつつ、常に正解へのプロセスを自分にストックしておきたいものです。

イラスト:マツナガエイコ


失敗してしまったときは失敗した時に大事なのは「反省」よりも「分析」「詰める」だけじゃない「怒る」「叱る」「指導する」の決定的な違い

U理論とアジャイルは根が同じ────U理論・中土井 僚(4)/西尾 泰和の「続・エンジニアの学び方」

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サイボウズ・ラボの西尾 泰和さんが「エンジニアの学び方」について探求していく連載の第25回(これまでの連載一覧)。U理論の伝道師、中土井 僚さんにお話を伺うシリーズ(4)です。

本連載は、「WEB+DB PRESS Vol.80」(2014年4月24日発売)に掲載された「エンジニアの学び方──効率的に知識を得て,成果に結び付ける」の続編です。(編集部)

文:西尾 泰和
イラスト:歌工房

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今回はインタビューは一旦お休みして、U理論がどういう文脈で生まれてきたのか、周囲の地図を得るために、一歩引いたところから描写してみたいと思います。

まずU理論がどの分野の理論なのかをきちんと説明する必要がありますね。U理論は経営学の理論です。著者のオットー・シャーマー(Otto Scharmer)はMIT Sloan School of Managementのシニア・レクチャラーとして、経営学、特に組織論を教えています。

学びを重視する戦略

ところで「経営戦略」という言葉でみなさんは何を連想するでしょうか? これは人によってだいぶ違います。ヘンリー・ミンツバーグ(Henry Mintzberg)は、「経営戦略」という言葉が10通りの意味で使われ、10の学派に分かれていると指摘しました[1]

「U理論」のオットー・シャーマーや、彼と共著のある「学習する組織」のピーター・センゲ(Peter M. Senge)、日本人では「知識創造企業」の野中郁次郎などは、学習に重きをおく学派「ラーニング・スクール」に分類されています。この学派は「環境から効率よく学び、変化に適応することが重要」という考え方の学派です。

「環境から効率よく学び、変化に適応することが重要」と聞いて、どう思いますか? 当たり前だと感じるでしょうか。

他の学派の主張と比較してみましょう。例えば「デザイン・スクール」という学派は「自社の強み、弱みをしっかり分析して戦略を策定することが重要」と考えています。

これも、これだけを読むと当たり前だと感じるかもしれません。なので比較が重要なのです。2つの考え方を比較することで、書かれていないことが分かります。

「自社の強み、弱みをしっかり分析して戦略を策定することが重要」というとき、暗黙に「戦略の策定は事前に行われ、その後、それを実行する」という前提が入っています。実行フェーズで戦略の間違いに気づいたらどうするのか、環境からどう学ぶかの視点が抜けています。

逆に「環境から効率よく学び、変化に適応することが重要」というとき、暗黙に「環境は変化するものであり、事前に時間をかけて戦略を練ってもしかたがない」という前提が入っています。事前の戦略策定が軽視されているわけです。

「戦略の策定は事前に行われ、それを実行する。この事前の戦略策定をしっかりやることが大事」と考えるのか、「事前の戦略策定はあまり重要ではない。まず実行し、その結果から事後的にしっかり学ぶことが大事」と考えるのか、これはどちらが正解と言えるものではありません。

筆者はラーニング・スクールの考え方にとても親近感を抱いています。企業の経営だけでなく、エンジニア個人の「自分経営」に関しても、いかに環境から学び、変化に適応するかがとても大事だと感じているからです。だからこそ、この連載は「続・エンジニアの学び方」というタイトルなのです。

アジャイルとの関係

IT系のエンジニアには「アジャイル」という言葉を連想する人もいることでしょう。アジャイルという言葉の定義はあまり明確ではありませんが、「事前にしっかり仕様を設計して、それからそれを実装する」のではなく、「速やかに顧客に提供し、その結果から学んで仕様を変えていこう」という開発スタイルだと言ってよいでしょう。この2つの開発スタイルの関係は、上で説明したデザイン・スクールとラーニング・スクールの関係によく似ています。「効率よく学ぶこと」これがアジャイル開発の目的なのです。

アジャイル開発手法の中に「スクラム」という手法がありますが、これは実は野中郁次郎と竹内弘高による論文が由来です([2][3])。彼らがこの論文で提案した「スクラム」も効率よく学ぶことを目指した手法でした。戦略策定のフェーズと実行のフェーズを切り離してしまうのではなく、小さな「策定→実行→評価」のイテレーションを作り、それをオーバーラップさせ、たくさん繰り返すことで環境への適応をスピーディにすることを目指すわけです。これをソフトウェア開発の文脈に応用したものがアジャイル・スクラムです。設計→実装のフェーズと顧客評価のフェーズを切り離してしまうのではなく、「設計→実装→評価」を短いサイクルで繰り返すことで、顧客ニーズを効率よく学び、スピーディに適応することを目指すわけです。

リーンスタートアップ」を連想した人もいるでしょう。これはなるべく早く「お金を払ってくれる顧客がいる」という仮説を検証することが重要だと考え、検証を実行できる最小限の製品をリリースすることで素早く仮説を検証することを提案しています。環境から効率よく学ぶことを目指しているわけです。

イノベーションはどうやって起こるのか

さて、「イノベーションはどうやって起こるのか」という問いについて考えてみましょう。この問いは経営学の大きなテーマのひとつであり、もちろん誰もまだ正解を見つけ出すことができていません。この問いに対して、いくつかの仮説的な「理論」が提案されている状況です。

例えば、野中郁次郎は「暗黙知と形式知を互いに変換することが重要だ」と考え、その具体的なプロセスとして「SECIモデル」を提唱しました([4])。SECIモデルは4通りの知識変換で構成されています(図1)。

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図1:SECIモデル

  • 暗黙知を暗黙知のまま共有する「共同化」(Socialization)
  • 暗黙知を形式知に変換する「表出化」(Externalization)
  • 形式知を他の形式知と結合する「連結化」(Combination)
  • 形式知を個々人が習得し暗黙知とする「内面化」(Internalization)

この4つの知識変換をスパイラル状に繰り返すことで新しい知識が創りだされ、イノベーションが生み出される、というモデルです。そしてこのプロセスが起こりやすくなるように「場」を整備することが一番重要だと主張しました([5][6])。中でも共同化のSの場を重視し、PDCAサイクルの前にSを置くことが大事だと主張しています([3])。例えばホンダの「ワイガヤ」合宿などが共同化の場と言えるでしょう。

「場」をどうやって整備するのか

ところで、この「場」の整備ですが、具体的にはどうすれば良いのでしょう?

例えば旅館を借りきって社員を詰め込めば、それだけで共同化の「場」が生まれるかというと、そうではないわけです。どういうときにうまく「場」ができて、どういうときにうまくいかないのか? 何が邪魔をしているのか?

オットー・シャーマーのU理論はこの問いに関して答えを出そうとしています。彼は、場が深まっていく過程を4段階のレベルに分解し、それぞれのレベルの間にある3つの障壁を言語化しました(図2)。

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図2:場が深まっていく過程の4レベルと、レベル間にある3つの障壁

  • Voice of Judgement:既存の枠組みで評価してしまう「判断の声」
  • Voice of Cynicism:既存の枠組みは変えられないという「あきらめの声」
  • Voice of Fear:既存の枠組みを手放すことを恐れる「恐怖の声」

例えば、あなたが何か開発プロセスが改善されそうな新しいツールを見つけてワクワクしているとしましょう。それに対して「新しいツール? ダメダメ、どうせ一時の流行でしょ。よくあるじゃんそういうの」という声が聞こえてくるかもしれません。それが「判断の声」です。次に「このツールは良さそう……だけど、どうせこれを紹介しても上司の反対で導入されなくて、結局何も変わらないんだろうな……」という声、例えばこれが「あきらめの声」です。最後に「このツールを導入すれば、変化が起こる……だけど、それが本当に正しいんだろうか。今まで通りのやり方のほうが安全なのでは……」、例えばこれが「恐怖の声」です。

この3つの壁を乗り越えることで場が深まり、オットー・シャーマーの表現を使えば「ソーシャルフィールドが耕され」るわけです。そして耕された場から「未来が出現する」のです。オットー・シャーマーはPDCAサイクルを「過去からの学び」と呼び、新しいものを生み出すためにはUのプロセスをくぐり「『出現しつつある未来』からの学び」を行う必要があると説いています。

◆     ◆     ◆

今回、まずU理論が経営学の理論であることを解説しました。次に、その経営学の中に、10個の学派があることと、その中の2つ、事前の計画を重んじるデザイン・スクールと素早い学びを重んじるラーニング・スクールについて解説しました。アジャイルやリーンが、ラーニング・スクールの考え方に近いことを確認し、「イノベーションはどうやって起こるのか」についてのラーニング・スクールの中での2つの仮説を解説しました。概念の位置関係が分かりやすくなったでしょうか?(つづく)

参考文献:
[1]「戦略サファリ 第2版」(ヘンリー・ミンツバーグ/ジョセフ・ランペル/ブルース・アルストランド、東洋経済新報社、2012年)
[2]「The New New Product Development Game」(野中 郁次郎/竹内 弘高、Harvard Business Review、1986年)
[3]「アジャイル開発とスクラム──顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント」(野中 郁次郎/平鍋 健児、翔泳社、2013年)
[4]「A Dynamic Theory of Organizational Knowledge Creation」(野中 郁次郎、Organization science 5.1: 14-37、1994年)
[5]「The Concept of "Ba": Building A Foundation For Knowledge Creation」(野中 郁次郎、Knowledge Management: Critical Perspectives on Business and Management, 第 2 巻、2005年)
[6] 「実践知のリーダシップ──スクラムと知の場作り」(野中 郁次郎、AgileJapan 2010 基調講演、2010年)


「これを知りたい!」や「これはどう思うか?」などのご質問、ご相談を受け付けています。筆者、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


謝辞:
◎Web+DB Press編集部(技術評論社)のご厚意により、本連載のタイトルを「続・エンジニアの学び方」とさせていただきました。ありがとうございました。


この記事を、以下のライセンスで提供します:CC BY-SA
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「男性が大黒柱じゃないと」は幻想──介護離職ゼロも出生率1.8も「主夫」化がカギ

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主夫の友アワード

(写真左)村上誠、「秘密結社 主夫の友」“総統”。9歳・3歳の男児を育てる兼業主夫。職種はデザイナー。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。 (写真中央)白河桃子、少子化ジャーナリスト。「秘密結社 主夫の友」顧問。ふだんは女子大生に「専業主婦のリスク」を説く立場ですが「主夫」の活躍には大賛成!  (写真右)青野慶久、サイボウズ代表取締役社長。頭のなかにコテコテの昭和を残しつつも、育休を取得したり時短勤務を実践したりするハイブリッド仕様。3児の父。

政府が“2020年に女性管理職3割”を目標として掲げるならば、これに対応して“男性の3割を主夫”にしようではないか! そんな野望を抱く「秘密結社 主夫の友」(NPO法人ファザーリング・ジャパン)が、男性の家事育児参画に貢献した人に授与する「主夫の友アワード」を創設。 記念すべき初回受賞者は、放送作家の鈴木おさむさん(著名人部門)、エッセイスト&タレントの小島慶子さん(女性部門)LIONソフランCM「主夫、はじめました。」(広告部門)、サイボウズ・青野慶久社長(企業人部門)の4方に決定しました。 2015年10月に行われた授賞式では、受賞者の青野社長、「秘密結社 主夫の友」総統・村上誠さん、同結社の顧問を務める白河桃子さん(ジャーナリスト)が、これからの社会における「主夫」の重要性について、熱く語り合いました。

子どもが半減=「市場が半減する」ということ!

青野社長授賞

授賞式において副賞のエプロンに喜ぶサイボウズの青野社長。「今日はパパごはんデーなので3時間後にはこのエプロンをつけて焼肉丼をつくります」と宣言。以前は食に興味がなかったが毎週木曜日は家族のために夕食をつくっている

笑いをとるつもりだった、動画「パパにしかできないこと」

ほLIONさん授賞

広告部門において主夫の友アワードを授賞したライオンの「ソフラン」CM。授賞時に放映中のシリーズ第3弾は、西島秀俊さん扮する主人公が「主夫、がんばっています」と娘をお泊り保育に送り出す様子が描かれている。


みんなもっと「主夫」を名乗ろう

時代は今まさに「主夫」を求めている

naijyonoko6102.png aonoshufu610.jpg 文:大塚玲子 撮影:内田明人 編集:渡辺清美

【サイボウズ式編集部より】記事中で話題となった「大丈夫」「パパにしかできないこと」に続き、2015年12月7日(月)より田中圭さん、オダギリジョーさん出演のパパを主人公にしたサイボウズ ワークスタイルドラマ「声」が始まります。現在、予告編を公開しています。

ハッカーの遺言状──竹内郁雄の徒然苔第25回:気配の科学?

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元祖ハッカー、竹内郁雄先生による書き下ろし連載の第25回。今回のお題は「気配の科学?」。

ハッカーは、今際の際(いまわのきわ)に何を思うのか──。ハッカーが、ハッカー人生を振り返って思うことは、これからハッカーに少しでも近づこうとする人にとって、貴重な「道しるべ」になるはずです(これまでの連載一覧)。

文:竹内 郁雄
カバー写真: Goto Aki

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私は下手だが、楽器を演奏する。フルートとチェロだ。フルートは高校2年か3年のとき、何の機会か忘れたが高校の吹奏楽部にあったフルートに触ってみて、「あ、やってみたい」と思ったのが始まりである。1学年150人の小さな高校なので、まともに吹奏楽部が成立するような規模ではなかった。楽器だけが揃っていたというところだろう。

どんなふうに練習したのかはさっぱり覚えていない。当然独学である。フルートは精密機器で、ちゃんと調整していないと弁がちゃんと連動して塞がらなかったりする。音が出にくいと思ったら精密ドライバでちょこっとした調整をする、場合によって力を入れてちょいと曲げを補正するというのも独学で覚えた。ともかく、まるで鳴らなかった楽器をそこそこ鳴るようにした。

何を演奏したかの記憶は1曲しかない。高校の講堂で生徒たちの前で演奏したケテルビーの「ペルシャの市場にて」である。一応吹奏楽だったと思うが、どんな編成で演奏したのかの記憶がまったくない。この中にはピッコロで吹く、速いパッセージの蛇使いの音楽がある(図1)。吹奏楽部なので、ピッコロも用意されていたが、誰も触ったことがなかったらしく、楽器の状態がとても良かった。私の美化された記憶だと思うが、蛇使いは結構うまく吹けた。ピッコロは楽器が小さいので、手の小さい私でもよく指が回るのである。そう、基本、楽器は小さいほど速いパッセージがやりやすい。

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図1:「ペルシャの市場」から蛇使いの音楽の部分、ピッコロパート。全体は5分ちょっとの曲だが、Wikipediaによると、ケテルビーがとある番組の穴埋めのために急遽作曲した、とある。すごい。私の大学時代の友人は、この曲がいつも学校の昼食時間にかかっていたので、パブロフの犬ではないが、この曲を聴くと唾液が出てくると言っていた。ほんまかいな。なお、これは私が自分で楽譜作成ソフトを使って打ち込んだもの。それにしてもこの譜面、本当に50年ぶりに見た。

そんなわけで、大学に入ったとき、入学祝にと親にせがんでフルートを買ってもらった。そこからも独学というか独りよがり的に練習を続けた。運良く、大学のサークルの1年先輩の友人山崎久道さん(現在中央大学教授)がピアノを弾いてくれたので、ちゃんとできるできないと関係なく、いろんな曲を吹き散らすことになった。しかし、熱心に取り組んだのはバッハのロ短調ソナタで、1つの楽章が止まらずに最後まで行けたときは大興奮したものである。

◆     ◆     ◆

思い返すと、音楽は小学校でも中学校でも一番嫌いで苦手な科目だった。それが中学3年のときに、悪友だった稲塚久馬君が、これまたどういう経緯だったか忘れたが、レコードコンサートをやるということになった。教室くらいの大きさの畳敷きの部屋に、いま思うと信じがたいちゃちなステレオ装置を設置して、リムスキー=コルサコフの「シェヘラザード」(エルネスト・アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団――いまでもいい録音だし、名演だと思う)を鳴らした。当時の私にはこれでもぶったまげた音響であり音楽だった。

こうしてそのころからクラシック音楽を聞き始めた。高校1年のとき、朝比奈隆指揮のベートーベンの交響曲を当時の「ソノシート」という直径17cmぐらいのぺらぺらふにゃふにゃの片面レコード(10分程度が収録可能、これでもSPレコードよりは長い)を、楽章の途中でかけ替えながら聞いていた。遺言状第9回「アナログがデジタルを支えている」で紹介した私のオカルトオーディオの世界とは縁遠い、なんというか、音楽が聞こえていれば感動できるという時代であった。

大学院を出て、NTT研究所に入り、最初の年の冬のボーナスをはたいてチェロを買ってしまった。これがチェロの始まりである。自分では、フルートのような高音楽器とバランスが取れる(?)のはチェロだという変な理屈であった。世の中、そういう理屈を言う人は私だけではなさそうだ。

弦楽器は指導者について勉強すべきである。というのは分かっていたが、チェロも結局独学だった。だから、ちっともうまくならない。でも、下手になりようもないので、単調非減少に腕は上がろうとしている、と思う。

しかし、29歳のときにサッカーを本格的に始めることになり、楽器練習はほとんど沙汰止みになってしまった。サッカーもフルートもチェロも、ついでにやっぱり時間を取る音楽鑑賞(半ばオーディオ趣味)も入れるとなると、どうやっても時間の工面がつかない。

時代はいきなり飛んで、64歳になって東大を引退したとき、やっとこれで楽器練習ができると思い、フルートとチェロを立て続けに買い(写真1)、リハビリを始めた。時すでに遅しではあるが、それでも前よりはうまくなっているかもしれないと感じるときがある。

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写真1:遺言状第12回のカバー写真にも登場している、米国からインターネット経由で買ったカーボンファイバー製のチェロ。注文したら5日後には、冷蔵庫なみに巨大な段ボール箱の中に、緩衝材なしで吊り下げられて届いた。説明書には「unbreakable」と書いてあったが、さすがに驚いた。一番円高のときだったので助かった。この楽器は下手な木の楽器よりはよく鳴る。作り方がとても面白い。

◆     ◆     ◆

延々と私の下手糞な趣味について書いてきたが、要は、私が結構「音」にこだわりがあるということの前触れである。とはいえ、私の左右の耳は同じ性能ではない。右の耳と左の耳では聞こえ方が少し違う。単純に言えば、右の耳のほうが周波数特性が悪い。ところがあら不思議、両耳で聞くと、その差にまったく気がつかない。これがまさに「ゲシュタルト心理学」でいう、ゲシュタルトかもしれない。

ついでながら、私は学生のころ視力が2.0(以上?)あり、琴座の中の2重星(ε星)を十分肉眼で見ることができたくらいだが、私の目も左右で性能が違う。ほとんどの人は体験できないと思うが、左目が少々「弱視」気味なのである。つまりレンズ調整は右と同様の能力があるものの、網膜での見え方がどうも「弱い」。解像度はあるのに、見えにくいという不思議な感覚である。これも両目を使うと気がつくことはない。

現在、メディア技術は驚くほど進んでいて、4Kのテレビが市場で売れ始めている。放送がないのに先走っているなぁと思うが、老眼兼近眼兼乱視になった私にも見た瞬間に通常のハイビジョンの映像と違うことは分かる。

私はこの4K画像を実は1997年ごろ、直前まで在籍していたNTTの研究所で見ている。実験的に作られた高臨場感TV会議システムである。もちろん当時はそんな高解像度のディスプレイはないから、多数のリアプロジェクション画面をものすごく苦労して境界が見えないくらいシームレスにつなげたものである。これがちょっと暗くした部屋の壁面になっており、その壁面にくっつけたテーブルに数名の人が座れる。画面の向こうには違う部屋が映っていて、そこにも同じテーブルがある。つまり、こちら側のテーブルと向こう側のテーブルが全体として1つのテーブルとして見えるような仕掛けなのだ。こうして、あたかも同じ部屋のテーブルを囲んで会議をしているように見せかける(※1)。これが「高臨場感」の意味だ。

こちら側に私と並んで座っていたのは、当時NTTが主宰していたメディア研究会の仲間である哲学の黒崎政男さん、精神病理学の香山リカさん、デザイン美学の柏木博さんといった錚々たるメンバーである。向こう側には、このシステムを開発した技術者たちが座っていた。

この実験におつきあいいただいた人たちの一致した感想は、映像は当時の技術を圧倒的に超えていたものの、本当のリアリティにはまだ届いていなかったということである。人間の感覚は本当にすごい。実験なので、同じ研究所内から映像を送ってきていた技術者チームがいたのだが、彼らは我々と初対面であった。黒崎さんの希望で、TV会議終了後、実物(?)と対面することになった。そのとき黒崎さんがいきなりこう言った。「あ、全然本物のほうがいい!」 そう言われた技術者は喜ぶべきか否か、迷ったに違いない。

私には「高臨場感」のために、「音」にまだまだ解決すべき問題、あるいはそもそも解決できない問題があるのではないかということが気になった。現象としては、想定されている部屋の広さにしては声に不自然な残響がつき、相手側の声が、見えている画像とのバランス、あるいは隣に座っている実物の声とのバランスからいうと小さい。

誰が喋っているかがすぐ分かる見事な音像定位を実現するために多数のマイクを使っているが、徹底したハウリング対策(エコー対策)が施されているものの、逆にそれゆえの不自然感が出てしまうのである。

向こう側と対話するためには、当然マイクとスピーカーが必要となる。エコーは、こちら側のマイクに拾われた声が、向こう側のスピーカーから出て、向こう側のマイクに拾われて、こちら側のスピーカーに伝わるから起こる(これが何重にも繰り返されることもある)。

なぜ、映像のほうではこの問題が起こらないのか? 映像にもカメラとディスプレイが必要だ。しかし、カメラはディスプレイを撮影しない。だから、信号経路にループが発生しないのである。ちなみにビデオカメラでそれのモニター画面を映しているディスプレイを撮影すると大概は変なことが起こる。

これは聴覚の受動性と視覚の能動性という根源的な差に関係している。動物にとって聴覚は餌食になる危険を察知するために場の状況をバックグラウンドジョブとして把握し続ける受動器官だ。だから、後ろの状況も分かるように全方位的になっている。それに対して視覚は餌食を取るために焦点を絞るための能動器官だ。全方位的なものを通信回線を通じて共有しようとするから、エコーは避けられない宿命となる。Skypeが昔よりずっと良くなっていることから実感されるように、エコーキャンセラの技術はどんどん進歩しているが、どこかに不自然感がつきまとう。みんなが一斉に喋り始めるとそれはすぐ分かる。私はやってみたことがないが、Skypeで2重唱の練習はできるのだろうか?

◆     ◆     ◆

高臨場感TV会議が「場の共有」という意味だったら、まだまだ力不足だ。NTT研究所の後輩たちが「同室感コミュニケーション」という研究プロジェクトをやっていたが、これは同室感という感覚にもっと踏み込んで、こちら側も向こう側もあたかも同一空間内にるように空間知覚させるシステムであると同時に、時間も超えて同室感を与えることを目指していた。

しかし、本当の同室感というのは、空間位置の共有知覚だけではなく、要するに部屋の(文字どおりの)空気を共有しないとやっぱり達成されない。それにはやはり空気を伝送媒体としている音が主要パートを占める。空気の共有という意味では、匂い、気温、湿度も重要である。ついでながら、実は光も重要だ。同じ部屋にいれば、明るさは共有できているし、窓から太陽光が入れば、その赤外線により部屋はポカポカする。赤外線共有ともなれば装置は随分大がかりなものになろう。

こういう通信テクノロジの話を持ち出すまでもなく、音は同じ部屋にいる人たちの同室感というか、一体感、親近感を形成するのに本質的な作用をもたらしている。

1980年代、私と仲間たちが手作りした計算機システムを、研究所の実用化部門でさらに発展させることになった。一種の技術移転を行うわけだが、場所が70キロ以上離れている。まだ電子メールはよちよち歩きし始めたばかりのころで、電話とファックスが主たる通信の手段だった。残念ながら、これでは技術移転はうまくいかない。結局、我々が相手方に乗り込んで、同じ部屋で一緒に仕事をすることになった。場を共有することが、技術移転を円滑にするのに最も効果的だったのである。

このような場の共有の直接的効果は、顔を合わせていることよりも、共通の音場に居合わせていることから来たと思う。技術的に意味のある発声のみならず、鼻息、苦吟のうなり、衣ずれの音、キーボードのカチャカチャ音、椅子のきしみ、……。タコ部屋みたいな状況の中で共有された音場がまさしく臨場感であり、技術移転の場だった。

サッカーパブでは、そこに集まった小さな群衆がお互いに(視覚器官を使って)見合うから興奮するのではない。自分たちが作った音響空間の中で、発声と聴覚器官を使って自己増幅的に興奮していく。これがサッカーパブの仕掛けであり、ディスコの仕掛けだろう。つまり、音という共通場の受動的状況認識を使って集団を興奮のルツボに巻き込む。

◆     ◆     ◆

同室感には「気配」も重要である。気配は皮膚感覚と聴覚の境界領域にあると思う。オーディオマニアの発想では、気配のかなりの部分は恐らく30ヘルツ以下の超低音に起因する。良い録音を良いステレオ装置にかけると、指揮者がタクトを振ってオーケストラが音を出す前の一瞬の気配が物理的に「聞こえる」。

炎が発する超低周波の空気振動を検知することにより、従来の温度検知より圧倒的に速く火炎を検知できる火炎検知装置があるらしい。これも音だ。

後ろからじっと見つめてられていること、すなわち視線を感ずることができると思うことがよくあるが、これは何なのだろうか。凝視の姿勢により空気が動かなくなっていることを逆に検知する、いわば音が止まっているという負の現象の検知かもしれない。だとすると人間の知覚は恐ろしいものだ。

もっとも、人の気配は赤外線で感知できるという説もある。赤外線は目でなくても感知できる光だから、受動感知されるのだ。世の中には「暑い」というか「暑苦しい」人が確かにいるが常人よりも強い赤外線が出ているのかな?

気配の科学はもっと探求されてもいい。と、思って調べたら、東京大学生産技術研究所機械・生体系部門の滝口清昭特任准教授によると、私たちの体の周りには「準静電界」と呼ばれる「電気の膜」があり、それが気配の正体なのではないかという。おお、そうか。オカルトオーディオを否定しない私には十分信じられる。

◆     ◆     ◆

で、最初の話に戻る。合奏は同室感があってこそ成立する。

10年ほど前だっただろうか、マイクロソフトのImagine Cupという学生のプログラミングコンテストの国際大会に審査委員として参加したことがある。といっても会場がパシフィコ横浜なので気が楽だった。Imagine Cupは4名の学生がチームを組み、数カ月、独自の課題について開発を進めて、最後は成果のみならず、プレゼンの上手さも評価されるという総合的なプログラミングコンテストである。

横浜の大会ではロシアのチームが、遠距離に分散した音楽プレイヤが合奏するというシステムの開発でかなりいい成績を修めた。ここでの最大の問題は同期の邪魔となる、ネットワークを経由したタイムラグである。100ミリ秒も遅延するとちゃんとした合奏はできない。それをごまかす方法を生み出すのが技術的挑戦だった。

長野オリンピックで、小澤征爾の指揮のもと、地球の裏側を含む世界中で同じ曲(ベートーベン第九の喜びの歌)を歌うというイベントがあった。地域に応じて予め仕組んだ遅延制御をして、日本の映像では(一見リアルタイムに)同時に合唱しているように視聴できるようにしたのである。ともかく世界中で同期を取るのは大変だ。競馬の実況中継のラジオを数分遅延させて部屋に流して、不正な賭け競馬の胴元をやったという事件が昔あったが、似ているといえば似ている。

さて、2015年11月半ば、つまり、つい半月前、10名あまりのお客さんの前で、元プロのオーボエ奏者の某○女とクヴァンツのトリオソナタを合奏する機会があった。某○女(※2)とは長い飲み仲間だが、合奏をしたのは初めててあった。当然練習も本番も「同室」である。私は人前での演奏は、そうは多くはないものの、何度かやっている。

ところが、ところが、某○女との合奏は練習の段階から本当にメロメロになってしまった。彼女の気配だか、準静電界だかを感じすぎたのだろうか? 普段間違えるはずのないようなところでまで間違える。フルートの音が本来の自分の音にならない。これには参った。なので、本番もほうほうの体で、最後の楽章までやる気がせず、2楽章で打ち切った。

そのあとの別の曲はチェロでの参加だったが、フルートでの失態が面目なくて、やけ酒的ビールを飲みながら弾いた。しかし、これは大過なし。

これはどうしたことか。結局、同室感とは何ぞやなどと頭でっかちなことを考えているからアカンのだと、猛反省をすることにした。いまごろ反省しても遅いが。(つづく)


※1:そのときは3地点をつなぐ会議で、画面の向こうには2カ所が映っていて、それが1個の円卓を囲んでいたという仕掛けになっていた。
※2:○にどんな言葉が当てはまるかは、読者の創造あるいは想像にお任せする。


竹内先生への質問や相談を広く受け付けますので、編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


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4つのレベルと7つのステップ──U理論・中土井 僚(5)/西尾 泰和の「続・エンジニアの学び方」

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サイボウズ・ラボの西尾 泰和さんが「エンジニアの学び方」について探求していく連載の第26回(これまでの連載一覧)。U理論の伝道師、中土井 僚さんにお話を伺うシリーズ(5)です。

本連載は、「WEB+DB PRESS Vol.80」(2014年4月24日発売)に掲載された「エンジニアの学び方──効率的に知識を得て,成果に結び付ける」の続編です。(編集部)

文:西尾 泰和
イラスト:歌工房

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U理論の解説では4つのレベルと7つのステップが並べて描かれた図がよく出てきます(図1)。今回はそのレベルとステップがどう対応しているのかについてのお話です。

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図1:U理論における「4つのレベル」と「7つのステップ」

◆     ◆     ◆

4つの意識状態に名前がついておらず「レベル1〜4」と呼ばれていて、7つのステップの最初4つの名前がしばしば流用されるのは、混乱を招きそうですね。

また、ステップ5〜ステップ7とレベル3〜レベル1は対応してはおらず、ステップ5〜7ではレベル1〜4のどれにでもなり得ることが分かりました。

整理すると、イノベーションが起こるプロセスは、7つのステップで表現される。人間の意識状態は4つのレベルで表現される。で、7つのステップのうち頭の4つは、意識状態の4つのレベルを降りていくことと対応している。これが今回のお話でした。

その4つのレベルを降りていくことの障害になる3つの壁VOJ、VOC、VOFについては前回解説しましたが、大事なところなので簡単におさらいしておきまましょう。

  • Voice Of Judgement:既存の枠組みで評価してしまう「判断の声」
  • Voice Of Cynicism:既存の枠組みを生み出している「あきらめの声」
  • Voice Of Fear:既存の枠組みが壊れることに抵抗する「恐れの声」

この3つの声が、新しいものが生まれることを邪魔するわけです。(つづく)


「これを知りたい!」や「これはどう思うか?」などのご質問、ご相談を受け付けています。筆者、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


謝辞:
◎Web+DB Press編集部(技術評論社)のご厚意により、本連載のタイトルを「続・エンジニアの学び方」とさせていただきました。ありがとうございました。


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社内評価だけで給料を決めるのをやめたら、多様な働き方が実現できた

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「市場価格は適当に決まるから、給与は最終的には適当に決める」「でも、そのプロセスの説明責任はしっかり果たす」

こう話すのは サイボウズ副社長 兼 サイボウズUS社長の山田理。創業以来、人事評価制度を決めては変え、変えては決め、紆余曲折をたどってきました。

前編『サイボウズの給料は「あなたが転職したらいくら?」で決めています』では、サイボウズの給与は社外/社内の市場価値の2点から決まることに言及しました。後編では、給与が決定した後は徹底的に「説明責任」を果たすこと、評価の仕組み、制度に加え、企業風土とツールもそろえることの重要性を話します。

2015年10月28日開催、「Gartner Symposium2015」の講演を再構成したものです。

マネージャーはフィードバックに徹する。給与は評定会議で決める

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次は評価の仕組みです。評価においては、フィードバックってものがすごく大事です。

給与を決める評定会議のメンバーは、全社員の仕事や行動を見ているわけではありません。現場のマネージャーからインプットをしてもらいます。どれだけがんばっているか、社内の信頼度はどれだけあるかは、チームマネージャーが一番知っているからです。

そのフィードバックを元に、評定会議では「社外的価値」と「社内的価値」を見て、給料を決めていきます。給与を決めるのは評定会議で、本人にはそこに参加している人事からフィードバックをします。

(前編「サイボウズの給料は「あなたが転職したらいくら?」で決めています」を参照)

現場のマネージャーは給与を決めないんです。マネージャーに担ってもらうのは「成長のサポート」。本人に成長のフィードバックをするのはマネージャーの役割だからです。

運用の成果はまだまだ模索していますが、サイボウズの評価の仕組みはいま、こんな感じでやっています。

なぜその人の給与が550万円かとか、485万円になるか。これって厳密には誰も分からないですよね。円単位の正しい給与なんて、誰もわからないと思っているんです。

だって価格はそもそも適当に決まるんですから。なのでぼくらもいかに正しい給与を決めるかではなく、なぜその給与にしたのかという決定のプロセスをいかに説明できるかが重要だと思っています。

給与は「適当に決める」が、徹底的にフィードバックはする

給与を決めた後に、もっとも大事なのはフィードバックです。「なぜ自分がこの給料なのかを聞きたい、物申したいという人がいれば、全員ぼくのところにきてください」と、この評価制度を取り入れた当時、300人以上の社員に言いました。

初年度に実際に聞きに来たのは、15人くらいかな。で、給与統計のグラフを出して「あなたの市場価値のレンジはここくらいで、このレンジの中であなたの評価はこんな感じだけど、自分では今、どこの会社のどんなポジションに転職できそうか。どう思う?」と聞いてみます。

さらに「もうちょっとこういう経験を積んだら君の市場価値はこう上がるよ、どう思う?」といったようにフィードバックをしていくと、「ですよね~」という感じになる。市場価値に対してフィードバックがきちんとできていなければ、モヤモヤが残ります。説明責任こそ大事です。

説明責任を持ち、「給与が決まったプロセス」を伝える

「給与は適当に決める」とは言いましたが、サイボウズでは説明責任を果たさないといけません。市場価値をちゃんと評価しようと思えば思うほど、説明責任を果たさないといけないんです。

その説明においては、給与額の正しさを正確に伝えることは必要ではありません。適当でいいんですよ。本人だって正確な市場価値を知らないのに給料額がどれだけ正しいかを最後まで聞きたいと思っている人なんて、あまりいませんから。

とにかく、社外価値と社内価値に対するフィードバック。そしてそれをどうすれば上げていけるのかというフィードバック。このフィードバックから逃げちゃダメなんです。それが市場価値を評価する上で一番大事なことですね。

働く時間と場所を選べる。ただし、選んだ働き方で給与のレンジは違う

次はワークスタイル変革です。サイボウズは一時期離職率が28%になった時もあったんです。100人雇ったら28人やめるんですよ、どこにでもある普通のブラック企業ですよね(笑)

それじゃだめだと思って、選択型の働き方を取り入れました。まずは「時間」の制限をなくし、「場所」もなくしました。早く帰りたい人もいれば、頑張って働きたい人もいる。会社で働きたい人もいれば、家で働きたい人もいる。じゃあ自分で働き方を選んでみて、と。選んだ働き方によって担当してもらう仕事を変えていく、というものです。


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これらをマトリクスにして、そこに給与のイメージをつけてみたんです。同じ場所で仕事をしている方がアウトプットは増えるだろうし、アウトプットが減る働き方を選べば、給与も減る。

このマトリクスは、働き方を変えるとどういう給料になるかというイメージを示しています。右上は会社に対してコミットが強いということ。チームへのコミットが増えれば、チームからの報酬も増えていく。逆に左下にいけば個人としての報酬が増えている。そんな感じです。

副業OK、1度会社を去るのもOK

次はサイボウズの副業について。最初はダメにしていたんですが、「なんでダメなんだろう、本当に本業に支障をきたすのかな?」「競馬や株式売買は副業じゃないのか?」「飲み会のセッティングで本業に支障をきたしてるやつはいないのか?」など。そもそもを考えてみました。

で、会社のブランドを傷つけるような副業はダメ。本業に影響をきたすような副業だったら、本業のアウトプットが減る。そうすると給与も減るという仕組みにしました。

育自分休暇制度も作りました。若いころは会社外にでてチャレンジしたいという気持ちが出てくるものじゃないですか。「子供を育てるための育児休暇があるのなら、自分を育てるための休暇があってもいいんじゃないか」ということで「育自分休暇」という制度にしてみました。この制度を使って、ボツワナで青年海外協力隊に参加しているメンバーもいます。

こういった制度化を進めたこともあってか、2014年には離職率が5%くらいにまで下がりました。ブラックからややホワイトに近い会社になったかなと思います。男女比率が逆転、社内結婚が30組以上、「ダイバーシティ企業経営100選」に選出、と成果が出てきました。

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オフィスは分散・ハブ化する

2015年、オフィスも日本橋に移転し、新しいオフィスになりました。「Big Hub for Teamwork」がコンセプトです。

普通の会社って、会社という場所にみんなを集めて、そこで食事を出したりして気持ちよく働いてもらおうという環境を作っています。けど、これからは集約ではなく分散の時代じゃないかなと思っているんですよね。

だから、サイボウズではできるだけ1つのオフィスに集まるのではなく分散して働ける環境をと。まずは、コミュニケーションのハブになれる場所をつくることにしました。社員はもちろんのこと、パートナー企業様もお客様もオフィスを使え、そこで信頼関係が醸成され、分散しても遠隔でチームワークができる。そんなチームワークハブができればと思っています。

制度、企業風土、ツールは三位一体になっているか?

ただ、人事制度だけ作ってもダメなんです。ツール、企業風土も同時に作っていかないと、うまくいかないんじゃないかなと思います。人事制度、企業風土、ツールの三位一体が必要です。

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もしメールしか情報共有のツールがなかったら、やりとりする情報はなかなかオープンにはなりません。口では「信頼しているぞ」といいながら、マネジメントをガチガチにやるような会社だったらギャップを感じませんか? 制度は根付かないでしょう。

昔は「安定、同一性を重んじる」という制度が求められていました。これからは「どんどん変化し、個性を大切にする」のを前提とした制度になるんじゃないかなと感じています。

また、同じ会社の人と同じ場所で働くという環境から、ほかの会社の人といろんな場所でプロジェクトを組んで働く、そんな世の中になるんじゃないでしょうか。

ワークライフバランスって言葉、違和感ありませんか?

ワークライフバランスって言葉があるじゃないですか。なんか「ワーク」が前提になっているようでちょっと違うんじゃないかなと。みんなライフがあってワークがある。楽しく生きたいから、働くんだと思います。

社員がいて、楽しく生きるための選択肢がある。これが本来の人事制度だと思います。100人100通りの人事制度が理想なんです。

サイボウズでいろいろな人事制度にチャレンジしてきて、ふと気づいたんです。人事制度は変えるものではなくて、増やすものだと。

100人の会社に1つの人事制度でやろうとするからうまくいかないんです。100人いれば100通りの制度がある、そういう風にして人事制度を増やしていかないといけないと思います。

ソーシャルチームワーク」を提唱しています。同じ会社の人と1つの場所でずっといっしょにいるのって嫌じゃないですか? チーム内で各メンバーが距離を縮めるだけではなく、時には距離を離したりしながら、適度な距離感をいかに保っていくかを考える必要があります。

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サイボウズ副社長 兼 サイボウズUS社長の山田理

まとめ:どうして市場価値が必要なのか?

なんとなくお分かりかもしれませんが、市場価値を正しく評価できるようにならないと、多様化していく働き方に対応できないんです。働き方や場所が変わるとアウトプットが変わっていく、これまでの評価システムでは柔軟な働き方の変化に対応できません。

みんな、好きなところで好きな仕事を好きな時間だけしたいじゃないですか。僕だってそうです。そこに対応していく必要が出てくる。だからこそ市場価値の評価は必要なのです。

さらに市場価値を評価することで、社員の自立を促すことができます。サイボウズに新卒で入って来た人たちに、「まずは君たちにサイボウズを辞められるようになってもらいたい。いつでも辞められる君たちが、それでもサイボウズで働きたいと言ってくれる会社にしていきたい」って伝えているんです。

自立を促すとは、外で自分がどんな価値があるのか、何をすれば外にいけるのか? こういう感覚を持ってもらうことだと思います。逆に、今いる会社以外でもできることを増やすのが真のキャリアアップなのではないかと。上司も意識して、その人が外に出られるように育てていかないといけないんですよ。

つまり、同時に市場価値のある人を引きつけられるような環境にしなければならないということです。人材を囲い込むのはもう時代遅れじゃないかなと思っています。市場価値を意識することで多様な働き方を受け入れ、自立を促せる。僕らまだまだうまくいっていないですけど、引き続きチャレンジしていきたいなと思っています。

文:藤村 能光/写真:鈴木 亜希子

U理論は科学的に正しいのか?──U理論・中土井 僚(6)/西尾 泰和の「続・エンジニアの学び方」

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サイボウズ・ラボの西尾 泰和さんが「エンジニアの学び方」について探求していく連載の第27回(これまでの連載一覧)。U理論の伝道師、中土井 僚さんにお話を伺うシリーズ(6)です。

本連載は、「WEB+DB PRESS Vol.80」(2014年4月24日発売)に掲載された「エンジニアの学び方──効率的に知識を得て,成果に結び付ける」の続編です。(編集部)

文:西尾 泰和
イラスト:歌工房

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U理論に関してこれが科学的に正しいのかどうか疑問に思う人もいるでしょう。対談(前編後編)の際に、U理論の再現性を気にするライターの荒濱さんの質問に対して、僕がほとんど一人で喋ってしまった部分があります。これがその疑問の回答になるかと思いますので、対談記事に収録されなかったやり取りを、以下に掲載します。

あることを本当に知っていると分かるのは、どういうときか。自分の知の正当性を確認するのに、どんな基準が役に立つのか。
「私は自分の知が実行可能なとき、つまり、それを実現できるとき、本当にそのことを知っていると分かる」(クリス・アージリス)
「私は自分の知がその分野のさまざまな顧客や実践者に役立つとき、本当にそのことを知っていると分かる」(エドガー・シャイン)
「私は心から大切だと思う結果を生み出す能力が身についたとき、つまり、自分の知識で何かを創造することができるとき、本当にそのことを知っていると分かる」(ピーター・センゲ)
(「U理論──過去や偏見にとらわれず、本当に必要な『変化』を生み出す技術」p.137より)

◆     ◆     ◆

筆者が「科学的に正しくはないが有益であるモデル」という存在を受け入れられたのは、機械学習を学んだことも理由のひとつかもしれません。例えばeメールのスパムフィルタなどに使われるナイーブ・ベイズという手法があります。この手法は大前提として「各単語の出現確率はメールがスパムかどうかによって決まり、メールに他のどんな単語が出現しているかとは独立である」というモデルを仮定しています。具体的に言えば「場所」という単語の出現頻度は、メールに「日時」「開催」などの単語が含まれているかどうかにかかわらず、スパムかどうかだけで決まる、という仮定です。この仮定は正しくありませんし、「正しくない」ということを再現性のある方法で示すことができます。ところが、ナイーブ・ベイズはスパムフィルタとして有用なレベルの性能を示します。科学的に正しくないが、有用なわけです。

モデルは、近似や抽象化が入って、現実とは少し違ったものになります。なので、現実がどう動いているか不明な場合、「このモデルは正しいのか?」という問いには、「分からない」か「正しくない」としか答えられせん。それが科学的態度です。しかしその状況でも「このモデルは有用なのか?」という問いに「有用だ」という答えはありえるわけです。

筆者はU理論をモデルだと捉えています。つまり、科学的には正しいとは言えない、と考えています。一方で、概念に名前がつくことによって「コミュニケーションが容易になる」「自分や他人が良くない状態であることに気づきやすくなる」などの有益さがあると考えています。(つづく)


「これを知りたい!」や「これはどう思うか?」などのご質問、ご相談を受け付けています。筆者、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


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◎Web+DB Press編集部(技術評論社)のご厚意により、本連載のタイトルを「続・エンジニアの学び方」とさせていただきました。ありがとうございました。


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「人に迷惑をかけない」なんて綺麗事でしかない──乙武さんと多様性を掘り下げる

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作家、教育者、保育園経営者、コメンテーター、スポーツライター、そして3人のお子さんの父親と、多彩な活躍をされる乙武洋匡さん。その発言にはくっきりとした生の哲学が表れ、それを包むようなユーモアと、どんな人をも受容する優しさが印象的だ。

そんな乙武さんこそ「日本でもっとも深く多様性について語れる人ではないか」と、サイボウズ代表取締役社長 青野慶久が対談を熱望。お互いに一瞬も話題が途切れることのない、新しい視点と気づきで満載の時間となった。多様性を支持する2人が考える、多様性の低いムラ社会・日本に足りない発想とは……?

ムラ社会・日本に多様性を根づかせるには?

乙武洋匡さん

乙武洋匡。1976年生まれ。大学在学中に出版した『五体不満足』がベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。その後、教育に強い関心を抱き、新宿区教育委員会非常勤職員「子どもの生き方パートナー」、杉並区立杉並第四小学校教諭を経て、2013年2月には東京都教育委員に就任。教員時代の経験をもとに書いた初の小説『だいじょうぶ3組』は映画化され、自身も出演。2014年4月には、地域密着を目指すゴミ拾いNPO「グリーンバード新宿」を立ち上げ、代表に就任する。2015年4月より政策研究大学院大学の修士課程にて公共政策を学ぶ。三児の父。

異分子は組織にない魅力をもたらす財産

ほげほげ

青野慶久。1971年生まれ。サイボウズ株式会社代表取締役社長。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、 松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役に就任(現任)。 社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。

小さいニーズに卓球のようにガンガン返す

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自分の苦手を認めてもらえれば居場所ができる

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ジグソーパズルのように凸凹を組み合わる

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後編に続く

文:河崎環 写真:谷川真紀子 編集:渡辺清美

ホームベーカリーの限界点──コデラ総研 家庭部(54)

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テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第54回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「ホームベーカリーの限界点」。

文・写真:小寺 信良

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先日、2台目のホームベーカリーが壊れたので、3台目を購入した。ホームベーカリーでの食パン作りはおよそ5年前から始めたので、2.5年に1台ぐらいのペースで買い換えていることになる。

特に「朝はパン」と決めているわけではないが、起きるころにパンの焼けるいい香りが漂ってきて、それで目覚めるというのは悪くない人生だ。いや逆に、家庭の幸せを感じる瞬間でもある。これがやめられなくて、4年も続いている。

ホームベーカーリーの主流は、だいたい1斤から1.5斤程度のものだ。まとめて大きなものを焼くよりも1斤ぐらいをこまめに作ったほうが、おいしくいただける。自分で作るものは日数が経つと固くなるし、カビやすいからである。

うちではだいたい1週間に1回程度作っているが、そうすると年間50回。2.5年で壊れたとすると、だいたい120〜130回ぐらい使うと限界がくるという計算になる。2台とも故障の原因は、よく分からない。ある日突然、ちっとも膨らまなくなるのだ。モーターが劣化してうまく材料がこねられないのか、ヒーターの温度調整ができなくなるのか、その辺りだと思う。

実は最初のころ、冬にちっともパンが膨らまなくて故障を疑ったことがある。ところがネットで検索してみると、冬場のパン作りはちょっとコツが必要だということが分かった。室温が下がるので、発酵がうまく進まなくなるのだ。従って水ではなくお湯を使ったり、あるいはコタツの中に入れて温度を上げたりといった工夫が必要になる。

こうした工夫で一時は乗り切ったのだが、再びちっとも膨らまなくなった。特に寒い時期でもなかったため、ドライイーストの不良を疑ったが、新品を投入しても改善しなかったので、2台目を購入した。この2台目も約3年が経ち、温度や材料を工夫しても膨らまなくなった。どうやらここいらが機材的な限界、ということのようだ。

どうする? 3台目

ホームベーカリーは、おいしいパンが食べられる割には、かなり安い調理機器だと思う。特定の機能にこだわらなければ、6000円〜7000円が平均価格だろうか。うちの1台目はそもそも購入したものではなく、クレジットカードのポイントでゲットしたものだった。ツインバードの製品だったが、すでに現行商品ではないため型番は不明である。

2台目は、当時家電製品レビューで評判の良かったオークセールの「siroca SHB-212」というモデルだった。見た目にも丸っこくて可愛い機器だったが、いかんせんモーターの回転音が甲高く、うるさかった。夜中に動作が始まると、2階の寝室で寝ていても気づくレベルだ。うまいパンが焼けるのは結構なのだが、こういった日常生活に関わる部分は、なかなかレビューの評価には現れてこない。

2台目が壊れたとき、3台目をどうしようかと、いろいろ考えた。2、3年しかもたないものを、いつまで買い換え続けるのかということである。機材費や材料費を考えたら、スーパーで食パンを買ってきたほうが全然安上がりだ。

だが週に1度でも、焼きたてのパンの香りで目が覚める幸せは捨てがたい。コストだけを考えて人生を歩むというのも、味気ない。すでに5年も続けているわけだし、3台目を買えばおそらくこれからも飽きずに、ずっと習慣として続けていくのだろう。

もう少し高級なモデルなら耐久性があるかもしれない。だがそれは3年使ってみて、はじめて結果が出る話なので、何の確証もない。価格が高いということは、耐久性が高いというよりも、多機能であったり、特殊機能があることを売りにしている。

筆者が知る中で最も高額なものは、2010年に出た三洋電機のGOPANシリーズだ。約50,000円である。これは米からパンが作れるということで、小麦アレルギーの家族がいる家庭を中心に、大ヒットした。

GOPANは今でも流通在庫があるようだが、メーカーのほうがすでになくなってしまったので、修理やサポートの面を考えれば、今からこれを選択する線はない。米粉パンのようにいろいろなタイプのパンを作ってみたいという方は、機能が多いほうが楽しいだろう。ただその分値が張るし、日用品としてのコストを考えると、高級品を毎週容赦なくぶん回すというのは割に合わない。

ホームベーカリーはそこそここなれたジャンルなので、毎年毎年革新的な機能が搭載されることもない。従って、2、3年前の高級モデルを安く買うというのも作戦としてはアリだ。ただ後継機が出ているということは、すでに現在は生産されておらず、流通在庫ということになる。つまり製造されてからそれなりに時間は経っているということだ。その辺りの価格とリスクのバランスをどう考えるかが難しいところである。

それを踏まえて価格と評判をいろいろ調べた結果、栄えある3台目が決定したわけだ。パナソニックの「SD-BH1000」というモデルで、実売14,000円ほどである。昨年発売のいわゆる型落ちなので、価格もこなれている。ちょっと色が気に入らなかったが、たぶんこれも慣れるだろう。実際の焼き上がりは、次回のお楽しみである。(つづく)


本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


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